製造業は身近に感じられる業種です。また、ものづくりを通してやりがいや達成感を感じやすく、あなたも転職先の候補として検討しているのではないでしょうか。

さらに、我が国の産業の2割を製造業が占めており、非常に大きな市場を持っています。製造業において生産拠点の自動化・機械化に電気関係の技術は必須で、電気エンジニアが活躍できる場面はたくさんあります

しかし、あまりに業種が広範にわたるため、求められる経験・スキルや年収などが様々です。製造業におけるこの状況を把握して転職活動をしないと、あなたの能力がオーバースペックで仕事の達成感が感じられなかったり、年収が低すぎて満足できなかったりします。

ここでは、そのようなミスマッチを防ぐために、「製造業に含まれる業界と年収」「求められる経験・スキル・資格と求人例」「転職エージェント活用法」を詳述します。

電気技術者が求められる製造業を知る

あなたは製造業と聞いて、どのような会社を思い浮かべますか? 愛知県在住なら自動車関連の工場を思うかべるかもしれません。富山県在住なら製薬・化学製品でしょうか。私の住む福岡県北九州市では産業機械が思い浮かびます。

このように製造業と一言で言ってもたくさんの業界があります。まずは、どのような業界が製造業に含まれるのか整理しておきましょう。

総務省が定めている「日本標準産業分類」によると、製造業には以下の24業種があります。

  1. 食料品製造業
  2. 飲料・たばこ・飼料製造業
  3. 繊維工業
  4. 木材・木製品製造業(家具を除く)
  5. 家具・装備品製造業
  6. パルプ・紙・紙加工品製造業
  7. 印刷・同関連業
  8. 化学工業(医薬・化粧品含む)
  9. 石油製品・石炭製品製造業
  10. プラスチック製品製造業
  11. ゴム製品製造業
  12. なめし革・同製品・毛皮製造業
  13. 窯業・土石製品製造業
  14. 鉄鋼業
  15. 非鉄金属製造業
  16. 金属製品製造業
  17. はん用機械器具製造業
  18. 生産用機械器具製造業
  19. 業務用機械器具製造業
  20. 電子部品・デバイス・電子回路製造業
  21. 電気機械器具製造業
  22. 情報通信機械器具製造業
  23. 輸送用機械器具製造業
  24. その他の製造業(玩具・楽器など)

あらためて整理してみると、意外な業種もあったのではないでしょうか。ではこれらの業種で、電気エンジニアの仕事はあるのでしょうか。

実は、どの業界であっても電気を使って仕事をしていれば、電気エンジニアは求められる可能性があります。企業の商品を機械で大量生産しているなら、まず間違いなく動力は電気です。電気を使った生産である限り電気エンジニアが働く場所はあるのです。

実例を見ながら確認してみましょう。まず食品業界を例に出して説明します。下の写真は、明太子メーカーの工場の様子です。

明太子を整形して箱詰めしている作業の様子ですが、ほとんど手作業であることがわかります。このような会社で電気エンジニアが活躍できる場所はありません。

工場を見学したときに確認すると、「会社内に機械はあるが、電気系統を含むメンテナンスを外部に委託しており社内に電気系エンジニアはいない」ということでした。

次に、飲料メーカーの生産ラインの写真を示します。

先程の明太子製造と打って変わって、生産ラインに人が全く見えません。完全にオートメーション化されているのです。

このような会社では、電気エンジニアが生産ラインや受電設備を保全する仕事があります。これも社員の人に確認すると、「電気系社員が機器を監視しており、故障時などは対応する」と教えてくれました。

このように、電気を使う製品を売っているメーカーでなくても、電気エンジニアが活躍できる会社はあります

また、製品に電気を使っている生産用機械器具や業務用機械器具メーカーなどでも、当然のように電気エンジニアの仕事はあります。

以上のように、製造業で電気エンジニアとして働くときは、幅広い業種が対象になることを理解しておきましょう。

製造業の年収

電気技術者として製造業で働くときは、幅広い業種が選択肢になることはわかりました。では、どのように業種を絞り込めばよいでしょうか。その一つは年収でしょう。

年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査という統計調査で業種ごとの賃金が公開されています。以下は統計調査からグラフを作成したものです。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

