ビルメンテナンス業で必要な資格のうち、大変重要な位置づけにある資格が電気主任技術者(電験)資格と建築物環境衛生管理技術者(ビル管・ビル管理士)資格です。電験資格は難関資格として、ビル管資格も取得が大変な資格として知られています。

では、これらの資格を持った上で転職を考えるとき、どのような転職活動をすれば有利な条件で転職できるでしょうか。

大変価値の高い資格を持っていたとしても、その活用方法を間違えると転職成功することは難しいです。また、求められる会社を知らなければ有利な条件を引き出すことはできません。転職成功には、十分な求人票の研究が必要です。

ここでは、「ビル管・電験の2つの資格を活かす求人」「2つの資格が活かせる職種に求められるスキル」を詳細に解説します。また、転職成功した多くの人が利用している転職サイトの使い方について、より転職成功率を高める活用方法について説明します。

ビルメンテナンスの責任者クラスの求人を狙う

電気主任技術者(電験)と建築物環境衛生管理技術者(ビル管・ビル管理士)資格を持っているときの転職先で、一番に考えるべきはビルメンテナンスの責任者クラスの求人です。

また、ビル管資格はビルメンテナンス業以外で求められる場面がほぼありません。ビルメンテナンス業以外への転職を考えるなら、電験資格を武器に設備管理系の職種を探していくことになります。

ビルメンテナンス業なら、電験3種、ビル管、エネ管(エネルギー管理士)の3つの資格は、「三種の神器」と呼ばれる重要資格です。このうち、2つの資格をすでに取得しているのであれば良い条件で転職しやすいです。

例えば、下図のフジタビルメンテナンス株式会社の求人では、管理職候補として人材を募集しています。なお、フジタビルメンテナンス社はダイワハウスグループとして全国に事業展開している会社ですが、この求人で採用されると東京の本社で働くことになります。

働き方は、客先物件に常駐するのではなく、商業ビルや工場などの複数物件を巡回するスタイルの働き方です。10件程度の物件を担当することになります。

この求人に応募するためには、下図のように、「ビル管、電験、エネ管のいずれかの資格」「設備管理経験」「PCスキル」が必須条件です。

必須条件のうち、取得資格の条件は3つのうち2つを持っているので問題ありません。設備管理経験も、ビル管資格受験に設備管理経験が必要なので、ビル管資格を持っている時点で問題ありません。

残りはPCスキルですが、職務内容を見ると文書作成や客先との連絡など、Microsoft Officeの基本的な操作ができれば問題ありません。余程パソコンに苦手意識がない限りPCスキルを理由に尻込みする求人ではありません。

フジタビルメンテナンス社のように、わかりやすく管理職を募集する求人以外には、電気主任技術者選任を望まれる求人があります。例えば、下図の三井物産フォーサイト株式会社の求人が該当します。

この求人では、第2種電気主任技術者資格が必須とされています。まずは作業員として、千代田区大手町に建設された地上30階建ての商業ビルで勤務することになります。

このような大型ビルだと、66kVで受電することがしばしばあります。また、都市部の場合は架空送電線ではなく電力ケーブルで受電します。その場合は、下の写真のような配電室で受電します。

第二種電気主任技術者の資格保有者は、社内に1人いれば問題ありません。したがって、第2種電気主任技術者資格を保有することを必須としているのは、現社員の中で資格保有者がわずかで、かつ遠くない将来に退職を控えているということです。つまり、将来的に電気主任技術者として選任される可能性が高いです。

求人票に記載されてある年齢構成を見ると、「チームの人数は20名ほどで、20代の新人と40~50代のベテランで構成されている」と記載されています。

この20代の新人の中に第2種電気主任技術者の有資格者がいれば、保有を必須条件として募集する必然性がありません。歓迎条件として問題ないはずです。

もちろん、具体的に電気主任技術者に選任される時期については、採用試験などを通して確認する必要があります。

また、電験2種の有資格者は転職市場になかなか出回りません。私の勤める電力プラントでも、追加で電験2種有資格者を採用しようとしていますが、まず応募してきません。転職フェアなどで企業に話を聞いても、まず電験2種以上の資格者に出会わないといいます。

さらに、ビルメンテナンスの3種の神器であるビル管資格も歓迎条件に入っています。つまり、電験資格とビル管資格を保有しているあなたにとっては、かなり優れた条件で採用される求人といえます。

ビル管・電験資格を活かした転職を目指すときは、このような求人を探していきます。

上位職なら業界高水準の年収を狙える

次に、これらの求人の年収について説明します。はじめに紹介したフジタビルメンテナンス社の提示年収は、下図の通り470~700万円とされています。

また、夜勤なし・完全週休二日制であるとされています。ビルメンテナンス業の現業の職場では、シフト勤務で夜勤は当たり前なので、労働条件はかなり良いと言えます。

一方、三井物産フォーサイト社の年収は、下図のように450~800万円と提示されています。

ビルメンテナンス業の平均年収は、厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査によると400万円ほどです。下のグラフに、ビルメンテナンス業の平均年収と年齢別平均年収をグラフ化したものを示します。

