鉄道会社は、「安定している、福利厚生が厚い」などのイメージから人気が高いです。鉄道会社に関わる会社も、同じように人気があります。
また、交通インフラを支える仕事であり、社会のために役立っている実感を持てる仕事です。
しかし、仕事がきつく、社会からのプレッシャーを感じる仕事でもあります。
それでは、こうした鉄道電気工事の求人はあるのでしょうか。ここでは「電気系では、鉄道会社でどんな仕事があるのか」「転職するにはどうすればよいのか」を解説します。
もくじ
鉄道に関わる電気の仕事内容
鉄道会社で電気の仕事をしようとしたとき、どんな仕事があるのでしょうか。
鉄道会社の電気部門(鉄道電気工事)の仕事を設備の種類で分類すると、「電車線」「電灯」「変電」「信号」「通信」となります。
電車線部門の仕事
電車線部門の仕事は、主に車両に電力を送る架線に関わる業務を行います。
下の写真は、新幹線の電車線設備です。車両に電力を供給する電線を、電車線といいます。車両に電力を送っているトロリ線、それを支える金具と電柱、電柱をつなぐビーム、絶縁のためのがいしなどです。
この電車線と、電車線を支える電柱、支持物、がいしなどに関わる仕事が、「電車線」分野の仕事です。車両に電力供給している設備は、この電車線しかありません。しかし、予備を設けることができないため、切れたり、破損したりすることがないように入念に保守が行われます。
在来線では、踏切でクレーンが電車線をひっかけて破断させることがあります。このとき早急に破断した電車線を接続し、列車が通れるように復旧することが求められます。
新幹線では踏切がありませんので、第三者に切られることはなく、劣化による破断を防ぐことに重点が置かれます。電車線の劣化は、車両のパンタグラフとの接触による摩耗がほとんどです。パンタグラフとの接触により、だんだんと細くなっていきます。
電車線は高い張力で張っておく必要があり、両端で5t以上の力で引っ張られています。したがって、摩耗が進み細くなると高い張力に耐え切れなくなり破断します。
この摩耗破断を防ぐために、担当範囲の数十kmにおよぶ電車線の太さを把握し、細くなってきた電車線を取り換えるのが、電車線部門の一番の仕事です。
電灯部門の仕事
電灯部門の仕事は、主に駅や沿線の100V~200Vの機器を接続する設備に関わる業務を行います。
下の写真は、駅の様子です。写真の駅の電灯や、駅などに電力を送る配電所、沿線に保守用の電力を送る設備を担当します。
駅の電気設備は、お客様に直接目にしたり、使ったりするものです。また、駅員がお客様にサービスを行うのに必要なものです。この設備が不具合を起こすと、お客様に不便をかけます。列車が止まることはない設備を保守することがほとんどですが、サービスの質に影響する仕事です。
また、沿線の保守用の設備は、ほかの部門が仕事をするのに必要なものです。例えば、線路を保守する保線部門や上の電車線部門が、仕事をするのに電動工具を使います。沿線の保守用の設備が使えないと、線路全体の保守の質を落とすことにつながるのです。
変電部門の仕事
変電部門の仕事は、主に車両に電力を送る変電所などに関わる業務を行います。
下の写真は、新幹線の変電所の写真です。変圧器や断路器があります。この変圧器などを保守するのが、変電部門の主な仕事です。
鉄道で使う電力は、主に電力会社から購入します。しかし、電力会社が売る電力の形式は「三相交流」といって、鉄道で使うには最適な形式ではありません。そこで電力会社から買ってきた三相交流を「単相交流」に変換します。また、電圧も最適な大きさに変換します。このときに用いられるのが変圧器です。
最適な形式に変換された電力は、変電所から電車線に送られ、車両に届きます。変電所から出るときに、遮断器や断路器を通ります。家庭用の電気で言うと、ブレーカーやスイッチの役割を果たします。
電車線に木などが倒れ掛かると、電気は木を通じて地面に流れます。このとき、車両に送る電力よりも過大な電力が送られます。過大な電力が送られ続けると、電車線と木の接触点で発熱し、電車線が溶けて破断することがあります。
