食品メーカーや化学メーカーなどの工場では、様々な機械設備が稼働しています。また、形あるものではなく電力を作るプラントでも同様です。これらの産業機械は、私たちの暮らしになくてはならないものを影で支えています。

工場が稼働する限り、これらの機械設備を保全する仕事もなくなることはありません。では、機械設備保全とはどのような仕事なのでしょうか。

今回は、機械設備保全の仕事内容、求められる資格やスキル、実際の年収例などを解説します。

機械設備保全の仕事内容

現代産業において、機械設備は絶対に欠かすことのできない設備です。私たちが普段使うもの、食べるものの多くが工場で作られています。

まずは、どのような業界で機械設備保全の仕事があるのかについて説明します。

食品工場、化学メーカー、発電所で働く

例えば、口に入れるもので、生鮮食品以外は工場で加工されます。日用品や医薬品も工場で作られます。

下の写真は、缶に飲料を詰める機械です。中央の丸い部分の大きさが、直径3mくらいはある大きなものです。

また、素材も工場で作られます。鉄・紙・化学薬品など、これもたくさんあります。下の写真は、ある化学メーカーで主にアンモニアを作っている工場です。

右下に見える球体のタンクは、高さが7~8mあります。そのほか、パイプラインや各種装置は全て機械設備です。

そして、あまりイメージしにくいかもしれませんが、電気エネルギーを作る発電所も工場の一種です。

下は、LNG火力発電所の写真です。かつては、石炭や重油を燃やして電気を作っていたこともある発電所です。

発電所と聞くと、ほとんどが電気設備で構成されていると思えます。しかし、実際は機械設備が9割です。私も、転職して電力プラントに勤めるようになり、はじめて機械設備の多さに気がつきました。

具体的には、「燃料を燃やして蒸気を作るボイラー」「排煙中の有害物質を取り除く環境装置」「発電所内で使われる水を管理する給排水設備」「燃料をボイラーに投入するための燃料移送設備」などです。

これらの工場勤務の保全技術者は、機械メーカーの技術者と求められるものが違います。機械メーカーの技術者は、それぞれの機械のスペシャリストになることを求められます。

それに対して、保全の技術者は工場に数多ある機械の全ての管理をしなくてはならず、全てのスペシャリストになることは求められません

保全の機械技術者に求められることは、大きく2つあります。1つは、機械が壊れないように管理すること。もう1つは、予想外に壊れたときに、迅速に復旧することです。この「復旧」とは、必ずしも機械設備の故障復旧を意味しません。

これはどういうことかと言うと、上で述べたような工場を持つメーカーや会社の製品を考えるとわかります。これらの会社は、製品として機械設備を売っているわけではありません。機械設備を使って様々な製品を作って販売し、利益を得ています。

したがって、機械設備の一部が故障したとき、その故障箇所を修理しなくても、製品を作るのに支障なければ修理は後回しになります。

また、修理の手続きで生産を止めるよりも、多少支障があっても生産を続けたほうが最終的な生産高が大きいことがあります。例えば、夜間は生産を止めたり、当該の機械設備を近く停止する予定があったりする場合です。

このように機械設備保全の仕事は、純粋に機械的な技術を磨いていくのではなく、工場全体を俯瞰して、時には機械的な部分は妥協しながら最適解を探していく仕事です

したがって、目の前にあることに対応しつつも、広い視野で物事を考えることができる人が向いている人で、やりがいも十分に感じられます。反対に、目の前のことに集中しすぎる人は向いてない仕事です。

機械設備保全はきついのか

機械設備保全で故障を未然に防ぐ仕事の進め方の基本は、下図に示すような「検査」「分析・評価」「対策検討」「対策実施」のサイクルを回し続けることです。

機械設備が故障しなければ、応急復旧をすることはなく、このサイクルを淡々と回すことが主な業務です。したがって、故障がなければ、機械設備保全の仕事は極めて楽な仕事です。

