電気工事を進めるには図面が必要です。実際に施工するときだけでなく、客先に施工要領書を提出して打ち合わせするときや設計・積算にも図面が用いられます。この図面は、現在ではコンピューターによるCADで作成することがほとんどです。
この電気工事の図面を作成する仕事は、電気CADオペレーターの一種として電気工事業にはなくてはならないものです。
ただ、CADオペレーターの仕事は派遣社員や契約社員としての採用が多いです。正社員として電気工事のCADオペレーターの仕事に就くには、優れた求人を探し当てることが重要です。
では、どのようにして電気工事のCADオペレーターの求人を探せばよいでしょうか? また、正社員として働くには、どのようなスキルや資格があれば有利になるでしょうか?
ここでは、「電気工事の正社員CADオペレーターの探し方」「電気工事CADオペレーターに求められる資格・スキル」について解説します。
もくじ
正社員CADオペレーターの求人数は少ないので探す工夫を
実際に転職活動をするとき、求人を探すには多くの人が転職サイトを使います。では、転職サイトには正社員のCADオペレーターの求人はどのくらいあるのでしょうか。
試しに大手転職サイトを使い「電気工事」「CADオペ」をキーワードにして「正社員」の求人に絞って検索すると、下図のように18件の求人がヒットしました。
ほかの大手転職サイトを使って同様に検索すると、そちらでは8件の求人がヒットしました。転職サイトは全国の求人を扱っているサイトを検索したので、合わせて26件の求人数は、極めて少ないと言えます。
このような状況から、電気工事で正社員のCADオペレーターの求人を見つけることは根気が必要であると認識してください。
ちなみに、上記の検索方法でヒットした求人には、下図に示す明和エンジニアリング株式会社の求人があります。東京の会社で、主に太陽光発電システムの設計施工・運営などを事業の中心に据えています。
仕事内容に記載があるように、CADオペレーターの仕事を中心に一般事務も行う求人です。また下図のように、正社員として年収380~420万円が提示されています。
明和エンジニアリング社のように、CADオペレーターの仕事だけでなく事務系の仕事や電気工事設計の仕事を両方行う求人は多いです。これは、電気工事図面作成が仕事量としてあまり多くないからです。
会社は、雇った人材を遊ばせておくわけにはいかないので、求人票にもそのように記載されています。
したがって、電気工事のCADオペだけの業務と区切ることなく、ほかの業務もするつもりで求人を探すと見つけやすくなります。
常用派遣のCADオペも正社員なので選択肢になる
CADオペレーターの正社員求人なら、「常用型派遣」も選択肢に入れても良いです。常用型派遣は、会社側の都合で派遣切りにあって次の日から住む場所もなくなるような、いわゆる派遣社員とは違います。常用型派遣は、派遣元会社の正社員として働く方法です。
派遣社員として働く場合、下図のように「派遣元会社と労働契約を結び、派遣先会社の指揮命令下に入る」ことになります。
つまり、派遣先の会社に行って仕事をします。そして、給料は、派遣元会社からもらいます。
常用型派遣は、この派遣元会社の正社員になります。もし、派遣先会社の都合で派遣切りにあったとしても、一旦派遣元会社の用意する研修や社内の仕事をしつつ、次の派遣先を探すことになります。この間の給料は支払い続けられます。
この常用型派遣のデメリットは、派遣先会社に直接雇用されるより給料が低くなる点です。これは、派遣先会社は雇用のための費用を抑える上に、派遣元会社が何割かを抜いた上で社員に給料として支払うからです。
ただし、そもそも電気工事のCADオペレーターの正社員求人が少ないので、あまりデメリットと感じることは少ないです。
このような常用型派遣の求人案件の例は、下図に示す株式会社131の求人が該当します。131社は全国で常用型派遣社員の募集をしています。この求人では、施工管理職を募集すると同時に、CADオペレーターの募集もしています。
そして、募集されているCADオペレーターは、工事現場における仮設事務所などで業務を行うと記載されています。工事現場には、下の写真のように仮設事務所を建設してさまざまな事務仕事を行います。その中には、CADを使った図面の作成や修正も含まれます。
仮設事務所は、工事が竣工したら解体されます。つまり、次から次に新しい工事現場に赴いて仕事をすることになります。一つの工事の工期は、短いものだと数ヶ月から、長いものだと数年に及びます。
同じところに長く勤めたい人には向きませんが、安定してCADオペレーターの仕事を続けることができます。また、現場ごとに雰囲気や仕事のやり方が変わるので、毎回新しい気持ちで仕事に取り組むこともできます。
