50代以上の転職理由は、若い人と違って、違う分野で活躍したいというよりは、「家庭の都合で今の仕事を離れざるを得なかった」「早期退職に引っかかった」「給与が伸び悩んだ」など外部要因が多いのではないでしょうか。
つまり、「今の職種が嫌い」なのではなく、「仕方なしに」または「正当に評価してほしい」から転職したいのではないでしょうか。
これらの理由で、あなたが50代以上になって転職活動するとき、転職を成功させるには必要な考え方があります。35歳を超えると求人の数は減り、闇雲に求人に応募しても良い結果は得られません。
ここでは、中高年のベテラン・シニアになって電気系の転職で成功するために、まず「経験に裏打ちされた知識技能の活かし方」と「求人例」を示します。そして、「転職サイトの活用方法」と「年齢制限の考え方」について解説します。
もくじ
中高年のベテラン・シニアが電気系の転職で成功するには、同じ分野に転職すると成功しやすい
電気の仕事の分野は多く分けて、「工事」「保守」「設計」の分野に分けることができます。
「工事」分野は、新しく電気設備を設置したり、運用している設備を修繕したり、取り替えたりする仕事です。
「保守」分野は、設置されている電気設備が故障しないように管理する仕事です。また、故障したときは応急処置をする仕事でもあります。
「設計」分野は、電気機器や付随する配線等を計画・製作する仕事です。場合によっては、現地で据え付けまで行います。
このほかに「積算」や「企画」と言われる仕事もあります。しかし、これらは「工事」を発注するための「積算」だったり、中長期「保守」計画のための「企画」だったりするので、上記3分野の関連業務と考えることができます。
そして、転職を考えるとき、一旦この「工事」「保守」「設計」の分野のどこにあなたの強みがあるのかを把握してください。なぜなら、中高年のベテラン・シニアになって転職をしようとするとき、活躍できる転職先は限られてきいるためです。
求人数が多い分野に応募することで、転職が成功しやすくなります。求人数の多い分野は、「工事」と「保守」です。
あなたは、長年電気の分野で活躍してきたのですから、十分な経験や資格を持っているはずです。そこで、「工事」と「保守」の分野に焦点を当てて、あなたの経験・資格を活かせるような求人に応募すると良いです。
しかし、「設計」の分野で中高年OKの求人は非常に少ないです。運悪く求人が見つからなかった場合は、「工事」「保守」の分野で仕事を探すことになります。
とはいえ、心配は無用です。あなたが「設計」分野で仕事をしてきたとしても、開発や機器製作を主に担当してきたのなら、その経験は「保守」分野に活かせます。また、現場の機器据え付けなどに従事してきたのなら、その経験は「工事」分野に活かせます。
ベテラン・シニアの転職は、以上のような考えに基づき進めていきます。
持っている経験・資格と求人
それでは、実際の求人例と、求められている経験・資格をみていきましょう。
「工事」:電気工事士資格や電気工事施工管理技士資格が活かせる
最初に、「工事」分野について説明します。
工事分野では、これまでの仕事で使ってきた電気工事士資格や電気工事施工管理技士資格が活かせます。下の図は、都内に本社のある電気工事施工管理を中心に行っている会社の求人情報です。これは、「対象となる方」の欄です。
この会社は、東京都内で主に公官庁から電気工事の発注を受けて施工する会社です。電気工事施工管理技士資格と現場代理人の実務経験があれば応募できます。また同じ求人のPR欄に、下図のように「70代でも現役で活躍」と記載があります。
この会社は、従業員30人ほどの小さな会社です。しかし、大企業のような定年の規定がないため、長く働くことができます。図にある「最後の転職先」とは、「働けなくなるまで働くことができる」という意味です。
ただし、60歳からの電気工事士や施工管理技士の現場の仕事は、体力的にきついことが多いです。今までデスクワーク中心だった人は、その点十分注意しておく必要があります。
また、「設計」分野のうち、客先の現場で機器据え付けや調整を行ってきたのなら、この図のような求人を探すと良いです。仕事の内容が似ているので、経験があると判断されやすいです。
私が鉄道会社で新規路線の変電工事に携わっていたとき知り合った人の中には、もともとメーカーに勤めていて、転職して施工管理をするようになったという人が何人かいました。「設計」分野の経験を、「工事」分野で活かせる良い例です。
