採用試験のときに、選考プロセスに工場見学がある会社があります。この工場見学は、面接試験とはどのように違うのでしょうか。また、気をつけるべき点はあるのでしょうか。

実は、工場見学や職場見学は、あなたを採用する側の企業の利点だけでなく、採用されるあなたにとってもメリットがたくさんあります。工場見学はクリアすべき試験ではなくて、大いに活用してミスマッチを防ぐ手段です。

工場見学をうまく利用すると、入社後に「こんなはずではなかった」というミスマッチを極限まで小さくすることができます。転職の結果、不幸になってしまうことを防ぐことができるのです。

ここでは、工場見学で企業は何をねらいとして持っているのかを解説し、反対にあなたは工場見学をどのように活用したらよいかを詳述します。あわせて、工場見学のときの服装・推奨される質問・工場見学で見るポイントについても説明します。

採用のプロセスで工場見学を実施する会社がある

企業の中途採用試験を受けるとき、企業によっては採用プロセスの途中に工場見学・職場見学が組み込まれていることがあります。実施している企業は主に製造業で、工場見学だけを実施するのではなく面接前や面接後に抱合せで実施することが多いです。

工場見学の実施有無は、求人票などに明記されていることもあります。求人票に記載がある場合は、下図のように書かれています。

このような工場見学・職場見学では、企業はあなたに何を期待しているのでしょうか。試験の合否に関係するのでしょうか。

企業のねらいは、あなたの仕事への取り組み姿勢を見ること

工場見学は、あなたが学生時代に就職活動の一環として経験があるかもしれません。企業側の狙いは、就活のときと基本的には変わりません。

企業として工場見学を実施するのには、採用のミスマッチを防ぎたいという気持ちがあります。採用活動は企業にとってもコストですので、できれば失敗を防ぎたいと考えています。

採用したものの、実際に働く現場に入社前との乖離を感じて短期間で辞められるのは防ぎたいのです。そのような事態を防ぐ一つの手段が工場・職場見学です。

つまり、あなたが近い将来働く現場の見学をしているときに、全く興味なさそうな表情をしていたり、嫌悪をあらわにしたりしていると、企業は不採用とする可能性が高いです。

反対にあなたが採用する立場で考えてみましょう。これから一緒に仕事をしようとする人が、その仕事に対して無関心だったり嫌悪感を持っていたりしたらいかがでしょうか。一緒に働きたくないと思うのではないでしょうか。

面接でもあなたの人となりは判断されますが、さらに実際の働き方に近い状況に置くことで、あなたが共に仕事を遂行するに足る人材かどうかを判断されているのです。また就活と違って転職活動では、あなたは社会人経験のある大人として扱われます。当然、工場見学にお客様気分で行くのではなく、節度を持ち気持ちを引き締めて臨む必要があります。

工場見学の服装は面接用でOK

工場に勤めることが初めてのときや、工場見学も初めて行くときには、どのような服装で行けばよいか疑問に思うことでしょう。

服装は、特に指定なしの場合は面接に行く支度で問題ありません。下の写真は、私が面接に望むときに着ていた服装です。

このように、工場見学だからといって特別に用意するものはありません。背広のように工場内でモーターなどに巻き込まれる可能性があり危険ならば、企業が作業服を用意してくれます。ヘルメットなども同様です。

女性の場合は、ヒールの高い靴は避けてください。グレーチングや材料が置いてあることがあり、危険です。グレーチングとは下の写真のような金物です。工場によっては、屋内外を問わず設置されています。

安全靴などを用意してくれることもありますが、工場で働くことの心構えを疑われるので、踵の低い靴で訪問するようにしましょう。

質問例を参考に、適切な質問をして入社後の自分をイメージする

工場を案内されるときには、積極的に質問をしましょう。これはアピールをするというよりかは、あなたがその企業をよく知りミスマッチを防ぐための情報収集するものです。

あなたが、その工場に勤めだして具体的に作業などをすることを想定した質問をするとよいです。私が工場見学できたときにした質問は、例えば以下のようなことです。自分が実際に働くときに、心配な点や気になる点を素直に聞きました。

