日本全国縦横無尽に敷設されている高速道路は、実は電気がないと通ることができません。それは、ただ舗装された道路が張り巡らされているだけでなく、照明・電子案内・監視・休憩サービス・料金徴収(ETC)など高規格路線を維持するためにさまざまな電気設備があるからです。

そのため、高速道路会社には電気に関する一つのセクションが存在します。全国の高速道路の電気設備を工事・維持・運用するために、多くの人たちが働いているのです。

しかし、それぞれが同じ仕事をしているわけではなく、会社ごとに大きく分担をして高速道路の電気設備を工事・維持・運用しています。つまり全く仕事内容が違います。そして求められる資格も違います。

あなたが高速道路の電気設備関係の仕事に就きたいと思っても、仕事内容や求められる資格を熟知していなければ、転職活動はうまくいくはずがありません

ここでは、「高速道路会社に関わる企業の仕事内容」「それぞれの会社が求める資格」「それぞれの会社の年収」について、詳しく解説します。

高速道路の電気に関わる企業の種類・仕事内容と求人例

高速道路の電気設備に関わる会社は、大きく分類して「高速道路会社」「高速道路会社グループのエンジニアリング会社」「それ以外の電気工事会社」があります。それぞれの仕事内容の概要をまとめたものが下表です。

会社 仕事内容
高速道路会社 財産管理・点検・維持工事のための契約事務 NEXCO
グループのエンジニアリング会社 工事の施工管理・一部の管理/点検 NEXCOエンジニアリング
工事会社 実施工 地元の工事会社

もちろん仕事内容だけでなく、高速道路の建設や維持に関する考え方も違います。転職先として検討するときには、「あなたがどのように自分のスキルや経験を活かしたいのか」と「高速道路の電気設備に関わる会社の仕事内容など」が合致しているかを十分検討する必要があります。

ここからは、それぞれの会社について詳しく解説します。

高速道路会社は管理・点検が中心

高速道路会社には、旧日本道路公団であるNEXCO3社(東日本・中日本・西日本)と、都市圏にある都市高速道路を運営する都市高速道路公社があります。

具体的な求人例では、下に示す西日本高速道路会社(NEXCO西日本)の求人があります。この求人では、電気設備の企画・計画などの管理業務、設計・積算・工事管理などの工事業務を行う人材を募集しています。

このような高速道路会社は、電気関係設備の「管理」を主に担当します。「管理」の具体的な仕事内容は、下記のことです。

  • 電気設備が機能維持をしていることを常に把握していること(点検)
  • 電気設備が機能維持するために適切な措置を講じること(工事)
  • 電気設備の資産を適切に把握すること

点検や工事と言っても実際に自らが先頭に立って行うことは少なく、グループ会社に発注して点検・工事を行います。求人票にも「発注者」とあるように、あくまでユーザー企業として管理を行います

したがって、発注のための工事設計や契約事務などの書類仕事が多いです。また、「インフラとしての高速道路を維持すること」が仕事の最も優先される事項です。

そして重要なことは、これらの仕事は全て法令に沿って行われることです。高速道路会社は民営化したとはいえ、特殊会社と言って存在そのものが法令によって認められた会社です。

高速道路会社は、「高速道路の運営」という公共性の高い事業を行っています。そのため、簡単に事業を変更や、倒産してもらっては困ります。そこで、地域独占で事業を行えたり、新規参入が事実上不可能だったりして、優遇されている面があります。

その代わり、会社の一挙手一投足が法令によってガチガチに縛られています。

すでに民営化して何十年も経過したJRやNTTの知り合いに聞いても、法令によりガチガチに縛られるというのは変わらないということです。NEXCOは民営化がJRやNTTより遅いので、この傾向は同様に続くと考えて良いです。

したがって、「決まりに従って仕事をすること」が苦手な人には向かない会社です。何をするにも、「法令」「マニュアル」「前例」などの根拠が求められ、ルールの逸脱は厳しくとがめられます。裁量権を持って自由に仕事をしたい人にとっては、息苦しいことこの上ないです。

反対に、規則を守るのが好きで、ルール化されていない仕事をルール化していくことが好きな人にはたいへん向いている仕事です。高速道路会社の「法令に縛られる特性」を十分承知した上で転職を決めてください。

高速道路会社のグループ企業でエンジニアリング会社は施工管理を担当する

次の選択肢になるのが、高速道路会社のグループ企業でエンジニアリングを担当している会社です。実際の求人でいうと下図の西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社が該当します。

