建設業は、国内における市場規模の最も大きな業界です。その規模は50兆円を超え、日本の経済を支える産業の一つです。この建設業の中で、電気系職種と言えば電気工事に関わる職種が一番に思い浮かびます。

ただし、電気工事と一言でいっても、工事の上流から下流まで様々な職種があります。転職するときに、多くの人はこれまでと同じような職種を選びがちです。しかし、あなたの経験が活かせる職種は、ほかにあるかもしれません。

転職するからには、もっと良い条件で成功させたいと思うのが普通です。転職成功を叶えるには、まず建設業における電気系職種を正しく知ることが必要です。

ここでは、「建設業における電気系職種の分類と詳細」「それぞれの職種に必要とされる資格」「建設業の電気系職種の年収」について詳しく解説します。

希望する働き方を整理する

建設業の電気系職種に転職すると言っても、その範囲は広いです。企業の業態も様々で、漠然と探していたのではミスマッチを惹き起こし、不幸な転職になってしまいます

まず、建設業の電気系職種の種類とそれぞれの働き方を整理することが大切です。その上で、あなたの経験や得意分野、これからどのようにキャリアを積んでいきたいかを考えて、応募企業を選ぶとよいです。

建設業で電気系職種が求められる業態は、下図のようになります。

No 業態 詳細
1 電気工事 電気工事を実施工する
2 電気工事施工管理 主に大規模電気工事の安全・予算・進捗などを管理する
3 電気設計 電気工事を設計・積算する
4 プラントエンジニア 特にプラントに関わる電気設計~電気施工管理を行う
5 企画 プロジェクトの調査~関係各所との調整を行う

このような建設業の5業態について、次項より個別に詳しく説明していきます。

電気工事士として実際に手を動かす仕事をする求人例

まず、電気工事士として建設の実施工を担う職種を紹介します。これは、「電気の建設業」と聞いて最もイメージしやすい職種だと思います。

例えば、下の写真のようにバケット車を使って電柱にケーブルや開閉器を取り付ける仕事は、電気工事士が行います。

また次の写真は、サーバーラック(建物内の情報通信機器を集約した箱)の据付工事です。電気通信系の工事ですが、当然ながら電気で動作するので、電気工事もあります。サーバーラックの電気工事も、電気工事士が担当します。

電気工事士として転職するには、施工を専門にしている電気工事会社に転職する必要があります。施工を専門にしている電気工事会社の例は、下に示す株式会社Kishidaです。Kishida社は、大阪府吹田市にある高圧電気工事の施工技術に定評のある会社です。

施工を専門にしている電気工事会社は、いわゆる名の知れた大会社であることは極まれです。このKishida社も、社員数30名くらいの規模の会社です。これは、大きな会社ほど電気工事の実施工ではなく、施工管理中心の業務になるからです。

したがって、電気工事士として働きたい場合は、比較的社員数の少ない会社を探す必要があります

施工管理職として電気工事全体を指揮監督する求人例

次に説明するのは、施工管理をする職種です。例えば下の写真のように、電気工事の現場で実作業をせずにただ立って作業を見ている作業者がいるのを見たことがないでしょうか?

この場合は、作業の指揮監督をしています。大規模な電気工事を行う場合、「作業チームの指揮監督」「作業計画」「人員采配」「顧客対応」を専門に行う人員を配置するのが普通です。これらの仕事を担うのが「施工管理」という職種です。

施工管理職も、電気工事の実作業をすることがあります。しかし電気工事士のサポートとして行うのであって、実施工ばかりを中心に行うのではありません。

施工管理の電気工事でどのくらい実施工をするのか、かつて一緒に仕事をしたことのあるサブコンの施工管理職の人に話を聞くと、以下のように教えてくれました。

電気工事士が出勤する前に仮設電源の設置工事など、付帯作業で電気工事の実施工をすることはある。しかし、基本的に実施工は、電気工事士が行う。

したがって、電気工事の実施工をしたいなら、施工管理職に転職すべきではありません

施工管理職の求人を出しているのは、サブコンのように数千人規模の大会社から、2,3人で運営している会社までさまざまです。

下図はサブコンと呼ばれる会社の求人で、株式会社HEXEL Worksの求人です。HEXEL Works社は、旧名が六興電気株式会社といい、独立系大手サブコンの1社です。業務内容の欄を示していますが、実施工の記載はなく、施工管理を行うと明記されています。

