電気を使う人達がいるかぎり、その使用量を計測して料金を計算する「検針」の仕事は必要不可欠な仕事です。月に1回検針員が、淡々とメーターを見て伝票を発行しているのを見かけたことは、誰にでもあると思います。

では、電気の検針員になるためにはどのような方法があるのでしょうか? また、人の手がかかる仕事ですが、省力化の流れの中で将来性はあるのでしょうか?

一般に転職を成功させるには、事前に適切な情報収集をしておくことが大切です。検針員に転職するときも例外ではなく、電気検針員がどのように募集されているのか、どのような仕事内容かを十分知っておくと失敗を防ぐことができます

ここでは、「電気の検針員の種類」「電気検針員の将来性」「電気検針の仕事内容」などについて、電気検針が業務内容にある求人を交えながら解説します。

電気検針員の求人は大きく2種類ある

電気のメーターを検針する仕事は、家庭向けの電気メーターを検針する仕事と、商業ビルなどの大規模施設で電気メーターを検診する仕事の2種類があります。それぞれの概要は、下記のとおりです。

  • 家庭向け : 家庭用電力を供給するために、電力会社が設置する積算電力量計のメーター指示値を読み、伝票を家庭に届ける。
  • 大規模施設 : テナント請求やエネルギー管理の一環として、データ収集のためにメーター指示値を読み、記録する。

電気検針員として転職するには、これら2つが選択肢になります。

家庭向けの電気検針の仕事はスマートメーター普及でなくなる

まず、家庭向けの電気検針の仕事について解説します。この職種は、一般家庭を訪問する仕事なので、イメージしやすいと思います。これまで、電気の検針員が自宅に訪問してきたときに目撃したこともあるのではないでしょうか。

家庭向けの電気検針員の仕事は、パートまたはアルバイトとして探すことになります。求人票の例だと、下図のように提示されていることがあります。この求人は、北海道電力管内で検針を行っている、ほくでんサービス株式会社の委託検針員の求人です。

このような求人が、家庭向けの電気メーター検針としてイメージする仕事の求人です。

しかし、家庭用電気メーター検針の仕事は、将来的になくなります。なぜなら、家庭用電気メーター検針は、下の写真のような従来型の積算電力量計を設置している家庭に対して行っているからです。

この従来型の積算電力量計は、2020年代中頃を目途に全廃することが目標として定められています。従来型積算電力計は通信機能を持たないため、検針員が目視でメーター指示値を確認して電気料金を確認する必要がありました。

しかし、下の写真に示すような新しいスマートメーターは通信機能を持つので、検針員がメーターの設置してある場所まで出向いて指示値を確認する必要がありません。

ちなみにこのスマートメーターは、私の自宅の積算電力計です。取替に立ち会った際に、施工してくれた作業員の方に話を聞くと、通信機能はKDDIの携帯電話回線を使った通信であるということでした。

我が家では新電力と言われる、10電力会社以外の電力小売会社に切り替えたためにスマートメーターに取り替えになりました。新電力が、各家庭の使用電力量データをどのように取得しているかを下図に示します。

積算電力量計は送配電会社(10電力会社から分離した送配電部門)の財産なので、データは直接新電力に送られるのではなく、送配電会社のネットワークを介して新電力に送られます。新電力は、事業開始当初から検針員を雇うのではなく、全てスマートメーター経由で使用電力量データを取得します。

なお、発送電分離政策によって、10電力会社は発電部門と送配電部門が分離しました。会社名が、下記の通り変わっています。

発電会社(10電力会社) 送配電会社
北海道電力(株) 北海道電力ネットワーク(株)
東北電力(株) 東北電力ネットワーク(株)
東京電力(株) 東京電力パワーグリッド(株)
中部電力(株) 中部電力パワーグリッド(株)
北陸電力(株) 北陸電力送配電(株)
関西電力(株) 関西電力送配電(株)
中国電力(株) 中国電力ネットワーク(株)
四国電力(株) 四国電力送配電(株)
九州電力(株) 九州電力送配電(株)
沖縄電力(株) 沖縄電力(株)(例外)

実は、送配電会社もスマートメーターへの切り替えに乗り気です。検針員による読み違いや時間ロスが無くなり、検針員自体も無くすことでコストカットが実現できるからです。

ただ、スマートメーターの生産能力や施工能力の観点から、一度に既存の積算電力量計をスマートメーターに取り替えることはできません。計量法によって積算電力量計は10年で交換することが定められているので、送配電会社は2010年代の中頃から10年をかけて徐々にスマートメーターに取り替えます。

したがって、新電力に切り替える家庭だけでなく、既存の電力会社との電力契約のままの家庭でも、いずれスマートメーターに切り替わります。この切り替えが終わる頃に検針員はリストラされるか、そもそも有期契約で雇用されることになります

ちなみに、ガスや水道でもメーターのスマート化は進んでいます。LPガスの会社に勤めている知人に訊いてみると、「LPガスは、ガス切れを検知するために遠隔監視ができるメリットが大きい。そのため、電気より早くスマート化が進んでいる」と教えてくれました。

家庭用の電気検針員への転職を考えるときには、このような状況を理解して転職する必要があります。

大型施設の検針はなくならない

一方、大型施設の検針とはどのような仕事でしょうか。わかりやすい例は、下の写真のようなショッピングモールです。

ショッピングモールの施設運営会社は、電力を一括で受電し、施設内の各テナントに電力を供給しています。テナントは、それぞれの電力使用量に応じて、施設運営会社に電気代を支払います。この電力量を算出する根拠が、検針です。