引用 : 令和元年賃金基本構造実態調査(厚生労働省)をグラフ化

この政府統計と比べると、先に紹介した2件の求人は提示年収が高いことがわかります。電験とビル管資格を持っていると応募できる求人は、業界高水準の年収を提示しているということです。

電験・ビル管を持っていても作業員だと年収が低い

一方、電験とビル管の資格を条件に挙げている求人の中には、単なる現業のスタッフを採用するための求人も含まれています

例えば、以下に示す山王ファシリティーズ株式会社の求人が該当します。この求人は、沖縄県の新設ホテルで働く人材をもとめています。

求人票に記載されているとおり、電験三種、ビル管の資格があると活躍できると謳われています。しかし、歓迎・優遇とはされていません。そして、上位職を求める求人ではなく、現業に就くことになります。

そして、この求人の提示年収は、下図に示すとおり299~370万円です。

山王ファシリティーズ社の年収は、先程示したビルメンテナンス業の平均年収より低めです。このように、電験・ビル管の資格が条件として求人票に記載があっても、現業の作業員だと年収が低いことを知っておきましょう。

責任者クラスに求められるスキル

責任者クラスの求人は、電気主任技術者や建築物環境衛生管理技術者に選任されることが多いです。選任されると、職場のメンバーを管理監督する立場で仕事をしなければなりません

では、管理監督する立場には具体的にどのような能力が求められるのでしょうか。重要なものは以下の3つです。

  1. 「自分ができる」ことではなく「メンバーができる」ように「させる力」
  2. 複数のメンバーを、1つの目標に向かわせて実現する「リーダーシップ」
  3. 目標を、メンバーが実現できる形に落とし込む力

・させる力

1つずつ説明します。まず1つ目の「させる」力とは、あなたが仕事をするのではなくメンバーに押し付けるという意味ではありません。

例えば、電気主任技術者の職務として保安規程を定めて届け出ることがあります。また、変更があった場合は、遅滞なく届け出なければなりません。

私が勤める電力プラントの電気主任技術者は、電験1種を保有しているベテランです。そして、私の職場では最近保安規程の変更しなければならないことがありました。では、電気主任技術者が届出書類を作って、産業保安監督部に提出したのでしょうか?

実は、電気主任技術者が手を動かして届出書類を作って提出する必要はありません。今回は、電験資格を取得しているものの選任されていない私が届出書類を作成して、産業保安監督部に提出しました。

もちろん、誤りがないかは電気主任技術者が確認しています。このように、電気主任技術者は実務をする必要はないのです。

むしろ、届け出に限らず作業経験のないメンバーがいるときは、積極的に経験させることが電気主任技術者の職務です。そうすることによって、組織の技術力・経験値を高めなければなりません。これが「させる力」です。

・リーダーシップ

2つ目のリーダーシップはわかりやすいと思います。会社組織である以上、なんらかの目標・課題が上部組織から降りてきます。そのとき、メンバーをまとめて目標達成・課題解決することが求められます。

会社組織で、メンバーが全くバラバラの方向を向いていたのでは目標達成は難しくなります。しかし、メンバーはそれぞれの背景があり、それぞれの考え方で仕事に向かっています。

それを、高圧的に命令するだけでは目標達成は難しいです。メンバーそれぞれと折り合いをつけながら、組織全体を動かしていくことが大切です。

これは、実際にリーダーになったことがあると、採用試験などでアピールできるポイントになります。組織の長でなくても、3~5人の少数グループの班長やリーダーとして仕事をした経験があると、面接などで話しておいて損はありません。

・目標を落とし込む力

3つ目は、目標をメンバーが理解できるように落とし込む力です。これは、会社上部から降りてきた目標を、メンバーが実現できる形で指示する力です。

会社上部は、それぞれの現場に対して一斉に目標を通達します。これは、必然的に抽象的なものになります。例えば、「顧客満足度を上げるために故障復旧時間を10%短くする」というような目標を掲げてきます。

この目標を受けて、メンバーに「故障対応のときは10%速く動け」というような責任者は失格です。効果のある故障復旧時間の短縮には、下記のような手順が必要になります。

  1. 現状把握 : 故障種別と件数、故障復旧までの時間を調べる
  2. 改善する復旧作業の設定 : 件数が多く、故障復旧までの総時間が多い故障種別をピックアップする
  3. 改善方法の提案 : 改善する復旧作業の手順・経緯を洗い出し、時間短縮方法を提案する
  4. 提案の実施 : 実際に、3で提案した改善方法を実施する
  5. 改善度合いの検証 : 実施した結果、目標を達成できたかどうかを検証する

