電気の仕事というと、技術職のイメージが強いです。作業服を着て、工具を持った電気工事士をイメージする人も多いのではないでしょうか。

しかし、電気の仕事でもあまり知られていないだけで事務仕事がたくさんあります。これらの仕事は、電気特有の言葉や慣習があるものの、使えるスキルは一般事務と変わりません。

ただ、電気系の事務仕事が一つの職種として広く認知されているわけではありません。したがって、募集する会社により呼び方や職種が様々です。このような状況から、予備知識無しで転職してもミスマッチを起こす可能性が高いです。

そこで、ここでは「電気系の事務仕事について分類・整理」した上で、「求人を探すときの確認ポイント」を詳しく解説します。

電気系の事務職の仕事内容を整理する

電気系の事務には特有の仕事があります。これら電気特有の事務仕事は、なかなか情報が出回っていません。そこで、私の経験を踏まえて、電気の事務系の仕事について整理します。

どのような事務の仕事があるのか、全体を網羅した上で転職活動を行うことで、転職のミスマッチを防ぐことができます

総務系の事務

まず、総務系の事務職があります。これは、一般的にイメージする事務員に近い仕事です。

総務系の事務職が行う仕事は、一般事務職が行う仕事に加えて、会社の資産管理、官公庁への各種届出、労働安全に対する取り組みなどがあります。

例えば、下の株式会社シーイーシーでは、総務担当として社内ファシリティに携わります。シーイーシー社は、東京・大阪・名古屋の三大都市圏のほか、九州などに拠点があります。また、同社は製造業の企業に情報通信機器を使って製造効率を上げる仕組みを売っているソフトウエア・コンサルティング会社です。

シーイーシー社は、単にICTのコンサルティングをするだけでなく、ICTインフラの整備などのハード構築も幅広く行っています。

この求人では、いわゆる総務の業務のほかに、「設備管理」「社内システム企画」が仕事内容に記載されています。シーイーシー社は自社ビルを所有しているので、その設備管理を総務がしています。

多くの場合、このような設備管理は社内に専門部署を作ったり、外部委託したりします。しかし、設備数が少なければ、シーイーシー社のように総務部門が行うこともあります。

また、下に示す株式会社セントラルヨシダから出ている総務の求人では、エネルギー管理士や電気主任技術者資格を歓迎条件としています。セントラルヨシダ社は、愛知県にある自動車部品メーカーです。

これは、社内のエネルギー管理や電気設備管理を総務が行っているからです。

エネルギー管理は、事業所ごとに下写真のようなエネルギー管理標準を定め、毎年7月末日までに定期報告書・中長期計画書を地方経済産業局に提出する必要があります。

私は、今勤める電力プラントにおいてエネルギー管理標準の策定から毎年定例の書類提出まで中心的に携わっています。その実務経験からいうと、これらは全くの事務仕事です。

もちろん、エネルギー使用量を重油換算したり、省エネルギーのための設備導入計画を立案したり、技術的な仕事もあります。しかし、現場に出ることはなく、ほぼ机上で仕事が完結します。

総務経験者に話を聞くと、「総務は会社のなんでも屋だよ」とよく言われます。その中には、電気に関わる事務仕事もあります。

ただし、総務が受け持つ業務範囲は、会社によって変わります。採用選考過程を通して、企業側に仕事内容を十分に確認することが大切です。

電気工事系の事務

つづいて、電気工事関係の会社に多い事務仕事を紹介します。

電気工事会社では、主役はもちろん実際に工事施工に携わる施工管理職や電気工事士です。しかし、工事施工するスタッフだけでは仕事は成立しません。

なぜなら工事施工以外に、設計積算・契約・許認可申請・CAD(図面作成)・工程管理・コスト管理などの仕事があるからです。そして、これらのほとんどが事務仕事です

私がかつて勤めていた鉄道会社の工事部門で、これら全ての業務をしたことがあります。そのときの私の写真が、下の写真です。

仕事が終わってそろそろ帰ろうとしているときに撮ってもらった写真なので、比較的机が片付いています。しかし、一般的なオフィスと変わらないことがわかります。

また、私の服装は執務中も写真と同じ背広でした。事務所も駅前のオフィスビルにあったので、技術職と言いながらも事務職と同じような就業環境でした。

もちろん、下の写真のような工事現場に設けられた事務所で勤務する形態もあります。

工事現場で行う事務の場合には、工事進捗によって数ヶ月から数年で勤務箇所が変わります。工事箇所を転々とすることになるので、予め承知しておかなければなりません。

実際の求人例を示すと、下の株式会社むらでんの求人が電気工事でCAD図面を描く職種を募集している例です。むらでん社は宮城県で鉄道電気工事・一般電気工事を行っている会社です。