「保守」:電気主任技術者資格が活かせる
次に「保守」分野について説明します。
「保守」分野は、始めるときには資格はいらないものの、長年仕事をしているうちに様々な資格を取らされたはずです。その中でも電気主任技術者の資格を取得していると、大きな強みになります。
下図は、電気保安協会の求人の「対象となる方」の欄です。
電気保安協会の求人は、比較的高頻度で出ている求人です。それだけ、電気主任技術者資格を持った人が不足していると言えます。
特にこの求人は、資格だけでなく実務経験も必要です。試験ではなく、実務認定で電気主任技術者資格を取得しているのなら、問題なく応募できる求人です。
さらに年齢についても、下図のように60代以上も活躍している会社です。
私が以前勤めていた鉄道会社では、在職中に実務認定で電気主任技術者資格を申請・取得し、55歳の早期退職で電気保安協会に転職した人が何人もいます。保守を長く仕事としてきたなら、これほどの適職はありません。
電気主任技術者資格を取得していないのであれば、今勤めている会社に在職中に申請して取得してしまいしょう。よく「第3種電気主任技術者試験は実務認定では取れない」という噂を聞きますが、そんな事はありません。
私の元上司は、50歳を過ぎてから認定で第3種電気主任技術者資格を実務認定で取得しています。所轄の産業保安監督部に何度か足を運ぶ必要と、書類を適切に揃える必要がありますが、それさえできれば1~2ヶ月で実務認定取得できます。
一方「設計」の仕事をしてきた場合、「保守」のための資格である電気主任技術者資格を取得していないこともあるでしょう。そのようなときには、まずは下図のような資格不要の求人を当たることになります。
この求人は東日本を中心に、委託を受けている電気設備のメンテナンスをする会社のものです。
私の経験では、「設計」に携わっていると、「保守」とは比較にならないほどの電気の知見を持つことができます。その知見は、「保守」の分野で活きてきます。
特に今まで「設計」してきた機器なら、熟知しているはずです。保守の現場では、資格はなくても設備の知識が重宝されます。これまで設計に携わってきた機器が使われている分野に応募すると、転職が成功しやすくなります。
転職サイトの求人情報を探そう
実際に求人を探す段階になったとき、どのように探したら良いでしょうか。求人を探す方法は、主に以下のようなものがあります。
- 転職サイトで探す
- ハローワークで探す
- 新聞や広告に掲載されている求人を探す
- 知人友人からの紹介を受ける
この中で、「新聞や広告に掲載されている求人を探す」のは、地域によって求人数が少なく、転職活動そのものが始められない可能性があります。
また、もし運良く希望する条件の求人に出会えたとしても、履歴書や職務経歴書の送付、面接のアポイントメントなど全て自分で行う必要があります。あなたが仕事を続けながら転職活動をするには、少し大変な思いをすることになります。
もう一つ、「知人友人から紹介を受ける」というやり方は、あまりに不確実です。たまたま知人友人から紹介を受けることができれば、その会社を受けることは問題ありませんが、それだけを頼るべきではありません。
以上のことから、ここでは「転職サイトで探す」「ハローワークで探す」の2つに絞って解説します。
・転職サイト
最初に、転職サイトのメリットから説明します。転職サイトのメリットには主に以下の4つがあります。
- 求人を出している会社の質がいい
- サイトの使い勝手(ユーザビリティー)がいい
- 電気系専門の転職サイトが存在する
- 非公開求人がある
まず、転職サイトに求人を出すには、企業は相当額を報酬として支払わなくてはなりません。よく、「採用が決まった人の年収額の1割」と言われています。したがって、転職サイトに求人を出せるのは、報酬を払えるだけの体力のある企業です。
また、転職サイトの方がハローワークのサイトより使い勝手が良いです。
下図は、ある転職サイトのフリーワード検索の画面です。
一番左の枠に、「電気工事」や「電気設備保全」などの気になるキーワードを入れて、一番右の緑の虫眼鏡ボタンをクリックするだけで、関連する求人情報が出てきます。しかも、これは転職サイトのトップページにあります。