しかし、設備が古かったり、天災や事故が続いたりすると、故障対応で何日も夜勤を続けるような激務になります。

私が鉄道会社で保全の仕事をしていたときは、半年間トラブルが続いたことがあります。さすがにそのときは、死んだ目をして「辞めたいな…」と何度考えたかわかりません。

もちろん、想定外の機械トラブルがなくなるわけではありません。しかし、それ以外は、至って平穏で、故障で2~3日全力で対応することがあっても、連続することはありませんでした。

設備保全の仕事は、このように忙しさにムラがあることを認識しておく必要があります。

機械保全への転職に活かせる資格やスキル

このような機械設備保全の仕事には、技能職と違って必須の資格は存在しません

例えば下図の、本社は東京にあり、生産拠点は各地にある三菱ケミカル株式会社の求人では、機械系学科の卒業が必須条件です。資格は、歓迎条件として挙げられているだけです。

ただし、このような未経験OKの求人は少なく、何らかの機械設備に関する経験を求める求人が多いです。例えば下図のような、JFEケミカル株式会社の求人です。この求人は、千葉県にある東日本製造所の技術職募集の求人です。

このように、機械保全の求人では、資格は必要なく経験を求める求人が多いです。

しかし、入社してから取得を求められたり、期待されたりする資格はあります。それは、「エネルギー管理士資格」「公害防止管理者資格」です。

下に、株式会社大阪ガスアンドパワーの求人票を示します。この会社は、大阪ガス株式会社の100%子会社で、電力自由化に先立ってガス需要から電力需要へのシフトを見越して設立された会社です。

この求人では、大卒以上の学歴と、プラントの設計・施工管理・保守・建設の経験を必須としているほか、各種資格を歓迎条件としています。

この会社は、LNG火力発電所を運営しており、火力発電所で機械系技術職ではエネルギー管理士資格・公害防止監理者資格の取得者が必須です。求人では「公害防止監理技術者」とありますが、下の写真のように「公害防止管理者」が正当です。

ちなみに火力発電所で求められる公害防止管理者資格の区分は、「大気」と「水質」です。「振動」「騒音」「ダイオキシン」などの区分では、あまり役に立ちませんので注意してください。

エネルギー管理士資格は、発電所だけでなくエネルギーを使う事業所では必ず資格者を置かなければならない資格です。この場合のエネルギーとは、電力会社から買う電力も対象です。

また、公害防止管理者資格も同様に、環境中に排気・排水・振動・騒音などを放出している工場では、必ず資格者を置かなければならない資格です。

このように、求人票の歓迎条件に挙げられている資格は、入社後取得を求められる可能性が高いです。

これらの資格は、工場ごとに資格者を複数人置かないといけないため、すでに資格を持っているなら歓迎されるでしょう。

資格は入社してから取得すべき

これらの資格は、いつ取得すべきでしょうか。私は、入社後に取得するのをおすすめします。例えば以下のような点が、その理由です。

  • 受験料や受験のための交通費・宿泊費を会社が負担してくれる
  • 資格取得一時金の支給がある
  • 給料に資格手当が上乗せされる
  • 社内に当該の資格取得者がいて、教わることができる

受験料補助など資格取得奨励制度は、多くの会社が実施しています。私の勤める電力プラントでは、下の写真のように研修費として一時金を支給してくれます。
これはエネルギー管理士資格を取得したときの給与支給明細書です

これらのメリットは、入社していないと享受することはできません

ほかにも転職を優先すべき、重要な点があります。それは「求人情報は、あなたが資格取得するまで掲載されているとは限らない」ということです。

先に挙げた「エネルギー管理士資格」と「公害防止管理者資格」は、年に一度しか試験実施されません。しかも、試験申し込みから合格発表まで、4~5ヶ月かかります。

しかも、どちらの資格も合格率は20%台であり、一発で合格するのはきついです。科目合格制度を利用して、2~3年で取得する人が多いです。

それに対して、求人情報は掲載期間が3ヶ月くらいまでのものが多いです。下の写真は、大手転職サイトの求人の掲載期間です。およそ1ヶ月半くらいであることがわかります。

したがって、あなたの目に止まった求人で歓迎されている資格を取得してから転職活動を始めても、資格を取得した頃にはすでに掲載されていない可能性が高いです。

さらに、中途採用の求人は、予定数が充足したら、そこで募集は終わります。つまり、掲載期間が残っていたとしても、採用自体がなくなってしまいます。

実際の採用試験では、当該の資格を持っていなくても、「今その資格取得に向けて勉強中である」「すでに申し込みを済ませており、今年中に合格するつもりだ」などとアピールすることは可能です。