そこで、過大な電力が少しでも送られると、それを察知して電力を送るのを止めます。これが遮断器(ブレーカー)の役目です。
また、電車線へ電力を送るとき、「変電所より起点方面の上り線」「変電所より終点方面の下り線」というように、いくつかに分けて送ります。これは事故などで電気を送ることができなくなったときに、その影響範囲を区切るためです。このときに断路器(スイッチ)が使われます。
これらの保護機能が十分に働かないと、電車線の破断や変電所の変圧器の爆発などを惹き起こします。また、電気の供給元である電力会社の設備まで停止させてしまうことがあります。こうなると一般家庭や工場などが停電することになり、社会的に大きな迷惑をかけることになります。
そうならないために保護機能を担保することが、変電部門の仕事の重要な点です。
信号部門の仕事
信号部門の仕事は、主に線路の進路を制御する設備に関わる業務を行います。下の写真は、分岐器(ポイント)と信号機です。
鉄道は、一本の線路の上を複数の列車が走ります。つまり、自分の列車の前に列車があると追い抜けません。また、向かってきたらよけることができません。これを防ぐために、線路を区間ごとに区切って、1区間には1列車しか入れないようにして、衝突を防いでいます。この区切りを「閉塞」といいます。
では、どのようにして線路に列車がいることを検知するのでしょうか。下図のように、2本のレールに閉塞の左端から微弱な電流を流しておきます。列車がいないときは、閉塞の電流を送った端から、反対側の右端まで電流(図の赤破線)が届きます。
しかし列車がいるときは、車輪と車軸を通じてレールがつながります。車輪と車軸は電流が流れるようになっていて、微弱な電流は閉塞の反対側の端までいかず、列車で折り返すことになります。
下図のように、閉塞の反対側の端に電流検知器(図で○にAとあるもの)を設けておけば、電流の有無で列車の有無を知ることができます。
このように検知した列車が、直前の閉塞にいるときは、すぐ後ろの信号が赤になり、その閉塞に入ることができません。つまり、「電流検知器で電流がなしのとき、信号を赤」に制御するのです。列車がいなくなると信号は青になります。
下図は閉塞と信号の表示の関係を簡単に示したものです。列車はそれぞれ右方向に進んでいるとします。閉塞4に列車Aがいますので、閉塞4に入るための信号は赤表示です。赤表示では、後続の列車は進んではいけません。
閉塞3には先行列車はいませんので、この閉塞までは入って良いです。そのため、閉塞3に入るための信号は黄表示です。黄表示で列車は減速して運転します。
閉塞2にも先行列車はいませんので、この閉塞も入って良いです。そのため、閉塞2に入るための信号は青表示です。青表示はそのままの速度で進入してかまいません。
この図では、「赤、青、黄の3種類」の制御ですが、「赤と青の2種類」の路線や、「赤1つ、黄3つ、青1つを組み合わせて5種類」の路線もあります。路線の最高速度などによって変わります。
信号部門は、列車の往来にかかるこのような設備ついて様々な仕事をしています。
信号部門の設備が正常に動いていないと、列車の衝突や踏切の無遮断(列車が近づいているのに遮断機が降りないこと)を惹き起こし、お客様や直接鉄道を利用していない人々の死亡・ケガにつながります。人の命がかかっている重要な仕事です。
通信部門の仕事
通信部門の仕事は、電気設備工事の中でも主に駅と列車の間、設備と設備の間などの通信設備に関わる業務を行います。上の写真は、駅の放送設備のスピーカーです。
そのほか、各拠点(駅、事務所、工場、保守基地、沿線など)に鉄道会社内に設置されている内線電話(鉄道電話というものです)や、列車の運転士と、総合的に運行を司る指令所とを結ぶ列車無線も保守しています。
前述の変電部門の設備である断路器や遮断器、信号部門の分機器は、その場で人が操作するのではなく、遠く離れた指令所から遠隔操作されます。このとき、人が遠隔地で操作するシステムと現地の機器を通信線で結ぶ必要があります。この通信線の敷設や保守は、通信部門が担当します。
