あなたがこれまで電気設備管理の仕事をしてきて、苦労しながら電気主任技術者資格を取得したとしたら、ぜひ電気主任技術者に選任されたいと考えているのではないでしょうか。

しかしながら、社内で電気主任技術者に選任されようとしても順番待ちでなかなかあなたの番が回ってこないなら、転職は電気主任技術者に選任される有効な手段です。

とはいえ、企業側も電気主任技術者に選任するなら選任経験のある資格者を採用したいと考えています。電気主任技術者の職務は、大きな権限と責任をともなうため、これは自然な考え方です。

したがって、選任経験のないあなたが電気主任技術者として選任される求人で転職成功するには、的確な情報収集と工夫が必要です。

ここでは、電気主任技術者に選任される求人の実例、電気保安協会への転職の考え方、20代30代が電気主任技術者として採用されるアピール方法、避けるべき求人と見分け方について詳述します。

未経験OKで電気主任技術者選任の求人は数が少ない

今まで電気主任技術者として選任された経験がなく、転職して新しく電気主任技術者に選任される求人はあるのでしょうか? 実は、このような求人は少ないです。

転職サイトを探せば数は少ないものの、下図のような求人に出会えることがあります。下図は、富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社の求人です。

同社は複合機大手の富士ゼロックス社の唯一の生産子会社として本社のある神奈川県のほか三重県・富山県に事業所を構えています。この求人では、三重県鈴鹿市の事業所で電気主任技術者としてファシリティ(工場設備)を担当します。

また、下図は同じ求人の求める方の欄です。必須条件として、第二種電気主任技術者の資格を挙げているほかは、電気主任技術者としての経験を求めていません。したがって実務経験なしでも応募できる求人案件です。

このような求人で、公開されている求人はわずかです。類似の求人を探すときには、根気よく探し続けることが必要です。

20代30代の若年層は管理経験の有無がキー

さらに求人に応募して転職を成功するためには、戦略が必要です。30代以下の若くして電気主任技術者に選任されたいと考えるならば、管理経験の有無が重要なポイントです。これは、電気主任技術者の職務が、複数の技術者を指導監督する立場で行うものとされているからです。

電気保安は、事業者の責任で設備や保全を管理していくことが求められます。詳細の管理方法について、国や行政は指示・指導することはありません。その代わり、設備事故や労災事故を起こしたときには、行政処分など事業者の管理責任を厳しく問われます。この事業者側の技術的なトップが電気主任技術者です。

つまり、電気保安設備を持つ事業所内の以下に挙げることについて、責任者として職務を行うことになります。

  • 電気設備の工事・維持・運用の具体的方法について規定し、遵守させる
  • 保安教育を実施し、電気設備が適切に工事・維持・運用されることを担保する
  • 災害に社員がどのように対応するか具体的に規定し、遵守させる
  • 保安業務(教育含む)の記録する具体的方法を規定して、実施する。
  • 緊急時を含む連絡体制を確立し、運用させる。

見てわかるように、あなたが「すること」ではなく、あなたが「だれかにさせること」があります。項目としては3項目ほどですが、実際の仕事の比率でいうと8割くらいが「だれかにさせること」が職務内容です。

また、規定を定めたり、規定を守らせたりすることが職務内容にあります。つまり、電気主任技術者はそれなりの上位職にある人が選任される前提にあります。

事実として、私が以前勤めていた鉄道会社では課長(100人規模の組織の長)以上が電気主任技術者に選任されていました。今勤めている電力プラントでは、技術部のNo.2(職名がないので副部長級)が電気主任技術者に選任されています。

さらに、下図は経済産業省の出先機関である関東東北産業保安監督部東北支部が公開している保安規程例のうち組織図の一部です。この図ではどこかの工場を想定して作られているものです。行政の想定でも、電気主任技術者には課長、代務者として係長が想定されています。

これを見ても、組織を動かすために権限を与えられている人が電気主任技術者に選任されていることがわかります。

このような上位職に就くには、ある程度の経験が求められます。40代以上の場合、マネジメントの経験は少なからずあるものです。しかし20代30代の若年層では、マネジメント経験がまったくないことも珍しくありません。

したがって、20代30代の場合、「数名~数十名のグループの長の経験がある」「(職名はないが)グループリーダーとして職務を行い、なんからの成果を残した」というエピソードや実績を整理しておきましょう

例えば私なら、平社員だったものの4人のグループのリーダーとして業務研究発表を行い全国大会まで行った経験があるので、以下のようなアピールをします。

私は、4人グループでの業務研究発表においてリーダーを務めた経験があります。

このとき、メンバー全員が内容について熟知していたので、論文担当とプレゼンテーション担当に明確に作業を分担しました。勤務の都合上4人が一同に会すのが月に数日しかなく、進捗の管理と作業品質の確認に苦労しました。

リーダーとして留意したのは、「メンバーの担当分を小さく区切ることでスケジュール管理しやすくしたこと」「進捗管理表を共有したこと」の2点です。そのほか細やかな声掛けをして、作業が一人に偏らないように注意しました。

