プラントエンジニアは、工場・プラントにはなくてはならない存在です。プラントは、製品やエネルギーを作る一つの大きな装置として複雑な構造になっています。プラントエンジニアは、プラントを設計し建設して運用するスペシャリストです。

ただ、あまりにもプラントエンジニアリングの仕事内容が多岐にわたるため、漠然と自分の経験した範囲で求人を探していたのでは優れた求人を見落とす可能性があります。転職を成功させるには、頭の中を整理して戦略的に転職活動を行う必要があります

ここでは、「プラントエンジニアリングの業務範囲と企業の種類」「転職に有利になる資格はあるのか」「プラントエンジニアは激務なのか」「年収や福利厚生について」などについて詳しく解説します。

プラントエンジニアリングの業務範囲と企業を知る

プラントエンジニアリングは、生産設備であるプラント(工場)を建設・管理・運用していく技術的業務を指します。また、自動車工場や電気製品の組み立てのような人の手が介在する工場より、特に下の写真のような化学工場や石油・エネルギーなどのプロセス工場の技術的業務を指すことが多いです。

そして、プラントエンジニアリングの仕事は、プラントの建設~運用フェーズに合わせて、下記のように大きく5つの分野があります。

  • 設計 : Engineering(基本設計・詳細設計)
  • 調達 : Procurement(機材購入・納期管理・検査・輸送)
  • 建設 : Construction(建設工事)
  • 試運転 : Commissioning
  • 運用・保守 : Operation & Maintenance

プラントエンジニアとは、これらの業務を行うエンジニアを指します。

プラントでは、多くの装置が複雑に連携しあって製品やエネルギーを作り出します。そのため、プラントエンジニアには、高度で特殊な技術が必要とされます。

また建設工事では、実際に作業をするのではなく、電気工事・電気設備工事・機械工事の施工管理・監督を行うことが主な仕事です。

プラントエンジニアリング御三家の求人と特徴

プラントエンジニアリング会社には、特に売上額の大きい御三家と呼ばれる会社があります。それは、千代田化工建設株式会社、東洋エンジニアリング株式会社、日揮株式会社の3社です。この3社は、プラントエンジニアリング専業の会社です。

実際の求人が、千代田化工建設株式会社から出されていました。石油化学・LNGプラントの電気設計(電気設備設計・通信設備設計)を行う人材を求めています。

プラントエンジニアリング専業会社の特徴として、海外案件の売上が大きいことが挙げられます。この求人でも、海外の石油化学・LNGプラントの電気設備・通信設備設計を行うことが記載されています。

なお、求人票には「設計」職とありますが、プラント設計だけでなくEPC業務の全てと試運転まで携わるとされています。

実際に私が建設に携わった電力プラント建設においても、プラントエンジニアリング会社で機械設計を担当した人が建設現場に来てSV(スーパーバイザー)として働いていました。ほかの業種と違って、設計担当が設計だけを行うわけではないことが、プラントエンジニアリング会社の特徴の一つです。

また、海外案件に携わることから、下図のように必須条件として同種の業務経験と合わせて「TOEIC600点以上」が条件とされています。

一般企業が社員に海外赴任を命ずるときに、目安となるTOIECスコアが700点程度です。したがって、TOIEC600点はそれほど高い要求ではありません。

これは、あくまでプラント建設が主な業務であって、プラント建設に関わるコミュニケーションが十分であれば問題ないからです。かつて一緒に働いた同僚が、インドネシアのプラント建設のために渡航したとき、「通訳をつけてくれた」と話していました。

また、英語圏のみに赴任するとは限りません。電力プラント建設で知り合ったエンジニアリング会社の人は、初の海外赴任でポルトガル語圏に赴任したと教えてくれました。

「英語力が高ければ良い」のではなく、「プラント建設において適切な言語コミュニケーションが取れる」ということが重要です。

海外案件の多い、御三家のようなプラントエンジニアリング会社では、以上のような点に注意して転職活動を進めていきます。

メーカー系エンジニアリング会社という選択肢

プラントエンジニアリング専業ではなく、プラント機器を製造している会社で、プラントエンジニアリング業を行っている会社もあります。ここでは、メーカー系プラントエンジニアリング企業として分類します。