鉄道は事業範囲が広く、事業拠点が各地に散らばって存在しています。それぞれの拠点で人が仕事をしたり、機械が仕事をしたりします。このときに、それぞれの場所で好き勝手に仕事をすると事業は成り立ちません。鉄道会社として統一された意思のもとで仕事をさせる必要があります。
指令所がすべてを指揮するので、統一された意思とは、指令所の意思のことです。この意思を伝える設備が通信設備です。
例えば、列車無線が故障すると、指令所と運転士は言葉で意思疎通する手段がありません。
一般の携帯電話は電波が入らない場所(ローカル線や長いトンネルなど)があるため、これらは代替品として認められていません。そこで、意思疎通ができないことによる不安全を未然防止するために、列車無線が故障すると運転を中止します。これは法律によって定められています。
このように、通信部門の仕事も、鉄道会社の事業のために重要な役割を担っています。
その他の電気の仕事
最近は、以上の5部門に「システム部門」が加わります。下の写真は、ICカードが使える券売機です。券売機で使用されたICカードの情報は、鉄道会社内の一カ所に集められ処理されます。
システム部門の仕事は、鉄道に関わる列車を制御するシステムや、切符や列車の運行情報をWEBなどに配信するシステムに関わる業務を行います。
鉄道の設備にも電子計算機が相当数取り入れられてきました。伝統的に信号部門と変電部門が中心に、電子計算機を担当してきました。最近では、新しくシステム部門を設けて専門的に業務を行おうとする会社も出てきています。
電気系として鉄道会社で働くときは、この6部門のうちのどれかになります。
さらに部門ごとに保守と建設の区分けがある
ここまで設備の種類に注目して解説してきました。分類の仕方がもう一つあります。設備のライフサイクルで分類する方法です。この場合、「建設」「保守」に分けられます。
「建設」の仕事内容は、新しく設備を作ることです。新規に路線を作るときは、設備も新しく設置することになります。また、改造などで新規に設備を追加する場合や、大規模災害で設備が大きく損壊したときの復旧工事を該当します。
工事を発注するとき、企画から始まり、現地調査をして、設計します。それをもとに見積もりを出して、工事積算し、契約します。契約後は、施工管理をして、工期・安全・品質を担保する事が大切な仕事の内容になります。最終的に、竣工して、支払いの手続きをし、設備を保守部門に引き渡して一連の仕事が終わります。
「保守」の仕事内容は、すでに設置された設備を、壊れないように日々メンテナンスをすることです。また、壊れたときは迅速に復旧することも大事な仕事です。
メンテナンスの仕事は、建設の作る仕事と違って、年単位、数年単位で回していく仕事内容です。つまり、日々の検査で設備の動向をとらえ、故障の兆候をつかみます。設備を調整して故障を先延ばしにできるものなら、設備調整します。無理なら取り替えます。
しかし、少額の部品はすぐに取り替えられても、高額のものは簡単に購入できませんので、年単位で予算取りから取り替えまでを計画します。基本的にはこの繰り返しです。
勤務形態はどのようになっているか
それでは鉄道電気工事の求人で実際に働くとき、勤務形態はどのようになっているのでしょうか。
まず、保守部門について考えます。また、建設の現場工事も若干含みます。これは新幹線部門か在来線部門かで大きく違います。
新幹線は、深夜0:00から朝6:00を作業時間帯といって、保守作業用の時間を確保しています。それ以外の時間帯は、列車が運行されていますので、線路内の作業はできません。また、線路の外でも列車を止める可能性のある作業は認められていません。
例えば、変電所の配電盤を改造する作業などです。変電所は線路の中にはありません。しかし、列車の運行中に配電盤を改造することで、万が一でも列車への送電がストップする可能性があるので、変電所の配電盤を改造する作業は認められていません。そのほかの部門も考え方は同じです。
