電気工事積算の仕事は、会社の売上や支出に直結する仕事です。また金額の多寡だけでなく、工事・設備の品質に関わる仕事です。特に定価の無い工事業界では必須の人材です。

しかしながら、あまり知名度がある職種ではありません。見積もりや設備管理と混同して考えられていたり、電気設備設計の中に含まれていたりして、求人票を見ても様々な表現があります。

これらの求人票の中から、優れた求人を見つけるのには少し工夫が必要です。さらに、積算業務は建設業界だけの職種ではありません。これは、あなたが転職の対象にできる積算業務求人の数が増えることを意味します。

ここでは、積算業務の求人の実態、求められる資格・スキル、建設業以外の積算職種、積算職種の年収について詳述します。

積算は電気設備設計と一緒に行うことが多い

積算は、建設業界独特の職種です。したがって電気の積算を仕事にしたいなら、電気工事業界の求人をメインに探すことになります

下の求人は、JR東海のグループ会社の新生テクノス株式会社の求人票です。同社は鉄道電気工事だけでなく、一般電気工事も行う中堅の電気工事会社で、本店は東京・名古屋にあり中部圏に強みのある会社です。

このような電気工事会社のほか、電気工事を発注する企業にも積算業務があることがあります。例えば、私が以前勤めていた鉄道会社は自社内で積算業務をしていました。公務員は多くの場合、積算をして工事発注することから、旧公社系企業は積算業務があると考えて間違いありません。

ただ、積算業務のみの職種として求人が出ていることは少ないです。なぜなら積算業務自体は事務作業であるものの、「工事するモノ」がイメージできないとまともな仕事ができないからです。工事するモノがイメージできる人は、同時に電気設備設計や施工もできることが多いです。

あなたは、次に示すような図面から完成予想ができますか? また施工途中に職人がどのような作業をするかイメージできますか?

引用:拾って覚える!実践電気工事積算入門(オーム社)より

図面から実物や労務をありありとイメージできるなら、積算関係の転職は問題ありません。転職成功する可能性が高いです。

しかし、イメージできるかどうか怪しいなら注意が必要です。実際、電気工事積算業務の求人は、下図のように出されていることが多いです。大東建託株式会社は、不動産業を全国で展開しています。この求人では、転勤なしで東京勤務になります。

必要業務経験に、電気施工管理経験が必須とされています。つまり現場のイメージができる人が対象です。

私が積算業務をしていたときは、現場調査に行き、出来上がりをイメージしながらスケッチを描いて、事務所に帰ってAuto-CADで図面を清書してから積算業務の本丸である材料拾い出し~計算をしていました。当時の上長に口酸っぱく言われていたのが、「図面が大事。図面がきちんと出来上がったら、設計積算は8割終わったようなもの」ということです。

確かに図面さえ間違いなく出来上がっていれば、積算は機械的に行うだけなので難易度は高くありません。企業規模によってはシステム化して、積算のみに人員を割くことはせずに設計者が積算します。私が鉄道会社勤務時代に積算を行っていた経験からも、設備設計ができると積算はほぼ間違いなくできます。積算のみのスペシャリストは存在しませんでした。

このことからも、積算業務のみに絞った転職活動はきついと考えてください。実際に仕事内容に積算だけが挙げられている求人はほとんどありません。大手転職サイトのdodaは、電気設備関係の積算職種で絞り込むことが出来ますが、60件の求人しかヒットしません。さらに、仕事だけが積算だけの求人は40件ほどでした。

そこで公開された求人のみではなく転職エージェントから非公開求人を紹介してもらいましょう。少しでも多くの求人に出会うことで、あなたの希望にマッチした求人が見つかる確率は高まります

電気設備設計・電気工事設計ができると求人の幅が広がる

さらに、積算だけでなく電気設備設計も併せて行う職種を選択肢に入れると転職成功する可能性が高まります。その場合、積算業務メインではなく設計業務がメインになりますが、積算業務にも携わることができます。

もちろん積算業務のみの求人を探すこともできます。それでも電気設備設計ができると重宝されますし、仕事がやりやすいです。通常電気工事は、下図のように「依頼・設計・積算・契約・施工」の順に進みます。

このフローで示すとおり、積算は工事全体の一部分でしかありません。工事全体をイメージできずに図面で指示されたままを積算するような技術者は、今後コンピューターに取って代わられます。実施工をイメージして、実態に合うように図面を指摘しつつ積算できることが大切です。そのためには、ある程度電気工事の施工を知っている必要があります。

実際のところ、積算だけ出来て施工を一切知らないと、とんでもない積算をすることがあります。例えば私が積算を始めたころは、平面図だけを見てケーブルの長さを決めてしまい、垂直方向の長さを計算し忘れて上長に大目玉を食らったことがあります。