このようなことから、あなたが気になる求人を見つけたら、すぐに転職活動を始めることが肝要です。

機械設備保全は協業であることを意識すべき

セメント工場で機械担当として勤める後輩にきいてみると、上記の資格以外に大切なこととして「人柄が大事だ」と、声を大きくして教えてくれました。

これは、工場の機械メンテナンスの多くが、社内外の他者と協力して行うものだからです。

あなたが勤めようとする工場の機械設備のほとんどは、機械メーカーからの買ったものです。また、その据付は、買った機械メーカーが行うこともあれば、工場に近い工事業者に頼むこともあります。

例えば、下の発電所では、この写真に見える設備のすべてが、機械メーカーや重電メーカーから買って据え付けたものです。機械メーカーであれば三菱重工業やIHI、重電メーカーであれば三菱電機や東芝などの機器がよく使われます。

このような工場などに勤めると、あなたは発注者として、受注者の機械メーカーの担当者や工事業者と接することになります。

下の図は、先にも紹介したJFEケミカル株式会社の求人の仕事内容の欄です。ここには、「協力会社や下請けに工事発注」とあります。

この会社の機械保全を担当すると、保全の基本である「検査」「分析・評価」「対策検討」までは自社で行いますが、残りの「対策実施」は他社に発注します。

「対策実施」を担当する受注者は、発注者に対してへりくだった態度で接してきます。発注者が無理難題を押し付けても、受注者は表向き文句も言わず仕事をしてくれます。

これは年齢に関係ありません。あなたが若く、受注者の担当者がベテランであっても、この関係は崩れません。

これをもって、「自分は偉い」と勘違いする人がいるのです。私が発注者の立場で仕事をしていたときに、よく「メーカーはお前に頭を下げているのではない。お前の椅子(ポスト)に頭を下げているのだ。勘違するな」と上長にいわれていました。

ここを勘違いして仕事を進めると、初めは受注者のメーカーや業者も笑顔でこたえてくれますが、そのうち四角四面の対応しかしてくれなくなります。

四角四面の対応で何が困るかというと、緊急時の応急復旧です。

緊急事態というのは、予定していないことです。つまり、人員を確保していないということです。したがって、どこかから応急復旧してくれる人を、かき集めて来なければなりません。

受注者は、一箇所のみの仕事を受けているわけではないので、そのしわ寄せは、ほかの仕事にいきます。緊急性の低い定例の仕事を一旦中断して、緊急性の高い仕事に人員を回すのです。受注者にとって、この手続きは余計な作業です。

仕事場の中で、いつも親切にしてくれる同僚と、いつも意地悪ばかりする同僚がいるとします。その同僚たちが、障害にあたって助けを求めてきたとき、あなたなら、どちらの同僚を助けたいと思いますか?

私は、いつも親切にしてくれる同僚しか助けたくありません。あなたも、きっと同じ考えではないでしょうか。会社同士の付き合いも同様です。いくら契約書で縛られているといっても、実際に動くのは感情のある人間です。

表向き動いてくれたとしても、嫌々仕事をした結果は、品質の低下として必ず現れます。そのつけは、受注者を泣かせた発注者に返ってくるのです。

メーカーでは工務・生産技術・生産管理部門が担当する

機械設備保全の仕事は、工場において「工務(工務部、工務課、工場工務など)」「生産技術職」「生産管理職」などと呼ばれるチームが行うことが多いです。

下の図は、広島県尾道市にある万田発酵株式会社の求人票です。

この会社では、食品として健康食品(サプリメント)を製造しているほか、化粧品や農業用資材(肥料)などを生産しています。この求人では、その生産管理職を募集しています。