同様に施工管理職を募集している会社で、比較的社員数の少ない会社の求人例が下図の日東電工株式会社の求人です。日東電工社は東京で公共工事に強みを持つ会社です。社員数は20名を超えるくらいの会社です。

記載内容の「職長」は、労働安全衛生法に定められる工事現場の役割です。施工管理をする上で、実際に作業現場で指揮監督をする立場で仕事をします。現場代理人は、契約責任者の代理として工事現場で客先とやり取りする立場の職種です。これも施工管理の1つの職種です。

施工管理職へ転職するときは、業務内容をよく読んで類似の求人を探していきます。

設計・積算は工事図面を作成し工事金額を算出する職種

3つ目に紹介するのは、設計・積算をする職種です。電気工事をするには、設計図が必要です。下図が、電気工事に使われる設計図(工事図面)の例です。

引用 : 拾って覚える!実践電気工事積算入門(オーム社)より

工事設計の仕事は、この設計図(工事図面)を作成する仕事です。工事図面を作成すると言っても、ただ単にCADソフトを使って図を描くだけではありません。適切な材料を使うように図面中に指示する必要があります。つまり、電気の知識がないとまともな工事図面を描くことができません。

また、電気工事は壁や屋根裏に配線を通したり、コンクリート基礎中に事前に埋め込み配線をしたりします。建設業のほかの工種への理解・知識が必要な場面もあります。

一方積算職は、工事図面から工事費を算出する仕事を行います。図面ができあがったら、ほとんど機械的に計算するので、設計・積算を両方行う職種として募集されることもあります。

まず、設計積算職の求人例を示します。水処理施設のエンジニアリングに強みを持つ、メタウォーター株式会社の求人です。この求人では、水処理プラントの電気工事設計・積算を担当する人材を求めています。

次に設計職の求人例を示します。宮崎県に拠点を置く宮崎電力株式会社の求人です。この求人では、個人向け住宅の蓄電設備工事設計を担当する人材を求めています。ただし、電気工事設計だけでなく、職人の監督や部下の教育指導など、ほかの業務も含まれていることが記載されています。

電気工事の設計・積算の求人は、類似の求人を探していくことになります。

プラントエンジニアは工場専門で設計・施工管理を中心に行う

プラントエンジニアは、製品やエネルギーを産生する工場(プラント)の建設フェーズで活躍する職種です。現代のプラントでは、動力として電力を使っていることがほとんどです。この電気設備を設計・設置・試験するときにプラントエンジニアが活躍します。

例えば、下の写真はプラント内のベルトコンベアに付属するモーターです。

このモーターを据え付けるには、下表の手続きで進めます

1 設計 ・要求仕様を満たす機器の選定
・機器発注
・電源・制御ケーブルの選定
・コンベア本体(機械部門)・基礎(土木・建築部門)との仕様・工程調整
・図面作成 など
2 積算 ・工事金額の算定 など
3 施工管理 ・工事に伴う人員手配
・施工指示・監督
・工程管理
・安全管理 など
4 試運転 ・モーター単独での動作確認
・コンベア部分の動作確認
・工場全体の動作確認 など

現実には、モーターだけでなくさまざまな機器や配線を同時に担当することになります。ここまで紹介してきた施工管理職と設計・積算職をプラント専門で行う職種といえます。

プラントでは、電気だけでなく土木・建築・機械・計装・システムなどが密接に関わっています。したがって電気系職種といえども、ほかの部門の知識がまったくないと仕事になりません。貪欲にほかの部門にかかわり、知識・技術を習得していく姿勢が求められます。

