技術士資格は、技術系最高峰といわれる資格の一つです。取得難易度が高く、何年もかけて取得する人もいる資格です。

この難しい資格を取得したあなたは、なんとかこの資格を生かして有利に転職したいと考えているのではないでしょうか。

しかし、技術士の求人は数が少なく、求人の探し方に工夫が必要です。

ここでは、技術士の求人の実態、転職サイトで求人を探すときの注意点などについて解説します。

技術士の資格必須の仕事はごく限られる

技術士(電気電子、情報工学)の資格を活用して転職活動をするとき、まず技術士資格が仕事にどう生かされるかを認識しておかなければなりません。

技術士資格は、文部科学省が所管する資格です。この資格を所持することによって、「技術士を名乗って、研究、調査、企画などを業として行う」ことができます。

「技術士」を名乗ることができるのは、技術士試験に合格し登録した技術士だけであることが、下記のように法律によって定められています。

技術士法 第57条(名称使用の制限)
技術士でない者は、技術士又はこれに類似する名称を使用してはならない。

注意しなければならないのは、技術士資格は業務独占資格ではなく、名称独占資格であるということです。つまり、「技術士を名乗らず、研究、調査、企画などを業として行う」には、技術士資格は必要ありません。

これらの「研究、調査、企画など」を業として行っている会社は、コンサルタント業です。技術コンサルタントは、技術分野において相談、助言、指導、調査、提案を行います。

一般の人が技術コンサルタントの仕事を頼むとき、どこの誰だかわからない人に技術コンサルタントを頼むよりも、国のお墨付きである「技術士」に仕事を頼みたくなるのは理解しやすいと思います。

コンサルタント業以外で技術士資格を転職に活かすのは難しい

外部に向けて自らの技術力を証明する必要がある業種、つまりコンサルタント業では技術士資格が有効なのはわかりました。では、それ以外の分野では、技術士資格はどのように扱われるのでしょうか。

実は、あまり重宝されることはありません。なぜなら、技術士資格に匹敵する難関資格として第一種電気主任技術者資格や高度情報試験資格があるからです。

これらの資格は経済産業省所管で、第一種電気主任技術者資格は強電系資格の最高峰、高度情報試験資格は情報系資格の最高峰です。しかも、第一種電気主任技術者士資格は、所持していないと電気主任技術者になれない業務独占資格です。

私が以前、電気系社員として勤めていた鉄道会社では、管理職への登用試験を受験するのに、「技術士」「第一種電気主任技術者」「鉄道設計技士」のどれかの資格を所持している必要がありました。

この中で難易度が高いのは、「技術士」「第一種電気主任技術者(認定合格除く)」で、同じくらいの難易度という認識でした。

しかし電気系社員が、まず目指すのは第一種電気主任技術者試験合格です。社内でも、第一種電気主任技術者は複数在籍しており、積極的に取得を奨励していました。

一方、技術士に関しては在籍していると聞いたことがありません。

ましてや、技術士資格取得を積極的に奨励していることもありませんでした。

このように技術士を活用して転職活動をするとき、以上のような現実は知っておく必要があります。

技術士の求人は、コンサルタント職を転職サイトで探すのが基本

さて、あなたが実際に求人を探すときにはどのように探せば、効率よく探せるでしょうか。

求人情報を探すときは、ハローワークで探したり、転職サイトで探したりすることが一般的です。しかし、技術士のように高度な資格を活かした転職を考えるときは、転職サイトで探すのが原則です。

下表に、ハローワークと転職サイトの特徴を簡単にまとめます。

 

ハローワーク 転職サイト
利用料 無料 無料
面談 対面 電話のみもある
登録会社 地元の中小企業中心 大企業や中小企業でも資金力のある優良企業が多い
サイトの使い勝手 悪い 良い
非公開求人 なし あり
応募 ハローワークで申し込む WEBで申し込む

