電気系技術者が取得を目指す資格の中で、エネルギー管理士(エネ管)資格と電気主任技術者(電験)資格は人気・難易度ともに高い資格です。社会的に重要な役割に就くことのできる資格だけに、企業からの引き合いも強いです。あなたは両方の資格を手に入れ、どのように有利に転職活動を進めようか考えているのではないでしょうか。

これら2つの資格は、並べて評価されることの多い資格です。しかし、活躍できる場面・企業は同じではありません。このことを理解せずして転職活動しても、なかなかうまくすすめることは難しいです。転職を成功させるには、正しい知識と求人を出す企業の研究が重要です。

ここでは、エネルギー管理士・電気主任技術者の両資格がどのように扱われ、企業から求められているのかを知り、アピールできる業種・企業の特徴を解説します。また、最後には2つの資格者が活躍しやすい業界の年収についても詳述します。

エネ管・電験の両方を条件に挙げている求人は少ない

最初に、エネルギー管理士資格と電気主任技術者資格を必須・歓迎条件として挙げている求人数を確認しましょう。どれだけの求人があるのでしょうか。

大手転職サイトのdodaを使って、検索キーワード「エネルギー管理士」「電気主任技術者」が「経験・スキル」に含まれている求人を探しました。その結果、下図のように「エネルギー管理士」単独が含まれる求人数は250、「電気主任技術者」単独が含まれる求人数は793、両方が含まれる求人数は136ありました。

エネルギー管理士の有資格者を求める求人は、電気主任技術者の有資格者を求める求人の3分の1程度であることがわかります。そして、どちらの資格も求める求人は、エネルギー管理士の有資格を求める求人のおよそ半分の数です。

このように資格によって求人数に差が出るのは、エネ管と電験の活躍できる場所が違うからです。

電気主任技術者資格は、高圧以上の電気設備があれば業種・規模に関係なく必要です。しかし、エネルギー管理士資格が絶対に必要なのは製造業など5業種の一定規模以上の事業所に限られます

例えば、下の写真のような電鉄用変電所を設置すれば、第一種電気主任技術者の有資格者を選任する義務が事業者にはあります。しかし、鉄道事業者は製造業ではないためエネルギー管理士の有資格者は必須ではありません。

また、電験は電気技術者の実力認定試験として認知される一方、エネ管試験は実力認定試験としての意味は薄いです。

さらにエネルギー管理士資格は、講習を受けたのち修了試験に合格することで取得できます。この難易度が比較的低いため、電気主任技術者資格ほど企業が渇望しません。したがって、採用する側の企業も積極的に求人に「エネルギー管理士募集」とは謳っていないのが現状です。

現状多い求人は、エネルギー管理(省エネ実践)の業務を中心的に行うために、エネルギー管理士資格を持った人がほしいという求人です。例えば以下のような求人です。

この求人は、大阪府寝屋川市に事業所を構える倉敷紡績株式会社の求人です。電気主任技術者に選任される内容で求人がかかっていますが、「省エネ提案」などエネルギー管理士に求められる仕事も業務内容に記載があります。

そして次に示す求める方の欄には、「電気設備などの維持管理(電気主任技術者に求められる仕事)」のほか「省エネ提案など(エネルギー管理士に求められる仕事)」のどちらかが必須であると謳われています。さらに、歓迎条件として「第三種電気主任技術者」「エネルギー管理士」の2つの資格が挙げられています。

エネ管・電験の両方を求人で活かしたいときは、まずはこのような省エネが業務内容にある求人に応募することから始めましょう。

製造業・ビルメンテナンス業の求人が多い

では、エネルギー管理士と電気主任技術者の両資格を求めているのはどのような会社でしょうか。具体的には、製造業、ビルメンテナンス業などが挙げられます

製造業の求人は、例えば以下のキヤノン株式会社のような求人です。この求人では、工場など建物の電気設備管理をする技術者を募集しています。その歓迎条件として電気主任技術者・エネルギー管理士の資格を持っていることを挙げています。

