水道は、電気・ガス・熱供給と同様に重要なライフラインの一つです。そのため水道にかかわる仕事は、安定して長く働ける仕事として人気があります。

また、現代の水道は多くの施設が自動化・機械化され、電気系技術職が重要な役割を担っています。つまり、水道インフラを支えるためには電気に詳しい技術者が必要です。求人を探すと、電気系の技術者を募集する職種が簡単に見つかります。

ただし、インフラ企業には一般企業とは少し違った特徴があります。したがって、転職前に十分調査をしておかないと、転職後のミスマッチに繋がります。転職成功の秘訣は、事前の情報収集です。

ここでは、「水道業の電気系エンジニアの仕事内容と求人例」「水道インフラ企業の注意すべき特徴」「水道インフラ企業の平均年収」について詳しく解説します。

水道業における電気エンジニアの仕事内容

水道業の電気エンジニアとして転職するには、電気エンジニアが必要とされている職種を理解しておく必要があります。その職種の仕事内容を熟知して採用試験に挑むことで、転職成功しやすくなります。また、ミスマッチを防ぐために重要なことです。

では、電気エンジニアが求められる職種とは、どのような職種でしょうか。それは、「設備保全」「オペレーター」です。

水道にかかわる業種であれば、水道インフラの機器メーカーや工事会社の設計職や工事施工管理職・工事士職も選択肢になります。しかし、水道業に直接関わる企業はユーザー企業で、社員自ら機器設計や施工をすることはありません

したがって、「水道インフラの機器を保全する職種」と「水道インフラが正常な機能を果たすように運転する職種」の2職種が対象になります。これより、この2職種についてそれぞれ詳しく解説します。

電気系の設備保全職の求人を探す

設備保全職は、水道インフラを構成する機器が、適切な機能を果たすように維持管理する職種です。「設備管理職」「メンテナンススタッフ」「維持管理スタッフ」と呼ばれることもあります。

浄水場、下水処理場、ポンプ場などの水道施設で、処理対象となる「水」などを動かす機械には電気が使われています。下の写真は、汚水処理場のポンプ制御盤を写したものです。

また、次の写真は汚水処理場を写したものです。中央の装置が汚泥を搬送する装置で、右端の橙色四角で示した部分が6.6kVの受電開閉器です。

このように、水道施設には電気設備がたくさんあります。直接「水」などの搬送・処理に使われる電気設備は、水道業特有の施設が多いです。一方、受電開閉器のような、受配電設備はオフィスビルや工場などの設備と同様、一般的な設備です。

設備保全職は、これらの電気設備を維持管理する仕事です。具体的な求人を示すと、下の株式会社みずむすびサービスみやぎの求人が該当します。同社は宮城県の会社で、宮城県内の上水道施設の電気・計装を担当する人材を募集しています。

この求人では、設備保全職を「保守員」と「保全員」に分けて募集しています。一般的に設備保全の仕事は、下図のように「検査」「分析・評価」「対策検討」「対策実施」のサイクルを設備ごとに回して維持管理を行っています。

みずむすびサービスみやぎ社の求人では、「検査」「分析・評価」にあたる仕事を「保守員」が行います。そして、「対策検討」「対策実施」の仕事を「保全員」が行います。

これらの仕事のうち、高い専門性がある部分は外注することが多いです。設備保全職の仕事内容には、それらに伴う発注業務(契約事務、設計、積算など)が別に含まれます。実際に「手を動かして電気工事をする」ということを、専門的に行う職種ではありません。

みずむすびサービスみやぎ社は、「設備保全職」を保守員と保全員に職種を分けて、仕事内容を詳しく記載して募集していました。しかし、そのような親切な求人ばかりではありません。

例えば、下の株式会社武田エンジニヤリングの求人では、埼玉県の「水処理施設で、設備の運転管理や保守・メンテナンス業務を担当」としか書かれていません。

設備保全の仕事は、「検査」~「対策実施」のサイクルを回す基本から大きく外れることはありません。しかし、詳細の仕事内容については、先方企業に問い合わせる必要があります。求人票だけでなく、企業の担当者とも話をすることで、ミスマッチを大きく減らすことができます

設備保全の仕事は、以上のような求人を探していきます。

オペレーターは水道システム全体を知る必要あり

水道施設のオペレーター(運転員)も電気系の仕事があります。オペレーターは、水道施設が適切に動いているかを監視し、必要な操作を行います。また、トラブルが発生したときには、予備系への切替や応急復旧を行うのが主な仕事内容です。

