現代の産業において、電子デバイスは欠かせません。また、民間サービスでも電子デバイスを使っていない製品を探すほうが難しいくらいに、電子デバイスは無くてはならない存在です。当然ながら、電子デバイスを扱う電気電子エンジニアには、相当数の需要があります。

ただ、電気電子エンジニアを募る求人は幅が広く、漠然と求人を探していると圧倒されて転職活動を進められなくなります。では、どのように転職活動を進めていけばよいのでしょうか。

電気電子の技術が必要とされる企業は多く、あらためて転職活動を始めてみると、どのように会社を選ぶべきか迷うことも多いと思います。そこで、電気電子エンジニアとしての強みを再認識し、強みを活かした転職活動を行うと転職成功しやすくなります。

ここでは、「電気電子エンジニアの強みの再確認」「強みを活かせる職種」「強みを活かせる業種」「電気電子エンジニアの年収」について詳しく解説します。

電気電子エンジニアの求人を探すときの注意点

電気電子エンジニアの求人を探すときに、「電気電子エンジニア」や「電子エンジニア」をキーワードにして探すと思います。

例えば、下のような株式会社メルティンMMIの求人が検索でヒットします。メルティンMMI社は、東京のロボティクス開発を行っている会社です。この求人では、ロボット制御用の電気回路・電子回路を設計する人材を求めています。

メルティンMMI社の求人は、「電子エンジニア」をキーワードにして探したものです。しかし、この検索方法でヒットする求人は少ないです。

電気電子エンジニアが活躍できる企業は、このような回路設計ばかりではありません。そこで、電気電子エンジニアの強みを棚卸しした上で、仕事内容から求人を探すほうが多くの求人を見つけることができます

電気電子エンジニアの強みを知る

電気電子エンジニアの最大の強みは、弱電関係の知識・技能に秀でていることです。弱電とは、通信・計算機・ソフトウエア・制御などを扱う分野です。

したがって、転職先の企業として選択肢に上がるのは、これらの弱電分野の企業が中心になります。

通信分野の求人例

まず、通信分野の求人例を紹介します。下は、広島県・岡山県で通信工事を営んでいる大成ナグバス株式会社の求人です。大成ナグバス社は、有線無線の通信工事を中心に行っている会社です。

無線通信工事でイメージしやすのは、下の写真のような携帯基地局の新設工事です。大成ナグバス社では、新設工事だけでなく既設通信設備のメンテナンスも行っています。

一方有線通信工事だと、下の写真のような配線工事や機器との接続・設定を行います。

このような配線工事や機器設置工事自体で、電気電子工学の知識を直接活かせる場面は少ないです。しかし、最終的に「通信」できるように仕上げるには、電気電子工学の知識が不可欠です。

特に目に見えない「電気」「信号情報」を扱っているので、理論的に考えることができなければ全く仕事になりません。

また、通信工事には下の写真に示す工事担任者資格が必須です。求人票に記載してある「通信関係の資格」には、この資格が該当します。入社時には必要なくても、入社後必ず取得することを求められます。

通信工事の仕事は、必ずしも電気電子エンジニアだけが就ける仕事ではありません。ただ工事担任者の資格を取得するのにも、電気電子工学の知識が必須です。したがって、電気電子エンジニアだと、通信関係の企業を狙う大きな強みになります

産業用機器・ソフトウエアの分野も活躍できる

電気電子エンジニアが優位な分野として、通信分野のほかに計算機・ソフトウエアの分野があります。学生時代や前職で電子回路やソフトウエア工学を学んできたのであれば、この分野でも活躍できます。

