転職において、選考の一つの要素となるのが学歴です。特に転職者の多い20代のうちだと、他者に秀でて必要な業務経験や資格を取得していることも多くなく、学歴は評価の対象として重要な要素と言えます。

ただ電気系技術職において、大学卒業以上の高度な技術力が必要な職種は多くありません。学歴不問の職種に転職して、大卒の技術力を活かせないのはもったいないです。

転職で成功するには、さまざまなセオリーがあります。その一つとして、たくさんの優れた求人を見つけることがあります。優れた求人を選んで採用試験を受け続ければ、転職成功しやすくなります。

ここでは、「大卒が条件となる電気系技術職求人の探し方」「大卒の電気系技術職が求められるもの」「給料・年収の考え方」について詳しく解説します。

もくじ

大卒以上が対象となる電気系の求人は職種が限られる

求人を探す際には、多くの人が転職サイトなどで検索しています。しかし、大卒以上が条件の求人を探すときは工夫が必要です。

なぜなら、大手の転職サイトでは、求人を絞り込むのに「学歴不問」のフィルターはあるものの、「大卒」「大卒以上」を条件にしている求人を絞り込むフィルターはないからです。

したがって、大卒以上が条件の求人を探すには、少し工夫が必要です。具体的には、大卒以上が対象になりやすい職種を知った上で、その職種の求人を集中的に探します

電気系技術職で、大卒以上が条件になりやすい職種は、以下の2種類です。

  • 研究開発職
  • 建設・電気設備設計(建設コンサルタント)

裏を返せば、これ以外の職種では学歴不問としていることが多いです。つまり、大卒だろうが高卒だろうが仕事内容にそれほど差がありません。

大卒として働くからには、学んできた高度な学問を仕事に活かしたいと思うのは当然です。その場合は、職種が限られるということを知っておく必要があります。

大卒以上が条件の電気系求人の実例

ここからは、それぞれの職種について実例を示しながら解説します。

・研究開発職

研究開発職は、モノ(製品・サービス・仕組み)づくりの上流に位置する職種です。下図は、形ある物の開発手順を示したものですが、サービスや仕組みづくりでも概ね同様の手順で進みます。

電気系の研究開発職だと、電機メーカーが思い浮かぶかも知れません。しかし、材料やデバイスの研究開発など、電気技術が必要な研究開発職はほかの業種にもあります。

具体的に求人例を上げると、下図の株式会社Eサーモジェンテックがフレキシブル熱電発電モジュールの研究開発職として人材を募集しています。Eサーモジェンテック社は、京都に拠点を置く技術ベンチャー企業です。

Eサーモジェンテック社のコア技術である熱電発電素子は、半導体について知見がないと使えません。工業高校では、半導体技術のうち熱電素子まで教えないので、必然的に大卒以上が対象になります。求人票にも、大学で電気系を専攻してきたことが必須条件とされています。

・建設設計(建設コンサルタント)

次に紹介するのは、建設コンサルタントです。建設コンサルタントは、簡単に言うと「大規模な土木建築工事の計画から完成までの諸手続きに、適切な支援・助言などを行う仕事」です。

近年の土木建築には電気技術が必ず使われているので、電気技術者の出番が必ずあります。例えば、下の日本工営株式会社の求人では、情報通信コンサルタントを求めています。ちなみに、日本工営社は国内トップクラスの建設コンサルタントです。

この求人では、海外案件担当として全世界の顧客を相手に、社会インフラの情報通信部分を担当します。学歴だけでなく、実務経験や語学力をシビアに求められる求人です。その分、条件がマッチすれば決まりやすい求人とも言えます。

私は、鉄道における新規路線開業で、建設コンサルタントが担当するようなフェーズの仕事をしたことがあります。そのような新しく何かを作る仕事は、検討事項が圧倒的に多く技術的な裏付けも必要です。

鉄道会社に就職して8年目から3年間担当したのですが、それまで7年間学んだことの全てを合わせても到底足りない量の技術を学びました。電気技術に関して、ある程度の高等教育を受けていないとついていけなかっただろうと思い返しています。

したがって、建設コンサルタントの求人も、大卒以上を条件にすることが多いです。

求人を探すのは難しいので転職エージェントの力を借りる

学歴に「大卒」「大卒以上」が明確に謳ってある求人は、上記の職種から探していくと見つかりやすいです。しかし、求人数は少ないです。

そこで、少しでも多くの求人を見つける方法を紹介します。転職に成功した多くの人が行っているのは、転職エージェントから求人の紹介を受けるということです。

実は、あなたが転職サイトで見ることができる求人は、世の中の求人のごく一部です。一般には公開されない求人を「非公開求人」といい、下の図のように求人全体の8割が非公開求人とされています。

非公開求人にアクセスしようとしたら、転職エージェントを介するしか方法がありません。したがって、転職エージェントサービスを使うだけで、優れた求人に出会う確率が5倍になります。

また、「大卒」「大卒以上」を条件に求人を探すのは、転職サイトのユーザーインターフェースでは面倒です。転職エージェントを使うなら、あなたが希望する求人の絞り込みも、あなたの代わりにやってくれます。空いた時間は、企業研究などに当てることができます。

このように転職エージェントをうまく使うことで、優れた求人に出会う確率が上がり、時間の有効活用をできるので、転職成功しやすくなります。

大卒に求められるもの

では、あなたが大卒として転職するとき、企業から何を期待されているのでしょうか。特に、「大卒以上」を条件にしている会社は、「大学卒業という学歴に価値を感じている」から条件にしているわけです。それは一体どのようなことなのでしょうか?

