工場などに勤めていると、三交代(三交替)などで夜勤がある場合があります。夜勤と言っても、夜ばかり働くわけではなく、日勤と周期的に繰り返す勤務パターンが普通です。そうすると生活のリズムが崩れて、体調管理やプライベートを充実させることが難しくなります。

私は、10年近く夜勤をしていたことがあります。初めは、夜勤手当がもらえるので喜んでいたのですが、睡眠のリズムが崩れて不眠症になり、大変しんどい思いをしました。このような思いは二度としたくなかったので、「夜勤なし」をはずせない条件の1つとして転職しました

結局エネルギープラントに転職して、夜勤なしの生活を送っています。今では睡眠の質は改善し、勤務について満足しています。

では、工場勤務の場合、どのように夜勤なしの求人を探せばよいのでしょうか? また、工場で夜勤なしの職種はどのようなものがあるのでしょうか?

ここでは、私の実体験をもとに「夜勤なしの工場求人を広く探す方法」「夜勤なしの職種」「夜勤と給料の関係」について、くわしく説明します。

もくじ

夜勤有無は工場の種類と職種で決まる

求人を探すときに、夜勤の有無は最終的には勤務詳細を見て確認をする必要があります。しかし、「工場が何を製造しているのか」「どのような職種か」を見れば、夜勤有無はある程度判断できます

具体的には、下図の網掛け部分の工場、職種だと夜勤がない、もしくはあっても少ない工場・職種です。

図中、ディスクリート工場とプロセス工場の詳細は以下のとおりです。

  • ディスクリート工場 : 組み立て加工をする工場のことを指す。機械、精密機器、金属製品などを製造する。
  • プロセス工場 : 流体や粉体を扱う工場のことを指す。化学製品、石油製品、製鉄などが代表的な製品。エネルギープラント(火力発電所)や環境プラント(清掃工場、水処理場)なども、プロセス工場に含む。

実際に求人を探すとき、転職サイトで「夜勤なし」をキーワードに探すと、たしかに何件かの求人はヒットします。しかし、現実には「夜勤なし」を求人に謳っていないのに、夜勤がない求人がたくさんあります

つまり、キーワード検索だけに頼って求人探していると、優れた求人を見逃す可能性が高くなります。したがって、この図の範囲に相当する求人を探すことで転職しやすくなります。

組み立て加工型の工場で夜勤なし勤務が多い

ディスクリート(組み立て加工型)工場で夜勤がないことが多いのは、24時間工場を稼働するメリットが無いからです。組み立て加工型の工場では、機械を生産の途中で停止したり稼働したりするのにコストが小さい場合が多いです。

後で述べる製鉄業だと、生産を止めるために一旦製鉄高炉の火を落とすと、再稼働するためには何日も要します。組み立て加工型の工場では、生産を止めてもすぐに再稼働が可能なため、夜間は仕事を休むということが可能なのです。

したがって、組み立て加工型の工場では、夜勤を前提としない求人が多いです。例えば、下図の東海ドック工業株式会社の求人では、はっきりと夜勤なしであることが記載されています。

東海ドック工業社は、三重県四日市市に事業所を構えている会社で、プラント用の熱交換器のメーカーです。この求人で募集しているのは、工作機械(NC、マシニングセンタなど)を使って、金属製品を機械加工する職種です。

このような機械加工では、工作機械を停止しても、再生産のための起動は容易です。したがって、工場を24時間稼働することはないのです。

ただし、同様の組み立て加工型の工場で下図の株式会社アルプスエンジニアリングの求人は、勤務時間帯がシフト制で朝6時00分から夜22時00分までとされています。なお、アルプスエンジニアリング社は静岡県浜松市に拠点を持つ半導体加工の会社です。

この勤務時間を見ると、「日が暮れてからも働くので夜勤ではないのか」と考えるかもしれません。しかし、このような場合でも「夜勤なし」と記載されるのは正当な理由があり、問題ありません。

その理由とは、労働基準法により深夜帯を22時00分から5時00分と決められていることです。深夜帯の労働に対しては、割増賃金の支払い義務や、18歳未満者の就業禁止などの規定があります。アルプスエンジニアリング社の場合は、この規定にかからないため「夜勤なし」としているのです。