製造業は、大規模になると第一種特定事業者としてエネルギー管理士資格を持った人をエネルギー管理者に選任する必要があります。現代ではモノを製造するのに、エネルギーとして電気を使うことがほとんどで、規模が大きくなるほど電気主任技術者を選任する必要も出てきます。

さらに、ほかの業種に比べて製造業は企業数も事業所数も多いです。その分、エネルギー管理士や電気主任技術者の有資格者を求める求人も出やすいといえます。

製造業のほかにビルメンテナンス業でもエネ管と電験の両資格を求める求人が出やすいです。例えば、以下のエス・シー・ビルサービス株式会社の求人が該当します。この募集では、東京都千代田区・中央区の物件で働く社員を募集しており、第二種・第三種電気主任技術者、エネルギー管理士資格が活かせる資格として示されています。

ビルメンテナンス業では、三種の神器と呼ばれる資格があります。それは「エネルギー管理士」「第三種電気主任技術者(電験三種))」「建築物環境衛生管理技術者(ビル管)」資格です。

ビルメンテナンス業が対象にする、商業ビルなどではエネルギー管理員の選任が必要です。エネルギー管理員の選任要件に、エネルギー管理士の有資格者であることが挙げられています。また、施設内の電源として高圧以上で受電することが標準的であり、電験3種以上の有資格者を選任する必要もあります

このため、これら2つの資格者の出番が多いです。これが「神器」と呼ばれる理由です。

なお、建築物環境衛生管理技術者(ビル管)資格もビルメンテナンス業では選任義務のある重要な資格です。しかし「電気」の資格ではないので、ここでの説明は省きます。ビルメンテナンス業に携わることになったら必要な資格、とだけ覚えておくと良いです。

ちなみに、友人がエネ管と電験の両方を持って転職活動をしたことがあります。転職フェアなどで直接企業と話すと、この2つの資格を持っていると引き合いが大変強かったと言っていました。求人条件に資格を挙げていない会社でも同様だったということです。それだけ、企業が求める資格だといえます。

このように、エネ管と電験の両資格を求めている企業は製造業とビルメンテナンス業を中心に求人を出しています。製造業とビルメンテナンス業に狙いを定めて転職活動を行うと、転職成功しやすいです。

エネルギー管理士が条件になくてもアピールで有利になる求人

エネ管と電験の両資格を活用した転職活動には、一点注意事項があります。それは、求人票に記載がなくてもエネルギー管理士の有資格者を求めている場合があることです。例えば、私が今勤めている電力プラントがそうです。

下図は、私が採用試験を受けたときに公示されていた我が社の求人票の資格欄です。エネ管に関する記載はないのがわかります。

求人票に、エネルギー管理士資格に関する記載はなく、面接でもエネ管資格に関することは一切聞かれませんでした。

しかしながら、勤めている電力プラントはエネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)で定める「第一種特定事業者」に該当しています。つまり、エネルギー管理士を複数名(2名)選任する必要があります。私は、入社してからエネルギー管理士資格が必要だということを告げられました。

なぜ、このように事業に必要なのに求人票に情報を記載しないのでしょうか。それは、社内に資格者が十分在籍しているからです。我が社の場合は、私が入社したときエネルギー管理士の有資格者が4人いました。一方電験二種の資格者は1人しかいませんでした。

言い換えると、我が社の場合、私が入社する前はすでに働いている電験二種資格者が退職することになると事業を行うことができません。しかし、エネルギー管理士は4人のうち2人は退職しても事業継続することができます。電験資格者のほうが逼迫していたのです。

このような事態は、しばしば起こります。これは、エネルギー管理士が俗に電験2.5種と呼ばれ電験1種や電験2種より難易度が低く、さらに講習で取得できるからです。

以上を踏まえると、電気主任技術者の有資格者のみを求めている求人でも、省エネ法の「特定事業者」に該当していればエネルギー管理士資格が有効にアピールできます。例えば、下の日鉄製鋼株式会社の求人が該当します。

日鉄精鋼社は、求人票では電気主任技術者の有資格者しか求めていません。しかし、大阪府にある堺工場が省エネ法で定める第一種指定工場であり、この会社は第一種特定事業者です。つまり、エネルギー管理士有資格者を採用して困ることはありません。