対して、ハローワークのフリーワード検索の画面を下に示します。
ハローワークのフリーワード検索も、できることは転職サイトの検索と変わりません。少し字数が多いので煩雑に見えますが、反対に言うと丁寧とも言えます。しかし、決定的に違うのは、この画面はハローワークのトップページから3クリックしないとたどり着けません。
このように、「簡単に転職先の求人を探す」という観点から言うと、転職サイトに軍配が上がります。
そのほかにも、転職サイトの中には技術系の転職に特化したサイトがあります。このようなサイトでは、電気系を含む技術系の求人情報が充実しています。また、転職エージェントにも技術系の転職の情報が集まっているので、その情報を教えてもらえるのは重宝します。
私が転職したときは、転職サイト3サイトとハローワークを利用しました。最終的に、技術系求人に特化した転職サイトを経由して転職に成功しました。担当してくれたのが、技術系に特化している転職エージェントで、話が通じやすく好印象でした。
最後に、非公開求人があることを記載しておきます。
非公開求人とは、主に転職エージェントを介してのみ、手に入れることができる求人情報です。これは、求人を出す企業側にとって、より適した人材を紹介される優位性があります。
非公開求人だと、企業は数多くの応募を集めることはできなくなりますが、より良い人材を紹介される可能性が高くなります。反対に転職者の立場から言うと、エージェントから紹介を受けた非公開求人は、第3者から見てより適合している求人と言えます。
以上のように、転職サイトにはハローワークよりも優れた4つのメリットがあります。
・ハローワーク
次に、ハローワークのメリットを記載します。ハローワークには、転職サイトにはない以下のメリットがあります。
- 規模が小さい地元の優良な企業が求人を出していることがある
これは、転職サイトに求人を出せない、または(意図的に)出さない優良な企業が求人を出している可能性があるということです。ただ、その求人があるかどうかは、そのときのタイミングによります。これを狙って待ち続けるのは現実的ではありません。
また、前述の転職サイトのメリットについて、ハローワークは全て及びません。
転職サイトに財務状態の悪い会社の求人は紛れようもないです。しかし、ハローワークは玉石混淆で、そういう会社も求人を出していることはあります。また、サイトの使い勝手は、上に示したように転職サイトが圧倒的に使いやすいです。
ハローワークは技術系の求人も扱いますが、それ専門というわけではありません。そして、公平に全ての求人を公開していますので、非公開求人はありません。
したがって、ハローワークを使って求人を探すときであっても、転職サイトも同時に利用して求人を探すとよいです。そうすると、よりたくさんのあなたに合った求人を得ることができます。
特に、高齢になればなるほど求人は見つかりにくくなります。さらに、自分の条件を考えると、転職活動が長丁場になることが多いです。したがって、様々な手段で求人を探すと転職に成功しやすくなります。
年齢制限の考え方~本当に中高年でも採用されるのか?~
それでは、実際の求人情報でどのように50代以上の求人を募集していることがわかるかを調べてみましょう。
求人に「年齢不問」と書かれていれば、何歳でも問題なく応募できます。しかし、私が調べてみたところ「年齢不問」と明示してある求人は少ないです。
では、「年齢不問」と書かれていない求人には、ベテランやシニアは応募できないのでしょうか。
実は、年齢について何も記載がなければ、何歳であっても応募できます。これは、法律(雇用対策法第10条)により、正当な理由なく年齢を制限して求人を出すことを禁止しているからです。
つまり、年齢制限して募集するときは、正当な理由を明示する必要があります。例えば、年齢制限がある求人では、以下のような記載があります。
- 50歳以下に限る。(長期キャリア形成のため)
- 定年が60歳のため、60歳以下に限る。
このような記載がなければ、何歳であってもその求人に応募できます。
しかし、ここで注意しておかないといけないのは、「年齢制限していない=何歳であっても採用している」わけではないことです。
一般に、「年齢不問とは書いていないけれども、どうせなら若い人がほしい」という企業は多いです。このような企業に応募するよりも、はじめからベテラン・シニアを採用してもいいと考えている企業に応募した方が転職は成功しやすくなります。