電気工事の正社員CADオペレーターに転職したい場合は、このような常用型派遣も選択肢になります。
転職エージェントに希望を伝えて求人の紹介を受ける
あなたが一人で求人を探す工夫や努力には限りがあるので、転職エージェントなどの力を利用するのも良い方法です。優れた求人を見つけて転職を成功させた多くの人が、転職エージェントサービスを使っています。
転職エージェントサービスを使うメリットは、非公開求人を紹介してもらうことができるということです。非公開求人とは、転職エージェントを通してのみ紹介される求人のことです。大手転職サイトには、下図のように全求人の8割が非公開求人であると紹介されています。
これは、どの転職サイトでも同じような割合で、概ね7~9割が非公開求人です。
非公開求人は、あなたがどれだけ探し回っても自分では見つけることのできない求人です。非公開求人の中に、あなたが希望する優れた求人があるかもしれません。そもそも公開されている求人が少ないので、転職できる可能性を高めるのに貪欲に利用すると良いです。
実は、私は転職エージェントから非公開求人を紹介してもらって転職を成功させています。転職エージェントを通して非公開求人に応募して条件が折り合わなかったところ、別の転職エージェントから紹介を受けた非公開求人の条件が大変良かったのです。
このように、転職エージェントによって持っている非公開求人が違うことが多いです。転職サイトの運営会社により、企業との付き合いの有無に偏りがあるため、このような状況が生まれています。
したがって、転職エージェントを利用するときは、複数社の転職エージェントを使うことで優れた求人に出会う確率が上がります。
なお、転職エージェントを使うときに注意すべき点は、あなたの希望条件とはっきりと伝えることと、気に入らない求人は断固として断ることです。
転職エージェントは、求職者を企業に転職させて初めて報酬が手に入ります。つまり、あなたが転職して入社するまではタダ働きです。
したがって、転職エージェントには「求職者をどの企業でも良いから早く転職させたい」という意識が働きます。ここであなたがはっきりと意思表示せず、優柔不断な態度をとっていると、ろくな求人を紹介されずに放置されるか、うまく口説き落として適当な会社に転職させるかのどちらかになります。
私が転職したとき、煮え切らない態度をとっていると、転職エージェントはしきりに最初に内定を得たあまり希望条件に沿わない会社を推してきました。これは、早く転職させたい気持ちが働いたのだと思われます。
転職は、あなたが自分の意思で成功させるものです。誰かに促されて転職を決めたのでは、満足できず後悔することになりやすいです。したがって、希望を明確にして、転職エージェントに流されずに転職を決めてください。
電気工事のCADオペレーターに求められる資格・スキル
ここまでは、電気工事のCADオペレーターの求人の探し方について解説してきました。ここからは、優れた求人を見つけたときに、どのように攻略すればよいかを説明します。
まず、CADオペレーターとして転職するときに有利になる資格やスキルはあるのでしょうか。
電気工事に関係するCADの資格には、「2次元CAD利用技術者試験」「AutoCADユーザー試験」などがあります。CADの能力を担保するのに目安となる資格です。
確かに採用試験のときに、あなたのCADの実力を客観的に示す材料になります。しかし、転職に向けて取得しようとするのはおすすめできません。
なぜならCADの実力は、採用試験のときに簡単な図面を描く実技試験をすれば簡単に測れるからです。また、資格を取得したとしても、仕事で使うCADが同じだとは限りません。資格を取得しても、仕事に活かせないとなると評価されない可能性が高いです。
ちなみに、冒頭で紹介した明和エンジニアリング社では、下図のようにCADの使用経験のみを問うており、CAD資格については特に記載ありません。
したがって、CAD資格で採用試験を有利に切り抜けようとするのは得策とは言えません。
電気工事に関する知識があるとなお良い
資格以外に、正社員としてCADオペレーターになるのに求められるスキルは何があるのでしょうか。それは、当たり前の話ですが、あなたが描く電気工事図面の意味に対して興味を持つことです。
私が鉄道会社の工事部門で工事設計をしていたときは、ほとんどの社員が工事設計をしながら自分でCAD図面を描いていました。私もこのときにAutoCADを一通り使えるようになりました。もちろん、ほかにたくさんの工事設計の仕事がある中で、CAD図面を描いて覚えたのです。
