電気工事士としての仕事を辞めたくなって転職を考えるとき、闇雲に求人に応募すべきではありません。特に未経験で業界を変わると、キャリアはリセットされ、待遇も満足いくものが得られない可能性が高いです。

実は、電気工事の現場以外にも電気工事士としての資格・経験・スキルを活かせる仕事はあります。まずは、あなたの武器になる「電気工事士経験を活かせる求人」から探すのがセオリーです。

また、業種・職種によって企業の待遇・労働条件が違います。転職によってあなたが実現したいことは、その企業に応募することで実現できるのでしょうか? それを知るには、応募する業種・職種の特徴をよく調査しなければなりません。

転職したくなったとしても、事前に十分な業種・職種研究をすることが、転職の最終的な満足度を高めることになります。

ここでは、「電気工事士から転職成功しやすい考え方の整理」「同業種異職種への転職方法」「異業種同業種への転職方法」「転職エージェントの活用方法」について、くわしく解説します。

転職理由はなにか?何を変えたいのか?

電気工事士から仕事を変える前に、「なぜ電気工事士をやめるのか」転職理由を明確にしておきましょう。このプロセスを経ることで、転職成功しやすくなります。

電気工事士を辞める人の多くが挙げる転職理由は以下の点です。

  • 体力的にきつい
  • 職人の上下関係が合わない
  • 給料が安い
  • 休みが少ない

これらのうちの一つ、または複数が転職理由となる場合が多いです。小さな不満を挙げれば、ほかにもたくさんあると思います。

ただ、漠然と不満を抱えたまま解決を新天地に求めても、新しい仕事は新しい仕事なりに不満が出てきます

そうすると、仕事に対する向き不向きを考える前に、短期間で何度も転職を繰り返してしまいがちです。そして、年齢に応じたスキルや経験を得ることができず、給料も待遇も改善しない悪循環に陥ることになります。

また、不満点のすべてを同時に解決する転職はまず無理です。私が転職を決意したときも、たくさんの不満点がありました。例えば以下のような点です。

  • 給料が安い
  • 夜勤をしたくない
  • 実家の近くに帰りたい
  • 上長が嫌い
  • 裁量権を持って仕事をしたい
  • 技術的に難易度の高い仕事をしたい など

ほかにも数え上げればキリがありません。結局、改善したい点を「夜勤なし」「実家の近く」「技術的に高難度」の3点に絞って転職しました。改善したい点は、明確に、そして少数に絞ることが転職成功の肝です

そこで、あなたの改善したい不満点のうち、これだけは譲れないというところを整理してください。転職成功するには、これが絶対不可欠のプロセスです。

業種と職種の2軸で整理する

改善したい点の整理が終わったら、次は業種をまたいだ転職の考え方を知ることです。実は、転職では業種だけでなく職種も合わせて2軸で考えることが大切です。

下の図のように、業種・職種の2軸で考えると転職には4パターンあることがわかります。

このうち、最も転職しやすくこれまでの経歴・スキルが活かせるのが、1の「同業種・同職種に転職すること」です。あなたは今、建設業で電気工事士として働いているので、同じような会社に転職するパターンです。

ただ、これでは同じような待遇になりやすいです。ここでは、このパターンは除いて考えます。

次に転職しやすいのが、2の異業種・同職種に転職するパターンです。しかし、電気工事士の場合、このパターンはほぼありません。それは、電気工事士のように、電気工事を業務の主体として行う職種が建設業だけにしかないからです。

ただ、建設業以外の業種であっても、電気工事が多少含まれる職種はあります。これは、完全に同職種ではありません。

しかし、このような職種を選べば、あなたの電気工事士としての経験・スキルを活かすことができます。そして、給料・環境など大きく改善できる可能性があります。

3の同業種・異職種に転職するパターンは、建設業で電気工事士以外の職種で働くパターンです。電気工事士のように工事現場で働く職種以外を選べば、休日数や労働環境などの改善を望めます。

最後の異業種・異職種への転職は、最も難しいパターンです。あなたのこれまでの経験・スキルがリセットされ、見習いの立場からのスタートになります。

待遇面の改善は期待できず、新卒と同様の条件になる可能性が高いです。例えば、40代で転職しても、20代と同程度の給料しかもらえないことも十分に考えられます。したがって、このパターンも除いて説明します。