あなたが、「夜通し働くのでなければ問題ない」と考えているのなら、アルプスエンジニアリング社のような求人も選択肢に入ります。しかし、「日が暮れてから働きたくない」と考えているなら、このような求人は避けなければなりません

求人の中には、代表的な勤務時間帯のみを記載して、詳細を省略している求人もあります。最終的には、企業側に確認を取る事が必要です。

私が転職活動をしたときは、絶対に夜勤をしたくなかったので、面接の時に「確認ですが、夜勤はないですよね?」と必ず確認していました。直接訊きにくいときや、確認を失念したときは、転職エージェントを通して間接的に訊くこともできます。

少しでも勤務時間に疑問があるときは必ず確認をすることが、転職失敗を防ぐ秘訣です

プロセス工場の製造・運転職は夜勤前提が多い

一方、プロセス工場は一度生産ラインを停止させると再起動に時間やコストがかかるため、24時間365日稼働させることが多いです。したがって、化学工場などのプロセス工場ではシフト勤務で必ず夜勤があります

ただし、夜勤があるのは製造オペレーターや運転員と呼ばれる職種です。プロセス工場では原則工場は自動化されているため、これらの職種は状態監視・故障時の応急処置、原材料の受け入れ、製品・廃棄物の搬出などが主な仕事です。

下の写真のように、工場の状態を監視する部屋が設けられており、そこで24時間監視を二交代や三交代で行います。

では、プロセス工場勤務では全て夜勤ありなのかというと、そのようなことはありません。工場の機械を保全・工事する、いわゆるプラントエンジニアリングは原則日勤のみの職種です

例えば、下図の出光興産株式会社の求人では、原則8時00分から16時30分の日勤業務であることが示されています。この求人は、愛知県の製油所の設備保全をする職種を募集しています。

この職種で注意しなければならないのは、100%「夜勤なし」が保証されているわけではないということです。設備管理の仕事は、原則日勤土日休みです。しかし、設備が運転継続できない故障をしたときは、昼夜を徹して復旧にあたることもあります。

また、石油コンビナートは2年に1回、全設備を停止して定期修繕を行うことが法律によって定められています。その間は生産できないため、できるだけ早く定期修繕を終わらせるために、集中して仕事を行います。夜間帯に食い込むこともありえます。

別の石油会社の人に、勤務について訊いたところによると、「普段は故障でもない限りほとんど残業もなく、勤務時間に仕事が終わる。ただ、定期修繕のときには仕事量が普段の数倍になるので、残業時間も法定時間まで跳ね上がる」ということでした。

同様の設備管理の求人を、もう1件示します。下図は、大阪地区で食品加工工場の設備メンテナンスを専門に行なっている株式会社マイスターエンジニアリングの求人です。この求人では、朝7時00分から夕方16時00分までと11時00分から20時00分までのシフト制とされています。

マイスターエンジニアリング社は、メーカーの設備管理部門ではなく、メーカーから工場の設備管理を受託している会社です。このような形態の会社は、食品製造業以外でもたくさんあります。

例えば私が勤めている電力プラントでも、O&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)と言って外部に設備管理の実働部分を委託しています。工場を運営している会社だけが選択肢ではないことを知っておくと、転職できる可能性が増します。

なお、設備管理の仕事は、製造オペレーターや運転員の仕事と違って、詳細なマニュアルがある仕事ではありません。常に目の前の事象を分析しながら、創意工夫しつつ最適解を探して仕事を進めていきます。オペレーターのように、「勤務時間が終わったら次の勤務者に引き継いで終わり」ということもありません。

このような特徴を踏まえて、あなたが設備管理として工場で働くことが選択肢になるかどうかを判断してください。個別の求人における仕事の詳細な情報は、転職エージェントを通してさらに深く訊くことで、転職成功しやすくなります。

夜勤なしで給料はどうなる?