このグラフには、参考までに平成29年のサラリーマンの平均年収である約500万円の線を朱色で示しています。グラフと線のデータの引用年度が違うのは、グラフが厚生労働省、サラリーマンの平均年収が国税庁の統計だからです。発表時期が違うので1年の差が出ています。

グラフからわかるのは、石油石炭・化学・鉄鋼・非鉄金属などのエネルギー・材料系メーカーと情報・輸送・生産機械器具メーカーが高年収であることです。前項で示した食品業界は年収は安いので、年収アップを狙った転職にはおすすめできません。

また、製造業全体の年収分布はしたのグラフに示すとおりです。

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

これによると、中央値は400~500万円であり、木材・木製品、食料品、繊維、革・毛皮業界の年収の低さがよくわかります

食品メーカーの年収が低いのは、私も実感しています。食品メーカーも転職の選択肢になるか、転職フェアにいって食品メーカーの方と話したことがあります。

ここで電気技術者であるとことを伝えて、設備管理の仕事はあるのかと聞きました。すると、たしかに設備管理の仕事はあるし、技術者を工場に一人は置きたいということでした。

しかし提示された年収は、35歳で200万円台でした。現状の電力プラント勤務で私の年収は600万円を超えています。それでも、業界を変えると年収が半分以下になることを理解しておく必要があります。

このように、転職する業種を選ばないと給料面で納得できる額を手に入れることはできません。高年収を求めるなら、自分のスキルと相談しながら、できるだけグラフの左側の業種を選ぶと年収アップを狙いやすくなります

求められる経験・スキル・資格

では、製造業に転職するときに求められる経験・スキル・資格はどのようなものがあるのでしょうか。これを的確に捉えて業種を選ぶことで、転職成功しやすくなります。

どの業種にも通用するもの

最初にどの業種にも通用する経験などを紹介します。これは、「設備管理」に関わるものが該当します。設備管理とは、設備が故障しないように適切に状態を監視し、必要なら取り替えていく仕事です。設備保全、設備保守とも呼ばれます。また、工場では工務と呼ばれることもあります。

先に紹介したように、どの製造業でも大量生産していれば、生産機械やそれを動かすための電気設備があります。それを保守する設備管理の仕事は必ずあります。実例を2件紹介します。

最初の求人は、コンビニなどで販売される弁当を作っているフジフーズ株式会社です。この求人は千葉県習志野市の工場から出されたものですが、船橋市や神奈川県の工場から出された求人もありました。製造機械のメンテナンスと記載があり機械色の強い仕事とはいえ、歓迎資格に第二種電気工事士資格が挙げられていて電気屋が十分活躍できる仕事です。

次に紹介するのは、岐阜県にある医薬品や健康食品のメーカーであるアピ株式会社の求人です。電気系設備保全の経験が必須で、歓迎条件として電気主任技術者資格が挙げられています。

求人例にも挙げられているように、設備管理の仕事をするのに重宝される資格は電気主任技術者資格です。また、実際に自社社員で電気配線を変えたり、新設したりすることがあれば、電気工事士も求められることがあります。第1種電気工事士でも第2種電気工事士でも問題ありません。

これらの資格を持っていれば、転職しやすいのは間違いありません。しかしながら経験・スキルとして、設備管理の経験があるだけでも転職は可能です。

電気設備保全の仕事内容については、下記の記事で詳述していますので参考にしてください。

生産技術は会社により範囲が違うので注意

設備管理に類似した職種で、生産技術職があります。生産技術の仕事は「製品の品質や量が計画通りに作られるように、製造設備を設計・維持・管理する仕事」です。例えば、以下のような求人が該当します。

下図は、自動車用ヘッドランプのほか航空機部品などを手掛ける株式会社小糸製作所の求人です。この求人では、同社静岡工場勤務の生産技術エンジニアを募集しています。

求人票には、生産ラインを開発していく業務が記載されています。この業務には、従事するために必要な資格はありません。したがって、下図のように必要資格の記載はなく、経験・スキルのみ記載されています。