このようなプラントエンジニアの求人例は、下図の京葉ガスエナジーソリューション株式会社の求人が該当します。同社は、千葉・茨城・鳥取に事業所があります。都市ガス会社である京葉ガスの事業子会社としてスタートした、ユーザー系プラントエンジニアリング会社です。

プラントエンジニアへの転職は、以上のような求人を探していきます。

企画職として事業プロジェクトのグランドデザインを作る

最後に紹介するのは、プロジェクトの企画職としての求人例です。特に職種名があるわけではありません。プロジェクトの企画に携わるということで、「企画職」として話を進めます。

企画職は、プロジェクトの初期段階でプロジェクトの設計を行う職種です。具体的に建てるモノの設計をするのではなく、「投資金額がいくらか算出する」「発電方式や出力を決定する」といったような概要を作ります。

建設現場での作業ではなく、デスクワークや他社・官公庁との折衝、他部門との調整などが主な業務になります。

下は、私が鉄道会社の建設部門で新規路線建設の企画〜詳細設計を担当していたときの様子を写したものです。帰る直前に同僚に写してもらったものですが、働いているときと服装や席は変わりません。スーツ(背広)を着て、パソコンに向かって仕事をしていました。

もちろん、ずっと椅子に座ってパソコンに向かっているだけでなく、出張がたくさんありました。

プロジェクトの2年目が出張の最も多かったときで、週に4日席を空けて打ち合わせをしていたこともありました。詳細仕様の設計は、自席についてパソコンを開かなければできなかったので、「詳細設計ができない!」と上司に泣きついたこともありました。

また、文化の違う他社や官公庁を相手にするので、社内で説明・説得するときとは難しさが違います。神経をすり減らして仕事をしていました。

しかし、その分達成感は大きく、プロジェクトが完成したときは涙が溢れたのを覚えています。

このような電気の企画職は、比較的大きな会社が募集していることが多いです。建設業でいうと、ゼネコンなどの大企業が該当します。

下図は、スーパーゼネコンである株式会社大林組の求人です。この求人では、再生可能エネルギー事業の推進をする人材を求めています。

大林組は、洋上風力発電事業を中心となって進めている企業の1社です。入社当初は、この風力発電事業に関わり、将来的にそのほかの事業に携わることが記載してあります。

ただ、「電気系エンジニアから企画職に」と記載されているように、電気系職種ではないように思えます。しかし、下図の求める方の欄を見ると電気系職種の経験や電気系難関資格の保持が必須条件になっている職種です。

先にも書いたように、企画職は調整業務に多くの時間を割かれます。したがって、電気工事の実施工の実績よりも、施工管理や設計などのより上流の仕事の経験がアピールポイントになります。

企画職は、これに類似した求人を探していきます。

職種によってアピールできる資格は異なる

以上、建設業の電気系職種を紹介してきました。では、これらの職種に求められる資格はあるのでしょうか?

電気系の資格は、国家資格・民間資格のどちらもたくさんあります。ただし、職種ごとに必要とされる資格があります。手当たりしだいにアピールすればよいのではなく、必要とされる資格をアピールしなければなりません

例えば、私が持っている下図の電気主任技術者資格は、電気工事士として働くには不要な資格です。前項で示した大林組のような企画職や施工管理として働くときに必要とされやすい資格です。

実際の求人例でいうと、電気工事士を求めている下のKishida社の求人では、対象となる方の欄に「電気工事士」資格の記載のみあります。電気主任技術者資格や電気施工管理技士資格には触れられていません。

電気工事を行うには、電気工事士資格が必須なので、電気工事会社ではKishida社の求人のような記載になります。電気主任技術者資格や電気工事施工管理技士資格を持っていてアピールしても、プラス評価されることは考えにくいです。

