エネルギー管理士資格は、省エネルギーや環境意識の高まりに連れ、重要度が増している資格です。さらに難易度が高く、取得すれば社内でも一目置かれる存在になれます。電気主任技術者試験に並んで、電気系の人気資格です。

あなたは、この難関資格取得を活かして、有利に転職活動を進めようと考えているのではないでしょうか。

しかし、エネルギー管理士が活躍できる業界は限られます。また、業界を間違えると、同じような職種であるにもかかわらず、年収が大きく違います。望まない転職にならないように、十分企業研究して転職活動を進める必要があります。

今回は、まずエネルギー管理士の有資格者が活躍できる分野(業界)を整理します。そのあと、エネルギー管理士の仕事内容と、各業界の年収について詳述します。

エネルギー管理士が有利に転職できる分野

エネルギー管理士の有資格者を求める求人を探す前に、エネルギー管理士資格がどのような性質の資格なのか整理しておきます。エネルギー管理士資格は、必置資格と呼ばれる資格です。

つまり、法令で定められた事業所は、エネルギー管理士の有資格者複数名をエネルギー管理者などとして選任し、経済産業局に届け出なければなりません。

その法令で定められた事業所は、製造業、電力供給業、熱供給業などを営む事業所で、消費するエネルギーが大きい事業所です。したがって、転職先もこのような業種の会社を探します。

参考に、下の写真は消費するエネルギーが大きいアンモニア工場を示します。

また、求人は転職サイトを使えば、比較的簡単に見つかります。大手転職サイトのdodaを使った検索した結果、下図のように236件の求人が見つかりました。そのほとんどが、製造業の求人です。

検索の際、資格名を略して「エネ管」として検索すると極端にヒット数が減ります。正式名称の「エネルギー管理士」で検索すると、より多くの求人に出会える可能性が高まります。

工場(プラント)などの単独で大エネルギーを使う事業所

製造業などで大きな工場を持っている会社が、第一の狙い目です。製造業であれば、どんなものを作っていてもエネルギー管理士を求めている可能性があります。

私の身近に、製造業で働いた経験があり、エネルギー管理士資格を持っている人が3人(叔父、職場の同僚、学校の後輩)います。それぞれ、「大手食品メーカー」「製紙メーカー」「セメント工場」で働いた経験があります。

このように、製造業で一定規模の大きさの工場であれば、どこでも求人が出る可能性があります。下に、実際の求人例を2つ示します。

まず、大手総合化学メーカーの旭化成株式会社の求人です。下の求人では、「神奈川県川崎市」「静岡県富士市」「滋賀県守山市」「岡山県倉敷市」「大分県大分市」「宮崎県延岡市」の、いずれかの事業所で勤務することになります。

これで募集されているのは、プラント内の電気設備の保守管理です。したがって、電気主任技術者資格や、ほかの電気設備保守に関連する資格とともに「エネルギー管理士」資格が「歓迎条件」として挙げられています。

次に紹介するのは、京都府長岡京市に本社を置く電子デバイス大手メーカーの株式会社村田製作所です。この求人では、京都本社のほか、「福井県越前市」「島根県出雲市」の勤務者を募集しています。

この求人で採用されると、先程の旭化成株式会社と表現は違いますが、設備保守管理の仕事を担当します。ファシリティー設備とは、電気・機械・空調給排水設備を指します。

歓迎条件として、エネルギー管理士資格のほか、電気主任技術者資格を挙げていることからも電気系の設備を維持管理することがわかります。。

さらに丁寧に、「電気分野」「熱分野」のどちらでも問題ないことが謳われています。

・エネルギー管理士(熱分野)限定の求人は、機械系の求人が多い

エネルギー管理士資格は、過去の経緯から、試験が「電気分野」「熱分野」の2種類あります。結果として得られる免状は電気・熱の別はありませんが、一時的に発行される合格証に電気・熱の区別があります

以下、私の免状と合格証です。私は電気分野で取得したので、合格証には「電気分野」と記載されています。

求人で募集される場合、免状として効果が変わらないため、特にどちらと指定されていない場合がほとんどです。しかし、まれに分野を指定している場合があるので注意して下さい。

あなたは電気系で求人を探すなら、資格も「電気分野」で取得したのではないでしょうか。それなら、「熱分野」指定の求人は、申し込んでも何らかの制限がつくことが予想されます。

エネルギー管理士(熱分野)限定の求人例を下に示します。このような例は、あなたの求める求人ではありません。なぜなら、仕事内容が電気系ではないからです。

エネルギー管理士(熱分野)の資格を求める求人は、機械系の仕事であることが多いです。この求人では、「機械」と謳ってあるのでわかりやすいです。

「機械」と謳っていなくて、エネルギー管理士(熱分野)に限定していると、機械系求人の可能性が高いです。歓迎条件なら、エネルギー管理士(電気分野)資格を持っていても拒否されることはないですが、あなたの求める仕事と違う可能性があります。

