ボイラー技士免許のうち2級ボイラー技士免許は、ボイラーの実務経験不要で取得できます。しかし、転職では即戦力の人材を求めることが多いので、経験者のほうが喜ばれます。

では、2級ボイラー技士資格を取得しているものの、ボイラーの実務経験がない場合は、転職で資格を活かすことはできないのでしょうか。

実は、ボイラー技士免許を持っていて未経験OKの求人はあります。ただ、探し方を間違うと求人が限られてしまいます。優れた求人を見つけるには、探し方を工夫する必要があります。

ここでは、「ボイラー技士で実務未経験OKの求人例」「さらに優れた求人の探し方と攻略方法」「ボイラー技士資格者の年収・給料」について詳しく解説します。

もくじ

未経験OKの求人を探してみる

ボイラー技士免許のうち、1級以上の取得には実務経験が必須です。したがって、実務未経験ということは2級ボイラー技士免許が活かせる求人を探すことになります。

2級ボイラー技士免許は業務独占資格で、以下の2つの業務を独占的に行うことができます。

  1. ボイラーの取り扱い
  2. 伝熱面積が25平方メートル未満のボイラー取扱作業主任者業務

近年ボイラーの取り扱いは、ほとんどが自動制御になっています。つまり、ボイラー取り扱い作業に習熟していなくても、簡単に取り扱える場合が多いです。

ボイラー取扱作業主任者は、ボイラー取り扱いに関する安全を担保するために労働安全衛生法で選任しなければならない役職です。責任が重たいので、未経験でOKということはありません。

また、もし未経験OKのボイラー取扱作業主任者の求人があったとしても、「法的に責任の重たい役職を未経験者にさせること」が、人材不足や組織規律の欠如を予測させます。入社してもきつい思いをする可能性大なので、避けたほうが無難です。

あとは、「求人を募集する企業が募集する職種で未経験者を認めるかどうか」という観点で求人を探せばよいです。

多いのはビルメンテナンスの求人

転職サイトで「ボイラー技士」をキーワードにして、未経験OKの求人を検索すると、数多くヒットするのがビルメンテナンス職の求人です。

ビルメンテナンスとは、オフィスビルや大型商業施設・病院・学校・公共施設などの大きな施設で、空調・電気・給排水設備などの保守管理をする仕事です。「施設管理」「設備管理」とも呼ばれます。設備・施設がある限りなくならない、将来性の心配ない仕事です。

先述の大きな施設では、空調や温水の熱需要に応えるためにボイラーが使われます。したがって、ボイラー技士資格が必要になります。

あなたは、下の写真のような防災センターを見たことがあるでしょうか? 多くの場合、施設の従業員入り口の近くにあります。

ビルメンテナンス職は、普段このような防災センターやバックオフィス(中央監視室など)に待機して、修繕計画や外注事務を行います。そのほか、適宜施設内をパトロールし、故障が起きた場合には応急修繕対応するのが主な仕事です。

具体的なビルメンテナンス職の求人例を挙げると、下に示す株式会社小田急ビルサービスの求人が該当します。小田急グループとして東京のほか神奈川でも事業展開しているビルメンテナンスの会社です。

求人票の記載には、二級ボイラー技士以上の資格を持っていることが必須で「未経験歓迎」とされています。

実は、ビルメンテナンスにはビルメン4点セットと呼ばれる必須資格があります。それは「2級ボイラー技士」「第二種電気工事士」「危険物取扱者乙種4類」「第三種冷凍機械責任者」の4つの資格です。

電気で動作する個別空調や個別給湯設備の普及で、ボイラー設備は減りました。しかし、減ったとはいえまだまだ多くの施設でボイラー設備があります。だから、ビルメン4点セットに2級ボイラー技士資格があるのです。自信を持って採用試験でアピールしてください。

一点、ビルメンテナンス職の求人で注意点を挙げると、ボイラーだけでなく多種の設備を保守しなければならないということです。ボイラーだけを扱えるわけではありません。

例えば、下の写真のように空調のメンテナンスをすることも、ビルメンテナンス職の仕事の範囲です。

また、テナントに入っているお客様とのやり取りもあります。これは、ビルメンテナンス職がサービス業と言われる理由でもあります。お客様とのコミュニケーションを楽しめる人だと、やりやすい仕事と言えます。

