電気工事士の仕事は、きつい仕事です。その割に給料が安く、釈然としない思いを抱えて仕事をしている方はたくさんいます。あなたもその一人ではないでしょうか。

家庭を持ち40代になると子供も大きくなって、お金がかかる時期になります。若いころは我慢できたものの、最近もう少し割のいい仕事はないだろうかと考えていませんか?

国税庁の「民間給与実態統計調査(平成29年度分)」によると、電気工事業を含む建設業の平均年収は494万円です。

この数字は平均値なので、年齢や経験年数によってばらつきがあります。当然のことですが、同じだけ働くなら、給料が良い仕事の方がやる気が出ますよね。

電気工事士として長年働いてきて、「平均年収が高いから」という理由だけで40代で働く業界を変えるというのは、ハードルが高いです。そこで、電気工事の業界で少しでも収入を上げられる転職方法を紹介します。

今まで電気工事業界で電気工事士(職人)として働いてきた人が、電気工事士の資格を活かしつつ給料を上げる方法は2つあります。転職して「給料のいい地域で働くこと」「電気工事施工管理の仕事をすること」の2つです

しかし職人として第一線で働きながら、転職先探しから、労働条件や給与の折衝、そのほかの手続きまで行うのは現実的ではありません。また40代くらいになると、表向き年齢制限をしていないように見えても、実際は年齢で不採用になることもあります。

そこで、40代で転職によって年収をアップするための方法、気軽に転職活動ができる転職サイトを使った求人の探し方、採用の実態などについて紹介します。

もくじ

40代の電気工事士が、転職によって年収アップさせる2つの方法

現在、電気工事士資格を持って働いている人が年収アップを望むとき、働く地域に対するこだわりを捨てるか、電気工事の職人に対するこだわりを捨てる必要があります。

電気工事士資格は、電気工事に携わるには必ず持っていなければならいと法で定められている資格です。しかし、仕事で電気設備に触れることがある人にとっては、難易度の高い資格ではありません。したがって、電気工事士資格を持っていること自体が強みにはなりにくいです。

これは、一般家庭や小規模オフィス向きの電気工事ができる第2種電気工事士資格も、大規模工場などの電気工事ができる第1種電気工事士資格も同様です。

では具体的に「地域に対するこだわりを捨てる」「電気工事の職人に対するこだわりを捨てる」とはどういうことでしょうか。前者は、「給料の高い地域で働く」ということです。後者は、「電気工事の施工管理を目指す」ということです

比較的容易に年収アップが見込める方法としては、これらの2つがあります。

給料の高い地域で働くことで、第2種電気工事士でも年収アップ可能

まず、給料の高い地域で働くとはどういうことでしょうか。単純に言って、「都会の方が、給料が高い」です。つまり、給料の高い都会で働くと年収アップしやすいです。

では、なぜ都会の方が高いのでしょうか。これは、給料の源泉である工事費の積算方法にあります。下の写真をご覧ください。

これは建設物価という雑誌の、職人一人当たりを1日働かせるのに払うべき単価を掲載しているページです。

下線部が、電気工事の職人(電工)一人1日雇うための単価です。公共工事の工事費を積算する場合は、この単価を使って計算します。発注が民間会社の場合は、これより高くなることが多いです。私が以前勤めていた鉄道会社でも、この単価を使って積算しています。

写真は2018年7月のものです。大阪が20,300円になっています。近畿圏では大阪が一番高く、隣県は安くなります。写真にはありませんが、東京は24,200円です。おおよそ下の図のように、東京や大阪のような大都市が高く、地方に行けば安くなります

以上を参考に、あなたが地方で電工として働いているなら、都市部の会社に転職することによって給与アップを狙うことができます。これは第1種電気工事士、第2種電工時工事士の両方に当てはまります。

このとき、東京だけに目を向けるのではなく、「九州地区なら福岡」「東北地区なら宮城」のように地方の中核都市でも給与アップは可能です。

電気工事施工管理を行う会社に転職することで、年収アップを狙う

次に、電気工事施工管理をして働くことについて説明します。

今働いている地域を動きたくない、または動けないなどの理由がある場合は、この電気工事施工管理で給与アップを狙います。また、すでに都会で働いており「給料の高い地域で働くという選択肢がない」場合も同様です。