生産管理職は、工場で生産が予定通りであることや改善されるためのあらゆる業務を担います。したがって、機械設備管理・メンテナンス以外にも、生産に携わる人員管理や生産計画なども対象になります。

「生産管理」「生産技術」という名称を使っている部署は、主にモノを作っているメーカーが多いです。 私の勤める電力プラントでは、単に「技術部」と呼んでいます。もちろん会社、工場の規模によって「部」や「課」の区分は変わります。

機械設備保全の求人を探すときには、これらのキーワードも含めて探すと良いです。

転職サイトで見る年収の実際

最後に、機械設備保全の求人の年収例を確認していきましょう。

以下に、ここまでで紹介した求人票の年収について記載がある部分を示します。上から順に、「三菱ケミカル株式会社」「JFEケミカル株式会社」「株式会社ガスアンドパワー」「万田発酵株式会社」の年収です。

JFEケミカル株式会社だけ、月給での提示です。ここから年収を推定します。

この記述と、賞与が年間4ヶ月、時間外手当などが年間2ヶ月分あると仮定して年収を計算してみると、約300~520万円になります。ただし下限は高卒新卒のものなので、転職の場合もう少し上積みされると考えられます。

したがって、提示年収額は「三菱ケミカル株式会社:400~700万円」「JFEケミカル株式会社:300~520万円」「株式会社ガスアンドパワー:540~840万円」「万田発酵株式会社:350~500万円」です。

これらの提示年収が妥当かどうかは、国税庁の統計調査を参考にするとわかりやすいです。「三菱ケミカル株式会社」「JFEケミカル株式会社」「万田発酵株式会社」は製造業、「株式会社ガスアンドパワー」は電気・ガス・水道業を参考にします。

下図は、製造業の給与所得者数の分布を示したグラフです。

引用:平成29年度民間給与実態調査(第8表)をグラフ化

製造業は、この統計から中央値は400~500万円、全体の6割が200~600万円であることが示されています。

これと比べて提示年収額は、三菱ケミカル株式会社の上限が700万円であり少し高めです。JFEケミカル株式会社と万田発酵株式会社は、平均的といえます。

次に示すのは、電気・ガス・水道業の給与所得者数のグラフです。

引用:平成29年度民間給与実態調査(第8表)をグラフ化

グラフからは少しわかりにくいものの、中央値は700~800万円にあります。これからすると、株式会社ガスアンドパワーの提示年収額は、少し下振れしているといえます。

しかし、同社の募集要件(再掲下図)を見ると、発電プラント経験の浅い人を育てようとしていると推測できることから、少し低めの年収を提示していると考えられます。これは、発電プラントでなくとも、プラント経験があればよいという緩い条件から伺い知れます。

そう考えると、将来的に年収の伸びしろが大きい求人と考えることができます。

このように、あなたが選んだ求人の年収が妥当かどうかを調べるには、国税庁などの給与・賃金統計調査を参考に判断すると良いです。

まとめ

工場などの機械保全の仕事は、食品や化学製品のメーカーや発電所など多くの会社で必要とされる仕事です。その仕事内容は、機械の技術を極めることではなく、工場全体を俯瞰して生産とのバランスを取りながら最適解を探すものです。

機械保全の仕事は、故障が連続すると、体力的にきつい場面もあります。これを、回避し続ける方法はありません。しかし、同じ工場に長く勤めるのであれば、相対的に仕事が辛い場面は減っていきます。

この機械設備保全へ就職するときは、特に必要な資格はありません。ただし、「エネルギー管理士資格」「公害防止管理者資格」は入社してから求められることもあり、転職時に歓迎条件になっているものもあります。

また、工場などでは大きい機械設備を扱っており、社内外の多くの人々が協力しあって成り立っています。自分一人では成し遂げられるものは無いので、請負の業者も含めて良好な協力関係のもとに仕事を進めることが重要です。

機械設備保全の求人は、転職サイトにもたくさんあります。探すときは、「工務」「生産技術」「生産管理」などのキーワードもあわせて探すと、求人をより見つけやすくなります。

求人の年収は、国税庁の統計調査などを参照することで、妥当性を判断することができます。これにより、転職での失敗を防ぐことができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。