  • 入社したとしてどの機械・装置にふれることになるのか
  • 機械・装置の操作に習熟するにはどれくらいの期間がかかるか
  • 機械・装置の操作教育はだれがどのように行うか
  • 持っているスキル・資格以外に、この工場で働く上で勉強しておくこと・身につけておくべきスキルはあるか

このような質問に対する回答で、あなたが入社後に自分が働く姿が具体的に思い浮かべることができるたらOKです。質問をしてもはぐらかされたり、得られた回答から入社後のイメージが湧かなかったりしたら、以降の採用試験を断っても問題ありません。それが不幸な転職を防ぐ有効な方法です。

あなたは選ぶ立場で工場・職場を見学できる

では、工場見学用に何か特別な準備をすべきでしょうか。私は、これはおすすめしません。

例えば、あなたが工場見学で職場のことに全く興味が持てなかったとします。そのような状況で、無理に興味がある素振りをして、一緒に働きたいことをアピールし入社できたとしても、仕事が楽しくないのではないでしょうか。

興味の持てない仕事を続けるのは苦痛でしかありません。工場見学では無理に自分を繕うことはやめましょう。ミスマッチを惹き起こすことになります。

その意味では、あなたは企業から選ばれる立場だけにあるのではなくて、あなたが働くに値する会社なのか選ぶ立場にあるともいえます。工場見学は、あなたが会社を選ぶ材料を、会社が提供してくれていると前向きに捉えて挑みましょう。

なおポイントを絞って工場見学をすることで、その会社の労働安全衛生に対する姿勢を推し量ることができます。

5Sに着眼すれば危険な工場かわかる

質問以外で、危険な工場を見破る方法はないのでしょうか。危険な工場を見破るための着眼点が予め分かっていれば、工場見学もやりやすいと思いませんか?

実は、危険な工場を見破るポイントは5Sです。5Sとは「整理・整頓・清潔・清掃・躾」を主にした職場管理のことです。ローマ字で書くと全て「S」で始まるので、5項目で5Sと呼んでいます。特に「整理・整頓・清掃」に注目して、3Sとしている会社もあります。

下の写真は、ある航空会社の保守工場で実践されていた消耗品の管理棚です。もしかしたらあなたが勤めている会社でも、同じように全ての引き出しにラベルを貼ってわかりやすく分類する取り組みをしているかもしれません。

「整理・整頓」ができていない工場が危ないというのは、特に説明せずともわかりやすいと思います。通路に材料や道工具が散乱しているような工場は、作業員がつまずいて転倒するリスクを放置している工場です。

ちなみに、厚生労働省が発表している労働災害のうち最も多いのが転倒災害です。危ないことが明白であり、対策も容易であるにも関わらず放置している会社は、ガバナンスの取れていない危ない会社といえます。

整理整頓ができている工場なら、下の写真のような道工具を姿見(すがたみ)に吊るしていたり、材料を種類ごとに整理して棚に配置していたりします。

清潔・清掃は、労働災害のリスクを判断するだけでなく、職場管理の姿勢について伺うことができます。ゴミや汚れが放置されている職場では、規律やルールが乱れやすくなります。

不清潔で清掃が行き届いていない職場は、規律やルールが乱れることを放置しているといえます。このような会社では、コンプライアンス(法令遵守)意識も低いことが予想されます。

さらに「躾」とは、整理・整頓・清潔・清掃が管理されているかということを示します。例えば、5Sを推奨するポスターの前に、何の表示もない材料・工具が放置されているような工場は「躾」が不十分といえます。このような会社も、職場管理が不十分でありコンプライアンス意識が薄いでしょう。

このように工場見学では、あなたが選ぶ立場として5Sの観点から分析することで、労働災害が起きやすくコンプライアンス意識の薄い会社を見破ることができます

工場見学を希望して企業の反応を見る

実は、ここまで解説していた工場見学を実施している企業は、そう多くありません。工場見学は、その会社の実態を晒(さら)すことになるので、採用試験の段階では外部の人間である求職者に見せるのははばかられるものです。採用試験のときに自らの都合のいい面だけ見せたいのは、求職者も会社も同じです。

