金型は、工場で大量生産をするのに必要なものです。そして、現在の産業を支える重要な機械設計の一要素です。

一方、金型自体は一品物で、多くの製品を製造するのとは違った考え方で作らなければなりません。金型設計技術者は、ものづくりには欠かすことのできない人材です。

しかし、金型と言っても沢山の種類があります。金型設計職として転職をしようとしたとき、どの金型の技術を持っていても転職できるのでしょうか。また、持っておくべき資格やスキルはあるのでしょうか。

転職を成功させるには、これらの情報を十分知った上で転職活動を行うことが重要です

ここでは、求人数の多い金型の種類、金型設計のある企業と求人の実例、転職に活かせる資格・スキル、金型設計職の年収について詳述します。

プレス金型と射出金型の設計求人を探す

さまざまな場面で使われる金型には、たくさんの種類があります。しかし、どの金型も同じ量を作られているのではなく、偏りがあります。

経済産業省が発表している金型生産額の統計データによると、金属などのプレス用金型とプラスチック射出成形に使われる金型で全体の4分の3程度を占めます。

引用 : 平成30年金型生産実績(経済産業省)

この分野の金型の市場規模が大きいということなので、求人もプレス成形金型と(プラスチック)射出成形金型の設計求人が多いです

そのほかの「ダイカスト型」「鍛造型」「ゴム型」「鋳造型」「粉末冶金型」「ガラス型」の金型設計を探すのは、比較的難しくなると考えて下さい。

金型設計職のある企業を知る

次に、どのような会社が金型設計のできる人材を求めているかを整理しておきましょう。下のように3つの区分で考えるとわかりやすいです。

  • メーカー : 最終的な製品を作る
  • 部品メーカー(サプライヤー) : メーカーに部品を納入する
  • 金型メーカー : 部品メーカーに金型を納入する

このうち、メーカーと部品メーカーは金型を使って生産する商品が利益の源泉です。つまり、社内のほかの職種と協調した上で金型を設計する必要があります。

例えばプレス加工だと、金型と金型を入れる加工機械と加工作業者の技術レベルのバランスが取れたときに品質の良い製品ができあがります。金型設計者は、加工機械や加工作業者といった生産工程のことも考えて設計する必要があります。

企業によっては、金型設計だけでなく生産技術職として生産設備全体を担当することや、金型作業者として製品製作を行うこともあります。

例えば下図の日本トムソン株式会社では、金型設計のほか自動組立の設備設計・治具設計も業務内容に入っています。日本トムソン社は、東京本社のベアリングメーカーです。この求人では、岐阜県の工場の人材を募集しています。

この求人で採用されると、生産技術職として金型設計に携わります。ただし、配属予定のグループでは金型設計以外にも設備設計などを行う可能性があります。

一方、金型メーカーは金型自体が商品です。金型製作を受注して利益を得ています。したがって、求められる仕様・精度を、できるだけ短納期・低コストで実現しなければなりません。

私の妻が、金型メーカーに近い立場で金型設計に携わっていたことがあり話を聞くと、以下のようなことを教えてくれました。

金型の寸法精度を上げようと考えたとき、計測点数を増やせばよい。

ただし、計測点数を増やせば増やすほど精度が際限なく上がるわけではない。ある程度の測定点数以上は、精度向上に寄与しなくなる。

計測点数が増えるということは、その分時間がかかるということで、つまりコストになる。この精度向上とコストのバランスが重要だ。

このように、同じ金型設計職でも金型に対する考え方が変わってきます。転職を満足できるものとするには、このような違いを十分に把握しましょう。そして、あなたがどのような立場・考えで働きたいのかを整理しておく必要があります

金型設計の実際の求人例

ここからは、実際に転職サイトに出されている金型設計の求人例を見ていきましょう。あなたの希望条件とあわせて、類似の求人を探していくと良いです。

・プレス金型設計の求人

まず、プレス金型の求人です。下図は、岡山県に拠点がある株式会社賀陽技研の求人です。自動車部品のサプライヤーとしての実績のほか、プレス金型メーカーとしての一面を持つ会社です。

