電気設備管理の仕事は、幅広い業種で必要とされる仕事です。また、基本的な仕事の考え方を理解し実践できれば、業種が変わっても違和感をおぼえることが少ない職種でもあります。

この設備管理の仕事をしていると、よく名前を聞く資格に「電気主任技術者(電験)」資格があります。難関資格なので、あなたも取得に苦労したのではないでしょうか。

実は、電気主任技術者資格を電気設備管理の求人に活かすには、知っておくべきことがいくつかあります。単純に資格を持っているから優遇され、転職して満足できるわけではないのです。

ここでは、電気主任技術者資格が活かせる設備管理求人の実際、資格と仕事内容、設備管理で高い年収を得る方法について詳述します。

設備管理の職種があるのはインフラ・工場・ビルメンテナンス

設備管理という職種は、電気設備が意図せず故障して不利益を被らないように、適切に管理・修繕していく職種です。設備保全とも呼ばれます。

仕事の特性上、電気設備があるところなら、日本全国どこにでもある職業です。ただし、電気設備の持ち主と設備管理を担当する企業が同じとは限りません。

一般な電気設備を用いる施設では、設備管理を外部委託してコスト削減を図ります。例えば、商業ビルやショッピングセンターなどです。

反対に、事業で扱う電気設備が特殊な施設では、自社社員およびグループ会社社員で設備管理を行うことが多いです。

このような背景があり、設備管理の仕事が多い分野はインフラ、工場、ビルメンテナンスの分野です。

インフラとは、電気・ガス・水道などのライフラインのほか、交通インフラも含まれます。工場では、主に製造業の生産設備を動かすための電気設備を管理します。ビルメンテナンスは、ビルや商業用施設の電気設備全般を管理する仕事です。

下の写真が、設備管理職で対象とする電気設備のうち、受電設備(22kV受電用キュービクル)の一例です。

そして、設備管理の仕事では、電気主任技術者資格を歓迎条件としていることが多いです。

それぞれの分野の実際の求人を見てみましょう。最初は、航空インフラを支える関西エアポートテクニカルサービス株式会社社の求人です。同社は、関西国際空港および大阪国際空港の空港設備の管理をしている会社です。

この求人には電気エンジニア(第三種電気主任技術者)として、電気設備にかかる様々な仕事(橙色で囲んだ部分)を担当することが明記されています。

次に示すのが工場の設備管理の例で、B-Rサーティワンアイスクリーム株式会社の求人です。この求人では、静岡工場または兵庫工場での設備管理の担当者を募集しています。

橙色の下線部が、設備管理の業務内容です。ただしこの求人では、「製造に直接関係する機械の保守点検する」製造技術の範疇(はんちゅう)の仕事も含まれています。

この求人においても、下図のように第3種電気主任技術者資格(電験3種)が歓迎条件とされています。

最後に示すのは、ビルメンテナンス業の求人です。南海電鉄グループとして、鉄道沿線の駅施設やホテルなどの電気設備管理を担当している南海ビルサービス株式会社の求人を下に示します。

設備管理の職種が募集されており、優遇する条件として「第1種~第3種電気主任技術者資格」を保有していることを挙げています。

設備管理の求人で、電気主任技術者資格の有資格者を歓迎する求人は、このような分野を中心に探すと見つけやすいです。

インフラ・工場(プラント)は全国各地、ビルメンテナンスは大都市圏中心

ただし、働く場所については注意点があります。インフラ企業や工場は全国各地に拠点がありますが、ビルメンテナンスは主に東京・大阪の大都市部に企業が集中しているという点です。

ビルメンテナンスという事業が成り立つには、ある程度の規模の大きなビル・施設が必要です。したがって、そのような大規模ビル・施設がたくさんある大都市圏ほどビルメンテナンスの求人が出やすくなります。

