電気工事士の資格は、工業高校であれば在学中に取得することも多い資格です。また、実際に手を動かして電気工事をするのに、必ず持っておかなければならない資格でもあり、就職して比較的早くに取得する資格でもあります。

最終学歴が高校卒業で、この電気工事士の資格を生かして転職はできるのでしょうか。

学歴に関係なく電気工事士の資格所持者への求人はあります。電気工事をするには、絶対必要な資格だからです。

ただし、今後の目指す仕事のあり方によって選択は変わってきます。例えば、職人のように自らの電気工事の技を極めていくのか、それともたくさんの人をまとめて規模の大きな仕事をしていくのかで違います。

ここでは、電気工事士の資格について復習したあと、高卒の人がどのようにキャリアアップを目指すのかを解説します。

電気工事士資格が求められる会社の業態

まず、電気工事士資格には2種類あります。それは、「自家用電気工作物のうち、最大電力500kW未満の需要設備の電気工事」「一般用電気工作物の電気工事」の両方に従事することができる第1種電気工事士と、「一般用電気工作物の電気工事」だけに従事することができる第2種電気工事士です。

電気工作物の範囲は以下の図の通りです。

第1種電気工事士は実務経験が必要ですので、実務経験の少ない若いうちは第2種電気工事士から取得することになります。高卒の人であれば、在学中か就職して数年のうちに第2種電気工事士を取得していると思います。

住宅や小さい店舗など、私たちが普段生活しているところは第2種電気工事士が工事できる範囲です。一方で工場や大きなスーパーなど、働きに行ったり買い物に行ったりする人が多く集まるところは、第1種電気工事士が工事できる範囲です。

第2種電気工事士が必要とされる会社は、「建築設計事務所から屋内配線の仕事を受けて一般住宅の電気工事をする会社」「ゼネコンなどからオフィスビルの内装の仕事を受けて、電気工事をする会社」などです。

一方、第1種電気工事士が必要とされる会社は、第2種電気工事士が必要とされる会社に加えて、「自家用電気工作物を持つ大企業のグループ会社」「大企業相手に電気工事を請け負う会社」などが該当します。

第1種電気工事士を必要としている会社でも、事業範囲が自家用電気工作物だけでなく、一般用電気工作物も対象にしていることが多いです。この場合、第2種電気工事士資格でも募集がかかっていることがあります。ただ、将来的には第1種電気工事士の取得を目指すことになるでしょう。

電気工事士資格が生かせる求人例

では、実際にどんな求人があるのか見てみましょう。まずは第2種電気工事士を募集している案件を見ていきます。

下図は、15名ほどのスタッフで運営されている「建築設計事務所から屋内配線の仕事を受けて一般住宅の電気工事をする会社」の求人情報です。さらに、学歴不問の求人なので高卒であっても問題なく応募できます。

この求人は、デザイナーズオフィス中心に屋内の照明工事・電話工事の施工請負をしている会社です。電気工事の小規模事業者で転職サイトに求人を出しているというのは珍しいです。高卒の電気工事士資格保持者の採用に、意欲的な会社といえるでしょう。

次に、「ゼネコンなどからオフィスビルの内装の仕事を受けて、電気工事をする会社」の例を見てみます。下の図がその例です。

この会社も30人ほどの会社です。第2種電気工事士だけの事業領域でなく、第1種電気工事士の事業領域もありますので、第1種電気工事士資格を持った人にも求人を出しています。

大型マンションや大規模施設には600V以上の電気工作物がありますので、第1種電気工事士の資格者が必要なのです。

また、電気工事施工管理技士の資格取得者を歓迎しています。電気工事施工管理技士資格は、建築業法に基づく資格です。50人以上の労働者を指揮して仕事をする場合、絶対に資格者を置かなければなりません。

この会社の場合、ハコモノ施設の新設工事に携わっていますので、電気工事施工管理技士が必要です。従業員は30人ですが、さらに下請け業者を雇って50人以上で仕事をします。電気工事会社の場合は、よくある発注形態です。

・第1種電気工事士の求人例

次に、第1種電気工事士が必要な転職情報を紹介します。

まず、 「自家用電気工作物を持つ大企業のグループ会社」です。下図がその例です。

この会社は、大手通信キャリアの出資会社です。高速道路上に、大手通信キャリア製の機器が多数設置されており、それを保守メンテナンスすることが中心の会社です。

また、保守だけでなく、老朽取り換えや新設工事も請け負っています。

最後に、「大企業相手に電気工事を請け負う会社」の例を紹介します。下図がその例です。

この企業は、財閥系メーカーの子会社です。メーカーが顧客から受注した電気工作物の据え付けや調整を請け負う業態です。扱う製品が、600V以上の自家用電気工作物に該当するものがあるため、第1種電気工事士が求められます。

ただし、この案件では、電気工事施工管理技士が必要です。上で述べたように、さらに下請け業者を雇って工事を実施しているからです。

ここで挙げた例では、どれも学歴が不問か、高卒以上になっています。

このように、電気工事士の資格取得者を募集する電気工事の案件では、高卒でも問題ない場合が多いです。募集する会社側としては、学歴よりも必ず資格者を置かなければならないので、資格保持者やすぐにでも資格を取れる経験者を求める案件が多数です。

また、企業の規模が大きくなればなるほど、請け負う工事の規模が大きくなります。

電気工事士として、十分な電気工事の技能を持っている前提で、さらにたくさんの人を動かして仕事をすることになります。したがって、施工を管理するための「工程を作り進めていく能力」や「人に的確に指示し実行させる能力」が必要になってきます。