以上のように、実際に転職活動を始める前に、あなたが転職で改善したい点と業種・職種の選び方の関係について知っておきましょう。

建設業なら設計・積算・営業

ここからは求人の実例を示しながら解説していきます。まず、同業種・異職種への転職パターンです。これは、建設業のうち設計・積算・営業の各職種が対象になります

設計・積算として資格や経験を活かす

最初に紹介するのは、設計・積算の職種です。あなたは、電気工事士として図面に従って施工していたと思います。この職種は、施工図面を作成して工事費を決定する資料を作る職種です。

例えば、下の写真のような図面を、CADソフトを使って作成します。

引用:拾って覚える!実践電気工事積算入門(オーム社)より

もちろんただ絵を描けばよいというわけではなくて、負荷容量によってケーブルの線種を適切なものにしたり、客先要望によって照明の種類を変えたりします。

設計図面が完成したら、図面から材料を拾い出します。そして、それを敷設・設置する労務費を算出します。算出時は、下の図のように表形式でまとめて出すことが多いです。

ここで計算された直接工事費に、間接工事費・現場経費・一般管理費などを加えて、総工事費を出します。この総工事費が、客先に提出する見積もり書に使われます。

設計・積算職は、電気工事士と違って工事現場に出て施工することはありません。現地調査に出ることはあっても、自ら手を動かして工事をすることはないのです。

したがって、体力的には楽です。しかも、設計・積算は電気工事士より難易度の高い仕事なので、給料水準も高くなる可能性が高いです。

この設計・積算職の例は、下に挙げる株式会社雙(そう)設備研究所の求人が該当します。雙設備研修所は、東京の事務所で電気設備の設計・積算をしている電気工事設計会社です。

求人票の記載は「設計」とだけ記載ありますが、「積算」も業務に含まれることが別に記載してありました。このような設計・積算職でも電気工事士の経験や資格が歓迎条件として謳われています。現場の施工がイメージできないと適切な設計ができないからです。設計が適切でないと、適正な工事費も算出できません。

私は以前、電気工事設計・積算業務をしていたことがあります。その際、上長に散々現場を見てこいと叱責されました。現場を知らないとまともな設計ができないからです。

つまり、あなたの電気工事士としての経験・スキルが、設計・積算の実務に直結して役立ちます。あなたの電気工事士としての不満点が、「体力的にきつい」「給料が安い」ことなら、選択肢になる職種です。

営業でも電気工事士経験は活かせる

建設業で紹介するもう一つの職種は、「営業」です。実は電気工事の営業職は、ある程度電気工事のことを知らないと務まらない仕事です。

電気工事は、標準的な方法が広く一般的に知られています。また、電気製品とは違って、製品だけでなく敷設・設置などの工事も含めて納めるものです。

そして、客先にも電気工事に詳しい人がいる可能性があります。そのときに、営業とはいえ電気工事会社の社員が電気工事に対して無知だと、会社の施工能力を疑われます。

電気工事のこのような特性から、電気工事会社の営業職は技術営業に近いです。したがって、あなたに電気工事士としての経験があれば、それが武器になります。

下に示す山本電機株式会社の求人では、ルート営業の職種募集であるものの、第二種電気工事士資格保有を歓迎条件としています。山本電機社は、東京都府中市を中心に電気工事を行っている会社です。

このような電気工事の営業職募集では、電気系の経験がなくてもOKとしているものもあります。しかし、その多くが電気工事士などの電気系資格を取得することを推奨しています。

つまり、すでに電気工事士として資格も経験も持っているのなら、大きなアピールポイントになります。

営業職なので、現場に出て汚れたり、力仕事をしたりすることがありません。また、設備が相手ではなく、人が相手の仕事になります。あなたが、人と接するのが好きで、現場仕事に出るのを控えたいなら対象となる職種です。

他業種で電気工事士から転職しやすい職種

ここまでは、同業種異職種へ転職する手段として、建設業の職種を紹介してきました。電気工事業界のことは、現状働いていてよく知っていると思います。お互いによく知った業界の中で、電気工事士としての知識・経験を活かせることを、いかに企業に伝えるかが転職成功のポイントです。

一方、ここから解説する異業種への転職では、企業は建設業のことをよく知りませんし、あなたも希望する企業の業界のことをよく知りません。お互いにバックグラウンドをよく知らない中で、採用試験で顔を合わせることになります。

同業種で転職するのとは違って、あなたが相手の業界のことをよく把握することが大切です。さらに、把握した仕事の中で電気工事士の経験・知識が活かせることをアピールすると良いです。