このようにビルメンテナンスに転職するときは、生粋の技術職ではないことを理解した上で転職する必要があります。

ボイラーを使う工場の製造スタッフ・運転員の求人

ビルメンテナンスに比べて数は少ないものの、工場の製造スタッフ・運転員の求人も未経験のボイラー技士有資格者が応募することができます

製造業において、製造工程で熱を使うことがあります。電気加熱も一般的になっていますが、大規模な工場ではボイラーで蒸気を使って加熱するほうが効率的です。

例えば、下の写真は医療品メーカーの工場です。工場の熱供給に蒸気を使っており、一部蒸気が漏れているのがわかります。

また、一見ボイラーを使っているとは思えない工場でも、ボイラーが設置してあることがあります。

私がハウスメーカーの工場を見学したときに、工場内にボイラーが設置してありました。工程のどこに蒸気を使っているのか全く不明だったので聞いてみると、金物の電着塗装工程で使うということでした。

工場の運転員を募集している具体的な求人例は、下記の日本製紙株式会社の求人が該当します。この宮城県岩沼工場の求人では、メンテナンス要員または操業オペレーターを募集しています。

同僚に製紙工場から転職してきた人がいるので、ボイラーについて聞いてみました。すると、パルプを作る工程などで大量の熱を使うということです。また同僚の前職では、熱供給と電力供給を自社で賄うための火力発電所を持っていたということです。

このように製造業でも、ボイラー技士の有資格者が求められます。未経験OKの求人もあるので、注意して探すと良いです。

求人票で未経験OKでなくても問題ない

では、未経験OKとしていない求人に応募することはできないのでしょうか。実は、未経験OKとしてない求人であっても、応募することが可能です。

求人を出す会社としては、同じボイラー技士の有資格者なら未経験者より経験者が応募してくれたほうが嬉しいと思うかもしれません。しかし、あなたが積んできた職務経験の中で、何が先方企業の求めているものに近いかを、事前にあなたが把握することは不可能です。

したがって、未経験OKとしていなくても応募をしてみると良いです。

私の転職活動経験から言っても、資格のみ有していて、職種・業種未経験の分野に応募したとしても、書類選考を通ることは結構あります。

私が勤める電力プラントでは二級ボイラー技士がどう評価されるか

私自身の経験ではなく、私が勤める電力プラント(火力発電所)の例を出します。電力プラントなのでボイラー技士免許を持った運転員が必要です。

実際に働いている運転員(正社員)の中には、前職が「中古車販売の店員だった人」「焼き鳥屋の店員だった人]などがいます。彼らは未経験であるどころか、ボイラー技士免許すら持っていない状況で転職成功しています。

もちろんいきなり責任ある立場で仕事をすることはできません。一作業員としてさまざまな操作を覚えながら、ボイラー技士資格を取得し、ステップアップしていっています。

このような火力発電所の具体的な求人例を上げると、下の株式会社三池火力発電所の求人が該当します。資格要件の欄には、2級ボイラー技士資格を持っていることが必須条件に書かれています。

また、経験については「未経験OK」とは明記されていません。したがって、転職サイトの求人検索で「未経験OK」の絞り込みをすると、このような求人を見つけることができません

同様の求人はいくつかあるので、「未経験OK」の絞り込みなしでも求人を探すと良いです。

転職エージェントを使って企業に打診する

希望する求人を見つけて実際に応募してから不採用になるのは、気持ちが良いものではありません。何度も不採用が続くと精神的にきついものがあります。私も転職活動中、採用がなかなか決まらなかったときは、胃が痛くなったものでした。

