機械は現代産業にとって、なくてはならないものです。あなたが機械技術者として転職を考えるとき、この機械メーカーが選択肢に入るのは、もっともだといえます。

ただ、現代産業で活躍する機械には、様々な種類があります。転職活動を始める前に、どのような機械があるのかを調べておくと、あなたのこれまでの経験を活かせる分野が、ほかに見つかりやすくなります。

また、視野を広く持って機械メーカーを比較することで、転職後のミスマッチを防ぐことにもつながります。

今回は、まず機械メーカーの製造している機械の種類について確認します。そのあと、「機械メーカーで必要な資格・スキル」「実際の求人例・年収」について解説します。

もくじ

機械メーカーには、産業用機械・建設用機械などの種類がある

機械メーカーに転職を考えたとき、どのような分野があるのかを先に承知しておく必要があります。転職活動の初期段階で、分野を研究しておくことで、転職後のミスマッチを防ぐことができます。

・産業用機械(工作機械・ロボットなど)

一般にお店で販売されている機械ではなく、企業用に作られている機械を産業用機械といいます。例えば、あなたの身の回りにもたくさんある家電製品を製造するラインで働く機械や、工場で原材料を移送する機械などです。

ラインで働く機械は、単機能なものも多くあります。しかし、下の写真のような多関節ロボットもあります。

また、工場で原材料を動かす機械には、下の写真のようなベルトコンベアーがあります。

写真のベルトコンベアーは、この工場の燃料である石炭を移送するためのものです。トラックで運んできた燃料を、地上面の燃料投入口から高さが40m位あるサイロの上部に運びます。

この分野では、客先の要求仕様に合わせて機械の動作を設計する仕事や、保守部門として機器を設置した先に赴き、その場で点検・修理する仕事があります。

・建設用機械

土木工事や建築工事に使われる機械を、建設機械といいます。ショベルカーやブルドーザーなど、イメージしやすいと思います。

この分野も、産業用機械分野と同じように、設計や保守部門の仕事が多いです。特徴として、新規機種の生産・販売ではなく、消耗品やメンテナンス部門で稼いでいる業界です。

産業用機械と建設用機械の分野は、海外での売上が大きいです。これら分野で働くなら、海外で働く(転勤・出張)ことを見越しておく必要があります。

求められる資格、知識

では、このような職種につくにはどのような資格やスキルが求められるのでしょうか。実は、資格はあまり求められません。

なぜなら、工作機械や建設機械を製造するのに、必須の資格は存在しないからです。つまり機械メーカーに転職を考えるとき、資格取得を考えるべきでなはなく、先に転職活動を進めると良いです。

ただし、求人には特定の資格所持者を優遇・歓迎する旨が記載されていることがあります。これは会社によって違うものの、当該の資格を持っている場合は、面接などで大いにアピールしましょう。

電気の知識・経験

資格ではありませんが、電気に関する知識・経験があると重宝されます。これは、機械の動力源を考えれば納得しやすいはずです。

工場などの据付型機械は、ほとんどが電気で動作します。下の写真のような建設用機械は、主要な動力源は原動機(エンジン)でも、制御系に必ず電気が使われています。

例えば、海外の鉱山などで活躍するコマツ製のダンプトラック(下写真)は、エンジンから直接動力を得ているのではなく、ディーゼルエンジンで発電機を回し、モーターで動力を得ています。

動力特性やメンテナンス性でモーターの方に優位性があり、現在ではエンジンで発電機を動かし、動力はモーターとする方式が主力です。したがって、メーカーは違うものの下の図のような求人が募集されています。

日立建機株式会社は、建機業界売上ランキング2位(コマツが1位)の大手で、経済産業省が認定する「健康経営優良法人2018」に認定されています。いわゆるホワイト企業です。この本社は東京にあるものの、製造拠点は茨城県(つくば、那珂、霞ヶ浦、土浦)に多くあります。

この求人では、AC(交流)ドライブ駆動のダンプトラックの設計が主要業務です。ACドライブとは、この場合、交流誘導電動機を指します。

交流誘導電動機は、その構造上消耗部品が少なくメンテナンスが容易です。しかし、トルクを出すのにインバーターが必要で、インバーター技術が未発達の頃はその優位性を生かせないでいました。

平成になってインバーターが実用的になり、交流誘導電動機が注目され、さまざまな場所に使われるようになりました。身近なところでは、鉄道車両のモーターが、直流電動機から交流誘導電動機に置き換わりました。