西日本高速道路エンジニアリング中国社は、NEXCO西日本グループの一員です。中国地区(広島、岡山、山口、鳥取、島根)の高速道路の電気設備を担当しています。

NEXCOグループであることから、社風はNEXCOに準じます。つまり、法令に沿って仕事を進めるやり方は変わりません。NEXCO本体から点検や工事を受注して、法令に基づいた施工を行います。

注意したいのは、エンジニアリング会社は受注者として施工管理を中心に行うということです。電気工事士として実施工を担当するのではなく、協力会社を集め工程通り品質高く施工を進める計画を立て実行する管理的な仕事が中心になります。

ただし、管理と言ってもNEXCO本体とは立場が違います。下の図のように、あくまで受注者として管理を行います。

もちろんエンジニアリング会社においても、NEXCOグループとして「インフラとしての高速道路を維持すること」が重要なのは変わりません。しかしエンジニアリング会社の場合は、高速道路全体よりも高速道路の電気設備に関して専門性を絞った仕事をすることが求められます

高速道路の電気工事会社が実施工を担当する

最後に説明する工事会社は、実際の電気工事などの施工を行う会社です。

電気工事会社は、エンジニアリング会社の指揮監督のもとで実際に工事を施工する会社です。手を動かして施工するのは、この工事会社です。

実際の求人例でいうと、下図の皆晃電気株式会社の求人が該当します。皆晃電気社は、福岡県で高速道路の仮設電気工事で高速道路に関わっています。

このような会社の場合、高速道路関係の仕事だけでなく、一般住宅やプラントなどの電気工事も行っていることがあります。皆晃電気社の場合は、一般住宅の新築・リフォーム電気工事も行っています。

知り合いの電気工事会社の社長に聞くと、「年間を通じて高速道路関係の仕事が続くことはまれ。事業継続のためには、高速道路以外のほかのお客さんの仕事もしなければならない」といっていました。

実施工で高速道路の電気設備に関わるには、電気工事会社を探すのが本筋です。しかし、高速道路だけでなく、ほかの設備の電気工事も行う場合が多いことを承知しておく必要があります

必要とされる資格や経験が違う

以上の高速道路会社・エンジニアリング会社・工事会社では、求められる資格も違います。ここからは、それぞれの会社で求められる資格について、順に説明します。

高速道路会社は管理系の資格が有利

高速道路会社は、主に高速道路の電気設備の管理を担当します。したがって、管理業務に必要な資格を持っていれば評価されやすいです。

西日本高速道路社の求人にも、電気関係の資格として「電気主任技術者資格」「電気通信主任技術者資格」「無線従事者資格」「電気工事施工管理技士資格」などの、管理側の資格が歓迎条件として記載されています。もちろん同様の経験があればなお良いです。

例えば、下の写真はサービスエリア(SA)の受電中です。6.6kVで受電していることがわかります。

上の写真の橙色丸で囲んだところを大きく写したのが、下の写真です。西日本高速道路株式会社の受電であることがはっきりと示されています。

このような高圧以上で受電する設備を持つ事業者は、「電気主任技術者」を自社の従業員の中から選任しなくてはなりません。高速道路会社の場合、SA以外にも複数のインターチェンジなどで受電しています。したがって、電気主任技術者の資格を持っていることが強みになります。

なお、西日本高速道路社は建設業許可を得ていません。つまり、「電気工事施工管理技士資格」は会社にとって必須の資格ではありません。発注側企業として施工管理を行うことがあり、「取得していたら知識・技能を活かしやすい」ので歓迎条件としています。

したがって高速道路会社における「電気工事施工管理技士資格」の優遇度合いは、「電気主任技術者資格」などの優遇度合いに劣ります。

エンジニアリング会社は電気工事士資格より施工管理技士資格

次に、エンジニアリング会社で必要とされる資格について説明します。先に紹介した西日本高速道路エンジニアリング中国社の求人では、下図のように「電気工事士資格」「電気主任技術者資格」「電気工事施工管理士資格」のどれかを持っていることが応募条件になっています。「技術士資格」「RCCM資格」は、業務に必ず必要な資格ではないのでここでは触れません。

エンジニアリング会社求められる資格は「電気工事士資格」「甲種消防設備士資格」などの実施工に必要な資格だけではありません。「電気工事施工管理技士資格」といった施工管理に必要な資格が求められるのが特徴です。電気工事施工管理技士資格の方が取得難易度が高いので、すでに取得していたら強みになります。