私が配属されていた工事設計部門は200人くらいの規模でしたが、CAD専門の社員はいませんでした。多くの場合自分で描くか、どうしても手が回らないときはCADのできる事務職の契約社員の人に手伝ってもらっていたくらいです。
サブコンに勤める知り合いに訊いてみても、似たような状況を教えてくれました。以下は、知り合いから教えてもらった内情です
サブコンは施工管理をする社員がほとんどで、この社員は自分でもCAD図面を描けなければ仕事にならない。客先と図面を見ながら打ち合わせをすることが頻繁にあるので、打ち合わせ内容をCAD専門社員に清書をお願いしていたのでは間に合わない。
CAD専門の非正規社員もいるものの、竣工前など大量の図面を黙々と作成する作業を中心に行っている。 |
このような状況なのでCADオペレーターの正社員として採用されるためには、ただCADで図面が描けるだけでは難しいことがわかります。
そこで、CADオペレーターでも電気工事の知識があると強いアピールポイントになります。なぜなら、図面作成の指示が間違っていたとしても、成果物として提出される前に確認することができるからです。
私の経験で、メーカーから提出された図面を見ていたときに、直流回路に交流不足電圧継電器を接続して描かれていたことがありました。具体的には、下図のとおりです。
これは、交流回路で27(交流不足電圧継電器)を接続した図面があったので、その図面を使いまわして80(直流不足電圧継電器)への修正を失念していたものと考えられます。
電源の説明は「交流(AC)」から「直流(DC)」に表記が変わっていました。したがって、継電器の修正は指示がなかったからか、見落としか、そのまま提出されていました。電気の知識があれば、このようなミスを防ぎやすくなります。
知り合いに、電気は全くの素人のCADオペレーターとして派遣社員として電気工事会社に入社した人がいます。この人は、図面を描いているうちに電気工事に興味を持って、電気工事士資格を取得しました。今は電気工事士としても、正社員登用され活躍しています。
あなたが電気工事士として働くかどうかは別としても、電気工事の知識を資格で補完することは大変役立ちます。
図面を間違ったまま工事をすすめると、遅れれば遅れるほど影響が大きくなります。したがって、社内で図面を描いている段階で間違いを見つけられる人材は重宝されます。
Jw-cadなど複数のCADソフトを使うこともある
最後に、電気工事でよく使われるCADソフトについて説明します。
電気工事でよく使われるCADソフトは「CADwe’ll Tfas」というソフトです。ただし、客先に合わせてAutoCADを使うこともよくあります。
引用 : 拾って覚える!実践電気工事積算入門(オーム社)より
そして、建築・土木屋さんがよく使うのがJw-cadです。Jw-cadで電気工事図面を描くこともありますが、もともと建築設計を中心によく使われていた経緯があり、建築・土木屋さんがよく使います。
私が工事設計をしていたときは、建築土木部門から建物の図面をJw-cad形式でもらって、私が使っていたAuto-CAD形式に変換し図面を描いていました。
この3つのCADソフトは操作性が違うため、全てに精通するのは難しいでしょう。しかし、最終的に職場で最もよく使うCADソフトで編集できるように、複数のCADソフトでファイル変換や簡単な操作・編集ができると大変役立ちます。
まとめ
電気工事のCADオペレーターの正社員求人は転職サイトを使って探すことができます。ただし数が少ないため、探し方を工夫する必要があります。
例えば、業務内容が電気工事のCADオペのみではなく、ほかの一般事務や工事事務が含まれている求人を含めると、求人の幅が広がります。また、常用型派遣として働く方法も正社員の求人なので、選択肢に入れると良いです。
また、自分一人で探すだけでなく転職エージェントを使って探すことで、非公開求人に触れることができます。これにより、優れた求人を見つけやすくなります。
電気工事のCADオペレーターとして働くときに必要な資格はありません。CADに関する資格を持っていればアピールすることはできるものの、わざわざ転職のために取得するものではありません。
CADに関する能力だけでなく、電気工事技術に関して知識や経験があると業務を行う上で大変役立ちます。転職活動を始めた段階で電気工事の知識がなくても、業務を進める上で電気工事技術を貪欲に習得する意欲があると転職成功しやすくなります。
なお、電気工事の図面作成では複数のCADソフトを使う可能性があることを承知しておきましょう。そうすることによって、転職後の満足度を高めやすくなります。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。