表に示したように、ハローワークの求人は、地元の中小企業が中心です。これは以下のような理由からです。

ハローワークには、企業が求人を出すのに費用がかかりません。一方、転職サイトは、求人を出すのに相当な額がかかります。

したがってハローワークには、採用活動に費用をかけられない中小企業が中心に求人を出しています。技術士の資格者を求めるような企業は、事業内容が高度で十分に経営体力がある会社であることが多く、転職サイトに求人を出していることが多いです。

企業にとって、転職サイトに求人を出すと費用がかかりますが、転職エージェントがその企業に適した人材をマッチングしてくれるため、十分なメリットがあります。

実際に、私が第2種電気主任技術者(電験2種)資格を活かせる求人を探して転職活動をしていたとき、ハローワークには全く求人が出ていませんでした。

電験2種は技術士には、全く及ばない資格です。しかし、ハローワークでは電験2種でさえも活用できる求人案件は、全くありませんでした。

電気関係の資格で募集があったのは、「電気工事士資格」がほとんどで、「第3種電気主任技術者資格」が1~2件あるだけでした。この事実は認識しておかなければなりません。

転職サイトにもさまざまなものがあります。しかし、技術士資格を活かしたい場合は、まず下図のような技術士の求人案件を専門に扱う転職サイトを使うと良いでしょう

このサイトでは、技術士の部門ごとに求人を紹介してあります。電気電子部門とありますが、情報工学部門の技術士資格の求人も含めて、9件の求人がありました。

その一つが、下の広島県に本社がある中電技術コンサルタント株式会社の求人です。この会社は中国電力株式会社の子会社として、電力会社の設備の設計に特に強みを持つ会社です。

実は、私はこの会社に求職中に伺い、業務内容の詳細や社内の状況について聞いたことがあります。

仕事の内容は、記載の通り設計業務です。新しく電気設備を作るにあたって、設備設計を行い、工事設計を経て、施工管理までを行います。技術士として採用されますので、電気工学的な裏付けをもって成果物(設計書・仕様書、図面など)を作成することを求められます。

この会社は、電気工事業だけでなく、電気通信工事業も行っています。施工管理が業務内容にありますので、建築業法で定められる「監理技術者」に専任されて仕事を行うこともあります。

社員は、中国電力からの出向者もいましたが、中途採用された人もたくさんいました。Uターンで広島に帰りたくて転職した人や、もともとメーカーの技術者だった人が工事設計をしたいということで転職した人もいました。

なお、このような技術士専門の転職サイトの求人は、「未経験不可」「年齢制限がない」案件ばかりです

中電技術コンサルタント株式会社も「経験必須」「年齢不問」です。これは、技術士に求められる業務が、これまでの経験をもとに技術的に深い知見をもって行うことを期待されているからといえます。

求人票の年齢制限について、補足します。法令(雇用対策法)では、求人で年齢制限をする場合は、その理由を明示する義務が定められています。

しかし年齢制限をしない場合は、特に定めはありません。したがって、年齢について特に記載ない場合は「年齢不問」ということです。

次の同じサイトの非公開求人も、年齢不問・経験必須の求人案件です。この求人は、技術士(電気電子部門)は必須ではないものの、設計業務の求人です。提示年収も、先ほどの求人と同じような額が記載してあります。

必須の条件は、電気設備設計の実務経験があることで、技術士資格は歓迎条件となっています。さらに具体な設備について計画・調査・設計の業務実績があればよいとなっており、要するに技術士として業務経歴があれば「なおよし」といっています。

また、先ほど「中電技術コンサルタント」というように社名が書いてあったところが、「昭和21年創業の総合建設コンサルタント」と記載され、社名が伏せられています。これが非公開求人の一例です。

非公開求人とは、社名をオープンにして募集すると企業側に不都合がある場合に行われる求人です。不都合とは、望まない人材の応募を避けるためなどです。

この場合、企業は転職エージェントの紹介を通してのみ応募を受付けます。図の例は社名だけ伏せられていますが、求人票そのものが転職エージェントを介さないと見られないものもあります。

この非公開求人がたくさんあることも、転職サイトを使って求人を探すべき理由の一つです。

ハローワークには非公開求人はありません。非公開求人は、転職サイトでしか出会えない求人です。

参考に、大手転職サイトであるdodaはトップページで約半数が非公開求人であると謳っています。マイナビAGENTでは、下図のように扱う求人の8割が非公開求人であるとしています。(両サイトとも、2019年1月調べ)

