事務職は、人気のある職種です。これは電気工事会社でも変わりありません。しかし、電気工事会社には一般の事務職とは違った、業界の特殊な事務職が存在します。

一般的な事務職だけに焦点を絞ると、大変競争率の激しい中で転職活動を行う必要があります。また求人自体も多くはないので、転職活動にも苦戦することは目に見えています。

したがって、少しでも有利な状況で転職活動を行うには、電気工事会社の事務職を十分に把握した上で、広い分野に応募することが大切です。

ここでは、電気工事会社の事務職の種類と仕事内容を初めに紹介し、求められるスキル、転職サイトの有効な使い方、事務職の給料について解説します。

電気工事会社の事務職の種類と仕事内容

電気工事会社の事務職には、下記の種類があります。

  • 一般事務:書類作成・ファイリング、備品整理・台帳管理、郵便物発送・受取、来客対応など。
  • 会計事務:企業の会計にかかる事務。記帳、財産管理、財務諸表作成など。
  • 工事事務:工事にかかる事務。設計・積算、図面作成、契約書作成、見積書作成など。

一般事務と会計事務は、電気工事会社以外でも類似の仕事があります。工事事務は、名前の通り電気工事会社など、工事に関係する会社特有の仕事です。

電気工事会社で事務職として働こうとするなら、これらの求人を探していくことになります。

一般事務・会計事務は求人数が少なく、転職が難しい

まず、一般事務について説明します。これは、事務員と聞いて最初に思いつく職種ではないでしょうか? また、会計事務と聞くと聞き慣れないかもしれませんが、「経理の仕事」なら聞いたことがあるのではないでしょうか。

しかし、一般事務職・会計事務職の正社員の求人を探すのは難しいです。厚生労働省が発表している職業別一般職業紹介状況によると、有効求人倍率が一般事務で0.40、会計事務が0.85です。

転職サイトで「電気工事 一般事務」「電気工事 会計事務」と検索しても、ヒットするのは十数件程度です。

これは、キーワードを「電気工事 経理」と変えたり、キーワード検索ではなく職種を「事務・アシスタント」としたりして探しても同様の結果になります。

またヒットした求人票をみると、工事事務職を募集している求人や工事事務の内容が含まれている求人が数多くあります。

例えば、下図の近畿電工株式会社の求人を見ると、事務スタッフ募集としながら工程管理が業務内容にあり、工事事務も入っていることがわかります。なお、近畿電工社は、大阪に本社があり、広島と埼玉に支店を持っています。

会計事務の場合は、工事事務業務が追加で謳われていることは少ないです。しかし、建設業特有の仕訳や専門用語が出てくることは承知しておく必要があります。具体的には、勘定科目で「売上高」を「完成工事高」といったり、「売掛金」を「完成工事未収入金」といったりします。

下図の英工電機株式会社の経理職の求人では、専門用語について記載されています。英工電機社は、東京で電気工事や電気通信工事を事業として行っている会社です。

 

電気工事会社の一般事務・会計事務の求人は、以上のような求人を探していきます。しかし、求人自体が少ないので根気よく探していくことが重要です。

工事事務を狙う

一方、工事事務の求人を探す場合は、一般事務・会計事務より比較的多くの求人が見つかります。ちなみに、有効求人倍率は2.13です。検索のときは、「電気工事 積算」「電気工事 CAD」といったキーワードで検索するとヒットしやすいです。

例えば、株式会社鈴鹿の求人では設計積算を担う人材を募集しています。

設計積算は、あまり聞き慣れないかもしれません。設計は工事設計の略で、電気工事会社には必須の仕事です。

例えば、部屋に灯具を1灯新設するときには、下図のような図面を描きます。

図面は垂直方向の距離がわからないため、必要に応じて現地調査や追加の図面を手に入れて描く必要があります。私は以前、現場調査を手抜きして、垂直方向のケーブル長を間違えた設計をして、上長に厳しく指導を受けたことがあります。

また、ケーブルの端は機器と接続するために被覆を剥いで形を整える処理をする必要があります。したがって、ケーブル長は多少長めに見積もる必要があります。

そのほか、客先要望によって照明の種類を変えたり、負荷によってはケーブルの種類(太さ、線種など)を変えたりします。電気技術基準や内線規定があるので、それらに精通していると仕事がスムーズに進みます。