最後に、夜勤をしないと給料はどのようになるのかを解説します。

労働基準法では、夜間帯(22時00分から5時00分まで)の労働に対しては、25%の割増賃金を払わなければならないと定めています。これは、正社員・非正規社員の別なく支給されるものです。したがって、同じ会社で夜勤ありの仕事をしていて、夜勤なしの仕事に変わると給料が減る可能性が高いです。

下の図は、私がかつて鉄道会社で夜勤ありの勤務をしていたときの給与明細の一部です。夜勤をすることによって発生する手当が、「特殊勤務手当」「夜勤手当」で約30,000円が夜勤をすることによって増える賃金です。

この給与明細をもらったころは、月に5~6回夜勤をして30,000円程度の手当を支給されていました。すなわち、1回夜勤をすることで約5,000円の手当が支給されるということです。夜勤なしで働くということは、この類の手当を得ることはできなくなります。

ただし、私が勤めていた鉄道会社の夜勤に関する手当は、法で定める以上の手当が支給されていました。労働基準法通りに25%の割増で概算すると下表のようになり、もらえる夜勤割増賃金は私の例より安いです。

基本給 左の基本給で深夜帯7時間働いたときの割増賃金
25万円 2,700円
35万円 3,800円
45万円 4,900円

あなたが、今夜勤のある働き方をしているなら、表右の金額に夜勤回数を乗じた金額が減る可能性があります。

しかし、転職で業種を変えるときは、夜勤手当がなくなっても給料総額は増えることがあります。これは、給料水準が業種によって大きく違うためです。

ちなみに、冒頭で紹介した東海ドック工業社の給料は、月給で20~23万円、年収で320万円が想定として提示されています。同社の業種は、はん用機械器具製造業です。

そのほか、ここで紹介した求人の提示年収と業種は下表のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 業種
東海ドック工業(株) 320 製造業(はん用機械器具)
(株)アルプスエンジニアリング 300~400 製造業(金属製品)
出光興産(株) 400~700 製造業(石油石炭製品)
(株)マイスターエンジニアリング 330~525 その他事業サービス業

このように、業種が違えば提示される年収も様々であることがわかります。この業種ごとの平均年収は、厚生労働省が調査し公開している賃金構造基本統計調査から知ることができます。

下のグラフは、賃金構造基本統計調査で示されている平均年収のうち、工場がある業種について抜粋してグラフ化したものです。なお、グラフ中、製造業は青色、非製造業は緑色で示してあります。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

現在勤めている工場がグラフの右側の業種なら、グラフの左側の業種の工場へ転職すると、夜勤手当の分を補って年収アップする可能性が高まります。もちろん、あなたが現在夜勤をしていなければ、増加分はさらに大きくなります。

反対に、現在グラフの左側の業種の工場に勤めていて、グラフの右側の業種の工場に転職すると年収が下がる可能性が高まります。

特に、プロセス工場の設備管理の職種は、異業種へ転職しやすい職種です。業種と年収の関係について、十分に理解した上で転職することで、年収面で失敗を防ぐことができます

まとめ

ここまで、工場勤務で夜勤なしの職種に転職しやすくなる考え方を解説してきました。

求人票を探すときに、転職サイトなどで「夜勤なし」をキーワードにして探してもよいですが、「夜勤なし」を謳っていない求人も多いです。したがって、夜勤がない・少ない業種・職種の求人を広く探すと、より優れた求人に出会いやすくなります

製造オペレーターや運転員として働く場合は、組み立て加工型(ディスクリート)工場だと夜勤なしの求人が多いです。また、設備管理の職種だとディスクリート工場でもプロセス工場でも夜勤はない場合が多いです。

ただし、求人票に謳われる夜勤とは深夜帯(22時00分から5時00分まで)の勤務があることを指すので、必ずしも朝9時00分から18時00分までの勤務だけではないことに注意が必要です。また、日常的に夜勤がなくても突発的に夜勤があることもあります。

これらの詳しい情報は、求人票に記載されないこともあります。確実にあなたが想定した夜勤がないことを知るには、面接などで企業側に確認することが必要です。面接前なら、転職エージェントを通して確認するのも良い方法です。

夜勤をしない場合の給料は、夜勤に対する割増賃金などが支払われない分、少なくなります。ただし、給料は企業の業種により大きく変わるので、平均年収の高い業種に転職すれば夜勤なしでも年収は増える可能性が高いです。

業種別の平均年収は、信頼のできるデータとして政府統計が公開されているので、転職先を考えるのに大いに参考になります。

これらの手順を実施することで、夜勤なしの工場勤務への転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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