CADを使う仕事の中でも、一つの大きな分野が機械系CADオペレーターです。あなたが日々使っている形があるモノは、設計図があります。また、その形があるモノを作る工場などにも、設計図があります。

これらの設計図は、かつてはほとんど手書きでした。しかし21世紀になって、ほとんどがCADによって描かれるようになりました。

したがって、機械系CADオペレーターの仕事は無くなることは考えにくい、将来性もある仕事だと言えます。

ただ、あまりに分野が広すぎて、どのような求人があるのかわかりにくいです。また、求人が見つかったとしても、あなたのCADスキル・経験と仕事内容がどのようにマッチするのか、わかりにくいことが多いです。

転職で成功するには、これらの「わからない」ところを少しでも減らすことが肝要です。正しい知識を得て転職活動することで、転職成功しやすくなります

ここでは、「機械系CADオペレーターの活躍できる分野と求人例」「2D・3D-CADの違いと仕事内容」「機械系CADオペレーターの給料・年収」などについて、くわしく説明します。

もくじ

機械系CADオペレーターの活躍分野は広い

機械系の設計業務においてCADが用いられる分野は、幅広くあります。しかし、どの分野も形ある物体を作ることに変わりありません。

ただ、扱うものによってミリやミクロン単位の大きさから、プラントやオフィスビルなどの巨大な設備まで、さまざまなものが対象になります。

CAD図面は、最終的に完成物を作るための設計図です。したがって、後工程のことを理解して描いたほうがより良い図面を描くことができます。それは、あなたの評価・給料に跳ね返ってきます。

私は、鉄道関係の工事図面をAuto-CADを使って描いていた経験があります。工事に携わった経験が浅い状態で描いていたので、最終的な完成がイメージしづらく、大変苦労しました。

結局施工途中で現場合わせや図面の書き直しを経て、当初思い描いていた完成とは全く違う状態でなんとか竣工することができました。これは、過去の施工事例を上長や先輩に何度も聞いて、スケッチを描いてもらったからできたことです。

このように、図面を描くなら何を作っているのかイメージしやすい分野の求人を探すと良いです。その業種での経験があれば最良ですが、経験がなくてもあなたが完成物に興味を持てる分野に転職すると、仕事がつらいということになりにくいです。

機械系CADオペレーター求人の実際

ここからは、実際の求人例を見ながら機械CADオペレーターの仕事を解説していきます。機械系CADオペレーターの求人は、転職サイトなどで「機械 CADオペ」をキーワードにして検索すれば、比較的多くの求人がヒットします

以下の株式会社葵サービステクノの求人は、機械部品の製作のためにCADで平面図を描く人材を募集しています。葵サービステクノ社は、工作機械大手のオークマ社と主な取引をしている愛知県の会社です。

この仕事は、立面図から平面図を描く仕事です。実は、立面図や3D図面から直接完成品を製作することは、まだ一般的ではありません。多くの場合、2Dの図面から完成品を製作します。そのため、下の図のように立面図を平面の図に変換する必要があります。

私の妻が、かつて大阪の製造業で3D図面・2D図面ともに扱っていました。妻に聞くと、以下のことを教えてくれました。

3Dプリンタなど、3Dデータから直接完成品を作れる製品はある。しかし、プラスチックであれ、金属部品であれ、金型から製作するほうが圧倒的に早い。

金型を3Dデータから直接製作する手段はないので、2D図面がなくなることはまずない。

このことから、製造業の部品制作において2D-CADの需要がなくなることは考えにくいです。

次に、工事施工の図面を描く仕事を紹介します。下に示すのは、マンションなどの給排水・空調設備の工事図面を描くオペレーターを募集している株式会社丸藤産業の求人です。丸藤産業社は福岡県を中心に事業展開している会社です。

この会社で描くのは施工図面です。施工図面は、基本的に2Dで描きます

設備工事の難しいところは、同じ空間を建築・電気・通信などほかの設備が共用するところです。同じ会社ですべての施工することはまずなく、丸藤産業社が管工事を担当するので、電気や通信工事は別会社が担当します。もちろん施工時期は同時ではなく、順序よく施工していきます。

このように施工者が違う場合に起きがちなのは、あとから施工することを考慮せずに機器・部材を配置してしまうことです。

例えば、下の図のように先に電気工事でスイッチ・分電盤の施工が終わっているときを考えてみましょう。最短ルートだからといって配管(ダクト)をスイッチのすぐ近くに配置すると、スイッチ・分電盤を扱うことができなくなります。