したがって、工場見学を実施している会社は、会社の実態(職場管理やコンプライアンス遵守など)に自信がある会社だといえます。また会社側も積極的にミスマッチを減らそうとしている点で、あなたと利害が一致します。

工場見学をした結果、会社の風土やあなたの希望が合わないと判断し入社までに辞退できたなら、ミスマッチを防いだという点で価値があります。

履歴書や職務経歴書を工場に持っていく

では、工場見学・オフィス見学を実施していない会社で、工場や職場を入社前に見る方法はないのでしょうか。そういうときは、履歴書などを応募する企業に直接持っていく方法があります

通常、中途採用試験では面接試験の前に書類選考があります。書類選考では、履歴書・職務経歴書と、転職エージェントを通せば転職エージェントからの推薦状を送ります。この書類を、企業の事務所まで持参するのです。

転職エージェントには、職場を見たい旨を伝えて推薦状(紹介状)をもらいましょう。これらを持って企業を訪れれば、工場・職場の様子を伺うことができます。さらに、面接のときの面接官が対応してくれることもあり、事前に先方の顔を知っておくことで面接当日に余計な不安感を持たずに済むというメリットもあります。

ただし大きな会社で実際に働く工場・職場と応募書類を受け付ける場所が違う場合は、この方法は使えないので注意してください。

転職エージェントを通して工場見学を申し込む

そのほかに、転職エージェントを通して応募する企業に工場見学をお願いする方法があります

採用試験に応募している会社なら、書類選考を通過して面接試験前後に工場見学を希望することは可能です。「採用されたら働く現場をぜひ見て、働くイメージを作りたい」と伝えれば、企業側に断る理由はありません。

このとき、採用試験に応募しないのに工場見学を申し込んでも実現は難しいです。書類選考申し込みをしたあとで面接試験までに、工場見学を申し込むことが重要です。

これで、工場見学を渋る会社は怪しいです。何度も書いたように、工場見学はミスマッチを防ぐためにあなたと企業の双方にとってメリットが多いです。あなたが、「実際に働く場所を事前に見たい」という前向きな理由で工場見学を希望するにも関わらず、会社側の理由で一方的に断られるならば、入社後も理由を問わず会社から一方的に指示命令されることが多いだろうと覚悟しましょう。

また、あなたが工場見学をしてまずい状況(コンプライアンス違反、職場管理の不徹底など)があると考えられます。工場見学ができないことだけで判ずることはできませんが、面接試験などを通してあなたが覚えた違和感を解消すると良いです。

このように工場見学・職場見学を通して、入社後のミスマッチを極限まで小さくすることができます。

まとめ

工場見学・職場見学を実施している企業は、採用活動の一環としてあなたを職場に迎え入れられる人材かどうかを見極めようとしています。

工場見学に行くときの服装は、特に指定がない限り面接試験の服装で構いません。必要なら会社が作業服・ヘルメットなどを用意してくれます。ただし女性の場合、極端にかかとの高い靴は危険ですので避けてください。

あなたが入社したあとのミスマッチを防ぎたいなら、見学のときに働くことをイメージした質問をすることが大切です。あなたが実際に働く場所を確認しながら、そこで働くイメージを作り上げることが不幸な転職を防ぐことに繋がります。

そして、あなたは会社から選ばれると同時に、会社を選ぶ立場でもあります。着目すべき点は、工場・職場の「5S」です。5Sが不十分な会社は、職場管理不十分・コンプライアンスに対する意識が甘い可能性が高いです。合わないと感じたら、以降の試験を辞退することもミスマッチを防ぐには有効です。

工場見学を受け入れていない会社には、転職エージェントを通してお願いする方法があります。また、応募用の履歴書・職務経歴書などを直接持っていく方法もあります。

これらの手段を断られるなら、会社風土・コンプライアンスに対する姿勢などに疑義が残ります。これらを採用試験の途中に質問することで、ミスマッチによる転職失敗を防ぐことができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。