このようなベテラン・シニアの採用実績がある会社は、求人情報に特徴があります。あなたが転職で成功するには、この特徴を見つけることが重要です。
では、実際の求人情報にはどのように特徴が現れるのでしょうか。下の図は、神奈川県で交通インフラの電気工事をしている会社の求人です。
電気工事だけでなく、施工管理もしているので、電気工事士や電気設備施工管理技士の資格者を歓迎としています。この求人の、「給与例」の欄を見ると下図のように書かれています。
この図では、年収650万円の方は「入社5年目/50代」と記載されており、入社時の年齢は45歳から55歳であることがわかります。 また、次の図は、電気設備の設置施工を行っている愛知、東京、大阪に拠点のある会社の求人情報です。「対象となる方」の欄を示しています。
図のように、「電気工事施工管理技士」「第一種電気工事士資格」「現場管理の実務経験」のどれかが必須となっている求人です。長年経験を積んできたのであれば、難易度の高い条件ではありません。
この求人の、会社PRの欄には以下のように記載があります。
これには、「50代・60代以上の中途入社者も多数」いることが書かれています。このような求人なら、50歳以上で応募しても採用される可能性は十分にあります。
ただし、定年年齢に注意しておく必要があります。特に大手の場合、2018年現在60歳定年という規則になっていることが多いです。この場合、60歳以上で入社すると、契約社員としての採用になります。
60歳から契約社員として転職することも選択肢にする
法的に、契約社員とは雇用期間に定めのある社員のことを言い、それ以外は正社員と違いはありません。例えば、60歳で会社を定年になって、転職して契約社員で採用されたとします。この場合、1年ごとに契約を更新して働くことになります。
では、ずっと契約更改で70歳でも80歳でも働き続けられるのかというと、多くの場合5年の制限を設けている会社が多いです。これは、5年を超えて雇用期間に定めのある契約社員として雇用していると、無期(雇用期間の定めのない)の契約社員として雇用しなければならなくなるからです。
私が以前勤めていた鉄道会社でも、60歳定年で一度退職したあと、65歳まで契約社員として働いたのち、2回目の退職を迎える人が多くいました。65歳以上になったとき、さらに仕事を求めて子会社などで契約社員として働く例が多くありました。
また、今勤めている発電プラントでは、65歳で入社し、70歳まで勤める予定の方がいます。この方が以前勤めていた職場も発電プラントですが、今の発電プラントとは全く関係ありません。
この人は、電気事業法令に定められる電気主任技術者として長年勤務してきた経緯があり、その実績と資格を買われて今の会社に雇用が決まりました。
このような定年制度と以降の契約社員での雇用制度は、大企業ほど厳格に守られています。中小企業に目を向けると、定年制度がなかったり、あっても特例を重ねて事実上機能していなかったりします。
電気の業界ではベテランの資格と経験は、ほかに代えがたい価値があります。しかし、定年制などの規則で正社員での採用は難しい場合があります。そのため60歳定年以降は、契約社員としての働き方や中小企業で働くことも視野に入れると、転職しやすくなります。
まとめ
以上のように、50代以降のベテラン・シニアが電気系の転職を成功させるには、「工事」「保守」分野で進めるとよいです。ただし、自分の経歴を見直してどちらに向いているかは冷静に判断する必要があります。
あなたが現職で培った経験や、資格(電気工事士、電気工事施工管理技士、電気主任技術者など)は、転職先で必ず活きてきます。これらは、自分の得意分野が把握できていれば問題ありません。
実際に求人情報を探すときは、転職サイトを中心に様々な方法で探すことが重要です。
中高年OKの求人は条件が厳しく、転職活動は長丁場になると考えられます。そのため、いろいろな情報が、あなたのもとに入ってくるようにしておかなければなりません。
また、大企業や正社員にこだわらず、中小企業や契約社員での採用を視野に入れると、転職しやすくなります。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。