転職した後のステップアップ

では、無事転職が決まった後、上で述べたような会社はどのようなステップアップを期待できるのでしょうか。また、ステップアップに連れて求められるスキル・資格はどのようなものでしょうか。

基本的に年齢が上がるとともに、他者と物事を調整する力やグループをまとめて動かす力が求められるようになります。小さい会社だと、実力次第では経営や営業に関わることもあるでしょう。

大きい会社では、経営や営業に関わることはないものの、施工管理や社内調整など、電気工事とは関係のない仕事は確実に増えます

ただ、高卒の場合はまず「腕のいい電工」を目指すことになります。

腕のいい電工とは何か

腕のいい電工とは、「優れた技能を持った電気工事の職人」です。

電気工事ですので、電気を通したときに異常発熱が起こるような接続・配線がなく、設備が機能をはたしていれば、一応合格点です。しかし腕のいい電工は、さらに施工がとてもきれいで、使う側の気持ちを汲み取ってくれる施工をします。

私が発注側として経験した、施工の良い例、悪い例を紹介します。下図は良い例です。

良い例では、配管に接地線を沿わせるのに、適切な本数のインシュロックを使っており、たるみがありません。

次に下の図は悪い例です。

しかし、悪い例ではインシュロックの結束箇所が少ない上に、十分に引っ張って設置していないためたるみが発生しています。

この配管と接地線は足もとに敷設されているため、悪い例で施工されると、発注側の私たちが設備巡視などで歩くときに、足をひっかけて転倒などの労働災害の原因になります。さらに設備も破壊され、無駄な費用がかかる元凶となります。

そのほかには、点検しやすい配置や施工にしてあるというのも挙げられます。日常的に点検する設備はルーチンワークで点検を行うため、なるべく手がかからない方が望ましいです。

目視点検するためだけに、毎度脚立を持ってこなければならないような計器の取り付け方は、悪い例の最たるものです。よい例では、計器の位置を低い位置にしたり、下からでも見やすいように傾けたり、何らかの工夫があります。下の写真は、良い例です。

計器の位置は床から2mほどの位置にあります。下から見やすいように傾けて据え付けてあります。

また、この例は厳密には計装工事です。写真に見える配管は空気配管であり、電気工事になるとさらに電線が追加になります。

電気工事も計装工事と考え方は変わりません。電気工事で計器を取り付ける場合でも、計器を見やすい位置に据え付けるのがよい施工です。

工事する側は一回作ったら終わりなのですが、保守・使用する側は壊れるまでずっと付き合っていかなければならない設備です。そのあたりを汲んで設備に反映できる人が「腕のいい電工」です

私は、腕のいい電工に発注側として何度か会いました。やはり、気持ちのいい施工をしてくれるので何度でも指名して発注したくなります。

しかしながら、この腕の良さは数値化してわかるものではないため、給与に反映されにくいです。腕のいい電工は絶対に必要なのですが、給与的には不遇といえます。電工の腕一本で今後を考える場合は、給与面での大きな伸びは期待できません。

施工管理技士を目指そう

そこで給与アップを目指すなら、独立するか会社で上の役職につくかが必要です。どちらにせよ、電気工事士としての技能以外の能力が求められます。

それらを実現するのにさまざまな能力がありますが、最もわかりやすいのは「電気工事施工管理技士」です。上でも述べたように、建築業法で定められる資格です。

この資格を持っていると、金額の規模の大きい仕事を受けることができますので、どんな企業でも利益の増加につながります。したがって、それは自らの給与アップにつながります

転職サイトの求人情報を見ても、電気工事士の資格とともに電気工事施工管理技士の資格所持者を優遇・歓迎している会社は多いです。つまり、そのような会社に入社すれば、将来的に電気工事施工管理技士になることを求められます。

例えば、下図のような求人です。

これは200人弱の中規模の会社の求人です。求人情報の中で、「電気設備工事(リニューアル中心)の施工管理業務」が仕事の内容だと謳ってあります。

しばらくは電気工事士として電工の経験を積み、将来的に電気工事施工管理技士として、電工を束ねて仕事をすることを期待されている求人です。

ただ、電気工事施工管理技士資格は実務経験が必要です。これは、ほかの難易度の高い資格を取得することによって、必要な実務経験年数を減らすことができます。

例えば第2級電気工事管理技士を受験するには、第2種電気工事士資格保持者だと1年の実務経験が必要です。しかし、第1種電気工事士資格保持者は実務経験不要です。

さらに上位資格の第1級電気工管理技士を受験するには、第2種電気工事士資格だけでは受験資格がありません。しかし第1種電気工事士資格を取得することで、実務経験なしで受験することができます。

そのほか、より高い学歴や電気主任技術者資格を取得することで、実務経験を短縮することができます。ただ、必要実務経験年数を一番短縮できるのは第1種電気工事士資格です。

早く電気施工管理技士を取得すれば、役職も上がり給与も早く上がります。

まとめ

電気工事士の資格を生かした転職では、学歴はあまり関係ありません。高卒でも転職は十分に可能です。

しかし、電気工事だけに従事できるわけではありません。若いうちは電工としての技能を磨いて、年齢を経るごとに施工管理を任されることが、標準的なステップアップの道筋だということに注意してください。

腕のいい電工を目指すこともよいですが、給与面での待遇の悪さは覚悟しましょう。

また、電気工事施工管理技士を取得したからといって、実際に電気工事で手を動かして仕事をすることが皆無になることはありません。これらの将来へ向けての注意事項に留意した上で、転職先の会社を選ぶとよいです。

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