オペレーターという呼び方のほか、「運転員」「運転管理」と呼ばれることもあります。求人票を探すときは、これらのキーワードも合わせて探すことで、優れた求人を見つけやすくなります。

オペレーターの求人例として、下図にメタウォーターサービス株式会社の求人を示します。メタウォーターサービス社は、主に関東・東海・関西の地方自治体から水道事業を受注している会社です。この求人では、「運転管理」職を募集しています。

オペレーターの仕事は、ほとんどの執務を中央監視制御室(中央操作室と呼ぶこともある)で行います。メタウォーターサービス社のホームページに中央監視制御室での執務の様子が掲載されています。

引用 : メタウォーターサービス株式会社業務内容紹介ページ

しかし、設備トラブルが起きた場合は、応急復旧のために機器のもとに急行することもあります。設備保全職の社員が施設内にいれば、設備保全職の社員が対応することもありますが、夜間など不在の場合はオペレーターが応急復旧対応します。

もちろん、大規模な復旧作業になれば、設備保全職に呼び出し連絡しつつ、到着までの復旧を担当します。

応急復旧は、電気に関する資格を持っていないと対応できないこともあります。そこで、メタウォーターサービス社では、歓迎条件として、「電気工事士」「電気主任技術者」などの資格を持っていることが挙げられています。

例えば、下の写真のような電動機が故障したとき、応急復旧として系から故障した電動機を切り離すために電源ケーブルを取り外すことがあります。このような電源ケーブル取り付け取り外しは電気工事士資格を持っていないとできない場合があります。

電源ケーブルの取り外し取り付けは、資格が必要ない場合もあります。しかし、電気工事士資格を持っていればどのような場合でも対応できます。したがって、会社としては電気工事士資格取得を歓迎することが多いです。

また、高圧以上の受電施設では、電気主任技術者資格を持った社員を選任する必要があります。電気主任技術者資格は、取得が難しく有資格者が少ないです。そこで、社内に資格者を複数人確保するために、歓迎条件とされることが多いです。

同様の求人を、もう1例紹介します。下図に示すのは、月島テクノメンテサービス株式会社の求人です。月島テクノメンテサービス社は、主に関東圏(神奈川、千葉、埼玉など)の自治体からの受注が多い会社です。

月島テクノメンテサービス社の求人も、運転管理職として募集しています。しかし、メタウォーターサービス社と違い、設備巡回(パトロール)や、保守整備も仕事内容に記載されています。前項の設備保全職の仕事内容も含まれています。

このようにオペレーター職と設備保全職の業務範囲は、明確に分かれているわけではありません。会社により、同じ名称を使っていても仕事の内容が違うことはよくあることです。したがって、転職を決める前に仕事の内容を十分に確かめておかないとミスマッチに繋がります。

なおオペレーター職は、電気のみを専門に扱う職種ではありません。あくまで「水道インフラが正常に機能するように施設を運転すること」が目的の職種です。あなたが持っている電気技術を活かして仕事をしたい、ということであれば設備保全職のほうが電気技術に触れる機会が多いです。オペレーター職に転職する場合は、この点を承知しておく必要があります。

電気以外の仕事内容に興味を持てるかが重要

ここまで設備保全職とオペレーター職の2つの職種について解説してきました。どちらも水道業において、電気技術を活かすことができる職種です。

しかし、大切なことは「水道インフラを支えるために電気技術が用いられている」ということです。したがって、転職後は電気に関する技術だけでなく、水道インフラ全体に関わる技術を学んでいく姿勢が求められます

私が、水道のような流体を扱う職種との考え方の違いを痛感したのは、バルブの開閉順番です。電気エンジニアが通常扱う電源回路の考え方では、下図のようにON(入)のときは電源側から扱い、OFF(切)のときは負荷側から扱います。

しかし、流体を扱うバルブを開閉するときは、この順番が逆になります。つまり、下図のようにON(開)のときは需要側から扱い、OFF(閉)するときは供給側から扱います。

これは一例ですが、電気エンジニアの常識は、ほかの技術領域では非常識の可能性もあります。柔軟に違う技術を学んでいく姿勢がなければ、転職後に苦労することになります。反対に、違う技術を習得することが楽しめれば、転職成功しやすくなります

24時間365日水道インフラを支える心構えがあるか?