また、1章で紹介したベルトコンベアーは、「機器の停止運転の制御」や「動作状態の監視」は、遠隔で数百m離れた場所から行っています。ベルトコンベアー本体から中継器を通って、中央制御監視室の計算機まで、電気通信を用い制御されています。

産業分野で、機械的要素だけで構成されているものは、急速に少なくなりつつあります。このような状況から、インバーターや電気計算機など、電気に関する知識や経験があると、大きなアピールポイントになります。

機械業界は、電気分野の技術と協調することで将来性のある分野として成長しています。このような事実を鑑みて、電気技術を学ぶ姿勢を見せることが、転職を成功に導きます。

プログラム言語の考え方の理解

計算機を使った制御は、プログラム言語で記述されることが多いです。しかし、プログラム言語のコーディングをできることが重要なのではなく、プログラムの考え方が大切であることに注意しておく必要があります。

工作機械メーカーで働く後輩に話を聞くと、以下のようなことを教えてくれました。

機器本体は自社として販売しているが、加工部を動かしている制御部分はファナックや三菱電機などから購入している。

したがって、これらのメーカーが用意しているプログラム言語で制御する。この言語は、一般にNC言語という。ただし、メーカーごとに方言があり、多少言語仕様が違う。

この後輩は、学生時代にHTML(Hyper Text Markup Language: WEBサイトを記述する言語)とC言語(家電などのマイコンによく使われる言語)を習っていました。当時は、HTMLは全くの不得手で、C言語は得意だったとも言っていました。

1章の多関節ロボットは、汎用プログラム言語ではなくメーカー独自の言語で制御しているということでした。

このように、機械の動作を制御するにはプログラム言語が用いられています。そして、その言語は学生時代に学ぶような汎用プログラム言語ではなく、メーカー独自の言語です。

もちろん、汎用プログラム言語を習得していることは無駄にはなりません。しかし、一つのプログラム言語に精通していることよりも、プログラムがどのように手続きを進めていくのかを理解しておくことが大切です。

簡単な例でいうと、プログラムには下図のように、「順次」「分岐」「反復」の3つの制御構造があります。

これらを使って、プログラムをどのように作り上げるかが大切であって、C言語であればif文(分岐)やfor文(反復)の文法を覚えておくことは、あまり意味がありません。

実務でのプログラミングがなくても、Microsoft Office VBAなどでプログラムに多少でも触れており、プログラムをどのように動かすか理解していれば、大きな強みなります。

転職サイトにおける求人例と年収の実際

それでは、転職サイトを使って実際の求人例を確認していきましょう。転職サイトではキーワードを「工作機械」「建設機械」などとすると、すぐに見つかります。

最初は、工作機械メーカーで本社が愛知県にあるオークマ株式会社です。下図が、この会社の求人で仕事内容の欄です。これは、フィールドサービスエンジニアと納品システムエンジニアを募集するものです。

フィールドサービスエンジニアは、すでに納入してある工作機械で、ユーザーの手に負えない不具合が発生したとき、現地に赴いて対応するエンジニアです。この会社では、北は山形県から南は福岡県までサービス拠点があり、それぞれの拠点で勤務します。

納品システムエンジニアは、新規の受注に対して、客先へ機器を据付けに行くエンジニアです。据付後は、ユーザーに対する操作・簡易メンテナンス教育などを行います。

この求人だと、拠点を本社のある愛知県に置いて、全国を出張で飛び回ることになります。

私は、これまで発注側の立場で、納品システムエンジニアに相当する人達と関わってきました。彼らは、月曜から金曜日までホテル住まいで作業現場の近くに詰めておき、週末だけ家に帰るという生活です。

長期の工事になれば、1ヶ月以上そのような生活を送ることもあります。もちろん、工事が終われば拠点に戻り、デスクに座って仕事をします。私が話を聞いた人は1年の内、半分以上は出張しているといっていました。

続いて下図は、この求人でどのような人が対象になるか記載された箇所です。

資格として、普通自動車免許が挙げられている以外、特別な資格は必要ないことがわかります。それよりも、同業種の経験があった方が歓迎されます

この記載のとおりだと、文系出身でも受けることができます。営業などで、顧客対応の経験があれば、フィールドサービスエンジニアには活かせます。

しかし、機械について全くの素人ではきついでしょう。それは、この会社の商品である工作機械について、スペシャリストになるつもりで学ぶ必要があり、それが苦になるなら、応募は勧められません。