したがって、新幹線の保守部門は必然的に夜勤が中心の勤務となります。
私が勤めていたJRでは、朝9:00に出勤して、途中休憩を挟みながら、次の日の朝6:00まで働きます。その日は非番になり、帰って休養します。これが1勤務です。
この勤務の場合、1勤務で2日分の労働時間が設定されていて、2日働いたことになります。この勤務を月に8回していました。つまり、1週間のうちこの形の夜勤が2回、朝9:00から夕方18:00の日勤が1回です。1ヶ月だと4回繰り返されることになります。
下図は、私がいた職場でのある1週間の勤務例です。
グループ会社だと、1週間夜のみの勤務を連続していることもありました。夜23:00ごろ出勤して、次の日の朝7:00には帰り、その日の夜23:00に出てくるというのを1週間繰り返します。
これが在来線になると、昼間でも作業できる範囲が広がり、夜勤の回数は減ります。夜勤は月4回程度と聞いたことがあります。
ただし、都市部路線と地方路線で変わってきます。都市部は列車の運転間隔が短く、安全のために貨物列車しか走らない夜間に作業することが多いです。
反対に地方路線は、1時間に一本など列車の運転間隔が長いので、その間合いでできることも多く、夜勤は少なくなります。総じて、在来線の保守部門は、新幹線の保守部門より夜勤は少ないです。
直接線路に入ることのないシステム部門も考え方は同じです。システムが止まったとしても、列車や利用者に影響の少ない夜間に作業をすることが多いです。
このように鉄道の主に保守部門の勤務は夜勤中心となり、かなりきついです。ただ、50代で定年間近になるまで、元気に月8回夜勤を続けている人もいました。彼らは、3時間くらいの休憩時間があればすぐ寝てしまうような人たちでした。
入社してすぐに、「3時間単位で寝られるようになれ」といわれたのを覚えています。気持ちの切り替えが早く、短時間でも休めるときに休める人は、身体をこわさず長続きしていました。
では、建設部門の設計や発注が主な仕事の非現業部門はどうなのでしょうか。
これは、建設部門は基本的に朝9:00出社、夕方18:00退社でカレンダー通りの勤務となります。夜勤は、古い設備から新しい設備への切り替えなどのイベントのときしかありません。私は、新幹線の新規路線建設に3年半携わりましたが、夜勤は10回もありませんでした。
保守と建設はどの会社が担当するか
それぞれの仕事の担当会社を解説します。大きく分けて下の図のような担当割りになっています。
電車線、電灯、変電、信号、通信の建設は、大きなプロジェクトだと鉄道運輸機構とメーカーが担当します。新しく開業する新幹線は、すべて鉄道運輸機構が建設して、JR各社はリース契約で使用しています。
国家プロジェクトといわれるような大きなプロジェクトには、都市部の新規路線開業など鉄道運輸機構が担当することが多いです。ただし、鉄道運輸機構は調査、設計、発注と施工管理が主で、実際に設備を開発・製造するのは実績のあるメーカーです。
システム部門の仕事で、新規システムの開発や計算機の設置などは、鉄道会社が担当します。
鉄道運輸機構は全身が日本鉄道建設公団であり、古くからある電車線、電灯、変電、信号、通信設備の建設に関しては技術の蓄積と実績があります。しかし、システムは新しい分野で技術の蓄積がないため、鉄道会社が自ら担当します。
また、自社で新規路線を開業できるだけの技術と、財務基盤を持っている鉄道会社も建設を行うことはあります。JR東日本、JR西日本、JR東海、大手私鉄の一部などです。しかし、鉄道運輸機構のプロジェクト規模に対して、ほんのわずかな規模です。
一方、全分野の保守は鉄道会社とそのグループ会社が行います。どの会社も実際に施工するのはグループ会社で、鉄道会社の仕事としては、設備管理と保守工事の発注業務が中心になります。
鉄道会社に転職の道はあるか