ミスマッチを防ぐためにも、この点には十分注意して下さい。

製造業以外では、私が勤める電力プラントなどの、エネルギーを供給する事業者が該当します。例えば、下図の株式会社ガスアンドパワーの求人です。

株式会社ガスアンドパワーは、大阪ガス株式会社が電力事業を行うために100%出資して設立された会社です。大阪府のほか、愛知県、兵庫県などに発電所があり、この求人ではまず大阪府大阪市で勤務することになります。

このような会社は、電気供給業としてエネルギー管理士の有資格者を社内に置いておかなければいけません。したがって、エネルギー管理士資格を持っていると歓迎されます。

また発電所を自社内に持っているのは、電力事業者だけではありません。電力の販売だけを生業としている会社だけでなく、自社生産工場に安定して電力を供給するために発電所を持っている事業者も含まれます。

これは厳密には製造業の会社ですが、仕事の内容は電力供給業と変わりません。その例が、下の三菱ケミカル株式会社の求人です。

三菱ケミカル株式会社の事業所は全国にありますが、この求人では岡山県倉敷市の求人です。工場内に発電所を持っている事業所は、ほかにも富山県、茨城県、福岡県などにあり、同様の求人が出る可能性はあります。

私は転職活動のときに、同社へ電気技術職として応募したことがあります。社内では就職氷河期世代(1995~2005年新卒世代)が不足しており、その年齢層で実力のある人を、特に欲していると教えてくれたのを覚えています。

エネルギー管理士資格は、実力を証明するのに十分な資格です。採用試験などで、大いにアピールすれば採用されやすくなります。

工場(プラント)の求人は、以上に類似する求人を探すとよいです。

ホテルチェーンなどでも必要だが、求人は少ない

エネルギー管理士が必要となる事業者には、ホテルチェーンや大病院などの事業者が挙げられます。このような事業者は、エネルギー管理企画推進者やエネルギー管理員としてエネルギー管理士の有資格者を選任する必要があり、求人が出る可能性があります

私が調べたところ、以下のような求人がありました。これは、オリックス株式会社の100%子会社である、クロスホテルズ株式会社の求人です。本社は東京ですが、大阪での募集です。

施設管理だけでなく、「マネージャー」とも記載があるので、将来的に法で定める「エネルギー管理企画推進者」に選任される可能性があります。

エネルギー管理企画推進者は、事業所のエネルギー管理について実務トップとして部下の指導にあたります。したがって、エネルギー管理の実務に加えて、指導力や管理力が求められます。

このような業種の求人は、製造業や電気供給業の求人より数が少ないです。さらに、子会社の設備管理会社に資格者の選任も含めて、全て委託していることもあります。

製造業以外では、このような設備管理の仕事が選択肢に入ります。

企業からエネルギー管理を受託するコンサルタント

エネルギー管理士は、工場勤めだけが選択肢ではありません。実際に社内で省エネルギーの活動をしているといっても、数ある業務の中の一つでしかありません。

そうなると、省エネルギーの専門家に管理は委託しようと考えるのは自然な考え方です。そのような、企業から省エネルギーに関する業務を専門的に請け負う会社も、転職の選択肢になります

このような会社自体に、エネルギー管理士の選任義務はありませんが、専門家としての説得力を増すためにも資格は大切です。

この求人例が、以下のIBJL東芝リース株式会社です。

この会社は、東芝グループの総合力を生かして、主に自治体相手に省エネ提案・実施する事業を行っています。本業はリース業で全国展開していますが、このESCO事業に関してはまだ規模が小さく、東京で勤務することになります。

この求人の仕事の内容は、ここまで紹介してきた企業と若干趣が異なり、省エネルギー診断業務です。設備管理はしませんが、設備の省エネ改善を提案します。したがって、省エネルギーに関する国家的なお墨付きである、エネルギー管理士資格が必須とされています。

このような求人は、エネルギー管理士資格を持っていることが前提であることが多いです。

エネルギー管理士の仕事内容

あなたが、エネルギー管理士資格をアピールして転職活動を行うということは、相手企業も、あなたに対してエネルギー管理士としての仕事を期待します。もし、あなたにエネルギー管理者選任経験がなかったとしても同じです。

エネルギー管理士の取り組むべき仕事を熟知しておくことで、面接官を強く信頼させることができます。

所轄官庁への許可申請・届出

エネルギー管理士は、省エネ法に基づいて、様々な許可申請・届出を自主的に行わなければなりません。申請先は経済産業省配下の各地方経済産業局です。これは東北なら仙台、九州なら福岡など、各地の代表都市10都市です。

この申請方法はすべて法令に定められていますので、それに従って行います。これは経済産業局が教えてくれるものではありません。あなたが法令を読み込み、適切な書類を作成し、然るべきときに、自発的に行うものです。

「提出の時期が遅れた」「提出しなかった」としても、すぐにはバレません。しかし、そのうちバレます。悪質な場合には、エネルギー管理士資格を剥奪されることもあります。事業所として、行政処分されることもあります。