そのほか、ここで紹介した職種について、必要とされやすい資格をまとめたのが下表です。

職種 必要とされやすい資格
電気工事士 電気工事士資格・工事担任者資格・消防設備士資格・計装士資格
施工管理 電気工事施工管理技士資格・電気工事士資格・電気主任技術者資格
設計積算 (必須ではないが、設計内容に沿った資格があると有利。例:低圧工事→電気工事士資格、高圧・特高工事→電気主任技術者資格 など)
プラントエンジニア 電気工事施工管理技士資格
企画 (必須ではないが、電気主任技術者資格・エネルギー管理士(電気)・技術士資格など)

以上のように、建設業でも職種により必要な資格は全くと言ってよいほど違います。あなたが持っている資格が、応募しようとしている企業にとって必要な資格かどうか確認して下さい。全く必要とされない資格をアピールしても、採用にプラスの影響を与えることは難しいです。

建設業電気系職種の給与水準・年収の実態を知る

最後に、建設業の電気系職種の給与・年収について解説します。

まず、冒頭で紹介した電気工事士を募集しているKishida社の年収は、下図のように初年度350万円が提示されています。

同様に、ここで紹介した7社の年収は下表のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 職種
(株)Kishida 350 電気工事士
(株)HEXEL Works 400~650 施工管理
日東電工(株) 600~ 施工管理
メタウォーター(株) 480~700 設計・積算
宮崎電力(株) 400~600 設計
京葉ガスエナジーソリューション(株) 300~650 プラントエンジニア
(株)大林組 520~900 企画職

求人票の提示年収では、概ね400~600万円がボリュームゾーンと言えます。また一般的に、下流工程を担う職種より上流工程を担う職種が高年収である傾向があります。

しかし、あなたがここで紹介した求人票の企業に転職するわけではありません。では、どのように転職後の年収を予測すればよいでしょうか。

実は、厚生労働省が毎年賃金構造基本統計調査を行っており、その中で平均年収を公開しています。下のグラフは、建設業の平均年収を年齢別にまとめたものです。20代までは給料が安いものの、年齢とともに年収が上がっていく業種ということがわかります。

引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化

なお、建設業の年収別分布は下のグラフのとおりです。このグラフは、建設業に従事している人の数を年収額で区分して示したグラフです。年収700万年を超えると極端に少なくなり、年収1000万を超えるのは全体の0.15%です。建設業で年収1,000万円を目指すのはかなり難しいです。

引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化

また、電気工事士などの電気工事従事者の年齢別平均年収は別に統計調査が公開されています。その統計調査結果をグラフ化したのが下のグラフです。

引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化

これらの統計調査を参考に、あなたの年齢を勘案して、提示年収が妥当かどうかを判断できます。入社するときの年収は、最終的に内定時に提示されるのが普通です。その提示年収額が、信頼できるデータより大きく乖離(かいり)しているなら、転職エージェントなどを介して年収交渉をしてみるとよいです。

このようにデータとして交渉材料を持っていると、低い提示年収に甘んじることもありません。交渉の結果、提示年収額が上がらなくても、納得できる回答を得られる可能性もあります。一旦冷静になって交渉してみることで、転職後の満足感に大きく影響します。

まとめ

建設業における電気系職種について、詳しく説明してきました。建設業の電気系職種と言ってもさまざまあり、「電気工事士」「電気工事施工管理」「設計・積算」「プラントエンジニア」「企画」の職種があります。

電気設備の企画~実施工まで何をするかは、職種によって変わります。あなたが何をしたいのかを見極めた上で、適切な職種に応募する必要があります

また、必要とされる資格も職種によって変わります。応募する職種に不要な資格をアピールしても、プラス評価にはなりにくいです。応募する職種に、どのような資格が必須とされているのかを知っておく必要があります

ここで紹介した求人の提示年収は、400~600万円です。これはサラリーマンの平均年収と比べて、平均的な水準です。ただし、あなたが実際に提示を受けた年収の妥当性を判断するには、政府統計などの信頼できるデータと比較すると良いです。

信頼できるバックデータを持っておくことは、結果的に転職の満足度を上げることに繋がります。


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以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。