先に紹介した南海ビルサービス社では、下図のように求人票で勤務地を記載しています。

現場は、大阪と和歌山であると記載がありますが、くわしくは「南海電鉄各駅近く」とされています。したがって、大阪府南部と和歌山県は北部の一部が勤務地です。

一方、インフラや工場は大都市圏に限らず拠点があります。そして、ビルメンテナンスで扱う電気設備より高電圧、大規模の設備を扱うことが多いです。

設備管理の求人を探すときには、これらの特徴を踏まえた上で求人を探しましょう。

電気設備管理の仕事内容と電験資格

では、設備管理の仕事に電気主任技術者資格を持って転職した場合、どのような働き方をすることになるのでしょうか。

実は、設備管理の仕事自体に資格は必要ありません。したがって、電気主任技術者資格歓迎の求人で採用されても、資格の有無で仕事内容が変わることはありません

設備管理の基本的な仕事の進め方は、「電気設備の検査→分析・評価→対策検討→対策実施」のサイクルを回し続けることです。

もちろん、ただサイクルを回すだけではなく、電気設備が健全に動作し続けることを担保することが重要です。

そして、このサイクルに付随する仕事もあります。例えば、以下に挙げる仕事などです。

  • 定期検査・修繕実施のための予算取り
  • 予算金額算出用の積算または見積もり取得
  • 対策実施するために、設計積算
  • 省エネルギー検討および実施
  • 機能改善のための技術検討
  • 電気設備資産の台帳管理

これらの仕事は、すべてを一企業で行う場合もあれば、一部のみを実施する場合もあります。

私の例で言うと、鉄道会社に勤務していたときには、上に挙げたすべての仕事がありました。しかし、現在勤める電力プラントには設計積算の仕事はありません。

会社規模が小さく、社内に積算ができる十分な数の人材がいないためです。代わりに、ほとんどの場合を相見積もりで済ませます。

製紙会社で設備管理担当として働いていた同僚に話を聞いても、積算を行うことはなく相見積もりで済ませていたということでした。このように、ユーザー企業では積算業務は行っていないことが多いです。

設備管理の考え方はどの業種でも同じなので、あなたの経験が活かせる可能性は十分にあります。この項で挙げた仕事内容が、これまでのあなたの経験に当てはまるものがどれか整理しておくと、設備管理の求人を検討するのに役立ちます。

電験資格は歓迎される

あなたが電気主任技術者資格を持っているなら、このような設備管理の求人で歓迎されることは間違いありません。なぜなら、電気主任技術者資格を持った社員は一人でも多いほうが、企業にとっては良いからです。

後述しますが、電気主任技術者を選任する必要があるのは一事業所に対して一人です。したがって一事業所に何人も資格者がいる必要はないと思えます。

しかし、下の図のように新しい事業所を新設したとき既設の事業所に電気主任技術者の有資格者が複数いると、人事異動で電気主任技術者に選任することができます。

また、既設の事業所であっても、今選任されている電気主任技術者が退職する可能性は十分に考えられます。そのとき、社内に素性の知れた電験資格者がいると、企業としては余計なリスクを追うことがありません。

こうした理由もあり、電気主任技術者資格を持っているとたくさんの求人にありつくことができます。私が転職したときの転職エージェントが言うには、「電気主任技術者資格を持っているので、いくらでも求人はある」ということでした。

しかしながら地方に限って求人を探した場合は、私の経験からも求人数は少なくなります。そのときは、複数の転職サイトを使うなどして幅広く求人を探すとよいです。求人は、一つの転職サイトで網羅されるものではなく、転職サイトごとに扱う求人は違うからです。

複数の転職サイトを使うことで、より多くの電気設備管理の求人を見つけることができます。たくさんの求人を見ることができると、待遇や条件などの十分な検討ができ、転職の結果に満足しやすくなります。

電気主任技術者に選任される求人は少ない

電気設備管理の仕事の中には、電気主任技術者資格がないとできない仕事も一部にあります。それは、電気保安のための電気主任技術者として選任されて行う仕事です。ただし、この選任前提の求人はごく僅かです。

設備管理と電気保安の関係を示すと、設備管理という大きな範囲の仕事の中に電気保安という仕事があるイメージです。下図に概念を示しています。

ただし、単なる一担当者として業務に当たるのではなく、監督指導する責任のある立場で業務を行うことになります

電気主任技術者に選任される求人を挙げると、下図の株式会社ジェイデバイスが募集している業務が該当します。ジェイデバイス社は、神奈川・大分に本社を置き福岡のほか、北海道や岩手・福井にも大規模工場を構える外資系半導体製造大手です。

この求人では、第二種電気主任技術者に選任されて業務を行うことが明記されています。

また、求人票に記載されている福岡の工場に行ってみると、下の写真のように九州電力の66kV系送電線から受電していました。

受電鉄塔のすぐ下には、下の写真のような受電用の設備がありました。写真には、GISと高圧盤を示しています。

扱う電気設備は、電気主任技術者であっても一担当者であっても同じ設備です。

しかし、電気主任技術者は自ら率先して手を動かし検査・点検するのが主な仕事ではありません。設備管理を担当する全員が適切に検査・点検できる環境を作り、指導していくのが仕事です。具体的には以下に挙げる内容が、電気主任技術者の主たる業務です。