冒頭で紹介したメルティンMMI社の求人は、この分野の求人に該当します。そのほかにも、以下の株式会社多摩川電子のような求人も産業用機器の製造・開発求人です。

多摩川電子社は、通信関係のデバイス製造に強みを持つ神奈川県の企業です。この求人では、製造された製品の評価・試験・調整を行う人材を求めています。

写真のように、デバイスにプローブをつないで、オシロスコープなどの測定器を見ながら調整していく仕事があります。

そのほか下図の株式会社川島製作所の求人では、梱包機の電気設計を担当する人材を求めています。川島製作所は、埼玉県草加市に拠点を置く梱包機メーカーです。

求人票には、電気電子エンジニアの語はありません。しかし、装置の制御や電気回路設計が業務内容にあります。また、PLCを使うことが記載されています。これらの業務内容に強みを持つのは、電気電子エンジニアです。

PLC(Programable Logic Controller)は、産業用途として機器・プラントの制御に使われています。有名なのは、下の写真のような三菱電機製「シーケンサ」「MELSEC」と呼ばれる製品です。

ソフトウエアと聞くと、パソコンで動作する汎用のソフトウエアやインターネット上で見かけるWEBソフトウエアを思い浮かべがちです。しかし、PLCのような産業用機器を動かすソフトウエアも、立派なソフトウエアです。

PLCは、シーケンス制御を行うユニットで、下図のようなシーケンスを実装します。リレー(継電器)を多用していたころは、左図のように描いていました。PLCを使う場合は、右図のラダー図(PC用シーケンス)を使うことが多いです。

写真 : 『シーケンス制御技術』産業図書 小野孝治ほか著 9ページ

私は鉄道会社勤務時代に、変電所制御のためのシーケンス回路を検討する機会が多かったです。学生時代にソフトウエア・計算機のことを学んでいたおかげで、特に拒否感を覚えることなく業務に入れたのを覚えています。

また、私が担当していた変電所制御には、高校の普通科卒で採用されていた先輩が配属されていました。その先輩は、「変電所制御は目に見えないので、改良するのも故障点を探すのも大変難しい」とこぼしていました。

一方、電気電子エンジニアには、「電気」という目に見えないものを扱うテクニックがあります。あまりに当たり前に電気電子に触れてきたために忘れがちですが、これは大きな強みです。

強電系企業への転職も可能

ここまで、通信や計算機・ソフトウエアなど弱電系の企業を紹介してきました。しかし、下の写真の電力プラントのような強電系の企業も選択肢になります

電力プラントなどの工場では、計装機器によって工場の状態が緻密な制御・監視されています。これによりエネルギーや製品が、品質高く生み出されています。

計装制御とは、プラントの状態を計測し適切に制御することを指します。火力発電所が作り出す電力は66kVの強電ですが、発電所の中の機器を制御するには200V以下の弱電が使われています

例えば下の写真は、排水の状態を監視する計装機器です。排水中の特定物質が一定濃度を超えたときは、環境中に放出しないように速やかに排出弁を閉じる機能も持っています。

そして、前項で紹介したPLCも機器制御のために使われています。また、運転員が監視・制御するインターフェイス部分は下の写真のような汎用計算機にソフトウエアを実装しています。

つまり、大電力を扱う発電所や大規模プラントでも、電気電子エンジニアの人材が求められます。

実際の求人例でいうと、下図のJ-POWERテレコミュニケーションサービス株式会社の求人が該当します。J-POWERテレコミュニケーションサービス社は東京に本社を置きますが、全国に拠点がある電力系グループの会社です。

J-POWERテレコミュニケーションサービス社は、電源開発株式会社のグループ会社として、主に発電所・変電所などの通信ネットワークを担当する事業子会社です。

この求人では、発電所などで使う通信・ネットワークシステム設備の設計・構築・保守・運用管理を行う人材を求めています。また一部、自治体の通信設備コンサルタント業務もあります。

会社自体は、電力系の会社であるものの、実際の仕事は通信設備に関する業務である典型例です。

なお、電源開発社はホワイト企業に対して経済産業省がお墨付きを与えている「健康経営優良法人」の常連企業です。

もう一社例を挙げると、下図のDOWAテクノエンジ株式会社の求人が該当します。DOWAテクノエンジ社は、非鉄金属精錬で強みを持つDOWAグループのプラントエンジニアリング会社です。岡山県に本社があるほか、全国で事業展開しています。