このようなプロセスで転職するのに、あなたの電気工事士経験が活かせる職種が2つあります。それは、「ユーザー企業の保全職」「ビルメンテナンス職」です。続いて、この2職種について解説します。

ユーザー企業の保全職は電工に発注する立場で仕事をする

まず、ユーザー企業の保全職が「電気工事士経験を活かせる職種」です。ユーザー企業とは、「電気工事の発注側企業」という意味です。

電気工事を発注する業種は、ありとあらゆる業種が該当します。しかし、ここで紹介するのはユーザー企業のうち、社内に技術部門を設け、工事発注業務のほか検査やメンテナンスを行っている会社です。

つまり、生産工場を持つ製造業のほか、電気・ガス・水道業、航空運輸業、鉄道業などが対象になります。

このような業種では、事業継続のために電気設備が異常なく動いていることが重要です。普段は現場パトロールのほか、下の写真のような中央監視室で工場などの状態を常に監視しています。なお、写真は技術的な打ち合わせをしている場面を撮影させてもらったところです。

この職種では、普段電気工事を行うことはありません。しかし、設備更新や設備修繕などを行う場合は、工事設計を行う必要があります。先に紹介した電気工事の設計職と同じように、ユーザー側でも工事設計を行うのです。

そして、ユーザー企業でも積算を行い工事費が妥当かどうかを判断します。電気工事会社から提示を受けた見積り金額が、適正価格かどうかを発注側でも積算して判断するのです。

私は鉄道会社と電力プラントにおいて、保全職として工事発注に関わっていました。工事設計・積算を始めた当初は、現場の施工のことが全くわからなかったので、電気工事の施工に詳しい人とよく現場を回っていました。保全職の経験だけだと、電気工事の経験が不足するからです。

ところが、中途で電気工事士から保全職に転職してきた人は、工事設計に関してはすぐに自分のものにしていました。やはり現物がイメージできることは大きな強みです。

工事設計・積算のほか、緊急の応急復旧時には電気工事士資格そのものが役立ちます。例えば、下のようなモーター(電動機)につながるケーブルは、電気工事士資格がないと扱うことができないものもあります。

機械が機嫌よく動いているときには、ケーブルをはずすことはありません。しかし、ケーブルの損傷やモーターの故障などでケーブルを取り外す場面はあります。もちろん、事業所内にモーターに限らず電気設備はたくさんあるので、故障に出会う確率はかなり高いです。

電気設備が故障したとき、設備自体の取替や本格的な修理は外部業者に発注します。しかし、急を要する場合は保全職が対応します。このとき、電気工事士資格が必要になります。

以上のことから、ユーザー企業の保全職で電気工事士資格を求めることは多いです。

例えば、下に示すのは株式会社アズミ村田製作所の求人です。アズミ村田製作所は、村田製作所の事業子会社で長野県の工場でノイズ除去フィルターを製造しています。求人の歓迎条件として、第二種電気工事士資格が挙げられています。

ユーザー企業の保全職の良いところは、勤め先が一箇所に決まっていることです。また、現場仕事は少ないので、体力的には楽です。給料や休みは業種により様々です。

なお、ユーザー企業の保全職は、求人数が多いので、あなたの希望に沿った優れた求人を見つけることも難しくありません。

ビルメンテナンスは簡単な電気工事と発注業務が仕事

次に紹介するのは、ビルメンテナンス職です。ビルメンテナンス職は、商業ビルや大規模商業施設、公共設備、病院、マンションなどで設備管理を行う職種です。

これらの施設に入ったとき、あなたは下の写真のような防災センターを見たことがないでしょうか? ビルメンテナンス職は、このような防災センターやバックオフィスに待機して、ビル内の設備を管理するのが仕事です。

このような施設でも電気で動く設備はたくさんあります。照明・空調・給排水設備・エレベーターなど数えればキリがありません。この電気で動く設備を、故障しないように点検・検査し、故障したときは取替え、適切に管理するのが仕事です。

先に紹介したユーザー企業の保全職と仕事内容は似ています。ただし、ビルメンテナンス職は低圧の民生機器が中心です。

私は、ターミナル駅の電気設備を管理していたことがあります。その中で、よく対応していたのが、照明の球替えと漏電対応です。ビルメンテナンスをしている知人に聞いても、照明の球替えが大変多いということです。