電気工事施工管理は、たくさんの電工をまとめて大きな仕事をするために、全体の統制を取ることが主な仕事です。電気工事施工管理をする人は、電気工事士としての腕があるだけでなく、電工を束ねて大きな仕事を完遂することのできる人物といえます。したがって、電工よりも給与の高いことがほとんどです。

施工管理の重要性について考えてみましょう。電気工事を一人で行うときは、準備から実施工、後片付けまで自分の思うとおりにできます。ただ、一人で施工できる範囲には限界があります。一般住宅の新築でも複数人で行いますので、全部一人でできる範囲は一般住宅の増築の電気工事くらいです。

一方、大規模な工場などで電気工事をする場合は、何十人、何百人で一つの目標に向かって仕事をすることになります。このとき、複数人で仕事を分業して行うと、意思疎通(コミュニケーション)や工程の引継ぎのときに待ち時間が発生するなど、電気工事本体の仕事以外に時間を取られます。

一人で1日かけて10の仕事ができたからと言って、5人で50、10人で100の仕事ができるわけではありません。下の図は、5人で仕事をしたときをイメージしたものです。

ここで、テクニックが必要になってきます。施工管理に重要な要素は、安全管理、工程管理、品質管理、原価管理です。

電工の仕事は、手を動かして設備を作ることです。一方電気工事施工管理は、ケガ無く、納期通りに、高品質で、安く電工が仕事を完成できるように、お膳立てする仕事です。

電気工事施工管理の仕事の性質上デスクワークは増え、手を動かして施工する頻度は減ります。しかし今までの電気工事士として働いてきた知見を活用して、作業員を指導していくことになります。したがって、電気工事士としての経験は決して無駄にはなりません

ただしこれは一朝一夕でできるものではなく、まずはベテランの電気工事施工管理技士について、電気工事施工管理の仕事の概要をつかみます。そのあと、電気工事施工管理技士という資格を取得し一人前になります。

建築業法では一定規模の工事を受注するときは、電気工事施工管理技士資格の所持者を配置することが義務付けられています。電気工事業も、当該の資格者を置くべきものに該当します。

電気工事施工管理の仕事へ資格なしで転職した場合は、まず電気工事施工管理技士の資格者について仕事をすることから始まります。

あとから説明する求人で、電気工事施工管理技士の資格者を求めるものがあります。しかし、電気工事施工管理技士の資格を取得する前でも、その求人に応募し内定を取ることはできます。特に電気工事士の資格者で、電気工事の実務経験があると有利です。

下の図をご覧ください。電気工事施工管理技士資格を取得するまでの、必要な実務経験を描いたものです。

あなたは現在40代で電気工事士の資格を持っているのなら、十分な電気工事の実務経験があるのではないでしょうか。それなら、比較的早く電気工事施工管理技士になることができます。

そして、転職エージェントを通して、「これから電気工事施工管理技士を取る」「すでに今年の電気工事施工管理技士試験に申し込んだ」などと熱意をアピールしましょう。実は、求人情報に必須と書かれている条件を満たしてなくても、熱意を伝えることで、採用につながることもあります。

私が転職活動したときも、ある求人に学歴が足りませんでしたが、転職エージェントを通して熱意を伝えて、内定までこぎつけたことがあります。

このように、今までの電気工事士だけでなく、電気工事施工管理まで仕事の幅を広げると年収アップを狙いやすくなります

転職サイトにおける40代OKの求人の実例

では、ここからは実際の求人例を見ていきましょう。

最初の例は、東京都の家電量販店から仕事を請けて、一般家庭に赴き電気工事(エアコン取付など)をする会社の例です。下の図に求人の「求める方」の欄を示します。

年齢不問の求人ですので、40代でも問題なく応募できます。また、第2種電気工事士資格を持っていると歓迎とあります。したがって電気工事士資格を持っているあなたは、有利な立場で応募できます。