もちろん、電気系の配線と配管を別のPS・EPSに分けるのが理想です。しかし、現実には同一のPS・EPS内に混在することもあります。図のような場合は、電気工事のほうが動かしやすいため、電気工事会社が手直しすることが多いです。

しかし、ユーザーがスイッチを当初の場所に配置してほしいとしたらどうなるでしょうか。この場合は、配管(ダクト)を施工した会社が手直しすることになります。

どちらの場合も、どこかが金銭的に損をします。これは、あらかじめ他社を含めた完成形をイメージできていれば防げたことです。

このような事例の多くは、現場で会社間調整して解決することが多いです。しかし、図面を描く人は、このようなことが起こり得るということを十分考慮して図面を描かなくてはなりません。つまり、自分の仕事だけでなく他社を含めた周りの仕事を意識できる人が向いてる人と言えます。

次の丸藤産業社の場合は、研修段階でCADオペレーターも必ず現場で研修することが記載されています。

施工現場での研修が明確に謳われていない会社でも、現場を直接確認しないと図面を描くことができないことはあります。施工図面を描くオペレーター求人の場合は、「必要に応じて現場に出なければならない」前提で転職すると、ミスマッチを減らせます。

2D・3D-CADの違い

前章に多少書いた、2D-CADと3D-CADの違いについて、もう少し深堀りして解説します。この2種類のCADは、使われる場面が違うことが多いです。特性を十分に知った上で、転職を決めましょう。

2Dは製作に用いられる

まず、2D-CADは「製作図面」を描くCADです。2D-CADで有名なソフトは、「Auto-CAD」「JW-CAD」などがあります。

多くのものが、製作の場面では2次元のCAD図面をもとに製作されます。これは、かつて手書きでドラフターを使って描いていた図面を、コンピューター画面上で描いていると考えればよいです。先にも述べたように、まだまだ需要が絶えることのない分野です。

ただし、図面を見ても完成型がイメージしにくい難点があります。想像力を豊かにして、完成形をイメージしながら仕事をする必要があります。もちろんイメージを補完するために、「ほかの完成形を見る」「施工前の現場を見る」などの図面を描く以外の努力が必要です。

3Dは検証に用いられる

一方、3D-CADは検証に使われることが多いです。例えば、「ある空間でモノを収めたときに干渉しないか?」「強度が足りているか?」などを、実際に作る前に検証することができます。

3D-CADで私の経験上強く印象に残っているのは、プラントの配管完成図を3D図面で見せられたことです。タブレットPCに3D図面を映しながら、干渉する機器やスタンションがないか、現場を確認して歩きました。下の写真のような、機械配管、制御線、設備機器が集中している場所では、相互に干渉しないか3D図面で確認すると工事の手戻りが少ないです。

私がまだプラントの現場に慣れていなかったこともあり、施工現場を3Dで示してくれたので、大変判断しやすかったのを覚えています。

私の例は、干渉箇所を事前に確認するシミュレーションした例です。そのほか、3D-CADは強度・応力などを検証するのにも使われます。これがCAE(Computer-Aided Engineering)と呼ばれる手法です。

CAEは、かつては手計算か、実際にプロトタイプを作ってからしか強度を測ることができなかった手法です。それが、コンピューターの性能が飛躍的に向上したおかげで仮想空間上で解析できるようになりました。

これにより実際に製作する前に、強度が足りないところがわかりやすくなります。したがって、試作品を作る回数が減るため、製品開発全体のコストを下げることができます。

CAEは機械設計の業務範囲であり、CADオペレーターの募集に含まれるかはわかりません。ただ、3D-CADのオペレーターで機械設計の部署なら、CAE解析を期待されることもあります。

例えば、下の株式会社ライト光機製作所の求人では、「3D-CAD」「機構設計」の記載があるものの、「CAE」のキーワードはありません。

しかし、求人票の内容は3D-CADを使う機械設計です。強度解析も仕事内容に含まれると考えてください。もちろん選考過程を通して、詳しい業務内容を確認することも忘れないでください。

このように、2Dと3DのそれぞれのCADで仕事の目的が変わることを承知しておく必要があります。これを無視すると、ミスマッチに繋がります。

CAD資格はなくても問題ない

転職するのに、資格があったほうが良いと思えます。CADにも、いくつか資格があります。代表的な資格は、下記に示すとおりです。

  • CAD利用技術者試験
  • オートデスク認定資格プログラム
  • 建築CAD検定資格

これらの資格をすでに持っているのなら、転職活動においてアピールすることはできます。企業の求めている領域の資格を保有していれば、さらに評価されやすいです。しかし、転職のためにこれらの資格取得をするのはおすすめしません