しかし生産技術には、生産ラインに電力を供給する電気設備(受電・配電する設備など)を含める場合があります。下図の千葉県千葉市に生産拠点をおく二宮産業株式会社の求人では、生産技術職が設備および電気機器の保守を実施することになっています。

このような求人では、下図のように電気工事士資格が歓迎条件になっていることがあります。

前項で紹介したように、設備管理では電気主任技術者資格も歓迎されることが多いです。このような資格を持っているときは、同様の求人も選択肢に入れると転職成功しやすくなります。

主に電気を使った製品を作っている会社で求められるもの

続いて、電気を使った製品が売り物の会社で求められるものについて説明します。以下の業種が該当します。

  • はん用機械器具製造業
  • 生産用機械器具製造業
  • 業務用機械器具製造業
  • 電子部品・デバイス・電子回路製造業
  • 電気機械器具製造業
  • 情報通信機械器具製造業
  • 輸送用機械器具製造業

食品メーカーでは電気の技術は補助的なもので、優れた電気技術を持っていても活かす場面は設備管理くらいしかありません。それどころかオーバースペックになってしまって、あなたの能力に見合った仕事や給料が得られない可能性があります。

しかし、精密機械メーカーなどは電気技術が会社事業の根幹であって、あなたの優れた技術力を活かす職種が用意されている可能性が高いです。

このような会社で募集される職種は、研究・開発・設計などです。これらの職種は、資格で評価されるのではなく、これまで培った技術力や経験が評価されることが多いです。以下に求人例を示します。

・開発職の求人例

開発職の求人例として紹介するのは、愛知県に本社を置く株式会社デンソーの求人です。同社はトヨタ自動車のグループ会社として車載品の製造を行っています。この求人では、自動車向けモーターで培った技術をほかの分野で事業化できないかを研究・開発する職種を募集しています。

求人票には資格についての記載はなく、電気磁気学(大卒程度)やモーター・インバーターなどの電気制御設計に関する専門知識が必須・歓迎である記載しかありません。また、単なる技術研究・開発ではなく商品・事業開発であり、電気技術だけでないスキルも求められています。

・設計職の求人例

次に設計職として紹介するのは、東京に本社を置く三菱電機株式会社の求人です。この求人では、制御設計として剃髪配電盤の設計を募集しています。

香川県にある三菱電機の丸亀工場は、このような配電盤を製造しているほか、電鉄向け遮断器なども製造しています。私が鉄道会社に勤務していたときも、同工場の遮断器を購入したことがあります。このように社会インフラへの導入実績の多い会社です。

下図に示す同求人の応募条件をみると、この求人も資格名は書かれていません。電気工学の知識とシーケンス設計経験が必須・歓迎とされています。

・専門性が高いほど年収は高い

また、「研究 > 開発 > 設計 > 生産技術」で専門性が高くなります。そして企業が求める経験・スキルの専門性が高くなるにつれ、適合する求人を見つけるのも大変になります。つまり、転職成功するには根気が必要になりますが、提示される年収も高くなります

以下は、マイナビエージェントが同社サイトで公開している技術系職種の平均年収です。

順位 職種 平均年収
1 研究・開発 512万円
2 回路設計・半導体設計 502万円
3 メカトロ制御設計 495万円
4 機械設計 478万円
5 生産技術・プロセス技術 473万円
6 技術営業・セールスエンジニア 467万円
7 (メーカーの)管理職・マネージャー 465万円
8 実験・解析・評価 460万円
9 FAE・サービスエンジニア・サポートエンジニア 431万円
10 生産管理・品質管理・品質保証 422万円

引用:マイナビエージェント 職種別年収ランキング(機械・電気・電子・素材)より

電気系職種だけでなく機械系職種も混じっているので少し判別しにくいものの、表中赤字で示した職種が電気関係の研究・開発・設計・生産技術が含まれる職種です。これを見ても平均年収の順位が「研究 > 開発 > 設計 > 生産技術」となっていることがわかります。