しかも日鉄精鋼社の場合は、業務内容に「エネルギー管理」があると謳われています。下が求人票の該当部分です。

したがって、日鉄精鋼社の採用試験を受けるときには、あなたがエネルギー管理士資格も取得していることは大いにアピールできます。類似の会社の採用試験を受けるときも同様です。求人票にエネルギー管理の記載がないかよく見ておくと良いです。

もちろん、年収・待遇などで必ずしも有利に働くとは限りません。しかし、転職エージェントを通してエネルギー管理士資格を持っていることを伝えてみたり、面接で直接エネルギー管理士有資格者であることを伝えてみたりすることで反応を伺うことができます。反応が良ければ、年収交渉をしてみると良いです。

このようなエネルギー管理士有資格者が必要な会社を、求人票だけから判断するのは大変です。そこで、経済産業省資源エネルギー庁が、省エネ法に基づく「特定事業者」「第一種指定工場等」を一覧として公開しています。企業を探すときの参考にすると良いです。

エネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づく特定事業者等指定状況

企業の反応は、あなたが実際に転職活動を始めてみないことにはわかりません。転職活動を行い、企業の実際の出方を知り、随時対処していくことは転職成功の必須事項です。

平均年収から転職成功する業種を知る

最後に、年収について解説します。

冒頭に紹介した倉敷紡績社の年収は、以下のように求人票に350~700万円と記載されています。

倉敷紡績社のほか、ここで紹介した企業の年収は下表のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 業種
倉敷紡績(株) 350~700 製造業(繊維)
キヤノン(株) 440~ 製造業(電子機器)
エス・シー・ビルサービス(株) 300 ビルメンテナンス業
日鉄精鋼(株) 350~500 製造業(鉄鋼)

この表によると、年収のボリュームゾーンは350~500万円といえます。

しかし、年収を考える上で注意しておかなければならない点があります。実は、エネ管と電験が直接活かせる職種は設備管理で、設備管理職の年収は業種によって大きく違います

年収を上げたいのに、今あなたが勤める業種より低い平均年収の業種を受けると転職成功する可能性は低くなります。業種を変えることを視野に入れると、年収アップは実現しやすくなります

では、実際に業種ごとの年収はどのようになっているのでしょうか。先に紹介した、製造業とビルメンテナンス業について平均年収のグラフを下のグラフに示します。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

このグラフからわかるように、製造業の中でも石油石炭製品、化学製品、情報通信機械器具製品を製造している業種は平均年収が高いです。一方、製造業のうち食品や繊維製品、ビルメンテナンス業は平均年収が低いです。

あなたが今勤めている会社の業種を確認した上で、それよりも平均年収の高い業種の企業を受けることで年収アップを実現しやすくなります。その際、設備管理職募集の求人であれば、基本的な仕事内容は同じなので違和感を覚えることは少ないです。

まとめ

ここまで解説したように、電気主任技術者とエネルギー管理士の2つの資格を求める求人はあります。2つとも法的に重要な資格なので、企業から歓迎されアピールもできます。

エネ管と電験の両方の有資格を求めることが多いのは、製造業とビルメンテナンス業です。どちらの業界も高圧以上の電力を使うことが多く、省エネに関して意識の高い業界です。転職活動では、この2つの業界を中心に探していくことになります。

これらの業種で、2つの資格を持っていれば設備管理職として業務をします。設備管理の仕事は、業種が変わっても設備さえ覚えてしまえば違和感なく仕事をすることができます。

ただし、一点注意事項があります。エネルギー管理士の業務内容があるにも関わらず、有資格者を求めていない求人があるということです。求人票に「省エネ提案」「エネルギー管理」などの記載があると、エネルギー管理士資格を持っていると評価される可能性が高いです。このような求人を見つけたときは、あなたがエネルギー管理士を取得していることを積極的にアピールすると良いです。

エネ管・電験の資格者の年収は、入社時350~500万円と示されていることが多いです。しかしながら、業種によってばらつきが大きく、平均年収の高い業種を狙って転職活動をすることで年収アップしやすくなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。