ショッピングモールのほか、商業ビルでも同様の検針が行われます。ただし、占有面積で按分している場合もあります。そのときは、各区画の使用電力量を検針して按分します。その概要は、下の図のとおりです。

このような大型施設の検針は、設備管理やビルメンテナンスと呼ばれる職種に転職すると行うことができます

例えば、下図のOS共栄ビル管理株式会社の求人が該当します。OS共栄ビル管理社は、阪急阪神東宝グループの一員として主に大阪付近のビルで業務を行っている会社です。

もう一社求人例を挙げます。下に示すのは、三井不動産ファシリティーズ・ウエスト株式会社の求人です。同社では、オフィスビルのほか、商業施設やホテルの設備管理も行っています。この求人は、愛知県名古屋市の商業ビルを担当する求人募集です。

これによると、一日の作業の流れの中で日常点検の位置づけで「計器類の検針」が謳われています。

以上紹介した2社のような職種であれば、電気メーターの検針をすることができます。そして、設備管理やビルメンテナンスの仕事は、設備がある限りなくなることはありません

注意点は検針のほかにたくさんの業務があることだが、職種の敷居は低い

設備管理やビルメンテナンスの仕事で注意すべき点は、電力量計の検針だけが業務ではないということです。テナント料金などに関わるメーターの検針だけでも、電気、ガス、水道のメーターを読む必要があります。

また、電圧・電流を経時的に管理していることがあります。この電圧計・電流計の指示値を読んで記録することも仕事内容のひとつです。これは、設備の健全性を把握するために必要な仕事です。

例えば、下の写真はポンプ盤で、動作させる電圧の値と動作電流の値を読めるようにメーターが取り付けてあります。

これらのメーターに指示される値を経時的に管理することで、ポンプの劣化や故障を判断することができます。

電力量計の検針も、テナント料金算定のためだけでなく、ほかの目的のために行うことがあります。それは、負荷管理です。

例えば、エアコン使用に伴う電力使用量は夏が一番多く、次に冬が多いです。この季節変動は、毎年大きく変わることはありません。そこで、ある年だけ大きく電力使用量が増えたとしたら、なんらかの不具合を疑わなくてはなりません。

エアコンの温度設定が集中管理だったら、設定温度を低めにしすぎたのかもしれません。経年により冷媒ガスが抜けて、設定温度に調整するために無駄な電力を使っているのかもしれません。

私は、かつて駅の使用電力量管理を担当していたことがあります。このときは駅配電所の設備更新で、仕様決定の参考資料として蓄積していた使用電力量データを活用したことがあります。

設備管理の仕事は、検針などの点検を通して設備の異常をできるだけ早く見つけたり、適切な設備更新に役立てたりするのが、重要な仕事の一つです

こう書くと、電気の専門職のように思えますが、設備管理やビルメンテナンスに転職するのは難易度が高くありません。上で紹介した2社は、下図のようにどちらも未経験OKとされています。

もちろん、「電気メーターの検針だけ行っていたい」という動機だと転職は無理でしょう。しかし、電気メーター検針も含めて広く浅く仕事をしていくには向いている職種です。

検針がある職種の年収・給料

最後に、電気の検針がある職種の年収・給料について解説します。

冒頭で紹介した、電気メーターの検針員はパート採用で、下図のように時給1,000円と記載されています。

このほか、勤務時間は月に86時間30分で賞与が年間5~14万円であると記載があります。この条件から年収を計算すると、約109~118万円になります。

一方、設備管理・ビルメンテナンスとして紹介した2社の年収を順に示します。まず、下図のようにOS協栄ビル管理社が正社員採用で280~350万円です。

つぎに、三井不動産ファシリティーズ・ウエスト社が、正社員採用で250~400万円の年収が提示してあります。

ビルメンテナンス業の平均年収は、厚生労働省の賃金基本構造統計調査で約400万円とされています。したがって、ここまで紹介した3件の求人で提示されている年収は、業界平均より低めの年収です。

メーターを読んで記録するのは、特殊な能力が必要ではなく肉体的にも楽なので、このような年収が提示されていると考えられます。電気の検針員に転職を考えるときは、この提示年収の事実を踏まえた上で転職活動を行う必要があります

まとめ

電気の検針員の求人は、家庭向けと事業向けの2つがあります。家庭向けの仕事は、積算電力量計がスマートメーターに置き換わることによって、なくなることが明らかな職種です。

一方、事業向けの電気検針の仕事は、設備管理やビルメンテナンスという職種で継続して仕事があります。ただしこれらの職種は、メーターを読むことが主の仕事ではなく、いくつかある仕事の中の一つに電気のメーターを読んで記録する仕事があります。

事業向けの電気検針の仕事は、電気料金精算のためだけでなく、電気設備などの維持管理のために行われます。しかし、未経験でも問題ない求人も多いです。電気検針を仕事にしたい場合は、このような求人を探していくことになります。

電気検針の給料を年収ベースで考えると、400万円以下の水準が多いです。設備管理・ビルメンテナンス業界の平均年収が400万円であり、この仕事は給料が安いです。電気検針の仕事に就こうとする場合は、給料が安いことは覚悟しておく必要があります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。