このような非公開求人を含めて求人を探すことによって、転職しやすくなります。

コンサルタントに仕事を限定しなければ、転職サイトで探せる求人は増える

ここまでは、コンサルタント業中心に解説しました。技術士の募集案件が少ないことが、わかったと思います。

しかし、技術士を名乗って仕事をするコンサルタント業に限らなければ、技術士専門の転職サイトで探すと、見ることのできる求人件数が増えます。

たとえば、大手転職サイトdodaで「技術士」をキーワードとして検索すると800件以上の求人がヒットします。

ただし、これには電気電子、情報工学分野以外の技術士募集案件も含まれています。そこで、同様に「技術士 電気電子」で検索すると、40件弱の求人がヒットします。

もちろんこの中にはコンサルタント業も含まれます。しかし、以下のようにコンサルタント業以外の求人もあります。

この求人は、鉄道関係の信号設備に圧倒的なシェアがある日本信号株式会社のものです。私も、以前鉄道会社に勤めていたときは、この会社の製品をよく使っていました。

この会社での仕事内容は、主に鉄道用の信号設備の回路設計です。図は、対象となる方の欄ですが、技術士などの資格は特に必要ありません。

しかし、下図のように別の欄に、社内で技術士資格を積極的に取得させているとの記載があります。

これは、社員に技術士資格程度の技術力や知識を持つことを推奨しているということです。あなたが技術士資格を持って入社すれば、その知見を以て回路設計業務に活かし、活躍できるでしょう。

もう1件、同様の求人を紹介します。下の図は、本州全土と北海道で事業展開している、株式会社ファシリコのものです。本社は東京ですが、この求人で採用されると、東京と、大阪、神奈川、新潟で勤務することになります。

このような大手転職サイトは技術士専門の転職サイトと比べて、下図のような非常勤や契約社員など非正規社員の募集があります。

先ほどの「技術士 電気電子」でヒットした38件のうち、非正規社員の募集は15件(正社員と同時に契約社員を募集するものを含む)ありました。

大手転職サイトで求人を探すときは、この違いに注意する必要があります。

技術士の年収はいくらくらいか?

最後に、技術士の年収について解説します。

ここまでで紹介した4社の提示年収は、中電技術コンサルタント「500~700万円」、昭和21年創業の総合建設コンサルタント「500~820万円」、日本信号株式会社「450~700万円」(下図)、株式会社ファシリコ「450万円、513万円(実例)」(下図)です。

この提示年収が高いか安いかですが、その判断には厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査が参考になります。下図が平成29年賃金構造基本統計調査で技術士の年収調査をしたものをグラフ化したものです。

引用:平成29年賃金構造基本統計調査 職種別第4表をグラフ化

この統計調査は、男女別行われています。男性の中央値は300~400万円、女性の中央値は200~300万円になっています。

なお、この調査結果には電気電子・情報工学部門だけでなく、建築などすべての分野の技術士が含まれていることは注意しなければなりません。

これらから、紹介した4社の提示年収は高額の部類に入ります。これ以上の年収を求めるには、根気よく求人情報を探す必要があります。

まとめ

技術士資格を転職活動で活用しようとするとき、技術士資格が名称独占資格であり業務独占資格でないことを認識して、求人数が少ないことを覚悟する必要があります。

求人を探すときは、転職サイトを使って探すのが原則です。ハローワークには、技術士(電気電子、情報工学)の募集案件はまず無いと考えてください。

そのとき使う転職サイトは、まず技術士募集求人を専門に扱う転職サイトを使うと良いです。さらに、技術コンサルタント業以外に視野を広げると、大手転職サイトを使うことにより電気設備や電気回路の設計などの求人を見つけることができます

また、技術士として働く場合の年収は500万円までがほとんどです。それ以上は、高額であるということを知っておく必要があります。

以上のように、転職サイトを活用することによって、技術士の資格を活かした転職で成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。