この求人では、秋田の事業所で働く「電気系プラントエンジニア」を募集しています。しかし、求める方の欄を見ると「電気電子・電子制御系の学部・学科出身」であることが条件に記載されています。また、「計装設備設計実務経験者」を優遇していることから、業務内容に計装制御関連の業務があると推定できます。

「電気」というと強電も弱電も含みます。しかし、「電気電子」というように対にして表現した場合は、「電気」は強電系の技術を指すことが多いです。

つまり、これらの業種では電気/電子(強電/弱電)の2つの技術を習得していくことが求められます。電気系エンジニアとして、計装制御技術を専門分野としながら、幅広く電気関係の業務を行っていきます。

以上のように、電気電子エンジニアは弱電関係に携わる職種を探すと、得意分野や経験を活かしやすいです。また、通信や計算機・ソフトウエアが会社のコア事業の会社だけでなく、幅広い業種で電気電子エンジニアが求められています。

このように視野を広く持って企業を探すことで、転職成功しやすくなります。

電気電子系の仕事の年収は?

最後に、これらの電気電子エンジニアの年収について解説します。

冒頭で紹介したメルティンMMI社の年収は、下に示す求人票のように600~1,000万円と示されています。

同様にここで紹介した6社について、求人票に提示されている年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 業種
(株)メルティンMMI 600〜1,000 業務用機械器具製造業
大成ナグバス(株) 300~500 設備工事業
(株)多摩川電子 400〜600 電気機械器具製造業
(株)川島製作所 330~400 生産用機械器具製造業
J-POWERテレコミュニケーションサービス(株) 450~650 設備工事業
DOWAテクノエンジ(株) 370~530 設備工事業

これによると、提示される年収は業種や会社でさまざまです。給与所得者の平均年収が500万円弱なので、メルティンMMI社が高め、そのほかの会社は平均的か、それより低めの提示額です。

実は、転職のときに提示される年収は業種業界により大きく違います。下のグラフは、厚生労働省が毎年公表している賃金構造基本統計調査より電気電子エンジニアが転職しやすい業種の平均年収を抜粋してグラフ化したものです。図中、緑で示したものが非製造業、青で示したものが製造業を表しています。

引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化

これを見ると、平均年収が最も高い業種と最も低い業種で、倍近い差があることがわかります。類似した職種で、同じような仕事をするなら、平均年収の高い業種の会社で働いたほうが、あなたが得ることのできる年収は高くなりやすいです。

転職において年収面で満足いく結果を得たいなら、この業種による平均年収の偏りを考慮する必要があります。仕事内容は個々の求人票で確認しつつ、年収以外の条件が変わらないなら、グラフの左側の業種を選べば、将来的に高年収を期待できます。

まとめ

電気電子エンジニアとして転職するときに、どのような点で強みを活かして企業を選べばよいかを詳しく解説してきました。

「電気電子エンジニア」をキーワードにして求人検索しても、ヒットする求人は少ないです。したがって、仕事内容から探していくとより多くの求人を見つけることができます。

電気電子系だと、通信・計算機・ソフトウエアの分野の職種を探すと、学生時代に修得した知識を活かしやすいです。また、業務上必要な資格を求められたときも取得が容易で、会社内の評価も得やすいです。

また、通信・計算機・ソフトウエアが企業の直接の中心事業でなくても、それらの技術が必要とされる企業は多数あります。プラントなどには計装制御と呼ばれる弱電技術者が必須です。このような立場に転職しても、電気電子エンジニアとして培った知識・経験を活かすことができます。

ただし、弱電技術だけでなく、強電系の技術もあわせて習得して仕事に活かしていくことが求められます。

電気電子エンジニアの年収は、業種により様々です。政府統計など信頼のおけるデータをもとに、平均年収の高い業種に転職することで、年収面で満足できる転職を実現しやすくなります。


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