むらでん社の施工実績を見ると、電車線路工事・駅電灯設備の実績があります。駅の電灯設備は下の写真のように一般電気工事と図面の描き方は変わりません。一般電気工事の経験があれば、違和感なく仕事を進めることができます。

引用:拾って覚える!実践電気工事積算入門(オーム社)より

一方、電車線路工事は使うシンボルが独特です。さらに、「路線の起点を必ず図面の左にする」などの一般電気工事図面とは違ったルールがあるので、柔軟に対応する心構えが必要です。

また、CADのほか、Excelなどを使った一般事務も仕事内容に記載されています。工事の予決算管理や進捗管理などをExcelで行っていることはよくある事例です

例えば、工事進捗管理は、下の図のようにExcelでガントチャートを描いて、視覚的に工程が判別しやすく管理をすることがよくあります。

工事事務でもう一件の求人を紹介します。下の京浜電設株式会社の求人です。京浜電設社は、神奈川県横浜市を中心に、工場や官公庁の施設の電気工事を施工している会社です。

この求人では、電気工事の積算ができる人材を求めています。積算とは、工事図面や仕様書から工事費を算出する仕事をいいます。

例えば、下の図のように必要な材料(項目)を挙げて、それぞれの材料費と労務費を計算します。そののち、それらを合計して直接工事費を算出します。

実際には、項目が何十、何百にもおよび、損料などを含めます。そして、直接工事費に経費・現場管理費・一般管理費などを乗じて総工事費を求めます。

このように、積算は業務で主に計算を行います。したがって、パソコンを使って資料を作成することがほとんどです

行政や関係箇所との調整・契約業務

ここまでで紹介した工事事務のほかに、契約書類などを作ったり、行政への許認可申請を行ったりする事務仕事があります。契約など書類を作る仕事に、工事請負契約書や見積書・請求書を作ることが含まれます。これはイメージしやすいと思います。

一方、許認可申請は携わったことがないとイメージしづらいと思います。電気工事をする上で、必要な申請には下記のようなものがあります。

  1. 道路の交通を妨げる状態にして、工事を施工する場合
    →道路専有許可願を管轄の警察に提出し許可を受ける必要あり
  2. 高圧以上の工事用仮設電源を用いる場合
    →電気主任技術者の選任届などを管轄の経済産業省産業保安監督部に届け出る必要あり
  3. 電力会社から受電する場合
    →竣工調査の依頼を、地域を担当する電気保安協会などに連絡する必要あり

代表的なものを挙げましたが、これら以外にも他社などと事前の協定を結んで、その協定に従って連絡・合議を行う仕事があります。私の経験で印象深かったのは、鉄道の地下施設に溜まった湧水を汲み出すポンプの修繕作業のときのことです。

その汲み出した水は、行政が親水公園の水として利用していました。親水公園には水生生物が放してあるので、電動ポンプを停めるときには行政に合議をもらわなければなりませんでした。そのとき、「ホタルが死んでしまう」と合議をさんざん渋られたのを覚えています。

このような業務は、下の日鉄パイプラン&エンジニアリング株式会社の求人のように、仕事内容欄に明記されている場合もあります。ちなみに、この求人で採用されると、東京の本社に勤めることになります。

しかし、求人票には「関連業務」として一括にされて、具体的な記載がない場合もあります。したがって、「関連業務」という記述があった場合には、具体的な内容を確認する必要があります

また、下の株式会社F-Powerの求人は、営業事務と分類されているものの、「一般送配電事業者(電力会社)に工事申請を行う」とあります。F-Power社は、東京に本社があり全国で再生可能エネルギー事業を展開している新電力大手です。

以上のように、工事関連の事務仕事は呼び方が会社それぞれであることを理解して求人を探さなければなりません

そのほかの事務

最後に、これまでの仕事には分類できない事務仕事を紹介します。特に設備管理系の仕事に多いのが、エネルギー管理や技術検討です。

エネルギー管理は、総務系の仕事で書いたように、経産省への報告用の資料を作るための仕事でもあります。しかし、それだけではなく、需要の変化を分析することで将来の設備更新や機器故障の予兆を掴むためにも大切な仕事です。