この会社は東京の会社で、東京都とその周辺で仕事をすることになります。つまり、地域での賃金差を活かして収入アップするにはよい求人です。

次は、大手鉄道会社の子会社で、主に東日本で設備管理をしている会社の求人情報です。下の図が、同社の「求める方」の情報です。

この会社は、新規に建築する工事よりも、設備維持、保守のための工事がメインの会社です。そして事業を行っている地域は、関東・甲信越・東北で、広い範囲に及びます。

また、施工管理技士の資格者を求めていますので、東日本の地方に住んでいても、施工管理技士へのステップアップを目指すことで給与アップが狙えます

そして、このような本社が東京にあって、広い事業エリアを持っている会社は、地方勤めであっても給与は東京基準であることも多いです。

私が以前勤めていた旧国鉄系の鉄道会社は、大阪に本社があり、基本給は大阪の基準でした。事業エリアは九州から北陸まで広い範囲で仕事をしましたが、地方に行っても見劣りしない給与でした。

実際に、今勤めているプラントは、東京に本社があり東京の基準の給与です。職場は九州にありますが、九州が地元のほかの企業と比べればかなり良い金額です。

下の図は、同じ求人の給与例の欄です。

旧国鉄系鉄道会社の給与体系は、「基本給は安い」「手当が厚い」「ボーナスが大きい」という特徴を持っています。これは子会社であっても同じ傾向です。

これをもとに入社後の年収を試算すると、下の図のように516万円となります。

この会社が20代前半から50代後半まで広い世代を採用しているとすると、40代は真ん中くらいなので、基本給は25万円程度になります。残業は15時間程度ということなので、月の労働時間160時間と基本給および法定割増賃金から残業手当を計算すると、月3万円ほどです。

これに加えて各種手当の金額が、月5万円程度としてあります。これは私が旧国鉄系鉄道働会社に在籍していたときの給与を参考にしました。私の場合、基本給28万円ほどに対して、各種手当が10万円近く支給されていました。したがって、夜勤が多かったのでその分を差し引いて、月5万円の手当というのは妥当な数字です。

一方、WEBの口コミなどでこの会社の給与情報を調べると、「30代後半で500万円強」と出てきますので、この試算は妥当といえるでしょう。

これは、電気工事業を含む建設業の平均年収494万円と比べても、22万円の年収アップです。月にすると2万円弱給料が増えることになります。

転職サイトを使えば、あなたの代わりに会社との折衝をしてくれる

このような求人情報を探すときは、転職エージェントを利用するとよいです。

サービスに登録したあと、あなたは履歴書と職務経歴書を作成して転職サイトに登録します。そのあと、転職エージェントと直接または電話で面談し、転職先を探すことになります。

転職サイトに登録しない場合、あなたは1社ずつ個別に連絡して、履歴書など会社が求める書類を送り、給与などの待遇についてすべて自分で折衝しなければなりません。しかし、転職エージェントのサービスを使えば、そのようなわずらわしい手続きは転職エージェントが肩代わりしてくれます。しかも基本的に代金はかかりません。

転職エージェントが会社と折衝をしてくれている間に、あなたは企業研究やほかの情報収集に時間を充てることができます。

もう一つ、転職エージェントを使うメリットがあります。それは、企業は自社ホームページに求人を載せずに、転職サイトにのみ載せている場合があるということです。

さらに、転職サイトにも公開求人と非公開求人があります。公開求人は、サイトに登録すればだれでも閲覧できます。一方、非公開求人は転職エージェントを通して紹介されるものです。

私は30代になって、転職サイトを使って転職しています。自分でも、ハローワークや会社ホームページなどで求人を探したものの、条件に合うものが見つけられませんでした。

私の場合は、転職サイトのエージェントサービスを使うことで、非公開求人を紹介してもらうことができました。紹介してもらった求人は、条件面で納得できるものであり、無事転職を成功させることができました。

このように転職エージェントのサービスを使えば、あなたがすべて自力で求人を探すより、多くの求人情報を手に入れられます。選択肢は多い方が、より自分が求める仕事に出会える確率が上がり、転職が成功しやすくなります。