そのお陰で、少ない時間の中、適切にまとめることができ、支社大会・全社大会を勝ち抜き、全国大会で4位の成績を上げることができました。

このようなアピールができると、先方企業に対する説得力が増します。重要なのは、結果ではなくプロセスです。リーダーとして何を考え、どのように問題解決したかを伝えると良いです。

太陽光発電など再生可能エネルギー事業者の選任求人は注意が必要

たまに「電気主任技術者に選任されても、仕事は選任前と変わらず権限もなく、責任が増しただけ」というグチを聞くことがあります。これは、明らかに電気主任技術者の職務を経営者が理解していない職場であり、転職するならこのような職場は絶対に避けなくてはなりません。

電気主任技術者の職務を行うには権限があって当然です。権限もなく、電気主任技術者に選任されたとしても、まともに電気設備保安を実践できません。したがって、事故を起こしやすい状況にあります。

そして、事故が起きたときには電気主任技術者として責任を追求されます。場合によっては、電気主任技術者資格を剥奪されます。このような事態は、あってはならないことです。この危ない職場の見破り方は、のちほどくわしく書きます。

電気主任技術者に選任される求人のうち、年齢に関係なく多く出回っているのが太陽光発電など再生可能エネルギーの案件です。例えば、以下の株式会社一条工務店の求人が該当します。

一条工務店は、本社を東京と静岡に置く全国規模のハウスメーカーです。この求人では、同社の宮城県にあるメガソーラー発電所で電気主任技術者として募集されています。前項で説明した電気主任技術者として管理監督する職務が記載されているのがわかります。

また、この求人の求める方の欄を見ると、第二種電気主任技術者資格以外は求めていません。実務経験なしでも問題なく応募できる求人です。

このような発電所には、第三種電気主任技術者、または第二種電気主任技術者を選任する必要があります。ところが、東日本大震災後の再生可能エネルギー振興政策により発電所が次々に建設され、電気主任技術者有資格者の需要が急に増えました。

あなたも、下の写真のように空き地があれば太陽光発電所や風力発電所が建てられているのを見たことがあると思います。

再生可能エネルギーの発電事業者としては、ともかく「電気主任技術者の有資格者がほしい」「名前だけでも資格者がほしい」という状況があります。そして、事業者として電気主任技術者の職務内容を熟知しているとは考えにくい求人が出ています。このような求人には注意が必要です。

例えば社名は伏せますが、下図のような求人です。この求人では、第三種電気主任技術者資格が必須とされており、同社の風力発電所の電気主任技術者に選任されると考えられます。

しかしながら下図の業務内容を見ると、ここまで解説してきた電気主任技術者としての職務が記載されていません。先に紹介した富士ゼロックスマニュファクチュアリング社や一条工務店社とは、明らかに記述に温度差があることがわかります。

 

このような求人で転職すると、主任技術者としての責任のみ押し付けられ、まともな職務遂行ができない恐れがあります

これは私の体験談ですが、はんこを押印する行為について、バックグラウンドで意味が全く違い大変苦労したことがあります。

電気設備保安の現場では、記録書に「確認」の意味で気軽に押印します。しかし、営業や経理がバックグラウンドの人間は押印を「契約行為」と同様に考えてなかなかはんこを押しません。

以下は、月次の電気設備巡視点検表の例です。あなたも設備管理経験があれば、似たような点検表を使っていると思います。

上長がこの検印を押すのに、「1回押すのに1回の稟議書を書け」と言われたら仕事が回らなくなるのが想像できると思います。発電事業者の社内の上層部が営業上がりばかりだと、そのような苦労をする可能性があります。

先に書いたように保安業務の記録に係る権限は電気主任技術者にあるため、そのほかの社員は従う義務があります。ところが、新しくできた太陽光発電所のような新しく電気事業に参入してきた事業者の中には、この電気主任技術者の職務を理解してなく、社内でもめる原因となります。

このようなトラブルを防ぐには、転職活動の際に注意して十分に対策を打っておくことが重要です。

電気主任技術者の職務と権限について面接で確認すること

では、どのような対策を打てばよいのでしょうか。それは、面接時に直接先方企業に聞くことです。具体的には、下記内容についてあなたが納得行くまで質問しましょう。

・配属される事業所で、電気設備保安に携わる社員数と電気主任技術者の職位について

→電気設備の規模に対して十分な社員数が確保されていることと、電気主任技術者が職務を遂行できる権限が与えられていることを確認しましょう。

・保安規程および下位規定の決裁権限について

→まずは整理・制定されていることを確認しましょう。整理されていない職場は、あなたが新規に整理・制定する可能性があり、大変な力が必要です。

保安規程は本社本部、下位規定(マニュアル)は事業所単位で定めてあれば、職務に障ることは少ないです。あとは、マニュアルを含む規程類の制定・改訂にどのような手続きを踏むのか、そこで電気主任技術者はどのような位置づけにあるのか確認してください。

これらの質問を通して、先方企業の電気保安に関する認知度を測るとよいです。あまりに理解されていないようであれば、電気主任技術者として重宝されるわけではなく、都合の良いように使われるのが目に見えているので、いくら条件が良くても避けたほうが無難です。