下の写真のような、負荷に接続されたメーターから数値を読み取り、時系列に並べて変化を追います。

古い施設では、メーターをわざわざ現場に確認しに行かなければなりません。しかし、新しい施設では中央装置で集中的に監視しており、メーターを読みに行くこととも僅かです。そうなると、ほとんど机上の仕事になります。

このエネルギー管理(負荷管理)は、ユーザー企業が行うこともあります。しかし、下のみずほ東芝リース株式会社のように、ESCO事業として専門的に行うこともあります。

ESCOとは、Energy Service COmpanyの略で、顧客に省エネ提案し、省エネで浮いた費用から料金として売上を得る事業です。下に概要図を示します。

この求人だと、主に診断業務を行うと記載されています。つまり、対象となる施設のエネルギー使用データを集めて、削減余地がないか検討する仕事です。

診断は、基本的に負荷データや使用機器のデータがあればできます。したがって、仕事のほとんどは机上での事務仕事になります。

電気系の事務仕事は、以上のような仕事を探していくことになります。

事務仕事だけでなく現場に出ることもある

ここまで紹介した電気系の事務仕事は、現場に出て行う作業と関連の深いものが多いです。つまり、必ずしもオフィス内だけで完結する仕事だけではありません

例えば、工事設計や技術検討をする場合、現場の電気設備を知らなければまともな設計や検討はできません。エネルギー管理にしても、現場の実態を知らずして、中長期の省エネ計画を立てて報告することは無理でしょう。

このように、全体の仕事量に対する割合は小さいものの、「現場に出てモノを見る」ことはよくあります。電気系の事務職は、現場の仕事とセットだということを理解しておきましょう。

求人票の仕事内容をよく確認すること

では、どれくらい現場に出て、どれくらいの事務仕事があるのか知る方法はあるのでしょうか。最も手軽に実践できるのは、求人票の仕事内容をよく分析することです。

例えば、下に示す福岡県にある学校法人中村学園の事務職員募集の求人では、「事務職員募集」と謳いながら、仕事内容には現場に出て簡易作業をすることが明記されています。

この求人は、施設管理(設備管理)職の求人で、記載してある仕事内容はいわゆるビルメンテナンスの仕事内容と同じです。ビルメンテナンスは、一般的には技術職ですが、中村学園では「事務職員」という職名で呼んでいます。

もちろん技術職といっても、大規模な電気工事を施工することはありません。電気設備の簡易修繕や応急処置が主です。大規模な工事になると、外部発注するので、工事事務が仕事内容にあります。

したがって、「事務職員」の文字から事務仕事ばかりだと思って転職するとミスマッチを惹き起こします。求人票の仕事内容は十分に確認しましょう。

また、求人票の記載内容からだと詳細がわかりません。事務仕事と現場仕事の割合や、応急対応の頻度などは別の方法で知る方法があります。

転職エージェントを使っている場合は、応募する前に内容を問い合わせることが可能です。下は、私が転職活動をしていたときに、転職エージェントを介して、気になった求人の詳細について問い合わせたメールです。

応募したあとは、面接などで疑問点を訊いていくしかありません。面接だと時間が限られていて、確認しておきたいことを網羅できない可能性があります。

したがって、事前確認を含めて様々な方法を用いて仕事内容を確認しましょう。そうすることによって、転職後のミスマッチを防ぐことができます。

まとめ

ここまで、電気系の事務仕事について詳しく解説してきました。

電気系の事務仕事は、一般事務に加えて「総務系事務」「工事系事務」「そのほかの事務」があります

工事系事務は、電気工事を受注している会社に多い仕事です。そのほかの事務は、様々な業種で求人が出される可能性があります。

ただ、電気技術の会社でない場合は、電気系の事務仕事の割合は小さく、そのほかの事務仕事なども行わなければなりません。

そして電気系の事務仕事は、現場に出て身体を動かす仕事と関係が深いものが多いです。会社によっては、現場仕事と無関係に事務だけできることもあります。しかし、多かれ少なかれ現場に出て仕事をすることも覚悟しておきましょう。

また、電気系の事務仕事の職種名や募集のかけ方は様々です。募集タイトルだけで判断すると、思わぬミスマッチを惹き起こします。募集されている求人の仕事内容を十分に確認しましょう。

仕事内容の確認方法は、求人票の仕事内容欄を熟読するほか、「転職エージェントを通して確認する」「面接で直接確認する」などの方法があります。様々な方法を使って、求人の仕事内容を確認することが、ミスマッチを防ぐには大切です。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。