では鉄道会社は中途採用の求人を出しているのでしょうか。転職サイト、各社ホームページを探して、採用実績があったのはわずかでした。下図は東京メトロの採用実績数です。
技術には、「電気」のほかに「車両」「土木」が含まれますので、電気だけだと8名程度の採用数と考えられます。
また、JR東日本は19分野で40名程度の募集でした。電気が関係しそうな分野は4分野で、これも8名程度の採用だと考えられます。
どちらも通年の採用は実施してなく、年1回の採用です。
実際私もJRに10年以上勤めましたが、電気分野に中途で採用された例を1件しか知りません。自社内だけでなく、同業他社と話をしても、この状況は変わりません。
この理由として、鉄道会社にいったん入社するとほとんど辞めないからです。さらに社内の教育体制が整っており、定年退職による自然減を補うのは新入社員で十分であるという実態もあります。
ネームバリューがありますので、新入社員の募集も相当数あります。そして、入社したら定年まで勤め上げるという雰囲気でした。
またJRは、国鉄時代に大赤字で倒産した歴史があります。国鉄時代の多数の社員を抱えたままJRになり、なんとか黒字にしようと人件費を抑えるため、採用数を減らしていました。いまでも余剰人員を抱えることにアレルギーがあり、採用活動自体、新卒採用以外は本気で取り組んでいない状況です。
輸送量、収入ともに世界一のJR東日本でさえ、わずかな中途採用しか実施していないのは、上記の理由があるからだと考えられます。
では、大手私鉄ではどうでしょうか。
大手私鉄もJRと同様に、電気系の中途採用はごくわずかです。あっても年齢制限がつきます。第二新卒や30歳未満が対象です。
最後に第3セクターの地方鉄道会社はどうでしょうか。
これはそもそも会社の規模自体が小さく、財務状況が良くない場合がほとんどです。したがって、第三セクターの地方鉄道も中途採用の募集はわずかです。
また、キャリアアップや待遇改善を目的に、転職を考えている方にはおすすめできません。そもそも国鉄不採算路線や、新幹線開業に伴うJR在来線の切り離しが会社の起源です。積極的な設備投資はありません。少ない予算内での設備保守が中心の仕事になります。新しい技術に触れることも少ないです。
地方の出身者が、Uターンで帰る、その地方にあこがれて骨を埋めるつもりでおもむく、といったことがない限りはおすすめできません。
鉄道会社以外の転職の道はあるか
鉄道会社への転職はきわめて難しいということでした。それでは、鉄道会社のグループ会社はどうでしょうか。
これらは転職サイトで募集をするくらいに、採用数が通年であります。
まずは鉄道会社のグループ会社から解説します。
鉄道会社のグループ会社は、もともと鉄道会社本体で抱えていた業務を切り離して、グループ会社を新しく作ったものがほとんどです。したがって、仕事のやり方は鉄道会社とほとんど変わりません。待遇も親会社に準じているところがほとんどです。
鉄道会社だと電気部門の社員だとしても、電気の仕事だけしていれば良いのではありません。車両の構造や、駅での切符販売の仕組みなど、鉄道全般にわたって幅広く知っておく事が求められます。
私は電気系での採用でしたが、内定式で大型時刻表を渡され、入社早々運賃計算の試験を受けさせられ、結果を同期全員の前で公表されました。
グループ会社ではそのようなことはなく、電気部門の仕事に集中できます。電気系の技術者として働きたいなら、より技術に集中できるグループ会社をおすすめします。
転職サイトにも「○○鉄道グループ」と謳われていることが多いので間違えることはありません。下の図は、JR東日本グループの日本電設工業(株)の求人情報のタイトルです。
また、以下の求人はdodaでJR東海グループの新生テクノス(株)の求人情報のタイトルです。一般の電気工事もありますが、鉄道電気工事が主体の会社です。
このように鉄道会社のグループ会社であることを売りにしていることが多いので、転職サイトから応募してください。
・鉄道運輸機構の求人
次に、主に建設を担う鉄道運輸機構はどうでしょうか。
