外資系企業は、実力主義で高待遇だといわれます。一方で、電気主任技術者資格は難関資格で、日本では電気の技術レベルを測る資格としても評価されることが多いです。
では、外資系企業に電気主任技術者の有資格者を求める求人はあるのでしょうか。また、電気主任技術者資格を持っているとどのように評価されるのでしょうか。転職成功させるには、このような情報を十分に知った上で工夫や対策をすることが重要です。
ここでは、電気主任技術者資格が条件にある外資系企業の数、優れた求人を見つけ出す工夫、実際の求人例などを解説します。
もくじ
外資系企業の電気主任技術者求人数を知る
外資系企業が日本で事業を行うとき、高圧以上で受電、発電すると電気主任技術者を選任する必要があります。これは、日本の企業と全く変わりありません。
したがって、外資系企業で電気主任技術者を求める求人は存在します。参考に、大手転職サイトのdodaを使って、求人票の記載に「電気主任技術者」の記載がある求人を検索すると4件ヒットしました。
外資系企業の条件を外すと1,000件近い求人がヒットするので、4件という件数は極めて少ないです。
実は、外資系企業なのに詳細条件にヒットしない求人があります。この原因は、検索精度が低いためです。そこで、転職サイトの使い方を工夫する必要があります。
外資系企業の求人を効率よく探す方法
では、どうのように希望する外資系の求人を探したら良いでしょうか。外資系企業の優れた求人を見つけるには、以下の方法が有効です。
- 「電気主任技術者」をキーワードにして絞り込み、会社名を個別に探す
- 複数の転職サイトを使って非公開求人を探す
- 転職エージェントに外資系希望を伝えて、優先的に紹介してもらう
この3つを組み合わせて求人を探すと良いです。
・外資系企業名を個別に探す方法
まず、1つ目の方法について説明します。前項で述べたように、「電気主任技術者」をキーワードにし、外資系企業を指定して絞り込むとわずかな求人しかヒットしません。
そこで、外資系企業に絞らず「電気主任技術者」だけをキーワードにして求人を絞り込みます。絞り込んだ求人の中から、外資系企業の求人を一つずつ探します。
例えば、下図の外資系企業である日本エア・リキード株式会社の求人は、最初に紹介した検索方法ではヒットしません。「電気主任技術者」で検索して、会社名を確認していくことでようやく見つけることができます。
このとき、あなたが外資系企業の名前を知らなかったら優れた求人を見落としてしまうことになります。外資系企業の名前はWEBで調べればたくさん出てきますが、網羅的ではありません。下に、国内で事業を展開している外資系企業を一覧にまとめたので参考にして下さい。
この一覧の企業を探すことで、外資系企業の求人を見つけ出しやすくなります。
・複数の転職サイトを使って非公開求人を探す方法
次に、2つ目の方法について説明します。
実は、転職サイトであなたが検索することのできる求人は公開求人といい、全求人の一部です。求人の中には、転職エージェントを介してのみ紹介される非公開求人が存在します。この非公開求人の数は、転職サイトの記載によると全求人の80%とされています。
したがって、非公開求人も含めて求人を探すと、外資系企業の求人にも出会いやすくなります。また、転職サイトによって扱っている求人が違います。そこで、複数の転職サイトに登録して、それぞれで非公開求人を探すことが重要です。
・転職エージェントに外資系企業を優先的に紹介してもらう方法
最後に、3つ目の方法を説明します。
転職エージェントは、非公開求人だけでなく公開求人も紹介してくれます。自分で外資系企業の公開求人を探したとしても見落とすこともあるし、常に更新される新しい求人を探し続けることも難しいです。
そこで、転職エージェントを活用すると良いです。転職エージェントに、「外資系企業」に転職したいことを伝えておけば、外資系企業の求人が出たときに優先的に紹介してもらえます。
ちなみに、私が「第2種電気主任技術者資格」が活かせる企業を希望していたところ、4件の紹介を受けて1件が外資系企業だったことがあります。下はそのとき、メールで紹介を受けた一部です。
このように、転職エージェントは外資系企業の求人もたくさん持っているので、積極的にあなたの希望を伝えることで、より優れた求人に出会いやすくなります。
外資系で電気主任技術者募集求人の実例を探す
ここからは、実際に外資系企業からどのような求人が出ているのかを、実例を示して紹介します。
電気主任技術者選任前提の求人
まず、電気主任技術者に選任されることが前提の求人です。この種類の求人は、何らかの要因で今勤めている電気主任技術者が退職することになったために、その後釜として募集される求人です。
例えば、下の株式会社ジェイデバイスの求人が該当します。ジェイデバイス社は、米国アムコアテクノロジー社の傘下で、大分など北部九州に多くの工場を持つ会社です。この求人では、福岡工場の電気主任技術者を募集しています。
福岡工場の受電は、下の写真のように66kVの架空線です。写真の鉄塔は九州電力の財産で、鉄塔下部にジェイデバイス社の工場受電機器が設置されています。