前述のとおり、私の妻にはCADで製図を行ってきた経験があります。妻に聞くと、「CAD資格は分野が違うと全く評価されない。資格より、経験が大切だ」ということです。

例えば、2D図面を描く仕事なのに、3D-CADの資格を持っていても全く評価されません。また、その逆も同じです。資格を持っている未経験者より、資格を持っていない経験者が評価されます。

3D-CADでは、CADソフトによって資格があります。これも、あなたが持っている資格のソフトを、企業が使っていないと評価対象になりません。

さらに言えば、これらの資格を取得するには最低でも3ヶ月程度かかります。転職の求人は、採用が決まればなくなります。3ヶ月もあれば、優れた求人があったとしても、同じ求人が出る可能性は限りなく小さくなります。

したがって優れた求人を見つけたら、そのチャンスを逃がすことなく、すぐに応募することが転職成功の秘訣です。

機械系CADオペレーターの給料・年収を知る

最後に、機械系CADオペレーターの給料・年収を解説します。

冒頭で紹介した葵サービステクノ社の年収は、下図のように月収で18〜25万円と示されています。

これは、ボーナスを年4ヶ月分として年収換算すると、288〜400万円になります。

同様に、ここで紹介した求人について、年収をまとめたものが下表です。丸藤産業社も求人票では月収表示だったので、年収に換算して記載してあります。

会社名 年収 業種
(株)葵サービステクノ 288〜400
(※求人票は月収表示18〜25)
製造業(金属製品)
(株)丸藤産業 352〜400
(※求人票は月収表示22〜25)
建設業(設備工事)
(株)ライト光機製作所 400〜700 製造業(業務用機械器具)

ライト光機製作所の提示年収が高いのは、機械設計職の位置づけだからです。一般にCADオペレーターは、設計職の補助として代わりに図面を描く仕事を中心にします。仕事の難易度でいうと、設計職のほうが難しく、人材が少ないので、CADオペレーターの提示年収は設計職より低いです。

また、提示される年収は業種によって大きく変わります。業種ごとの平均年収は、厚生労働省が毎年公表している賃金構造基本統計調査が信頼できるデータとして示されています。

下のグラフが、賃金構造基本統計調査の業種別平均年収のうち、機械系CADオペレーターが必要とされる業種を抜粋してグラフ化したものです。青色が製造業、緑色が建設業の平均年収を表しています。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

グラフ中、石油石炭製品製造業や化学製造業など、気体・液体・粉体の製品を扱う製造業があります。これらの業種では、製品に対してCADで設計を行うのではなく、生産機械を設計するのにCADが使われます。したがって、CADの考え方としては、建設業に近いスキルが求められやすくなります。

また、このグラフによると、平均年収が最も高い業種と最も低い業種で2倍近い差があるのがわかります。平均年収の高い業種に転職すれば、求人票の提示年収が低くても、将来的に年収が高くなりやすいです。

つまり、平均年収の高い業種の求人を集中的に探し応募することで、転職して年収面で成功しやすくなります

まとめ

機械系のCADオペレーターに転職するときの考え方について、くわしく解説してきました。

機械系CADオペレーターが活躍できる業種は幅広くあります。ただし、「形のあるものをコンピューターの仮想空間に描く」仕事であるということは、どの業種も変わりありません。

そこで、「完成形をイメージしやすい」「完成物に興味を持てる」業種を選ぶと、ミスマッチを防ぎやすくなります。一方、「イメージできず」「興味もない」業種だと、仕事がしんどいばかりでなく、成果も上がりにくくなります。

また、2D-CADと3D-CADで使われる用途が違います。主に、2D-CADは「製作」を目的とし、3D-CADは「検証」を目的としています。図面を描く考え方も変わってくるので、あなたが「何をしたいのか」を整理しておく必要があります。

これらCADソフトのスキルを担保する資格は、いくつか存在しています。あなたがCAD資格を持っていて、希望する会社がそのCAD資格の保有者を募集していたら大いにアピールすると良いです。

しかし、転職ために新たにCAD資格を取得するのはおすすめしません。優れた求人を逃してしまうばかりでなく、資格者が求められなければただの時間の無駄になります。

CADオペレーターの給料・年収は、設計者に比べて高くありません。一方、機械設計もできるようになると年収が伸びる可能性が高くなります。

また、機械系CADオペレーターの求められる業種は幅広く、業種間の平均年収には差があります。そこで平均年収の高い業種に絞って転職活動することで、年収面で成功しやすくなります


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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