このような無用な心配を避けるためには、転職エージェントサービスを使うと良いです。

転職エージェントサービスの概要は、下図のとおりです。求職者と人材を募集する企業との間に立って、双方が満足できるようにマッチングする仕事です。

転職エージェントが行う仕事は、単に求人を紹介してくれるだけではありません。求職者が満足できる転職を叶えられるように、さまざまなサービスを行っています。

その一つが、「求人内容の詳細を先方企業に問い合わせること」です。

下は、私が転職活動をしていたときに、求められる内容に疑問があったので、転職エージェントを通して問い合わせたメールの一部です。

結局この求人は私の希望に合わないことが、転職エージェントを通して確認できたので応募しませんでした。

このように、転職エージェントサービスをうまく使えば、無用な応募を減らせ、優れた求人のみに全力で応募することが可能になります

二級ボイラー技士の年収アップなら資格手当より平均年収の高い業種を狙う

最後に、2級ボイラー技士の有資格者の給料・年収について解説します。

まず、資格手当について説明します。資格手当は、該当する資格を保有していることで月々支払われる手当のことです。ここで紹介した求人で、2級ボイラー技士に対する資格手当の具体的な記載はありませんでした。

そこで、ビルメンテナンスの会社で資格手当の具体的金額の記載がある例を挙げます。下が東京を中心にビルメンテナンス業を展開しているグローブシップ株式会社の求人です。2級ボイラー技士資格の手当が月々2,500円であることが記載されています。

類似の求人を調べると、2級ボイラー技士免許に対する資格手当は数千円です。年収に換算すると数万円程度の増が見込めます。

続いて、年収について説明します。冒頭で紹介した小田急ビルサービス社の年収は、下図の通り300〜450万円と記載されています。

同様に、ここで紹介した求人の年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 業種
(株)小田急ビルサービス 300〜450 その他事業サービス
日本製紙(株) 300〜450 製造業(パルプ・紙・紙加工品)
(株)三池火力発電所 207〜325 電気業

これによると、横浜ビルシステム社と日本製紙社が似たような水準で、三池火力発電所がそれより低い水準となっています。

サンプル数を多くして多数の会社の年収を調べてみると、業種により平均年収が大きく違います。業種ごとの平均年収は、厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査が信頼できるデータといえます。

下に示すグラフが、賃金構造基本統計調査で公表されている平均年収のうち、ボイラー技士資格が活用できる可能性のある業種をピックアップしてグラフ化したものです。青色が製造業、緑色が非製造業を示しています。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

このグラフにおける左側が平均年収の高い業種で、将来的に高い年収を得やすいといえます。最も平均年収の高い業種と、最も平均年収の低い業種で、数百万円単位で差があることがわかります。

資格手当で得られる年収の増分は、年間10万円に届かない程度でした。一方、業種による平均年収の差は数百万円に及びます。

したがって、資格手当の有無は年収においてあまり重要ではありません。業種の選択次第で、高い年収を得られるかどうかが変わります。より高い年収を得たいなら、高い平均年収の業種に積極的に応募すると良いです。

まとめ

実務未経験で、ボイラー技士免許を持っているときに応募対象になる求人の多くは、ビルメンテナンスと工場の運転員・メンテナンス要員の求人です。転職サイトなどを使えば、「ボイラー技士」「未経験OK」をキーワードにして簡単に絞り込めます。

そのほか未経験OKと謳っていない求人でも、実際のところ未経験者でも採用している求人はあります。それは会社の内情なので、求人票を見ただけでは判断できません。したがって、求人票に「未経験OK」と記載がなくても書類応募してみると良いです。

ただ、「未経験OKとされていない求人」に書類応募を続けて色よい結果が得られるとは限りません。採用見送りが続くと、精神的につらいものがあります。

そこで、転職エージェントをうまく活用するとよいです。「未経験OKとされていない求人」に応募する前に、転職エージェントを通して「未経験でもOKか」を確認すると、無駄な書類応募をせずに済みます。

最後に、2級ボイラー技士免許で期待できる資格手当はわずかです。2級ボイラー技士の有資格者を求めている業種は多いので、平均年収の高い業種を狙って転職したほうが、長期的に収入増を見込めます。政府統計など信頼のおけるデータを参照することで、年収面での失敗を防ぐことができます。

以上のようなプロセスで求人を探すことで、未経験のボイラー技士有資格者でも転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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