求人情報の年齢制限について

最後に、求人情報の年齢制限について解説します。「年齢不問」と書かれているものを2件提示しましたが、実際年齢不問と書かれているものは少ないです。

では、年齢不問と書かれていない求人には40代で応募することはできないのでしょうか。

実は、求人において正当な理由なく年齢を制限することが法令(雇用対策法第10条)で禁止されています。つまり年齢不問と書かれていない求人であっても、問題なく応募できます

反対に年齢制限がある求人は、なぜ年齢制限をしないといけないのかを明記する必要があります。例えば、以下のような文言です。

  • 応募可は18歳以上(労働基準法第63条の坑内労働に該当)
  • 40歳未満に限る(職務経験不問)長期キャリア形成のため

このような文句が求人情報になければ、年齢不問の求人です。

本当に40代を採用しているのか?

しかしながら、「年齢不問と謳っておいて本当は若い人が欲しいのではないのか」というのは至極もっともな疑問です。「40代でもかまわない。むしろ、40代以上のベテランが欲しい」という企業の求人情報は特徴があります。

求人情報のどこかに、「40代」「ベテラン」などのキーワードが書かれてあります。それらを参考にするとよいです。

それでは実例を見ていきましょう。まずは、神奈川県で交通インフラの電気工事をしている会社です。下の図が、その会社の求人情報です。

この求人は、電気工事士や電気施工管理技士の資格保持者を歓迎していますので、資格の点であなたの要件に当てはまります。また「年齢不問」とは書かれていません。したがって40代でも問題ありません。

この求人の「給与例」の欄を見てみると、以下の図のように書かれています。

上の年収700万円の例は、今40代で入社6年目です。したがって入社時の年齢は、34~44歳です。同様に下の年収650万円の例は、45~55歳で入社したと考えられます。

このように、求人情報の中に40代以上で入社している旨の記載があれば、間違いなく40代でも採用があることがわかります。このような情報は、求人情報だけでなく、その企業のホームページにも掲載されていることがあります。

次は、関西の大手メーカーの子会社です。社会インフラの工事を行っている会社です。下の図に求人例を示します。

この求人は、第一種電気工事士や電気施工管理技士の資格保持者を必須しています。また資格の点であなたの要件に当てはまります。また資格に加えて、公共工事の現場管理の実務経験を求めています。

なお、このような求人案件に謳われている公共工事の実務経験は、工事書類(施工体制表)に名前が載ったというレベルではなくて、本当に使えるだけの経験を積んだことを求められます。

公共工事は税金を投入して施工するため、でき上がった物だけでなく、施工途中の写真や図面、施工計画書・打合票などの工事書類が重要視されます。その理由は、第三者に税金の使い道を説明するために用いる資料だからです。

一方、民間の工事は社内でお金の使い方が正当であることを説明できれば良いため、公共工事ほどには工事書類が重要視されません。この説明する場面を「監査」といいますが、身内が行うのでそこまで厳しくありません。

これは、私が準公共工事を行う鉄道会社から民間のプラントに転職したときに感じたことでもあります。鉄道も、かつて会計監査院が検査していた名残があり、今でも厳しい監査があります。

現場代理人は、このような書類一式を作成することになります。このような求人は、年齢よりもいかに経験を積んできたかを重要視される求人です。

まとめ

以上のように、40代のあなたが電気工事士の資格を活かして年収アップを狙うには、「地域を変える方法」「施工管理技士にステップアップする方法」の2つがあることを説明しました。

地域を変える方法として、継続して電気工事士として働きたいときは都市部に近くなれば給与が高くなる傾向が強まります。

また、電気施工管理を行う会社に転職することで、年収アップを狙うこともできます。電気工事士の仕事だけでなく施工管理の仕事をして、将来電気工事施工管理技士資格を取得することによって、給与アップを狙いやすくなります。

また転職サイトを使えば、仕事をしながらであっても時間を有効活用して、企業研究・情報収集しやすくなります。

一方求人情報を見るとき、「年齢不問」という文言がなくても、年齢を制限する文言がない限りは40代でも問題なく応募できます。このとき求人情報を読み込むことによって、その会社が40代を本当に採用しているのかどうか探ることができます。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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