メーカー系プラントエンジニアリング企業の例は、下表のとおりです。

会社名 得意分野
栗田工業(株) 水処理プラント
(株)タクマ 廃棄物処理プラント
三菱電機プラントエンジニアリング(株) 電力プラント・電力設備
(株)IHIプラント 電力プラント

これらの会社は、親会社が製造・製作している機器を客先プラントに納める事業を行っています。

例えば、下図の株式会社タクマでは、北海道支店勤務の機械系プラントエンジニアを募集しています。タクマ社は、ボイラー製造で創業し、昭和30年代にはごみ処理プラント建設に進出した、環境プラント建設の老舗です。

環境プラントの代表的なものは、ゴミ焼却プラントです。ゴミ焼却プラントは、地方自治体が運営しています。したがって、地方自治体が納入先になります。

また、ゴミ焼却プラントは、言い換えると「ゴミを燃料とした火力発電所」です。単にゴミを燃やしているだけでなく、ボイラーを使って蒸気を発生させ、タービンを回して電力を作っています。

下の写真は、ゴミ焼却プラントのボイラーへのゴミ投入操作室の様子です。

そもそも火力発電プラント自体が、燃料・空気・給排水・電気・制御・そのほかの要素が複雑に連携し合った技術の塊です。そこに、「ゴミ」という性状の安定しない燃料を投入するごみ処理プラントのボイラーは、設計〜運用に独自の高度な技術が必要です。

そこで、タクマ社はごみ処理プラント建設技術を磨き上げることで、プラントエンジニアリング市場での一定の地位を確保しています。

このように、メーカー系プラントエンジニアリング会社は、自社(もしくはグループ会社)が製作している機器の強みに合わせたエンジニアリングを提供しています。つまり、志望するメーカーの機器や類似する機器を扱った経験があると評価されやすいです。

ユーザー企業のプラントエンジニアもある

最後に紹介するのは、ユーザー系プラントエンジニアリング企業です。この場合のユーザーとは、「プラントの構成機器を購入している」という意味でのユーザーです。

したがって、電力会社や上下水道処理施設のような製品を作らない企業のほか、化学・鉄鋼・石油・非鉄金属などの製造業の企業がユーザー系プラントエンジニアリング企業をグループ内に抱えていることが多いです。

ユーザー系プラントエンジニアリング会社の例を下表に示します。

会社名 得意分野
JFEプラントエンジ(株) 鉄鋼プラント
かんでんエンジニアリング 電力プラント
味の素エンジニアリング(株) 食品プラント
三菱マテリアルテクノ(株) 化学プラント
DOWAテクノエンジ(株) 非鉄金属プラント

これらの企業は、自社グループ製品を作る工場の設備を、自社生産しているわけではありません。生産機器は外注してメーカーに製作・製造させることがほとんどです。

しかし機器メーカーは、機器について詳しくても工場全体の動き・仕様について詳しくはありません。そこで、工場全体の機器を協調させ、プラントとして機能を果たすように統括するのがユーザー系プラントエンジニアリング会社です。

ユーザー系企業本体の中に、プラントエンジニアリング部門として存在している場合もありますが、多くは子会社化してプラントエンジニアリング会社としています。これは、ユーザー企業本体に抱えるとコスト部門になりがちなので、分離して独立採算を取らせるためです。

このような経緯から、ユーザー系プラントエンジニアリング企業は親会社が持つプラント技術を中心に業務を行います。

また、分離したプラントエンジニアリング会社に余裕があれば、自社グループのプラントだけでなく、同業他社の類似プラントからも仕事を得ることもできます。

メーカー系プラントエンジニアリング会社の例を挙げると、下に示すDOWAテクノエンジ株式会社の求人が該当します。この求人では、秋田の事業所で働く機械系プラントエンジニアを募集しています。