その一つは、電気技術のバックグラウンドです。電気の専門的で高度な技術を身に着けていることが期待されます

下の写真は、私が新路線建設の際に、電鉄用変電所の受電電圧降下について検討したときの資料の一部です。鉄道に限らず新規建設の計画段階では、このような技術検討が入念に行われます。

この写真の資料では、ベクトル図を使って幾何的に解析しています。しかし、ほかの大卒の人はベクトルオペレーターを使ってさらに簡潔に解析していました。

電気は目に見えないため、基本的に解析は数学を使って机上で行います。工業高校で習得する数学や電気技術で解析することも可能ですが、大学以上で習得する高等数学を使ったほうがより簡潔にスムーズに解析が可能になります。

したがって、大卒以上という条件がつく求人では、仕事内容に電気の詳細解析を行う業務が含まれることが多いです。

大卒以上の求職者に期待することのもう一つは、「ねばり強さ」です。

これは、あるプラントでOM(オペレーション&メンテナンス)業務を請け負っている会社の所長が言っていたことです。

大卒と違って高卒の社員は、比較的すぐに辞めるので定員より3人程度多めに採用している。高卒社員は、負荷をかけるとすぐに辞める。

このことは、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」の調査を見てもわかります。高卒の3年離職率が30年間で約35~50%であるのに対し、大卒は約25~35%で推移しています。

つまり、大卒人材は粘り強く仕事に取り組む前提で採用されます。もちろん、業務負荷もかけられやすくなります

私が勤めていた鉄道会社では、大卒枠で入社すると数年で業務負荷の高い職場に転属されていました。また、高卒枠だと定年まで業務負荷の低い現場仕事を担当し続けていました。その分、大卒の昇進の方が早かったです。

このように、「大卒」であることを条件に求人を探すなら、技術的なバックグラウンドと仕事に対するねばり強さを求められると考えてください。

大卒で電気系技術職になったときの年収

最後に、大卒で電気系技術職なったときの年収について解説します。

厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査によると、新卒者の給料は大卒が高卒よりも4万円程度高いです。年収に換算すると60~80万円程度、大卒の方が高くなります。

しかし、年収は会社規模や業種により大きく変わります。ここで紹介した2社の求人票における提示年収は、それぞれ下図の通りです。一番目のEサーモジェンテック社が300~600万円で、二番目の日本工営社が370~800万円です。

この2社でいうと、下限値で70万円、上限値で200万円の年収差があります。

そして、業種ごとの平均年収について、厚生労働省が毎年「賃金構造基本統計調査」を実施して公開しています。

大卒以上が条件の求人が出やすい業種の平均年収ランキングとしてグラフ化したものが下図です。製造業を青色、非製造業を緑色で示しています。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

ちなみに、Eサーモジェネンテック社は「専門サービス業」、日本工営社は「技術サービス業」です。

このグラフを見ると、最も高い平均年収の業種と最も低い平均年収の業種で、数百万円の差があります。そして電気技術は、さきほどのグラフで示したほとんどの業界で活用されています。

できるだけグラフの左の業種の求人を探すことで、高い年収を得られやすくなります。また、提示年収が低くても、将来的に高い年収を得やすくなります。

まとめ

大卒以上が条件の電気系求人に転職するには、職種が限られます。研究開発職・建設設計(建設コンサルタント)が、大卒以上が条件になりやすい職種です。

これ以外の職種だと、学歴不問であることが多いです。したがって、大卒であることは特に評価されません。

これらの職種の求人は、転職サイトの求人検索フィルターで絞り込むことが難しいです。したがって、転職エージェントに希望を伝えて求人紹介を受けると良いです。

また、求人数も少ないため、転職エージェントから非公開求人の紹介を受けることで、優れた求人に出会いやすくなります。

大卒人材が企業から期待されることは、「電気の高度な技術力」「仕事に対する粘り強さ」です。採用試験や入社後に特に説明がなくても、これらが求められることを念頭に置いておけば、ミスマッチを感じにくくなります。

大卒以上で電気系求人に転職したときの年収は、高卒に比べて60〜80万円ほど多く年収が提示されやすいです。しかし、年収は業種により大きく左右され、金額は数百万円違うこともあります。

したがって政府統計などを利用して、平均年収の高い業種の求人に積極的に応募し転職することで、年収面での満足度が高くなりやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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