電気工事の仕事をしていて、「施工管理技士」という言葉・資格を耳にすることはしばしばあります。私は無自覚に施工管理の仕事をしていたことがあり、初めて施工管理技士と聞いたとき、何のことかわかりませんでした。

実際に施工管理技士として働いている人と一緒に仕事をしたり、話を聞いたりしているうちに、この仕事がないと、作業員は混乱して仕事がやりにくくて仕方がないだろうと考えるようになりました。

今回は、電気工事施工管理技士がどのような位置づけで、どのような仕事をしているのかを、まず紹介します。その上で、電気工事施工管理技士資格の取得に関して説明し、実際の求人例・年収例について解説します。

もくじ

施工管理が重要視される理由

まず、工事における施工管理がなぜ必要なのか考察します。これがわかると、あなたが目指そうとしている施工管理技士の仕事内容の価値がわかります。さらに、理解して転職することによって、ミスマッチが減ります。

施工管理は、適正価格で、工期通りに完成するように、作業員を統率する仕事です。電気工事の場合は、電気工事士(電工)を采配して工事を進めます。

施工管理は、工事を一人や二人で施工するのには、わざわざ人や時間を充てて実施する仕事ではありません。準備・実施工・後片付けまで、ほぼ思い通りにできます。

しかし、数十人以上で施工する大きな工事の場合は、どうなるでしょうか? 下の図は、作業員が1人の場合と、5人の場合で、同じ時間に施工できる仕事量を簡単に示したものです。

人数が5倍になったので、単純に施工できる仕事量も5倍になりそうです。しかし、実際には5倍には届きません。

似たようなことは、あなたも仕事で経験があるのではないでしょうか。忙しいときに、追加の人員が欲しくなることがあります。しかし、実際に追加人員が来ても、思ったより仕事がはかどらないことは多いです。

これは、仕事に不慣れな人が来たときだけではなく、仕事ができる人が助っ人できてくれたときも同様のことが起こります。

なぜこのようなことが起きるかというと、複数人で仕事をするときは、人数が増えれば増えるほど、待ち時間や指示の伝達ミスや取り違えによるやり直しなどが増えるからです。

下の図は、作業引き継ぎで指示に時間がかかることを示したものです。

作業員Aが一人で、相互に関連する仕事1と仕事2を、順に行う場合を基準として考えます。作業員Aと作業員Bの2人で、仕事1と仕事2を分担する場合、必ず引き継ぎをしなければなりません。

この引き継ぎ時間が発生するために、一人で作業を行う場合に比べて全体の作業時間は長くなっていることがわかります。ただし、一人あたりの作業量は減っています。

次に、待ち時間が発生する場合を下図で説明します。

作業員Aは仕事1を、作業員Bは仕事2を同時に始めます。しかし、仕事1は仕事2に比べて早く終わってしまいます。仕事3は作業員Bが担当するため、作業員Aは引き継ぎをはじめるまで、待ち時間が発生します。

施工管理技士は、このような引き継時間や待ち時間のロスを極力小さくし、正しく的確に伝わるようにテクニックを駆使します。それが、適正価格で工期通りに工事が進むために重要なのです。

施工管理の腕前は、成果物に如実に現れます。私も発注側として、受け取りを拒否したくなるような工事を見たことがあります。あとで聞くと、やはり施工管理が下手な人が担当した工事でした。

このように、複数人で作業をする場合は、施工管理技士が活躍します。

複数人で実施する工事は、どの時代もどの場所にも必ずあります。そのため、施工管理技士の需要は絶対になくなりません

施工管理技士の仕事は、きついのか?