電気主任技術者の選任求人は、特に再生可能エネルギーの案件について、このような手続きを踏むことで転職失敗を防ぐことができます。

電気保安協会の求人は選任経験はいらない

厳密に言うと電気主任技術者に選任される求人ではありませんが、電気保安法人である電気保安協会に転職するのであれば、選任経験がなくても転職できます。下に、北海道電気保安協会の求人票の資格要件の欄を示します。

この欄には電気主任技術者資格のほか、「実務経歴」が記載されています。この実務経験とは、「電気主任技術者として選任されて働いた経歴」のことではありません。これは、「電気主任技術者資格を取得してから、電気保安設備を検査・点検する業務を行った経歴」のことです。

したがって、あなたがかつて勤めた会社や今勤めている会社で、電気主任技術者の監督のもとに電気保安業務を行っていれば十分な経歴になります。

ただし、保安協会が求人で求める実務経験には注意点があります。それは、実務経歴証明書を提出する必要があるということです。

実務経歴証明書は、経済産業省(各地方産業保安監督部)に提出する必要がある書類です。この証明書で実務を証明するのは、あなたが実務を積んだ会社の決済者です。この決済のハードルが高いことが多いです。

私が過去資格取得のために、以前勤めていた鉄道会社に実務経験を証明してもらう手続きを取ったときのことを例に出します。鉄道会社を辞めて、石川県から福岡県に引っ越したあとだったので、事務手続きのほか書類の郵送などに時間がかかりました。

そのときは、鉄道会社の中で稟議持ち回りがあったそうで、元上司の手もわずらわせました。元上司のはからいで比較的スムーズに実務証明手続きを終えることができたとは言え、下の写真のような実務証明書の印鑑をもらうだけで1ヶ月くらいはかかったのです。

私は、この上司と良い関係でいた上、鉄道会社の中で実務証明をする前例があったので、揉めることもなく手続きできました。これが、上司とケンカをしてやめていたらどうなっていたでしょうか?

なお、私が今勤めている電力プラントの上長は、「辞めたあとの実務証明はしない」とはっきり言っています。。会社によっては、会社をやめた人間を裏切り者のように捉える会社もあります。そのような会社では、退職後に実務証明をもらうことが困難です。

したがって、保安協会に転職を考えるときは、在職中に実務証明をもらう手はずを済ませてから、もしくは実務証明をもらってから退職することが重要です。

しかし、理由もなく実務証明をもらおうと思っても転職を疑われることになります。電験3種や電験2種を持っている場合は、上位の資格を認定取得するために必要だとして実務証明をもらうことも考えましょう。

電気保安協会には、50代60代でも転職者はいる

なお、電気保安協会には50代や60代で転職する人も相当数います。そして、70歳まで嘱託社員として働き続ける人もいます。それは、電気保安協会の求人にも記載されていることもあります。

下図の一般財団法人関東電気保安協会の求人では、全社員1500人中60代社員が300名ほどとされています。また、70歳まで働けることが記載されています。またこの求人票は神奈川での募集ですが、埼玉・千葉など関東電気保安協会の管内なら同様の求人が出ています。

電気保安協会に50代60代のシニア層が多いのは、早期退職や定年退職したあとの就職先として保安協会を選ぶからということがあります。早期退職や定年退職で会社を去る場合は裏切りではありません。

したがって、会社もできるだけの温情をもって対処してくれることが多いです。つまり、先述のような実務証明をもらうことが比較的容易です。

私が勤めていた鉄道会社を定年退職した人の中には、電験三種を持って保安協会に再就職した先輩がいます。この場合は、在職中に実務証明を作っておいたということでした。

このように、電気保安協会はあまり年齢を気にすることなく応募できます。さらに、電気主任技術者としての経験ではなく、電気保安の実務経験を証明する必要があることに注意すれば、40代以下の若年層でも応募しやすい業種です。

まとめ

ここまで説明してきたように、電気主任技術者に選任される求人で選任経験がなくてもOKの求人は少数ながらあります。しかし数が少ないので、根気よく探す必要があります。

30代以下の若年層が電気主任技術者に選任されようとして転職を考えるなら、マネジメント経験をアピールすることが重要です。電気主任技術者には基本的な職務としてマネジメント能力を問われることが多いからです。

なお、マネジメント能力が不必要だと謳う、もしくは匂わせる電気主任技術者選任の求人案件は避けるべきです。

もちろん求人票だけで判断することはできません。そこで、面接を受けたときに電気主任技術者の職務・職位や、入社後に与えられる権限について詳細に確認してください。もし、納得できないならば転職を決めるべきではありません。

また、電気保安協会の求人は50代60代でも転職可能であり、門戸が広いです。ただし、設備管理に携わってきた実務証明が必要です。特にあなたが40代以下の若い場合、保安協会への転職成功には退職前に計画的に実務証明をもらう工夫が不可欠です。

以上のように、電気主任技術者に選任される求人を探すときには、職務と権限についてしっかり確認することが必要です。さらに、電気保安協会を選択肢にするなら事前準備が転職の成否を分けます。これらに十分留意しておくことで転職失敗を極限まで防ぐことができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。