都市部から離れて郊外を通ると、大規模な太陽光発電所をよく見かけます。これらはメガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所で、運営するには電気主任技術者を選任して常駐させることが必要です。

したがって、あなたが保有している電気主任技術者資格を活かして転職することも可能です。難関試験を突破して取得した電験資格を使って、有利に転職したいと考えるのも自然な発想です。

しかし、太陽光発電所ならどこでも電験資格が活かせるわけではありません。また、太陽光発電所を取り巻く社会情勢により、電験資格を持っていれば、会社を選び放題というわけでもありません。優れた求人を見つけるには、しっかりとした情報収集が必要です。

ここでは、太陽光発電所に求められる電験資格と求人例、太陽光発電所の今後の動向、電気主任技術者としての実務経験などについて詳しく説明します。

メガソーラーに求められるのは電験2種と3種

メガソーラーなど太陽光発電所で求められる資格は、第2種電気主任技術者資格か第3種電気主任技術者資格です。

出力が1,000kW(1MW)以下の発電所は、電気主任技術者を選任せずに外部委託することが認められています。しかし、いわゆるメガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所は、電気主任技術者の選任が不可欠です。

下の写真は、ある大規模太陽光発電所に掲げられていた発電所の概要です。選任された第2種電気主任技術者の氏名が書かれていました。

太陽光発電所の場合、17万ボルト以上で送電系統に接続することは無いので、第1種電気主任技術者資格はオーバースペックです。あとで述べる求人例でも、第2種電気主任技術者資格があれば十分の求人ばかりです。

ちなみに、第2種電気主任技術者資格が必要な太陽光発電所は、66・77kVの送電線に接続される発電所です。下に、66kV送電線に接続される太陽光発電所の送電端の写真を示します。この発電所は43MWの全国でもかなり大きい発電所です。

続いて、第3種電気主任技術者資格が必要な太陽光発電所は、22・33kVの送電線に接続される発電所です。こちらは22kV送電線に接続される太陽光発電所の写真を示します。この発電所は、1.8MWの発電所です。

以上のように、太陽光発電所で必要な電気主任技術者資格について整理してから求人を探してください。そうすることによって、転職後にどれくらいの規模の発電所で働くのかイメージがしやすくなります

太陽光発電所の求人例

それでは、実際の求人例を紹介していきます。最初に紹介するのは、株式会社NTTファシリティーズ東北の求人です。NTTファシリティーズ社は宮城県に本社を置き、東北地方全域で事業を行っている会社です。この求人では、電験3種資格を持っていることが必須条件とされています。

必須条件に「2種・3種」とあり、必要資格に「3種」のみ記載されているのは、同社の扱う太陽光発電所の多くが、電験3種資格があれば問題ない発電所だからです。電験2種が必要な太陽光発電所もあるものの、目下の業務には電験3種があれば問題ないと考えられます。

そして、NTTファシリティーズ東北社の太陽光発電事業では、自社の太陽光発電所からの売電のほか、客先財産の土地にNTTファシリティーズ東北社の財産として太陽光発電所を建設し客先に電力を売ります。

たくさんの太陽光発電所を持ち、それらを統括して管理する電気主任技術者としての活躍を期待される求人です。

次に紹介するのは、株式会社日立パワーソリューションズの求人です。下図に示すのが、その求人票です。この求人では、第1種または第2種電気主任技術者資格が必須です。

求人票に記載されてある「O&M」とは、「オペレーション・アンド・メンテナンス」のことです。発電所のオーナーから設備を預かり、運用と保守を担当する仕事です。

実は、太陽光発電所を自社の財産として、自社社員で設備管理・保守まで全て行っている会社の求人ばかりではありません。電気主任技術者についても、日立パワーソリューションズのように外部選任をすることが多いです。

O&Mで他社財産を管理すると言っても、基本的に設備管理の方法は変わりません。私が勤める電力プラントではO&Mの業者を使っていますが、管理側と一体となって設備を維持・運用していく基本は一緒です。

したがって、これまでに設備保全の経験があれば特に違和感なく仕事をすすめることができます

同様にO&Mの求人で、株式会社トーヨーエネルギーファームの求人を下に示します。この求人では、第3種以上の電気主任技術者資格が歓迎条件とされています。

トーヨーエネルギーファーム社は、自社でメガソーラーを運営しながら培った技術力で、太陽光発電所新設とそのあとのO&Mを請け負う事業を展開しています。請け負う内容は、必ずしも電気主任技術者選任が必要ではないため、電験資格が歓迎条件になっています。