施工管理技士の仕事は、肉体的にきつい仕事ではありません。実際に施工をするのは、電気工事士(電工)がほとんどです。施工管理技士の仕事は、電工の采配や作業を指示するときに手本を見せるなど、主体的に手を動かす仕事はあまりありません。

しかし、時間的に長く拘束されることはあります。特に、竣工間際の追い込みが発生すると、夜遅くまで仕事をしていることはあります。

ただし、知り合いの電気工事会社の社長に聞くと、普段は残業を発生させないように施工管理をしているということです。

つまり、残業が発生すれば電気工事士に追加で日給を払わなければならず、工事費が安い場合は特に、採算が合わなくなります。施工管理は、コストを下げることも仕事の一つですので、残業ありきの仕事ではありません。

さらに、一つの工事が終わって、次の工事に取り掛かるとき、ある程度まとまった休みを取る制度を実施している会社もあります。

私がこれまで10年以上、施工管理の仕事をしている人と仕事で付き合ってきた中で、つらそうな顔をしている場面には多々出会いました。

しかし、それは一時的なもので、「つらいことを転職理由に辞めた」「転職したいとこぼす」人にあたったことがありません。

酒席でなぜ辞めないのか聞いたことがあり、彼らは「つらいこともあるけれど、自分の采配でモノができあがるのが楽しい」「力の抜きどころがある」など楽しそうに話してくれました。

このように、施工管理技士の仕事は、多少きつい場面はあっても、モノを作り上げることに「やりがい」を見出せることが特徴といえます。

施工管理技士資格なしでも施工管理に転職は可能

では、施工管理をするのに必要な資格はあるのでしょうか。国土交通省所管の建設業法で定められ、施工管理の力を担保する資格として、「電気工事施工管理技士」という資格があります。

この資格は国内法に定められているものなので、海外で電気工事の施工管理をする場合は必要ありません。

電気工事施工管理技士の資格は、ビルメンテナンスのような電気設備保守というよりは、新しく電気設備を設置したり、大規模改修したりするような仕事で真価を発揮します。

また、俗に「一級電気施工管理技士」のように、工事を略して表現することもあります。求人などでも、略した表現を見かけますが、同じものと考えて差し支えありません。

建設業法では、受注金額が一定規模以上の工事では、「監理技術者」を専任で現場に置くことを求めています。電気工事施工管理技士資格は、この「監理技術者」になるために必須の資格です。

大きな工事になると監理技術者・主任技術者を含めて複数人(5~6人以上)で施工管理を行うことも珍しくありません。このチームで施工管理を行う場合は、全員が資格を持っている必要はありません

私が以前鉄道会社に勤めていたとき、担当した新規路線開業のプロジェクトで、財閥系電機会社で施工を担当してくれた人は、「これから施工管理技士の資格を取る」といっていました。

その工事(発注額は、最終的に2億円強)の監理技術者は別にいて、実質的にその現場監督として取り仕切っているのはその人でした。年齢は当時50歳を過ぎていて、様々な工事経験もあり、施工管理の知識も十分にある人でした。

このように、施工管理技士の資格がなくても、実質問題なく仕事ができる会社はたくさんあります

あなたが今、電気工事施工管理技士資格を取得しているなら、転職活動において大いに役立ちます。転職エージェントなどを通して、希望する会社に対して年収や待遇面で有利に交渉する材料になります。

一方、電気工事施工管理技士資格を持っていないとしても、転職活動でマイナス要素にはなりません。

企業が行う中途採用は、予定していた採用数が充足すると、求人はなくなります。あなたの気に入った求人があったとしても、資格取得に数ヶ月を費やしていると、そのときに求人があるとは限らないのです。

また、入社後に施工管理技士を取得することによって、会社によっては給料面で以下のような有利な点があります。

  • 受験料補助の支給:受験にかかる受験料や交通費・宿泊費を全額または一部を会社が負担するもの。
  • 資格取得一時金の支給:当該の資格を取得したとき、報奨として一時金を支給するもの。
  • 資格手当の支給:当該の資格を取得したことにより、給与に一定額を上乗せして支給するもの。

このうち、受験料補助と資格取得一時金は入社してからしか支給されません。

下の図は、求人例の章でも紹介する株式会社花森の求人票です。待遇・福利厚生の部分を抜粋しています。

ここにも、「資格取得報奨金」が支給される制度があると記載されています。

また以下の写真は、私が鉄道会社に勤めていたときに、支給された資格取得一時金が記載されている給与明細の一部です。

このような、資格取得一時金などを支給している会社は多数あります。

以上のことから、電気工事施工管理技士資格なしでも、気に入った求人があればすぐに転職活動をはじめることが、転職を成功させる秘訣です

将来的に電気工事施工管理技士資格取得を求められる

ただし、施工管理技士資格無しで就職したあとは、多くの会社で資格取得を奨励しています。これは在籍している資格者のバックアップの意味と、将来的に「監理技術者」としての活躍を期待されるからです。