鉄道運輸機構は、独立行政法人機構です。つまり準公務員です。しかし、ほかの公務員試験と違い随時募集しています。
鉄道運輸機構の魅力は、大規模プロジェクトに携われることでしょう。新幹線建設のように何千億円ものプロジェクトは、民間企業で実施されることことはなかなかありません。
さらに建設の仕事は保守の仕事と違って、さまざまな角度から設備を検討しないといけないため、高い技術力が求められます。自然と優秀な技術者がプロジェクトに参加することになり、仕事を通して知り合う人々の技術レベルが総じて高いです。それらに触れることによって、みずからも技術力の向上が見込めます。
私が勤めていたJRでは、保守を経験して建設に携わることになった後輩は、口々に「建設の方がおもしろい」「ためになる」「勉強になる」といっています。これについては、私自身も同様に感じます。
また、鉄道会社と違って、鉄道運輸機構は比較的社員の出入りがあります。私が知り合った何人かで、メーカー(東芝)出身の方がいました。メーカー在籍中に変電設備の配電盤を作っていたそうで、鉄道運輸機構に入ってもそのときの経験を生かして、いきいきと仕事をされていたのを覚えています。
なお、鉄道運輸機構の求人も転職サイトに載ることがあります。
・電気設備工事のメーカーに関する求人
最後に鉄道に直接携わる会社ではないものの、広い意味で鉄道に関わりたいならメーカーも選択肢に入ります。
鉄道の電気設備は、鉄道会社が作っているのではありません。鉄道運輸機構でもありません。メーカーです。下の図は、鉄道の信号設備を作っている日本信号(株)のDODAにおける求人情報タイトルです。
ほかにも三菱電機のグループ会社や日立製作所のグループ会社などがあります。
メーカーに勤める魅力は、鉄道という色合いは薄れるものの、電気の技術に集中できるところです。また、日本の鉄道会社に在籍しても海外赴任はまず考えられませんが、メーカーなら海外赴任も十分に考えられます。グローバルな活躍を考えているなら良い選択肢となります。
鉄道の電気関係に転職するのに有利な資格はあるか
最後に、鉄道の電気関係に転職するのに有利な資格について解説します。
鉄道会社の場合、個別に名称を記載できる有利な資格はありません。なぜなら、募集案件が少なく決まった方向性がないので、募集にあった資格を持っていれば有利でしょうとしかいえないからです。
資格を取って有利に転職しようとするよりかは、たまたま募集に合った資格を持っているから受けてみよう、というのがよいです。
鉄道会社のグループ会社の場合、電気工事士、工事担任者、施工管理技士は持っていると重宝されます。これは実際に、この資格がないとしてはいけない作業がたくさんあり、それが業務内容にあるからです。
ただし、社内で資格取得のサポートが受けられるところが多くあります。募集要件に必須資格とない限りは、まずは受けてみるとよいです。年に1回か2回の資格受験のために、条件に合った転職案件を逃してしまうのは得策とはいえません。
鉄道運機構やメーカーの場合、有利な資格はありません。仕事の内容に、資格が役立つ場面が少ないからです。これも募集案件に必須資格となければ、まず受験しましょう。
まとめ
以上のように、鉄道の電気部門に転職しようと考えたとき、「鉄道会社の電気部門」だけにターゲットを絞るときわめて難しいのが現状です。転職サイトに登録して、転職エージェントにもその旨を伝えて、紹介を気長に待ちましょう。
「鉄道会社の電気部門」に絞るのではなく、「鉄道に関係する電気部門」として少し範囲を広げれば、グループ会社、鉄道運輸機構、メーカーの選択肢が増えます。
この場合でも転職サイトで探すとよいです。自社ホームページでは採用していないとしていても、転職サイトには求人を出していることがあります。
鉄道の電気部門で働きたいとき、少し視野を広げてみることで、転職が成功しやすくなります。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。