この求人では、金型設計における中心メンバーとして募集されています。ただし業務内容をくわしく見ると、客先との技術折衝や仕様決定なども含まれています。純粋に技術要素のみが業務内容ではないので、注意が必要です。

業務内容の欄はよく読んで、自分が転職後に取り組みたい仕事なのかを十分に把握する必要があります。

また、求人票の記載が少なく、業務内容が十分理解・把握できないこともあります。そのようなときは、応募する前に転職エージェントを通して確認したり、面接時に詳細を訊いたりすることが大切です

そうすることによって、転職でのミスマッチを極限まで小さくすることができます。

・プラスチック(射出)成形金型設計の求人

次に、プラスチック金型設計の求人を紹介します。プラスチック金型は、樹脂金型と呼ばれたり、材料ではなく工法に着目して射出金型と呼ばれたりします。どれも同じ金型のことです。

下図に示すのは、空調機メーカー大手のダイキン工業株式会社の求人です。大阪本社の会社ですが、この求人は滋賀県草津市の製作所勤務の人材を募集しています。

この求人は、金型設計職を求めているというよりか、金型設計を含む開発職を求めている求人です。空調機という最終製品を世の中に送り出すメーカーなので、このような募集形態になることもあります。

樹脂金型のほか、板金金型、精密金型の設計と解析を中心に、先行開発を行います。金型の品質を上げるだけでなく、製品全体の高品質を考え、実現していく力が求められます

・そのほかの金型設計の求人

最後に、そのほかの金型設計の求人を紹介します。

下図に示すのは、東京に本社があり広島の拠点で人材を求めている株式会社ユーシンの求人です。ユーシン社は、サプライヤーとして自動車部品や産業機械部品を作っている会社です。

この求人では、鋳造・プレス・樹脂金型設計ができる金型技術者を求めています。

ユーシン社の求人のように、複数種の金型設計が仕事内容に示されていることは珍しくありません。さきほどのダイキン工業社の求人も、3つの金型設計が示されていました。

ただし、後述するように提示されているすべての種類の金型に対する経験は必要ではないことが多いです。この求人でも、いずれかの金型に携わった経験があれば良いです。

金型設計の求人を探すときには、ここで紹介した求人に類似したものを探していくことになります。

必要な資格、CADスキルは?

では、金型設計職に転職するのに有利な資格はあるのでしょうか。実は、多くの求人で、資格は求められていません。求められるのは、金型設計の経験やCADを使った経験です。

例えば、先程のユーシン社の求人では、これまでに金型設計の経験があることが必須条件とされています。

また、下図の新日本金属工業社では、いくつかある必須条件のうち金型設計が挙げられています。新日本金属工業社は、岐阜県に本社と生産拠点を持つ自動車・自動二輪車のサプライヤーです。

新日本金属工業社は、ダイカスト製品に強みを持つ会社です。ダイカスト成形は鋳造成形を発展させた成形方法で、下の写真のようなエンジンシリンダーのほか、自動車・自動二輪車の主要部品に使われています。

ただし、求人票で求めている人材には、ダイカスト金型や似た技術を使う鋳造金型の経験だけでなく、ほかの金型に携わった経験があればOKとしています。

このように多くの企業で金型設計の経験があることを求めるものの、金型の種類について問わない場合が相当数あります。つまり、射出金型設計の職種であってもプレス金型や鋳造金型の設計経験があれば応募できます。