社会人経験の浅いメンバーが多い場合には、このような手順自体を知らないことがあります。また、ベテランが多くても、感覚的にできるだけの人もいます。それぞれの能力や得手不得手に見合った問題に小さくしてから、メンバーに割り振ることが大切です。

このようなメンバーに適切な指示と作業分担をして、目標達成することが責任者クラスの仕事です。

以上の3つのスキルが責任者クラスに求められるスキルです。ただし、採用面接で直接「リーダーシップがあることを示してください」というような問いかけはありません。私の経験では、「リーダーとして、プロジェクトなどを成功させた経験がありますか?」というような問いかけをされることが多いです。

このような質問に対して、上で述べた3つのスキルについて、あなたの経験を含めて明確に回答できれば、転職成功しやすくなります。

転職エージェントを活用して非公開求人を紹介してもらう

ここまで紹介してきたような求人は、どのようにして探せばよいでしょうか。転職サイトで、キーワードを入力するだけで、たくさんの優れた求人が見つかるのでしょうか。

実は、転職サイトで「電験」「ビル管」をキーワードにして探すだけでは、ヒットする求人は限られます。「電気主任技術者」「建築物環境衛生管理技術者」のキーワードも織り交ぜて検索する必要があります

下の表は、キーワードを変えて求人を検索した数をまとめたものです。

キーワード Aサイトのヒット数[件] Bサイトのヒット数[件]
「電験」「ビル管」 12 4
「電気主任技術者」「ビル管」 74 34
「電験」「建築物環境衛生管理技術者」 6 2
「電気主任技術者」「建築物環境衛生管理技術者」 92 22

求人を探すときには、このような工夫のほか、転職エージェントを有効に活用することで優れた求人に出会いやすくなります。

実は、あなたが転職サイトで検索できる求人が、転職サイトにある求人の全てではありません。転職エージェントを介してのみ知ることのできる非公開求人があります。

非公開求人は、下図のように全求人の8割ほどとされています。

この非公開求人の紹介を受けることで、優れた求人に出会いやすくなります

しかし、非公開求人の紹介の受け方にもコツがあります。口を空けて待っていただけで、転職エージェントが優れた求人を投げ入れてくれるわけではないのです。

それには、あなたの希望を明確に転職エージェントに伝える必要があります。今回なら「電験とビル管資格を持っているので、それらの資格が活かせるビルメンテナンス業の責任者クラスの求人を紹介してほしい」と伝えましょう。

そうすることによって、転職エージェントは希望に沿った求人を紹介しやすくなります。さらに、場合によっては企業側への打診をしてくれます。

私の転職活動の経験では、企業は求人票を出している人材以外にも人材を欲しがっていることがあります。例えば、以下のような場合です。

  • 責任者クラスと作業員クラスの求人を出したいけれど、予算の関係で作業員クラスの求人しか出せない
  • 責任者クラスの求人を出しても、採用したいような人材が応募してこないので求人を出さない

このようなケースはしばしばあります。そして求職者からは、企業に直接アプローチしない限り全くわかりません。求職者側からアプローチしたとき、「そういう人材がいるならほしい → 別途採用試験を実施する」というように話が進みます。

そこで、あなたから企業に対してアプローチする必要があります。これには直接企業に連絡してアプローチする方法があります。ほかにも、転職エージェントサービスを利用していれば、転職エージェントに代わりに企業へ打診してもらうこともできます

以上のような手続きを取ることで、優れた求人を探し出しやすくなります。

まとめ

電験(電気主任技術者)・ビル管(建築物環境衛生管理技術者)資格を活かして転職を目指すときは、ビルメンテナンス業の責任者クラスの求人が対象になります

ビルメンテナンス業の三種の神器と言われる資格を2つ持っているので、採用されやすいと言えます。また、責任者クラスの年収はビルメンテナンス業全体の平均と比べても十分に高いです。

ただし、電験・ビル管資格を歓迎条件として、作業員クラスの人材を募集している求人があります。これらの求人は、待遇も年収も低いので注意する必要があります。

また、責任者クラスの人材に求められるスキルは、資格や技術力以外に「メンバーに「させる力」」「リーダーシップ」などがあります。採用試験を通して、あなたの経験を交えてアピールすると転職成功に繋がりやすいです。

求人を探すときは、キーワードを網羅的に検索するとよいです。また、転職エージェントを使うことで、非公開求人の紹介を受けられ、優れた求人に出会いやすくなります

さらに、あなたの希望を明確にして伝え、希望する企業へのアプローチを行うことで転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。