しかしながら、下に示す業務内容は電気主任技術者としての経験や知見が活きる内容です。

太陽光発電所で電気主任技術者資格を活かす求人は、これらに類似の求人を探していきます。

改正FIT制度で新規の募集は少なくなる

メガソーラー発電所は、郊外や港湾部に行くと比較的簡単に見つけることができます。あなたも、電車や自動車で移動中に見かけたことは何度となくあると思います。

しかしながら、ここまで紹介したような求人は数が少ないです。これには理由があります。

太陽光発電所が2010年代に爆発的に増えたのは、FIT制度によるところが大きいです。FIT制度は、再生可能エネルギーの発電量を増やすために、一定期間固定金額で電力を買い取ることを保証する制度です。

そうして増えた太陽光発電所ですが、制度開始から10年以上経ってさまざまな問題が浮き彫りになってきました。そこで、FIT制度は改正され、新規大規模太陽光発電所の事実上の建設規制が実施されることになりました。

つまり、次々に新規の事業者が参入して、新しく太陽光発電所を建設することは少なくなります。太陽光発電所は、いくつかを統括して一人の電気主任技術者が管理することができるので、太陽光発電所における電気主任技術者の需要も減ります

今後は、公開されている求人だけを探すのではなく、転職エージェントを通してのみ紹介される非公開求人を使うなどの工夫をして、少しでも多くの求人を探していくことが転職成功するためには必須になります

また、FIT制度で激増した太陽光発電所の老朽化が始まっています。知り合いの電気工事会社の社長が、太陽光発電所の老朽化について以下のように教えてくれました。

太陽光パネル自体は物理的に壊れない限り半永久的に使える。しかし、主に交直変換を行うパワーコンディショナー(PCS)は10年程度で大規模な修繕・取替が必要だ。

何件も太陽光発電所の新設工事を施工してきたが、最近増えてきたのはPCSの工事だ。

このように工事の質も変わってきているので、電気主任技術者として考慮しなければならないことも変わります

以上のような太陽光発電所を取り巻く状況を十分把握して転職活動に臨むことが、転職後の満足度を高めることにつながります。

電気主任技術者としての実務経験は必要か?

最後に、電気主任技術者としての実務経験が求められるかどうかについて解説します。

ここで紹介した3社について、求人票に電気主任技術者としての実務経験の有無は条件に挙げられていません。つまり、応募するだけなら電験資格があれば特に問題ありません。

しかし、下図のNTTファシリティーズ東北社のように、業務内容に電気主任技術者業務と謳われているものがあります。

電気主任技術者業務とは、監督官庁への申請・届出のほか、下記に示す内容が主な業務です。

  • 組織的に電気設備の工事・維持・運用を適切に行う方法を規定して遵守させる
  • 保安教育を実施し、電気設備が適切に工事・維持・運用されることを担保する
  • 災害時に、社員がどのように対応するか具体的に規定し、遵守させる
  • 教育を含む保安業務の記録方法について規定して実施する
  • 連絡体制(平常時・緊急時)を定めて、運用させる

あなたが電気主任技術者としての業務が未経験なら、このような業務についてしっかりと理解しておくことが重要です。

また、電気主任技術者の業務は、「電気保安について自身で全てできること」を求められるのではありません。あくまで、電気保安を行う組織の技術的トップとして、「組織的に電気保安を実施するように管理監督すること」が求められます

実際、私は勤めている電力プラントで電気主任技術者に選任されていませんが、電気主任技術者の指導・助言のもと保安規程の改正など産業保安監督部への申請・届出、保守員の教育などを行っています。

このように電気主任技術者は、一緒に電気保安業務を行う社員に対して適切に指導・監督できる能力が必須です。

電気主任技術者の実務未経験で求人に応募するときは、このような指導力や組織を管理するスキルをアピールすると良いです。

まとめ

以上まとめると、まず、太陽光発電所で求められる電気主任技術者資格は、電験2種・電験3種資格です。

実際の求人では、太陽光発電所の設備管理の職種で募集されることがほとんどです。また、O&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)を事業として請け負っている会社もあります。

なお、O&Mだからといって業務内容が大きく変わることはありません。今まで、設備管理・設備保全の仕事をしたことがあれば、違和感なく業務を行うことができます。

ただ、改正FIT制度により、求められる電気主任技術者の数が減ります。今後は、既存の事業者が電気主任技術者を募集するのを待つことが多くなります。

求人自体が少ないので、転職エージェントを通して非公開求人の紹介を受けるなどの工夫をしましょう。そうすることによって、転職成功する確率を上げることができます

また、電気主任技術者としての実務経験の有無について、求人票にはっきりと記載されていない場合があります。この場合、求人票の業務内容の欄をよく読んで何を求められているのかを十分に理解しましょう。

基本的に電気主任技術者に求められるスキルは、電気保安業務の管理監督です。あなたが電気保安業務をこなすことに加えて、組織として電気保安を実行させる能力を問われます

太陽光発電所の電気主任技術者に転職しようと考えるならば、以上を熟知して転職活動を行うことで転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。