加工する物(金属・プラスチック・ゴムなど)によって設計の考え方は変わります。転職したとしても、これまでの経験が100%活かせるわけではありません。

しかし他種の金型設計も選択肢に入れておくと、悪い条件で転職先を決めてしまうことを防ぎやすくなります。選択肢は多く持っておくことが、転職成功の秘訣です。

これまでの経験のほかには、CAD使用経験を求められることが多いです。多くの金型設計の現場で3D-CADが使われています。

CADは単に図面として製作するほか、コンピューター上で様々な解析をするCAE、コンピューターと加工機械を接続して製品を作るCAMにも利用されます。このような経験があると、即戦力として採用されやすくなります。

使われるCADソフトは、特に決まったものはありません。会社によります。私の妻は、Solid Worksを使っていました。ほかによく使われる3D-CADソフトはCADmeisterがよく使われます。

引用 : 日本ユニシス・エクセリューション株式会社 CADmeistaerムービーより

2D-CADは、製造図面を製作するときなどに用いられます。また、過去の図面は書類として残っているだけのときもあるので、2次元の図面を読めるスキルは必須です。

なお、特定のCADスキルを習得してから転職活動をするのはおすすめしません。会社によってどのCADソフトを使っているかは不明な上、いつまでも同じ求人が出ているとは限らないからです。

下図に示すように、通常求人票の掲載期間は3ヶ月~6ヶ月くらいです。

したがって、あなたがCADスキル習得をしている間に、あなたの気に入った求人があったとしても、求人そのものが無くなってしまう可能性が高いです。

また、新卒一斉採用と違って、中途採用では採用予定人数を充足したら募集を打ち切ります。求人票に、掲載「予定」期間と記載されているのはこのためです。

転職成功させるためには、気になる求人を見つけたら、まず応募してみることが重要です。もしCADスキル習得を諦めきれないなら、同時並行して行いましょう。そうすることによって、面接などで自己研鑽をアピールすることができます。

金型設計職の年収

最後に金型設計職の年収について解説します。

最初に紹介した日本トムソン社の求人票には、下図のように400〜650万円の年収が提示されています。

同様に、ここで紹介した4社について求人票に記載のあった提示年収を、合わせて下表に示します。

会社名 提示年収[万円] 金型の種類
日本トムソン(株) 400~650 プレス
(株)賀陽技研 400~500 プレス
ダイキン工業(株) 400~900 樹脂、板金、精密
(株)ユーシン 400~600 プレス、樹脂、鋳造
新日本金属工業(株) 350~ ダイカスト

全産業の平均年収が約500万円なので、金型設計職の提示年収は平均的か、少し高いといえます

なお、提示年収は業種により左右されやすいです。金型設計は製造業の職種であるものの、詳細業種では平均年収に差があります。

これは、厚生労働省が調査発表している賃金基本構造統計調査を見ると知ることができます。下に、賃金基本構造統計調査をグラフ化したものを示します。ただし、製造業のうち金型をよく使う業種に限っています。

このグラフによると、同じ製造業でも情報通信機械器具や輸送用機械器具を製造している業種が高年収であることがわかります。転職するときは、グラフの左側の業種に積極的に応募することで、高年収を得やすくなります

まとめ

金型設計職への転職を考えたとき、プレス金型と射出(プラスチック)金型の設計職へは転職しやすいです。この2つの金型で、金型生産額の4分の3を占めるからです。

また、金型設計職を求める企業の種類には「メーカー」「部品メーカー(サプライヤー)」「金型メーカー」があります。メーカーや部品メーカーは、金型設計だけでなくそのほかの業務も担当することを知っておきましょう。

応募に際して、直接有利になる資格はありません。多くの場合、金型設計・製造に関する経験が求められます。ただし金型設計・製造の経験は、応募する企業で使う金型種類の経験ではなくても良いことが多いです。

経験とは別に、3D・2DCADスキルはまず間違いなく求められます。図面を描く必要があるからです。

最後に、金型設計職の提示年収は、全産業平均より同等か少し高めです。ただし、業種により差があることを知っておく必要があります。つまり、平均年収の高い業種に集中して応募することで、転職により高年収を得やすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。