この資格の取得には、実務経験が必要です。実務経験の年数は、学歴や取得している資格によって変わります。下に、電気工事施工管理技士資格の取得フローを示します。

大学の指定学科(電気科または電気工学科)を卒業していれば、電気工事の実務経験が3年あると1級電気工事施工管理技士の受験資格を得ることができます。

学校により、法令上対象の学科であっても名称が違う場合があるので、卒業した学校に詳細は確認する必要があります。受験申込時に、学校が発行する卒業証明書が必要ですので、そのときに確認すると良いでしょう。

文系の学科などを卒業しているときは、大卒であっても10年以上の実務経験が必要です。また、高卒でも同様です。

その場合は、電気工事士資格を取得することで、電気工事施工管理技士の受験資格を得るまでの期間を短縮することが可能です。具体的には、第一種電気工事士資格を持っていれば、実務経験なしで電気工事施工管理技士を受験することが可能です。

しかし、第一種電気工事士資格を取得するためには、第二種電気工事士資格を取得し、電気工事の実務経験が5年以上必要です。したがって、普通科高校卒業であっても、最短5年強で一級電気工事施工管理技士資格を取得することが可能です。

あなたがこれまで電気工事の仕事をしていて、電気工事士の資格を取得しているのなら決して無駄になりません。私が勤める電力プラントにも、かつては電気工事士として働き、今は施工管理技士として活躍している人が現場で采配をしています。

施工管理の仕事をしていく上では、電気工事士資格を活かして施工管理技士資格を取得できることを覚えておくと良いです

施工管理技士としての求人と年収を研究する

それでは、電気工事施工管理技士の実際の求人例を確認していきましょう。転職サイトで探す場合は、「電気 施工管理」や「電気工事施工管理技士」で検索するとすぐに見つかります。

また、施工管理技士は受注側企業で必要になるテクニック・資格です。したがって、発注側になる大企業(例えば電力会社、工場、鉄道会社など)や公務員は選択肢から外れます。このことは、理解しておく必要があります。

まず、1番目に紹介するのは、大阪に本社のある真鍋電機株式会社(下図)です。この会社は、大手空調メーカーのパートナー会社として、プラント内設備の工事が得意な会社です。

この求人では、電気工事スタッフと施工管理スタッフを同時に募集しています。施工管理未経験であれば、電気工事士として施工の仕事をしながら、ゆくゆくは施工管理の仕事を目指します

施工管理の経験があれば、すぐに施工管理職として調整役を任されるとあります。

このように、施工管理の経験を問わず活躍できる場面が多い求人です。

この求人の「求める人材」の欄には、下図のように「電気工事士(第一種または第二種)」「普通自動車免許」の資格が必須とあります。

電気工事士資格を求めていることから、ある程度電気工事に習熟した人を求めていることがわかります。ズブの素人だと、応募しても書類審査を通りません。

また、普通自動車免許が必須とされています。「資格」の章では記載しませんでしたが、電気工事業では自動車での移動が大半です

これは、工具や材料を自動車で運ぶことが多いからです。また、公共交通機関で移動するには不便な場所に工事施工で赴くこともよくあります。

私の勤める電力プラントも、100万都市にありながら、最寄りのバス停は2km以上離れており、さらに便数が日に4本しかないという非常に不便な場所です。このような不便な場所で仕事をするためにも、普通自動車免許を持っていることが必須の求人は多いです。

もし、普通自動車免許を持っていないようなら、取得しておくと良いです。合宿などを利用すれば2週間ほどで取得可能です。

施工管理技士資格については、「1級、2級電気工事施工管理技士」資格が歓迎条件とされています。この資格を持っていれば、比較的早く施工管理の仕事に就くことができます。