そのようなあからさまなミスは無いかもしれませんが、実際の施工を知っていると積算業務をするのに大変有利です

積算の仕事があるのは、発注側と受注側

実際に積算が仕事内容にある会社には大きく分けて2種類あります。工事受注のための見積もりを弾くために積算する受注側の会社と、工事発注するために予算を取る・工事費の妥当性を把握するために積算する発注側の会社です。

仕事の内容がほぼ同じですが、仕事の意味が違っているので締め切りや重要度・優先度が変わってきます。転職後のミスマッチがないように十分把握しておく必要があります。

受注側は電気工事会社が第一選択肢

積算業務が仕事内容にある会社の求人の多くが、受注側の工事会社の求人です。受注側企業は電気工事会社(サブコン、プラントエンジニアリングなど)が選択肢になります。

このような会社は電気工事を請け負うときに、適正な価格を弾き出すために積算を行います。客先に見積もりを出すために積算する、ともいえます。したがって、高すぎれば不調(客先との金額の折り合いつかず入札できないこと)になり、低すぎれば自社が赤字になる可能性が高まります。

具体的には下図のような求人が対象です。この求人は、東京で電気工事全般を事業としている大豊電設株式会社の求人です。

受注側企業の積算の職種は類似の求人を探します。

発注側企業は様々な業界にある

分類のもう一つ「発注側企業」ではどのような企業を探せばよいのでしょうか。電気工事会社でない企業が、「設計・積算」を仕事内容に挙げていることがあるので、求人票に同様の記載がある企業を探します。

例えば、下図のような企業が参考例に挙げられます。この会社は化学繊維大手の東レ株式会社の求人です。業務の主体は設備管理ですが、積算も行うことがあります。

発注側企業が積算する意味は、受注側企業とは違います。電気工事は完全オーダーメイドであり、定価が存在しません。また、複数社が見積もり依頼に応じてくれない場合、特に一社のみが見積もりを提示してきたときは、その見積り金額が妥当かどうかを判断する必要があります

発注側としては、適正価格より見積もり提示金額が安いほうが良いように思いますが、極端に安いと手抜き工事や必要な手続きをしないなどの品質不良が疑われ避けたいところです。また、適正金額より見積もり提示金額が極端に高い場合は、単純にふっかけられていると考えて、これも避けたいものです。この適正価格を、工事前の予算要求や契約直前の価格協議用資料として積算します。

発注側企業の積算業務は補助的な仕事

発注側企業は、電気設備を使って何らかの事業を行うことが目的です。工場では、電気設備を使ってモノを生産することが目的です。したがって、工事をして稼ぐ建設業の積算業務と違って、発注側の積算業務は補助的な仕事になります。

なお、全ての発注側企業が積算を行うわけではありません。「絶対に相見積もりを取ること」で積算をしないこともあります。これは製紙会社に勤めていた同僚が行っていた方法です。私が今勤める電力プラントでは、見積もり提示に対し自社で積算は行わず、外部能力としてコンサル会社に積算依頼しています。

私が以前勤めていた鉄道業界では、求人票に「積算」と謳っていないのに積算業務はあります。下の求人は、JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)の電気技術職の求人です。

このように求人票に「積算」と謳わない場合もあるので、注意が必要です。転職エージェントサービスを申し込んでいれば、「積算の仕事をしたい」と明確に担当者に伝えておく必要があります。そうすることで、あなたの希望にあった求人を見つけやすくなります。

積算士という資格は役に立つか?

これらの積算をする職種に必要な資格・スキルはあるのでしょうか。あなたが持っている資格のうち、採用試験で有利に働く資格が予めわかっていれば心強いです。

しかし、積算業務に必須の資格はありません。特に制限なく、だれでも積算業務を行うことができます。「建築積算士」「建築積算士補」という資格がありますが、これは公益社団法人日本建築積算協会が認定する資格で主に建築躯体を扱う資格です。

したがってこの資格が、電気設備積算業務の決め手になるとは考えにくいです。直接積算に関わったことをアピールすることが効果的です。また私が求人を探した限り、電気関係の積算職種で「建築積算士」を求めていた求人はありませんでした。

そのほか、電気設備設計と抱合せで仕事を行うことが多いので、関連する資格・スキルはアピールに繋がります。例えば「電気工事士」「電気工事施工管理技士」の資格を持っていると、「電気設備設計をさせても実態がよくわかっている」と期待されます。つまり、実態に則した設計・積算できる人材の印象を与えます。