あなたはエネルギー管理士として、省エネ関係法令に精通してこのような業務を行うことを期待されています。省エネ法以外でも行政に申請・届出をすることが得意ならば、資格に加えて大きな強みとなります。

日々の取り組み(設備管理・設備保全)

省エネ法が事業者に求めるものは、中長期的に年平均1%の省エネです。これは、「事務所の電灯をこまめに消す」といった取り組みでは絶対に達成できません。

具体的には、機器のエネルギー消費状態を常に監視して、適切な省エネ設備の新規導入、モーター制御方式の最適化などを行います。これらには大規模な予算を立て機器を設置したり、工事したりして省エネ目標達成を目指します。

例えば、下の写真のような送風機では、かつてダンパーの開閉による風量制御を行っていました。しかし、現在ではインバーターでファンの回転を制御することで、風量調整するのが一般的です。

このような送風機の省エネ改善には、「ダンバーの取り外し」「インバーターの取り付け」といった機器設置および工事が発生します。

また、設備の省エネ運用をするために、「エネルギー管理標準」を定めることが法令で定められています。稼働中の工場などに勤めるときは、すでにエネルギー管理標準が定められているはずなので、それに従って設備管理・運転します。

エネルギー管理標準は、エネルギーの使用量を最小に抑えて生産を行うために定めるものです。これは、時間の経過とともに省エネ目標を達成するために修正・変更しなければなりません。

修正・変更には設備・機器に関する深い技術的知識が必要です。また、設備保全に関する手続きを熟知していることも求められます。

このようなことから、転職先と同様の設備の保守経験があると、重宝されます。

エネルギー管理士の年収は業界で大きく違う

それでは、エネルギー管理士の有資格者だと、どのような給料で迎えられるのでしょうか。ここまでで紹介した求人の年収例を、下表に示します。

上から「旭化成株式会社」「株式会社村田製作所」「株式会社ガスアンドパワー」「三菱ケミカル株式会社」「クロスホテルズ株式会社」「IBJL東芝リース株式会社」の提示年収です。

会社名 提示年収(万円) 業種(国税庁分類)
旭化成(株) 573
(例:404~840)
製造業
(株)村田製作所 375~840 製造業
(株)ガスアンドパワー 540~840 電気・ガス・水道業
三菱ケミカル(株) 430~750 製造業
クロスホテルズ(株) 400~500 宿泊業
IBJL東芝リース(株) 300~500 サービス業

これらの年収事例について、それぞれの求人票を参考に作成しています。例えば、以下は旭化成株式会社の求人票の年収欄です。

この提示年収が妥当かどうかは、業界の年収例とあわせて確認すると判断することができます。国税庁の民間給与実態統計を参考にすると良いです。

・製造業はやや高い年収を提示している

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

製造業は中央値が400~500万円付近で、紹介の3社は提示年収(573万円、375~840万円、430~750万円)は、中央値より高い傾向にあります。

・電気・ガス・水道業は標準的な年収

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

電気ガス水道業は中央値が700万円付近であり、提示年収(540~840万円)は少し低いか標準的です。しかし、将来的な高年収を期待できます。

・宿泊・飲食業は、業界内では高い年収を提示している

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

宿泊・飲食業は、中央値が100~200万円です。紹介した企業は提示年収が400~500万円であり、製造業3者に比べると見劣りします。しかし、業界内では十分に高い提示年収です。したがって、今後の年収アップも狙いにくいです。

・サービス業も業界内では高い年収を提示している

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

最後に、サービス業は、中央値が200~300万円です。紹介した会社は300~500万円と年収を提示しており、これも業界内では高い方といえます。ただし、宿泊・飲食業よりは、高年収者が多いです。つまり、宿泊・飲食業より将来の年収の伸びを期待できます。

このように、転職活動に提示された年収が妥当かどうかは、政府統計を使って判断すると良いです。

エネルギー管理士資格を活かして転職するときは、多くの場合、設備管理系の仕事をします。しかし、業界が違うと年収が大きく変わることに注意する必要があります

まとめ

エネルギー管理士資格を活かして転職活動を進めるとき、転職サイトで「エネルギー管理士」をキーワードに検索すれば容易に求人を見つけることができます

第一の選択肢になるのは、製造業や電力供給業を行っている企業です。これらの企業からの求人は多数出ています。これは、エネルギー管理士の有資格者を1~4人、社内に置くことが定められているからです。

そのほかの選択肢として、ホテルチェーンや小売チェーン、コンサルタント職でも募集がかけられていることがあります。しかし、求人数は少ないです。

エネルギー管理士としての仕事は、経済産業省への許可申請・届出のほか、日々のエネルギー管理(設備のエネルギー消費監視・管理など)があります。これらの業務を知悉しておくことで、面接などで説得力を持ったアピールをすることが可能です。

エネルギー管理士が活躍できる業界の年収は、国税庁の民間給与実態統計調査が参考になります。この調査結果と、求人の提示年収を比べることで、その金額が妥当かどうかを判断することができます。

これにより、年収の面で転職失敗を防ぐことができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。