次に紹介するのは、関東だけでなく関西・中部・九州の拠点で電気工事業を展開する株式会社花森の求人(下図)です。

この求人では、ホテルや商業施設などの、比較的大きな物件の電気設備施工管理職を募集しています。先に説明したように、比較的大きな現場を持つことになるため、施工管理の担当者は複数名います。

未経験の場合は、この複数の施工管理担当者の中に混じって経験を積むことになります。それが、求人票の「未経験の方は、まずは先輩社員のサポートから~」という表現で説明されています。

下の図は、同じ求人の対象となる方の欄です。

先ほどの真鍋電機株式会社と違って、電気工事士資格は求められていません。必須とされているのは、普通自動車免許のみです。

学歴一切不問で未経験者OKあることから、初めて施工管理の仕事をしようとしたとき、これほど敷居の低い求人はありません。もちろん、資格・経験があれば歓迎されます。

3番目は東京にある株式会社東京宮本電気の求人(下図)を紹介します。

この求人は、ゼネコンから発注を受けて住宅(マンション)の電気設備施工管理を担当する社員を募集するものです。

真鍋電機株式会社、株式会社花森のように業務用設備ではなく、家庭用の内装設備が多いので、電気工事の経験が浅くても比較的イメージしやすい仕事です。

また、下の図のように、この求人も経験・資格不問です。

さらに、自動車免許所持も問われていません。学歴も高卒以上とされており、実質不問といえます。

唯一、基本的なPCスキルを求められています。これは、何ができるくらいと考えたら良いでしょうか。

施工管理の仕事を進める上で、施工計画書を客先に提出することがあります。施工計画書は、Microsoft Officeで作成されていることが多いです。これを使って、表や図入りで数十ページほどの資料が作れるほどと考えておけばよいです。

また、歓迎するスキルとして建築系CADが挙げられています。作業員などに作図して説明することや竣工時の成果物として図面を提出することがあり、jw-CADやAuto-CADの使用経験があると、すぐにでも役立ちます

施工管理技士としての仕事を探すときは、このような求人を探すと良いです。

建設業の年収統計調査を参考にする

最後に、施工管理技士として働く場合の年収について説明します。求人例で紹介した3社について、同じ求人での提示年収または提示月給を以下に列挙します。

上から、真鍋電機株式会社、株式会社花森、株式会社東京宮本電気の提示年収・月給です。

真鍋電機株式会社は、年収例が表記されていて350~600万円です。残りの2社は年収としては記載されていないので、「ボーナスを2ヶ月分」「そのほかの手当なし」で試算してみます。

すると、株式会社花森が350~560万円、株式会社東京宮本電気は350~700万円と試算できます。これに諸手当が入ると、1~2割は上振れすると推定できます。

実際に転職するときは、あなたの年齢や転職する地域によって提示額は変わります。個別の求人票の提示額が妥当かどうかは、建設業の年収と比較してみるとよいです。

下の図は、国税庁が実施している建設業の民間給与実態調査の結果をグラフ化したものです。

引用:平成29年度民間給与実態調査(国税庁)第8表をグラフ化

これによると、300~500万円が建設業の年収のボリュームゾーンであることがわかります。

年収交渉のときや、転職する会社を選ぶときは、このデータを参考にすると良いです。

まとめ

電気の施工管理技士は、受注規模の大きな電気工事を施工する場合に活躍を期待されるポジションで仕事をします。

この仕事をするためには、施工管理の知識技能が必要です。知識技能は実務で覚えることになります。したがって、施工管理の仕事を始めるとき、資格を必須とされていることは、まずありません。

しかし、将来的に「電気工事施工管理技士」資格の取得を求められることが多いです。この資格を取ることで、年収アップなどが見込めます。

転職サイトを用いて、電気の施工管理の求人を探すには「電気 施工管理」とするか、資格名で「電気工事施工管理技士」として探すと、多数の求人が見つかります。

年収は、建設業の年収を参考にすると良いです。国税庁の調査によると、300~500万円がボリュームゾーンです。この数字を基準にして、転職先を選ぶと良いです。

以上のような転職事情を把握して転職活動を行うことで、転職成功しやすくなります。


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