下に示すように、先ほど紹介した大豊電設株式会社の求人票では電気工事士資格または電気工事施工管理経験を必須としています。

また、設計・積算では図面を扱うことから、CADが使えると良いです。あなたが今使えなくても、仕事内容に設計業務があればまず間違いなくCADを扱うことになります。

下の求人では、CAD使用経験が必須条件とされています。この求人は、大手独立系電気工事会社の六興電気株式会社の求人です。関東に拠点の多い会社ですが、この求人では北海道の支店に勤めることになります。ちなみに今は社名が「HEXEL Works」に変わっています。

図中、Tfasは電気設備用のCAD、AutoCADは汎用CAD、Jw-cadは建築系でよく使われるCADです。

なお、これらの資格・スキルはすぐに取れるものではありません。そして、求人票に必須事項として挙げられている資格がなくても、あなたの経験やそのほかの要素で応募できることがあります

私が転職活動をしているときは、必須条件に挙げられている資格を取得する前に応募して内定をもらう事ができた会社もあります。

このように、あなたが資格を持っていなくても、気になった求人があれば、まず申し込んでみることが転職を成功させる秘訣です。

積算業務を仕事にした場合の年収

最後に積算を仕事にしたときの年収について考察します。まず、ここで紹介した求人の年収を確認してみます。年収は求人票に提示されています。例えば、大東建託株式会社の提示年収は、下図のとおり469~607万円です。

年収が提示されていないこともありますが、月給、ボーナスなどからおおよその年収を推定することが出来ます。ここで紹介したそのほかの求人の年収は下表のとおりです。

社名 年収[万円] 受注・発注 そのほか
大東建託(株) 469~607 発注 不動産業
新生テクノス(株) 430~700 受注 建設業
大豊電設(株) 400~ 受注 建設業
六興電気(株)
(HEXEL Works)
250~550 受注 建設業
東日本旅客鉄道(株)
(JR東日本)
年収換算368以上 発注 陸運業
東レ(株) 400~550 発注 化学繊維業

積算をする職種の年収を考えるには、受注側か発注側かで分けて考える必要があります。受注側である場合は建設業なので、建設業全体の年収分布が参考になります。下のグラフによると、建設業の年収の中央値は400~500万円付近にあります。

引用:平成29年度民間給与実態調査(国税庁)第8表をグラフ化

あなたが建設業の企業に転職を考えるときに、提示年収が年齢(若いほど安い)や土地(地方ほど安い)を勘案してこの中央値よりも大きく下回っているようなら再考すると良いです。反対に、今の年収より下がったとしても中央値より上回っていれば、その企業があなたを評価してくれていると考えることが出来ます。

発注側の企業の場合は、年収はその企業が属する業界に左右されます。例えば、同じ積算を含む職種であっても製薬・電子デバイス・エネルギー(電気・ガス・石油)は高年収を提示されることが多いです。一方、食品、金属製品は提示年収が低い事が多いです。

下のグラフは、主な発注側企業の業界別年収を示したものです。エネルギー業界を橙色、製造業を青色で示してします。製薬業界はグラフ中「化学」と示されています。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

年収アップを目指して転職するなら、業界平均年収が高い企業を優先的に選ぶことで、積算業務への転職でも年収アップが成功しやすくなります

もちろん積算のみの職種を見つけることは極めて難しく、そのほかの業務も合わせて行う職種の年収です。あなたが特定の業界に特にこだわりがなければ、グラフで高い年収を示されている業界の求人を探すと、高年収を得られやすくなります。

まとめ

ここまで説明したように、「積算」のみを業務内容とする求人は数が極めて少ないです。積算業務のみの転職にこだわるなら、転職エージェントから非公開求人を紹介してもらうなどの工夫が必要です。

積算だけでなく、工事設計も併せて行う求人を探すと比較的容易に見つかります。まずはこの事実を認識しておく必要があります。また、積算のみを業務内容としている求人でも、電気工事の経験や資格を求めている場合が多いです。

こういった実態から、積算の求人に求められる資格としては、「電気工事士資格」「電気工事施工管理技士資格」が求められることがあります。歓迎資格として挙げられることもあるので、あなたがこれらの資格を持っていると採用されやすくなります。そのほか、業務上図面を読んだり修正したりすることもあり、CADが使えると入社してから役に立ちます。

積算の仕事は、受注側企業である建設業と発注側企業である様々な業界で求人があります。積算業務の意味合いが少し違うので理解して転職すればミスマッチが防げます。

年収について、受注側企業は建設業として提示されることが多く、発注側企業ではそれぞれの属する業界の年収を参考に提示年収を比較すると良いです。これにより、提示年収が妥当かどうかを判断できます。また、年収の高い業界を狙って求人を探すことで年収アップを成功させやすくなります。

 

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。