DOWAグループは、非鉄金属業のニッチな分野で地位を確立している企業なので、プラントも特殊です。したがって、自社でプラントエンジニアを育てる仕組みができあがっていると記載されています。

未経験者でも挑戦しやすい反面、経験者が転職するには、業務に馴染むのに時間がかかる可能性があります。

ユーザー系プラントエンジニアリング会社は、このような特性を理解して求人を探していきます。

プラントエンジニアリングで有利になる資格

英語力のほか、プラントエンジニアリング会社に転職するときに有利となる資格はあるのでしょうか。

実は、プラント設計や建設に直接必要な資格はありません。例えば、ユーザー系プラントエンジニアリング会社のDOWAテクノエンジ社の求人では、必須条件とされているのは学歴だけです。

歓迎条件とされているものも、プラント設計やPLCなどのソフト設計などの経験を上位に求めています。下位に1級電気工事施工管理技士資格や第一種電気工事士資格の記載があります。電気系で難易度が高く評価されやすい資格の電気主任技術者資格は、記載すらありません。

施工管理技士資格は、施工管理を行う全ての者が持つ必要はありません。また、実施工をすることはないため、電気工事士資格も必要ありません。それぞれの資格を持っていれば、「建設フェーズの業務を任せやすい」という資格です。

同様にDOWAテクノエンジ社の機械系プラントエンジニアの求人で、どのような資格が歓迎条件に挙がっているか確認すると、やはり「施工管理技士」資格だけでした。

プラントエンジニアに転職するときに、資格はあれば評価される程度のものと考えてください。資格を必須としている求人は少ないので、無資格でも応募してみることが転職成功率を高めることにつながります。

プラントエンジニアの業務量を知る

転職するときに気になる項目の一つに、業務量や拘束時間の多寡があります。プラントエンジニアの業務量はどの程度なのでしょうか。

プラントエンジニアが属する建設業は、長年人手不足と言われている業界です。今後、労働人口が減少する中で、ますます人員がひっ迫してくるといわれています。他業種から転職するときは、忙しさを覚悟しておく必要があります

また、プロジェクトの進捗に合わせて業務量の変化が大きい業種でもあります。業務量を考えるときは、「担当業務と担当フェーズ」「機械系or電気系」の二つの視点から考えます。

建設・試運転フェーズの業務量は多く、激務になりがち

まず、担当業務と担当フェーズによる業務量の違いを説明します。多くのプロジェクトで、プロジェクト開始直後から徐々に全体の業務量が増え、試運転中盤前に最も多くなります。そのあとは、プロジェクト終了に向けて徐々に収束します。図で表すと、下のグラフのようなイメージです。

これは、当初想定していたことと違う事象が発生する頻度に比例します。想定外の事象は、解決のための時間を十分に織り込んでいないことが多く、残業やプラス人員で集中的に解決することがあります。

私が担当していた電力プラントでは、試運転の初期段階でパラメーターの調整がうまくいかないことがありました。そのとき、プラントエンジニアが何日も徹夜し、目を真っ赤にして働いていたのを覚えています。

納期を遅らせることはまず無理なので、予定された日数で工期を進めるしかありません。イレギュラーが発生すれば、自然と夜を徹して作業することになります。

担当するフェーズによって繁忙期が異なる

一方、担当業務による業務量の分担割合は、下図のようになります。

引用 : 日揮社採用ホームページ より引用して加筆

設計を主に担当するのであれば、プロジェクトの前半で忙しくなります。また、試運転チームに配属されれば、竣工が近くなってから忙しくなります

専門分野(機械・電気)の差による違い

一方、専門分野による繁忙期の時期のずれもあります。

通常、プラント建設は「土木工事」「建築工事」「機械工事」「電気工事」「計装工事・制御システム工事」の順で進んでいきます。この順の後方になればなるほど、工程の遅れの影響を受けやすくなります。