一方、現在ユーザーとして工作機械のNCプログラムを扱っているなら、納品システムエンジニアに応募すると喜ばれるでしょう。

また、海外への出張があるのに、英語・中国語は話せると良いものの、必須ではありません。

同じような境遇で働く後輩に聞くと、現地側企業が通訳者をつけるので問題ないというということです。あくまで、求められるのは機械技術者としての技術力です。

そして、下図はこの求人の提示年収です。350万~600万円であると記載されています。

また、30歳の年収(515万円)以外は、提示金額以上の年収が例示されています。20代前半で採用された場合、最初は年収が低いかもしれません。しかし、長く勤めて年齢が上がるに連れて、提示金額以上の年収を見込めます。

2番目に紹介するのは、建設機械メーカーのクボタ株式会社の求人です。もともとは大阪府を中心とした関西が地盤で、今では全国に事業拠点があります。

この求人では、製品の品質管理・保証の職域で年収450~850万円で募集されています。品質管理・保証とは、簡単に言うと「試験」です。

製品を市場に出す前に、スペックを確認するために試験をしなければなりません。このとき、どのような試験をするか、これまで行ってきた試験で十分なのかなどを検討実施します。

また、客先から不具合が報告されたとき、その原因究明をします。まずは再現試験をして、原因箇所を突き止めていきます。再現しなかったときが問題で、客先だけの問題なのか、製品全体の問題なのか切り分けるために、長時間試験を繰り返します。

私は発注側として、何回かその現場に居合わせたことがありますが、昼夜を問わず、目を真っ赤にしてまでも、真剣に原因追求をしていた姿を覚えています。その分、問題解決したときの晴れやかな顔は印象的でした。

この求人の応募条件は、下図のように「社会人3年以上」「同様の部門での経験あり」「関係者との調整業務ができる」「機械図面が読める」など、厳しいです。

ただし、機械技術職としてのエキスパートを求めているわけではありません。関係部門を巻き込んで、部門にとらわれず、会社として製品の品質を向上させることに主眼を置いていると考えられます。

経験分野も機械分野に特定していませんので、似たような経験があれば、あなたが機械系学科出身でなくても、採用される可能性は十分あります。

最後は、株式会社日立産機システムの求人(下図)を紹介します。

株式会社日立産機システムは、東京に本社がありますが、全国に拠点を持った会社です。東日本、なかでも関東地方に主力拠点があります。

日立グループの一員であり、電機のイメージが強いですが、下の写真のような製造業のラインの機械設計・設置・保守まで一貫して行っています。

この求人では、下図のようにFA(ファクトリー・オートメーション)や産業用機械の設計経験があることが応募条件になっています。製造ライン全体の設計経験でなくても、機械単体でも経験があれば応募すると良いです。

この求人の年収は、400~1000万円と提示されています。機械設計経験者は、ステップアップとして、年収アップを狙いやすい求人といえます。

以上のように、機械メーカーの技術職求人は、機器を設計する仕事、機器の品質を管理保証する仕事、機器をメンテナンスする仕事などがあります。また、経験を問われる求人が多いです。

したがって、これまでの自分の職歴を洗い出し、強みを生かせる分野を探すとミスマッチを防ぐことができます。

まとめ

機械メーカーといっても、産業用機械(工作機械・ロボットなど)、建設用機械など製造しているものは多種あります。ただし、仕事内容はサービスエンジニア・品質管理・保証・設計など共通するものが多いです。

したがって、過去の経験を活かせる仕事が多いことが特徴です。そして、これらの機械を製造するのに必須の資格はないので、転職で資格を求められることは、ほとんどありません。

また、近年の機械は電気技術がいたるところに使われており、これら電気技術について学ぶ姿勢を見せることが重要です。

実際の求人では、「工作機械」「建設機械」などのキーワードを使って探すと、容易に見つかります。

年収は300万円台や400万円台がスタートのものもあり、転職直後は決して高い部類に入るものではありません。しかし、働きだしてから長く勤めることで、比較的高い年収を得ることもできます。腰を据えて仕事をしたい人に向いているといえます。

このような情報をもとに転職活動をすることによって、ミスマッチを防ぎ転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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