このように、図面の作成には現場での経験が大変役に立ちます。つまり、あなたがこれまで電気工事に携わってきたとしたら、その経験が活かせる仕事です。

設計が終わると、積算をします。図面から数量を拾い出し、それぞれの材料費と労務費を計算し直接工事費を計算します。

直接工事費に、現場経費、一般管理費や産廃処理費、機器損料を足して、全体の工事費を算出します。この工事費をもとに、見積書を作成します。

積算は図面が出来上がっていれば、ある程度機械的に行えます。基本的な積算方法は国土交通省が積算標準を示しており、多くの場合それに沿って社内ルールが決められているため、仕組みを覚えてしまえば特に難しいものではありません。

下図の株式会社HEXEL Works(旧六興電気株式会社)では設計積算職を募集しています。この求人では、CAD経験があることを前提に職種未経験でもOKとしています。

HEXEL Works社は、独立系の大手電気工事会社として全国に事業展開しています。この求人では、北海道で勤務することになります。

なお、設計には図面作成が必須です。かつてはドラフターを使った手書き製図もありましたが、今ではCADソフトを使った製図がほとんどです。

そして図面作成には、Auto-CADのほかTfasやjw-CADがよく使われます

引用:拾って覚える!実践電気工事積算入門(オーム社)より

Auto-CADは汎用CADとして、あなたも使ったことがあるのではないでしょうか。汎用CADであるため、客先に図面を納入する必要があるときは、Auto-CAD形式で求められることが多いです。私もAuto-CAD形式で図面の提出を求めたことが何度もあります。

jw-CADは、無料のCADソフトで、電気屋ではなく土木・建築屋がよく使うCADです。電気設備は、建築図面をもらってその上に描くことが多いので、jw-CADに馴染みがあると仕事を進めやすいです。

下の図は、かつて私が描いた機器配置図の一部です。建築部門からjw-CADのデータをもらって、Auto-CADを使って作成したのを覚えています。

なお、Tfasは電気設備用の専用CADです。あなたが今までに電気設備製図をしたことがなければ、見聞きしたことがなくても当然です。したがって、Tfasを使っている会社でもTfas経験を求めることは少ないです。

たとえば、下図の実紀コスミオン株式会社の求人では、Tfasに限らず2D-CAD、3D-CADの使用経験を求めています。実紀コスミオン社は大阪のほか広島県でオフィスビルを中心に電気工事などを行っている会社です。

工事事務職に応募するには、類似した求人を探していくことになります。

電気工事の事務職は、パソコンは使えることが前提

ここまで紹介した求人の中で、一般事務職と会計事務職は「PC操作ができること」について記載があります。

下図は、英工電機社の求める方の欄です。実務未経験であってもMicrosoftのWord・Excelの操作ができることが条件に挙げられていることがわかります。

では、工事事務にはパソコンスキルが必要ないかというと、全くそのようなことはありません。むしろパソコンが扱えないと仕事にならないといえます。

私が新卒で働き出した2000年代初頭は、まだ手書きの図面や契約書が残っていました。しかし、今や図面はすべてCADで作られ、書類も全てパソコンのワープロソフトなどで作成されています。客先とのデータでのやり取りも頻繁で、パソコンが無いと仕事になりません。

使うソフトは会社により様々ですが、一例を示すと以下のようなソフトをよく使います。

  • Microsoft WORD:契約書、見積書、施工計画書などの作成
  • Microsoft EXCEL:見積書、請求書の作成。積算。ガントチャートによる工程管理。
  • 各種CAD:図面作成
  • メールソフト:客先との連絡

これらのほか、積算では自社で開発したソフトや専用のソフトを用いる場合もあります。

WORDやEXCELなどの資格(MOS)を取得する必要はありませんが、パソコンを使うのに時間がかかると仕事をすすめるのに苦労することになります。

電気工事会社で図面を確認する事務職として働いている人に話を聞いてみると、以下のことを教えてくれました。

図面作成・書類作成はすべてパソコンを用いているので、使えないと話にならない。

今でこそ、社員にパソコン操作を教える研修があるが、かつてはそのような研修はなかった。したがって、自分は我流で覚えた。必要な機能だけを自分で調べて一つずつ覚えていった。