多くの場合、工程が遅れることはあっても、工程が早めに進むことはありません。竣工日は決められていますので、結局後ろの工程で遅れを飲み込むことになります。

私がこれまで電気系エンジニアとして働いてきた中でも、何度も「土木」「建築」「機械」工程の遅れを取り戻すために走り回ったことがあります。

このような前工程のスケジュール遅れが発生したときは、遅れを取り戻すために残業が発生しやすくなります。これは構造的に避けられないひずみなので、特に他業界からプラントエンジニアに転職を考えるときは、十分に承知しておく必要があります。

プラントエンジニアリングの年収・福利厚生を知る

最後に、プラントエンジニアの年収を説明します。

冒頭で紹介した千代田化工建設社の年収は、求人票に次のように提示されています。

そのほか、ここで紹介した2社の年収も同様に求人票に記載されています。それらを、まとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 分類
千代田化工建設(株) 600~900 プラントエンジニアリング専業
(株)タクマ 490~770 メーカー系プラントエンジニアリング会社
DOWAテクノエンジ(株) 370~570 ユーザー系プラントエンジニアリング会社

この表を見ると、特にボリュームゾーンはなく、様々な年収が提示されています。

一方福利厚生は、千代田化工建設社の場合、下図のように提示されています。

通勤手当・住居手当の支給など、この規模の会社としては一般的な内容です。ここで紹介したほかの2社についても同様の内容なので、特段プラントエンジニアリング会社が福利厚生に力を入れているとは言えません。

また、プラントエンジニアリング業は、景気に左右されやすい浮き沈みの激しい業種です。製造業の投資活動により支えられているといっても過言ではありません。

景気の良いときは、一つのプロジェクトで数百~数千億円の受注になることもありますが、景気が悪いと一気に冷え込みます。年収も、その影響を受けて百万単位で上下するということを承知しておく必要があります。

下のグラフは、プラントエンジニアリング会社と製造業・鉄道業の会社の平均年収を示したものです。青系で示したのがプラントエンジニアリング会社、緑系で示したのがそのほかの会社です。グラフが新しい年次の分しかない会社は、過去データがホームページに公開されていないためです。

引用 : 各社の有価証券報告書よりグラフ化

このグラフによるとプラントエンジニアリング会社は、年収の振れ幅が150~250万円ほどあるのがわかります。製造業では、比較的世界経済状況に影響の受けやすいトヨタ自動車が150万円の振れ幅があるほかは、振れ幅が小さく安定しています。

また、景気の影響を受けやすいのは、プラントエンジニアリングの主業務であるEPC業務です。O&M業務は、景気の影響を受けにくい業務です。したがって、O&M業務の割合の高い企業は年収変動が少なくなります

以上のようなプラントエンジニアリング業界の特性を知って転職することで、年収面での失敗を防ぎやすくなります。

まとめ

プラントエンジニアリング企業は、御三家と呼ばれる「千代田化工建設」「日揮」「東洋エンジニアリング」のほか、「メーカー系プラントエンジニアリング会社」「ユーザー系プラントエンジニアリング会社」があります。それぞれ特徴が異なるので、あなたの希望する働き方ができるか確認して選択する必要があります。

また、会社ごとに得意分野が違うので、あなたの経験が生かせる会社を選ぶとよいです。

プラントエンジニアリングは業務範囲が広いです。それに携わるエンジニアには、高い技術力が求められるやりがいのある仕事といえます。

転職の際に、技術系資格を持っていると評価されることはあります。しかし、それは歓迎条件としてであって、資格が必須条件とされていることは少ないです。したがって、資格の有無とは関係なくあなたの経験を武器に応募してみるとよいです。

プラントエンジニアリングの仕事は、業務量に波があります。工程が押して、トラブルが発生したときは、何日も徹夜が続くような働き方になります。これは承知しておく必要があります。

また、プラントエンジニアの年収は景気に左右されやすいです。仕事がないときは、年収が大きくダウンすることも覚悟しておく必要があります。

以上のような特徴を知ったうえで転職活動を行うことで、転職失敗を防ぎやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。