照明の球替えや漏電対応に電気工事士資格は必要ありません。しかし、スイッチ・コンセントの取替、照明灯具本体の取替などが発生したときには電気工事士資格が必要です。

ビルメンテナンスでは、使用頻度の高い資格をビルメンテナンス4点セットといって社員に取得を強く促しています。ビルメンテナンス4点セットとは、「第二種電気工事士」「2級ボイラー技士」「危険物取扱者乙種4類」「第三種冷凍機械責任者」の資格です。

このうち、第二種電気工事士資格は使う頻度が高いため、特に重宝されている資格です。したがって、電気工事士として経験と資格があれば間違いなく重宝されます。

具体的な求人でいうと、下のジェイアール東海総合ビルメンテナンス株式会社の求人があります。ジェイアール東海総合ビルメンテナンス社は、JR東海のグループ会社として、駅ビルの施設管理をしています。この求人では、愛知県名古屋市のJRセントラルタワーズなどを担当する社員を募集しています。

求人票の中に、活かせる資格として「電気工事士」が明記されています。

ビルメンテナンス職の良い点として、「休日が多い」ということがあります。また、交代勤務なので、夜勤があるものの平日昼間に時間を取りやすいです。また、体力的に楽な仕事が多いです

難点としては、「給料が低い」ということがあります。業界構造として賃金が上がりにくいので、将来的に大きく賃金が上がることはないです。そこで、資格を取得して資格手当で稼ぐという人が多いです。

ビルメンテナンス職は、以上の点を承知しておくとよいです。

転職エージェントサービスを使う

ここまで紹介した職種が電気工事士経験を活かせる職種です。最初に整理した不満点が、これらの職種に転職することで解消されそうなら、全くの未経験分野に飛び込むより転職成功しやすいです。

さらに、優れた求人を見つける方法として、転職エージェントサービスを使う方法があります。

あなたが自分で求人を探しても問題ありませんが、自分の考えだけだと視野が狭まりやすくなります。そこで、転職エージェントに客観的な立場で適職を紹介してもらうとよいです。

また、世の中の求人には「公開求人」と「非公開求人」があります。公開求人は、だれでも見ることができる求人です。非公開求人は、転職エージェントを通してのみ紹介される求人です。

下の図のように、非公開求人は全求人の8割程度だとされています。この割合は、転職サイトが変わってもだいたい同じです。

つまり転職エージェントサービスを使えば、アクセスできる求人数が5倍に増えるということです。そのため、非公開求人にアクセスすることで、優れた求人に出会う確率が高まります。

その際、転職エージェントには冒頭で整理した「転職で改善したい内容」をはっきり伝えると良いです。希望が叶えられる求人があるかどうかを教えてくれます。希望に沿う求人が無ければ、代替案をあなたと一緒に考えてくれます。

また、転職サイトが扱う求人は、サイトによって違います。あなたと転職エージェントとの相性が合うかどうかも重要なので、複数の転職サイトに登録してエージェントサービスを受けると良いです。

そうすることによって、転職成功する可能性を高めることができます。

まとめ

電気工事士から転職を考える場合、まず「転職して何を改善したいのか」をはっきりさせなければなりません。これを置き去りにして転職しても、成功することは難しいです。

「何を改善するか」をはっきりさせたら、業種と職種について整理しましょう。あなたが変えたいことは何かにより「同業種異職種」「異業種同職種」のどれかに転職する方針を立てましょう。

同業種異職種への転職では、「設計・積算」「電気工事会社の営業」の職種が対象になります。電気工事士と同じ建設業界の職種なので、経験を活かして転職しやすい職種です。

そして、仕事の内容は大きく変わります。労働環境や体力的な不満点を改善したいなら、選択肢になります。

異業種同職種への転職は、厳密には同職種ではありません。しかし、電気工事士の資格・経験が活かせる職種として、「ユーザー企業の保全職」「ビルメンテナンス職」があります。どちらも、電気工事が主体ではないものの、電気工事士資格・経験が必要とされる場面がしばしばある職種です。

これらの職種は体力的には楽な仕事です。ただ、年収・休日などの待遇は業種により様々です。求人数は多く選択肢があるため、あなたが望むものは何かをはっきりさせていれば、転職成功しやすいです。

また、自分で求人を探すほか、転職エージェントサービスを使うと優れた求人を見つけやすくなります。非公開求人の紹介を受けられることと、転職エージェントの視点からあなたの適職を紹介してもらえるからです。

このようなプロセスを踏んで戦略的に転職活動することで、満足できる転職を成功させやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。