次に示す写真が、ジェイデバイス社福岡工場の受電部の機器類です。高圧盤とGISがあるのが確認できます。
写真ではわかりにくいもののGISの後ろにトランスがあり、求人票に記載のある特高Tr設備と考えられます。
この求人で採用されると、このような電気設備の保安を担当します。さらに、電気主任技術者として電気設備の保全部門を監督・指導する立場で仕事をすることになります。
続いて紹介するのは、株式会社V・Tエナジーマネジメントの求人です。この求人は、岩手県花巻市にある木質バイオマス発電所の電気主任技術者を募集するものです。
V・Tエナジーマネジメント社は水処理の世界的企業のVeolia(ヴェオリア)社と日本の産廃・ごみ処理事業の大手タケエイ社が、7 : 3で出資して設立された会社です。発電所はタケエイ社が主体となって建設し、運転管理をVeolia社のノウハウを使っています。
FIT制度の本格運用以降、再生可能エネルギー(バイオマス、太陽光、風力、地熱)の発電所は増えており、電力事業にノウハウのない企業もたくさん参入しています。そこで、V・Tエナジーマネジメント社のように、複数の会社のノウハウを持ち寄って運営されることがよくあります。
これには外資系企業も参入しており、再生可能エネルギー業界で電気主任技術者選任の求人が出ることが多々あります。
電気主任技術者選任が前提の外資系企業を探すには、工場・大規模拠点を持っている企業のほか、再生可能エネルギーの発電所を運営する企業が選択肢に入ります。
電気主任技術者の仕事内容を理解すること
電気主任技術者に選任される求人に応募する場合には、あなたが電気主任技術者としての実務経験があるなら問題ありません。しかし、あなたに実務経験がない場合は、十分注意する必要があります。
先程紹介したV・Tエナジーマネジメント社の求人で、求める方の欄には実務経験に関する記載がありません。
必須条件が、第二種電気主任技術者資格のみなので、あなたは電験二種資格さえ持っていれば応募できます。
これまであなたに電気設備の保全員として一担当者の立場でしか仕事をしたことがないなら、採用されるためには考え方を大きく変える必要があります。電気主任技術者の仕事は一担当者として業務を遂行することではなく、組織として業務を遂行できるように監督・指導することが主な仕事だからです。
ジェイデバイス社とV・Tエナジーマネジメント社の求人で求められる電気主任技術者としての業務は、各地方産業保安監督部などに対する申請・届出のほか、以下の事項があります。
- 電気設備の工事・維持・運用を組織的に行う方法について規定し、遵守させる
- 電気設備が適切に工事・維持・運用されることを担保するために、保安教育を実施する
- 災害が起きたときの、社員が対応方法を具体的に規定し、遵守させる
- 保安業務(教育含む)を記録方法について規定し実施する
- 連絡体制(平常時・緊急時)を確立し、運用させる
これらを、電気設備を保守・保安するために組織だって行う必要があります。その組織の長または長に近い立場で、組織全体を統率するのが電気主任技術者の役目です。
この電気主任技術者の職務上の立場は、経済産業省地方機関の関東東北産業保安監督部東北支部が公開している保安規程例を見ても明らかです。下図が、公開されている保安規程例のうち組織図の一部です。保全課課長が電気主任技術者として示されています。
この保安規程例は、工場(事業所)の保安規定を想定して作られています。つまり、保全課長は工場長に次ぐ、工場でNo.2の役職です。代務者も係長が示されており、ある程度上位の役職者であることが求められています。
私が以前勤めていた鉄道会社でも、経済産業省が想定するように上位職が電気主任技術者に選任されていました。鉄道会社の場合は、支社の電気課長(200人規模の組織の長)が電気主任技術者です。
また今勤める電力プラントでは、技術部のNo.2(役職名がないので副部長級)が電気主任技術者として選任されています。
このように、電気主任技術者に選任されると、自分で業務を遂行できる能力とは別に、組織を動かすマネジメント力を求められることになります。採用試験では、マネジメント力についてもアピールできると良いです。
電気の技術レベルをアピールできる求人
電気主任技術者資格を活かすには、ここまで紹介した電気主任技術者に選任されるほか、電気の技術力をアピールする方法があります。
ただし、外資系企業の求人の特徴として、「資格保有者ではなく、そのポストの業務ができる即戦力を求める」度合いが日本企業より顕著であることに注意が必要です。つまり、必須の条件が明確に求められていて、電験資格は歓迎条件であることが多いです。
実際の求人を見てみましょう。下図は、冒頭で紹介した日本エア・リキード株式会社の求人です。日本エア・リキード社は産業用ガスの大手で、フランスのエア・リキード社の日本法人です。この求人では、兵庫県尼崎に拠点を置いたフィールドエンジニアの人材を募集しています。
フィールドエンジニアとは、自社製品を納めた(設置した)あと、定期的なメンテナンスや改造・修理・交換などを客先に出向いて行うエンジニアのことです。