あなたの経歴に専門性の高い分野があり、その分野を募集している求人を見つけられたら、年収面で良い条件を得られる可能性が高まります。

転職エージェントを使って優れた求人を手に入れる

製造業という大きな枠の中で転職を考えるときは、自分だけで会社を選ぶのではなく、転職エージェントの手を借りるのも良い方法です。まず、あなたの希望や経験・スキルを伝えます。加えて、向いている職種・企業があれば紹介してほしい旨を伝えておくのです。

転職エージェントは、これまでにたくさんの求職者の転職をサポートしてきた経験から、あなたと似たような経歴・スキルを持った人がどのような企業に転職したかを知っています。

このような状況から、転職エージェントを使うとあなたが考えもしなかった優れた求人を紹介してもらえる可能性があります。あなたがその業界に向いている人かどうかを、違った視点から判断してくれるためです。

また転職後の追跡調査を実施しており、転職の満足度を継続して調査しています。下の図は、私が転職したあとに転職エージェントからもらった追跡調査のメールです。

転職エージェントは転職後のフォローも行っており、あなたが転職に不満を抱いていないかを確認してくれます。

このように転職エージェントの視点を参考にすることで、転職成功する可能性を高めることができます

非公開求人紹介してもらい転職成功の確率を高める

また、転職エージェントは非公開求人を持っています。非公開求人とは、企業側の都合により求人情報が非公開になっている求人のことです。企業の都合とは、「新商品開発のための募集で競合他社に出し抜かれないために秘密にしておきたい」「人気企業につき応募者が殺到しそうだから限られた人だけに見てほしい」などです。

この非公開求人は、転職エージェントを通してのみ手に入れることができます。そして、全求人の8割が非公開求人であるとされています。下図は、大手転職サイトのマイナビエージェントのものですが、ほかの転職サイトも同様に非公開求人は8割程度と紹介されています。

非公開求人を手に入れることができると、公開求人だけを探していた場合より5倍の求人に触れることができます。たくさんの求人情報を手に入れられるので、転職後のミスマッチが起こる可能性を減らすことができます。

さらに、その転職サイトに求人が登録されていなかったとしても、転職エージェントに企業名を伝えると求人を取ってくることがあります。

私の実体験で、気になる企業があるかと訊かれたので大阪のあるエンターテイメント企業の名前をつたえると、その企業なら会社として付き合いがあるので求人を出すかどうか聞いてみるということがありました。その後、その企業の求人を紹介してくれたことがあります。

このように業界について漠然とした知識しかないときだけでなく、メーカー名を指名したいときでも転職エージェントを使えます。転職活動では、転職エージェントを最大限活用することによって希望する優れた求人を見つけやすくなります

まとめ

製造業に電気技術者として転職する場合は、たくさんの業界が選択肢になることを知っておく必要があります。このことを知っておくだけで、転職の可能性を広げることができます。

ただし、得られる給料は業界で様々です。転職理由として年収アップを狙いたいのなら、政府統計を参考にして平均年収の高い業界を狙いましょう。

製造業で求められる経験・スキル・資格は、職種によって様々です。ほとんどの業界に共通するのは、設備管理の仕事は必ず存在し、その経験・スキル・資格は役に立つ可能性が高いです。電気主任技術者資格や電気工事士資格を持っているなら、面接などでアピールするポイントになります。

会社の製品が電気技術を使っているのなら、研究・開発・設計の職種が募集されていることがあります。これらの職種は、資格で実力を測ることができない専門的な領域であり、資格を求められることは少ないです。資格よりも重視されるのは、専門領域における経験や深い知識です。他業種で経験・スキルを積んだことがマッチすれば、選考はスムーズに進みます。

製造業と大きく枠を構えて転職活動するときは、転職エージェントの力も借りると良いです。違った視点からあなたの希望に沿った求人を紹介してくれます。また転職エージェントは非公開求人を持っています。非公開求人にアクセスできれば、あなたが得られる求人数は5倍になり、転職でミスマッチを防ぎ転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。