  • 電気設備の工事・維持・運用の具体的方法・手段について規定し、遵守させる
  • 保安教育を実施し、電気設備が適切に工事・維持・運用されることを担保する
  • 災害時に、社員が対応する方法・手段について具体的に規定し、遵守させる
  • 保安業務(教育含む)の記録方法について具体的に規定して、実施する。
  • 連絡体制(平常時・緊急時)を確立し、運用させる。
  • 官公庁対応(許認可申請、届出など)

以上の内容について、電気主任技術者として主体的に取り組む必要があります。なお、電験二種、電験三種などの種類に関係なく、同じ業務を行います。電気主任技術者に選任されると、責任者としてリーダーシップが要求されます。決して楽な仕事ではなく、実務経験なしでは難しい仕事です。

このような電気主任技術者に選任されることが前提の求人は、設備管理の求人のごく一部です。もし、あなたが電気主任技術者に選任されることを望んでいるなら、根気よく求人を探す必要があります。

インフラの提示年収は高め

最後に、設備管理職の年収について考察します。

冒頭に紹介した関西エアポートテクニカルサービス社の年収は、求人票に下図のように提示されています。

そのほか、ここで紹介した求人の年収は下表のとおり求人票に示してあります。関西エアポートテクニカルサービス社も合わせて示します。

会社名 提示年収[万円] 業種 電気主任技術者資格
関西エアポートテクニカルサービス(株) 400〜620 航空 歓迎条件
B-Rサーティワンアイスクリーム(株) 370〜450 製造(食品) 歓迎条件
南海ビルサービス(株) 300〜500 鉄道 歓迎条件
(株)ジェイデバイス 500〜625 製造(半導体) 必須条件
(選任前提)

ここで紹介した求人だと提示年収がバラバラです。業種によって年収が違うということがわかります。そこで、厚生労働省が毎年調査している賃金構造基本統計を参考に年収を考えてみます。

下のグラフが、賃金構造基本統計調査のうち設備管理の仕事がある業種を抜粋してグラフ化したものです。青色で示したのが製造業、橙色で示したのが製造業以外の業種です。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

このグラフによると、航空運輸、電気、通信業などのインフラ系企業の給与水準が高く、ビルメンテナンス、製造(食料品、繊維)業の給与水準が低いことがわかります。

なお、グラフで示す業種ごとの平均年収は、必ずしも転職直後の年収を示すものではありません。言い換えれば、将来の賃金の上がりやすさとも言えます。つまりグラフの左側の業種は、転職成功すれば将来的に高収入が見込める業種です。

業種が変わったとしても、設備管理の仕事の本質は変わりません。もちろん電気事業法に定める「事業の用に供する電気工作物」と「自家用電気工作物」とでは設備の信頼性維持方法などに違いはありますが、基本的な管理サイクルは同じです。したがって業種をまたいだとしても、設備さえ覚えてしまえば違和感をおぼえることは少ないです。

したがって電気主任技術者資格が活きる設備管理の仕事で年収アップを狙うなら、年収の高い業種の企業を積極的に探して採用試験に応募すると、転職後の年収に満足しやすくなります

まとめ

ここでは、電気主任技術者資格を持っていると電気設備管理のどのような求人があるのか、働き方、年収などについて解説してきました。

設備管理は、主にインフラ、工場、ビルメンテナンスなど幅広い業種で求められる職種です。設備管理の多くの仕事に電気主任技術者資格は必要ありませんが、有資格であることを歓迎条件としている求人は多いです。

設備管理の仕事の中には、電気保安という電気主任技術者資格が必須の仕事もあります。これは、電気主任技術者に選任されて働く仕事です。しかし、電気主任技術者選任前提の求人は数が少ないです。

電気主任技術者資格が歓迎・必須条件とされている求人の年収は、業種ごとにばらつきが大きいです。そこで厚生労働省の統計によると、インフラ系企業の平均年収が高く、ビルメンテナンスや製造業(食品・繊維)の平均年収が低いです。

これらの平均年収の高い業種に絞って転職活動を行うことで、設備管理の仕事で年収アップしやすくなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。