フィールドエンジニアには、電気主任技術者の資格は必須ではありません。保有していなくても、問題なく業務を進めることができます。
しかし、客先で仕事をするので、お客さんと設備について技術的な話をすることがあります。そこで、電験資格を持っていると、お客さんと責任ある立場で接することができるようになります。
そして、必ずしもフィールドエンジニアの全員が責任ある立場でお客さんと接するわけではないので、歓迎条件とされています。下図のように、求人票には「第三種電気主任技術者資格」が歓迎条件とされています。
同じように、客先に出向いて仕事を行う求人で、下図のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー・ジャパン株式会社の例を示します。
シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー・ジャパン社は、風力発電事業の世界的企業シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー社の日本法人です。
実は、風力発電ではヨーロッパが先進国で、日本の風力発電所のコアコンポーネントは輸入に頼っている状況です。私は、風力発電所の風車の中を見学したことがありますが、制御にかかる装置もすべて海外メーカー製でした。
例えば、風力発電で使われる発電機は575Vの三相交流です。これを22kVまで昇圧して送電系統に接続します。この、575V三相交流は日本のほかの分野では使われない電圧です。そこで見学した時にメーカーの人に教えてもらったのは、電圧もヨーロッパの基準で作っているからということでした。
このことから、風力発電業界で仕事をするには海外の企業で仕事をするチャンスが多いといえます。
電気設備のメンテナンスは、通常製造したメーカーか正規代理店が行います。この求人も、メーカーの保守人材募集の求人です。
サービステクニシャンもフィールドエンジニアの一種です。業務内容を見ると、保守メンテナンス中心の記載であり、日本エア・リキード社の求人で示されている業務内容と変わりません。ただし、テクニシャンとあるように、より技能的(職人的)な能力を求められます。
したがって下図に示すように、電気主任技術者資格は必須ではなく、歓迎条件とされています。その一方で、電気・機械などの技術知識は必須条件です。
フィールドエンジニアは、あくまで客先において電気設備のメンテナンスができなければ仕事になりません。そのため、電気主任技術者資格は、それにプラスアルファの要素として歓迎条件になっていると考えましょう。
なお、シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー社の場合、本社(スペイン)からの技術員派遣もあり、コミュニケーションを取るための語学力(英語力)も必須です。
海外メーカー製品を使用する場合は、設備の技術資料や問い合わせに英語が使われるのは珍しくありません。本社からの技術派遣の頻度は多くないものの、少なからず使用する場面があることは承知しておく必要があります。
このように、外資系企業の求人では求められるスキルが明確に示されていることが多いです。あなたの経験を振り返って整理し、条件に合致していることが応募の前提です。電気主任技術者資格は、あくまで追加の評価要素であることを認識しましょう。
これらを踏まえて面接などでは、電気主任技術者資格保有をアピールするのではなく、求められる業務に対して問題なく遂行できることをアピールする必要があります。
まとめ
外資系企業で電気主任技術者資格を活かせる求人を探すとき、大変求人数が少ないです。したがって、転職成功させるには求人の探し方から工夫する必要があります。
具体的な工夫の方法としては、「外資系企業名を名指しで検索する」「複数の転職サイトを使って非公開求人を探す」「転職エージェントから外資系企業の紹介を受ける」といった方法があります。これらを組み合わせて使うことで、より転職成功しやすくなります。
実際に、外資系企業で電気主任技術者の有資格者を求める求人には、「電気主任技術者に選任前提の求人」「電気の技術レベルが高い人材を求める求人」の2種類があります。
前者は、工場や大規模事業所のほか、再生可能エネルギー事業に新規参入した企業で求人が出やすいです。応募するときは、電気主任技術者は組織を統率する立場で仕事をすることを十分理解しておくとよいです。
後者は、電気設備を保守する会社で求人が出やすいです。しかし、外資系企業は必須条件として業務遂行能力を明確に挙げていることがほとんどで、電気主任技術者資格保有は追加要素として歓迎条件になっていることが多いです。
したがって、電験資格を保有していることをアピールするのではなく、業務遂行に電験資格が活かせるというアピールにするとよいです。
以上に留意することにより、外資系企業で電気主任技術者の有資格者を求める求人に転職しやすくなります。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。