水道という社会インフラに携わるなら、24時間365日いつでも呼び出される覚悟が必要です。絶対になくならない仕事である代わりに、自分のことよりインフラを守る心構えがなければ務まりません。これは、私が長らくインフラ企業に勤めていて痛感していることでもあります。

また、月島テクノメンテサービス社の求人票には、水道インフラの仕事が24時間365日監視であることが明記されています。

特に自然災害のときなど、同時多発的に施設内の複数の機器が破損、停止することがあります。そうなったときは、社員が総出で復旧に当たります。自分の家のことは後回しです。

私は地震や水害のときに、何日か会社に泊まり込みで電気設備の復旧に当たったことがあります。また、連休中に災害が発生して、旅行を中断して職場に急行したこともあります。

会社によっては、交代勤務で「24時間だれかが施設にいる」ことを基本としています。例えば、メタウォーターサービス社の運転管理の勤務時間は、下図のように2交代のシフト制です。

同様にここで紹介したほかの3社の求人の勤務時間は、下表のように提示されていました。

会社名 職種 勤務時間
みずむすびサービスみやぎ(株) 設備管理 2交代シフト
(8:30~17:45と17:00~翌8:45)
(株)武田エンジニヤリング 運転管理・設備管理 2交代シフト
(8:15~17:15と17:00~翌8:45)
月島テクノメンテサービス(株) 運転管理 日勤 : 8:30~17:10
夜勤 : 16:30~翌9:30
職場により交代制勤務

このように、社会インフラを守るという仕事は、自分の生活を最優先したい人には向きません。あなたにその覚悟があるならば、転職後にミスマッチを後悔する可能性は極めて小さくなります。

水道業の年収を知る

最後に、水道業の会社に転職したときの年収を解説します。転職の動機として、「年収に対する不満」がある人も多いです。年収についての適切なリサーチは、転職の満足度を高めます。

最初に紹介したみずむすびサービスみやぎ社の年収は、下図のように入社時の想定として241万円が提示されています。

同様に、ここで紹介した4社について、求人票に提示されている年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 職種 業種
(株)みずむすびサービスみやぎ 入社時想定 241 設備保全 水道業
(株)武田エンジニヤリング 280~480 設備保全 水道業
メタウォーターサービス(株) 300~450 運転管理(オペレーター) その他事業サービス業
月島テクノメンテサービス(株) 300~400 運転管理(オペレーター) その他事業サービス業

概ね300~450万円が提示されています。サラリーマンの平均年収が約500万円なので、この提示額は低いです。実は、年収は業界により大きく異なります。

水道業に関わる会社の業種は、「水道業」と「その他事業サービス業」です。厚生労働省が毎年公開している賃金構造基本統計調査によると、平均年収は、水道業が約470万円、その他事業サービス業が390万円で、サラリーマンの平均年収以下です。

これは、水道が公共的な事業であり営利追求の会社が少ないこと、自治体からの発注を入札して事業を行うため人件費を上げにくいことが原因として考えられます。したがって、大きく稼ぐ仕事というよりは、細く長く続ける仕事と考えてください。

また、賃金構造基本統計調査より年齢階級ごとに平均年収をまとめたものが下のグラフです。青で示したのが水道業、緑で示したのがその他事業サービス業の平均年収です。

引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化

これによると、30代くらいまでは水道業の平均年収も、その他事業サービス業の平均年収も大きく差はありません。しかし、40代以降、年収の伸びに差が出てきます。転職当初は年収が低くても、長く働くことで年収が伸びる会社もあります。

また、この統計データと比較することで、あなたに提示された年収が妥当かどうか判断できます。このような手続きを踏むことで、年収面での転職失敗を防ぐことができます。

まとめ

水道業の電気エンジニアとして転職する方法について解説してきました。

水道業の職種の中で、電気系技術者が活躍できる職種は2つあります。設備保全職とオペレーター職です。

設備保全職は、水道インフラを動かすための電力の供給や制御のための電気設備の機能を適切に保つ仕事です。オペレーター職は、水道施設の制御監視したり、非常時の応急復旧対応を行ったりする職種です。

名称が同じでも、会社によって仕事の内容が重複する場合があります。転職を決める前に、十分に仕事内容を確認しておく必要があります。

これらの職種は、専門的に電気系の仕事ばかりを行えるわけではありません。あくまで水道インフラを支えるために電気設備があるという認識を持たなくてはなりません。水道インフラ全体の技術について学び続ける必要があります。

また、水道インフラを支えるということは、仕事の優先順位が高いということでもあります。休日や災害時の呼び出しを承知しておかなければなりません。

最後に、水道に関わる会社の年収は、サラリーマンの平均年収と比べて低いです。業種として平均年収が低いので、大きく年収アップを望むことはできません。ただし、水道インフラがなくなることはないので、安定して長く働くことができます。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。