また。同社がホームページに公開している「就職ロードマップ」には、新卒入社後の年数と取得を推奨される資格が記載されています。

これよると学歴の差で多少幅があるものの、「30代前半までが実施工に必要な資格」「30代後半以降が施工管理などに必要な資格」が求められることがわかります。すなわち転職活動において、あなたの年齢により求められる資格が変わります。

あなたの年齢が20代前半なら「電気工事士資格」も評価されやすいですが、30代後半なら評価されることは考えにくいです。年齢が高くなるに連れ「電気工事施工管理技士」などの資格を取得していることが評価されます

電気工事会社は電気工事士資格で即戦力

最後に、電気工事会社で求められる資格を説明します。工事会社は、電気工事の実施工を行うので電気工事士資格を持っていることが求められます。

先に紹介した皆晃電気社の求人では、第一種または第二種電気工事士資格を取得していることが歓迎条件とされています。

また給与欄には、下図のように第一種電気工事士資格を持っていると優遇することが記載されています。

高速道路に関係する電気設備は高圧以上で受電していることが多いです。そのため第一種電気工事士資格を持っていると、即戦力としてすぐに現場で働くことができます。第二種電気工事士資格だと、別に講習を受けるか資格取得が必要です。その分、第一種電気工事士の有資格者が優遇されるのです。

工事会社の場合、電気工事施工管理技士資格や電気主任技術者資格を持っていても即戦力としては期待できません。もちろん、電気工事士資格より難易度が高く、電気工事士試験を受けるときに筆記試験が免除になるなどの措置があるため、全く無価値ではありません。

ただし、「管理側の資格を持っていること」をアピールするのではなく、「管理側の資格を活かして電気工事の実施工にどう活かせるか」をアピールする必要があります。さらに工事の経験がないと転職成功は難しくなります。

以上のように、高速道路会社・エンジニアリング会社・工事会社のどれに転職するかで求められる資格が違います。あなたが持っている資格・経験から取得しやすい資格を棚卸しした上で求人に応募することが、内定を得るための必須事項です。

年収を知る

最後に高速道路(電気関係)の会社の年収を紹介します。冒頭で紹介した西日本高速道路社の年収は、下図のように初年度350~600万円と示されています。

補足として「平均年収が781万円」と書かれているので、次年度以降の年収の伸びも期待できます。同様にここで紹介した3社の求人で提示されている年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 分類
西日本高速道路(株) 350~600 高速道路会社
西日本高速道路エンジニアリング中国(株) 400~600 エンジニアリング会社
皆晃電気(株) 250~450 工事会社

政府統計によるとサラリーマンの平均年収が500万円弱なので、高速道路会社・エンジニアリング会社の年収が平均的に、工事会社の年収が低めに提示されています。

ただし、先に詳しく説明したように、各社の仕事の内容が大きく違います。年収に惹かれて、今まで電気工事の実施工経験と資格しか持っていない人が高速道路会社を希望しても、ミスマッチに終わる可能性が高いです。

私の転職活動初期では、提示された年収を重要視して仕事内容をあまり見ずに求人に応募していました。そのためなかなか内定を得ることができませんでした。企業としてもミスマッチは避けたいので、当たり前の結果と言えます。

このように額面の年収だけを見て転職活動するのではなく、仕事内容と合わせて転職先の企業を選ぶことが、転職成功の秘訣です。

まとめ

ここまで、高速道路の電気設備に関わる転職をする際の詳細について解説してきました。高速道路の電気関係に転職するには、まず「高速道路会社」「エンジニアリング会社」「工事会社」の区分について理解しておく必要があります。

それぞれ、「高速道路の運営者として電気設備を管理」「高速道路の電気設備工事の施工管理」「高速道路の電気設備工事の実作業」という仕事の分担があります。また、仕事内容が違うことに伴って、必要とされる資格・経験も違います

あなたの経験や取得している資格を棚卸しして、必要とされる会社・職種に応募すると採用されやすいです。また、これまでとは違った働き方を望むなら、仕事内容の違いを熟知した上で、必要なスキル・経験をアピールしなければなりません。

高速道路会社とグループのエンジニアリング会社を希望する場合は、「厳格にルールに従って仕事を進めるやり方が社風であること」を承知しておいてください。自由に裁量で仕事をしたい人には向きません。

高速道路の電気設備に関係する会社の年収は、高速道路会社やエンジニアリング会社の年収が相対的に高くなっています。反対に工事会社は低めです。

しかし、仕事の内容が全く違うので、年収だけを考慮するのではなく、仕事内容を十分考慮に入れて転職することをおすすめします。これにより、ミスマッチを極限まで防ぎ、転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。