ほかの会社で、この使い方が通用するかはわからない。しかし、今の会社で仕事をするにはこのやり方で十分だ。

このことから、パソコンに関する資格で実力を証明することではなく、少なくともパソコンに関して苦手意識がなく自分で学んでいける姿勢が必要であることがわかります。

より多くの事務職求人を見つけるには転職サイト・エージェントを有効利用する

以上のような電気工事会社の事務職求人を効率よく見つけるには、下のような工夫が有効です。

  • 複数の転職サイトに登録して求人を探す。
  • 転職エージェントに、非公開求人を紹介してもらう。

1つ目は、転職サイトを使って求人を探すときの必須方法です。私が転職活動したときも3つの転職サイトを使って転職成功させました。また、友人知人を含め多くの人が2つ以上の転職サイトを使って転職成功させています。

なぜ複数の転職サイトを使うかというと、求人の登録状況が転職サイトによって違うからです。企業は全部の転職サイトに求人を出せるわけではありません。したがって、複数転職サイトに登録して求人を探すと、より多くの求人を見ることができます

2つ目も、より多くの求人を見つける方法です。非公開求人とは、転職エージェントから紹介してもらうしか見ることのできない求人です。

あなたが転職サイトで登録無しで見ることのできる求人は公開求人で、それとは別に4倍の非公開求人があります。下図は転職サイトが、非公開求人の数について紹介している部分で、全求人の80%が非公開求人であると記載しています。

転職エージェントは、あなたと面談した上で、あなたと企業の双方の希望によりマッチした非公開求人を紹介してくれます。転職エージェントに非公開求人の紹介を受けることで、より多くの求人に触れられる上にミスマッチを防ぎやすくなります

電気工事会社の事務職求人を探すときには、このような転職サイトの活用をすることで転職成功しやすくなります。

電気工事会社の事務職の給料を知る

最後に電気工事会社で事務職として働く場合の給料を解説します。最初に紹介した近畿電工株式会社の年収は、同じ求人票の中に下図のように示されています。

そのほかここで紹介した求人で、同様に求人票に示されている年収は下表のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 職種
近畿電工(株) 300+賞与 一般事務
英工電機(株) 280(入社初年度想定) 会計事務
(株)鈴鹿 300~700 工事事務(設計積算)
(株)HEXEL Works 400~500 工事事務(設計積算)
実紀コスミオン(株) 450(入社初年度想定) 工事事務(CADオペレーター)

工事事務の方が、一般事務・会計事務に比べて提示年収が高いことがわかります。

なお、電気工事会社が属する建設業の給与分布は下のグラフのようになっています。これは、国税庁が公表している民間給与実態調査の結果をグラフ化したものです。

引用:平成30年度民間給与実態調査(国税庁)第8表をグラフ化

このグラフによると、建設業全体の年収のボリュームゾーンは300~500万円です。

先程の表と比較すると一般事務・会計事務は業界全体のボリュームゾーンより低めで、工事事務は業界全体のボリュームゾーンと同じか少し高めの提示年収です。

あなたが実際に求人に応募するときには、求人票の提示年収をこのグラフ(政府統計)と比較すると良いです。また、面接中や内定後に給与提示があったときでも構いません。そうすることによって、年収面で大きく失敗することを防ぐことができます

まとめ

電気工事会社の事務には、大きく一般事務・会計事務・工事事務があります。このうち、一般事務と会計事務は有効求人倍率が低く、求人数も少ないです。一方、工事事務は一般事務・会計事務より求人数はあり探しやすいです

工事事務とは、設計・積算・図面作成・契約書作成などを指します。工事事務はあまり使われないので、設計・積算・図面作成などをキーワードにして探すと良いです。

一般事務・会計事務にはパソコンスキルについて記載されていることが多いですが、工事事務に関してパソコンスキルについて記載がないことがあります。しかし、工事事務にもパソコンスキルは必須です。

パソコンに関する資格は必要ないものの、パソコンが全く使えない状態で転職すると、大変苦労することになります。少なくとも、自分で解決方法を調べて使える程度のパソコンスキルがあると良いです。

なお、電気工事会社の事務職求人は多くないので、転職サイト・エージェントを有効に活用しましょう。具体的には、「複数転職サイトを使う」「転職エージェントから非公開求人を紹介してもらう」といった方法です。

電気工事会社の事務職の年収は、一般事務・会計事務が業界の低い水準で、工事事務だと業界の普通から高い水準です。あなたが見つけた求人の提示年収は、政府統計と比較することで適正な水準か判断できます。

以上のような工夫をすることで、電気工事会社の事務職へ転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。