自動車業界は、日本を代表する産業です。自動車と自動車部品の市場規模を合わせると45兆円で、建設業界に次ぐ第2位の規模です。

自動車は極めて身近な製品であることから、あなたも自動車関係の仕事をしたいと考えたのではないでしょうか。

大きい産業だけあって、自動車業界の求人はたくさんあります。しかし、機械系の仕事を探すとき、自動車本体を扱いたいのか、それとも自動車に関わる仕事をしたいのかで、求人の探し方や求められるスキルが変わります。

今回は、まず自動車業界の職種について詳述します。そのあと、それぞれに求められるスキル、求人の実際、年収などを解説します。

自動車関係の機械職には技術職と技能職がある

まず絶対に抑えておきたいのは、機械の仕事には技術職と技能職があるということです。

機械の技術職は、機械製品の仕様・設計図を作れる人です。機械エンジニアともいいます。自動車なら、例えば「エンジンがなぜその位置にあるのか」、必要性を機械工学以外の観点からも説明でき、設計できる人です。

一方、技能職は、いうなれば職人のことです。先程の例でいうと、技能職はエンジンがそこにある理由は関知せず、「仕様どおりに取り付けられる・修理できる・製造できる人」を指します。

このような違いを認識した上で、転職先を決めましょう。

メーカーの研究開発・生産技術などの技術職

技術職の場合は、自動車本体を扱いたいのか、自動車に関わる仕事をしたいのかで探し方が変わってきます。それぞれについて、順に解説します。

・自動車本体を扱いたい場合は、自動車エンジニアに転職する

自動車エンジニアは、メーカー(自動車、自動車部品)の研究開発・設計・品証職が主な職域です。以下に、研究開発職の求人例を示します。

最初は、トヨタ自動車株式会社の研究開発職の求人票です。愛知県豊田市に本社を持つ、大手自動車メーカーです。知らない人はいないと思います。

この求人では、パワートレーンシステムと、それを支える各要素を新しく研究開発する職です。パワートレーンとは、エンジンやモーターの駆動力を車輪に伝える系統のことです。

同社は電動車(ハイブリッド車、電気自動車)の生産を増やす目標を掲げており、これは電動車にかかるパワートレーンシステムの研究開発職が担当します。したがって、「モーター」などの電気的な機械の研究を担当します。

次に紹介するのは、自動車関連企業のデンソー株式会社の研究職です。トヨタグループの一員ですが、トヨタ向けの自動車部品だけでなく、世界の自動車メーカーに向けて部品を供給しています。

この求人においても、電動車に関する開発設計職の募集をしています。電動車では、動力としての電動機(モーター)と電源を確保するための発電機(ジェネレーター)が要です。

電動機と発電機は電気で動作するものとはいえ、機械的要素が強く、純機械部品と接続されることから、機械的な設計知識が必須です。図に「熱、冷却設計」「強度、構造設計」とあるのは、機械的設計ができることを求めている証左です。

また、研究開発と聞くと、高学歴の人ばかりかというと、そうでもないといいます。高卒、短大・高専卒もいるとメーカーで研究職についている友人が教えてくれました。

ただし、このような学歴で研究職として採用されると、テクニシャン(研究職における技巧者、要は雑用)として使われることが多いです。

・自動車に関わる仕事は、生産技術職などもある

生産技術職とは、自動車本体に関する技術職ではなく、生産するための設備に関するエキスパートです。企業によっては、生産管理と呼ぶこともあります。

下の図は、三菱自動車工業株式会社の生産技術職の募集案件です。生産拠点は、愛知県、岡山県にあり、この求人では岡山県倉敷市で勤務します。

生産技術というのは、製品としての自動車の仕様に直接反映される仕事ではありません。例えば、「最高出力○○PS/kW」「燃費〇〇km/L」という仕様を実現するわけではないのです。

しかし、研究開発職が「この通りに作ればカタログスペックを満足する」として設計した通りに自動車を作る設備を開発・維持管理します。そして、常にコストを抑えて、品質よく、短時間で実現することを目指します。

さらに、技術維持・独自技術保護のため、生産ライン設備は自社開発されることが多いです。自動車そのものが自動車メーカー各社のオリジナルであるように、生産ラインも各社のオリジナルで、自動車業界を支える大切な仕事です。

もう1社、自動車部品メーカーの求人を紹介します。東京濾器株式会社は、自動車用フィルター生産を事業の中核にしています。神奈川県横浜市に本社を置き、広島県、滋賀県、山梨県に生産拠点があります。

この求人では、広島勤務でマフラー・触媒を生産する新規量産ラインを立ち上げることが最初のミッションです。

自動車設計は、すべてを自動車メーカーが担当しているわけではありません。一部は、東京濾器社のようなサプライヤーに外注していています。

この会社だと、排ガスが環境基準を満たすために肝心のマフラー・触媒を生産します。そして、生産技術職は、マフラー・触媒を作るための設備を新設・改善します。

このほか、さらに自動車とは縁遠い仕事として、発電所の運営というものもあります。下の写真は、単体の発電所ですが、似たような設備を持つ火力発電所の運営をしていることがあります。

これは、自動車工場は場所により、電源確保のために自前で発電所を設置しているからです。発電所を運転するには、発電所に関する技術が必要です。

下は、広島県広島市に本社のあるマツダ株式会社の求人です。これは本社工場にある、火力発電所を維持管理する技術職を募集しています。

私が探したときには、マツダ以外の火力発電所の求人はありませんでした。しかし、国内自動車メーカーで「本田技研工業(ホンダ)」「スズキ株式会社」は発電事業者として、経産省資源ネルギー庁に登録されています。つまり、同様の求人が出る可能性はあります。

火力発電所と聞いて、電気設備ばかりではないかと考えているなら杞憂です。火力発電所の9割が、機械設備で構成されています。機械技術者の独壇場ともいえます。

概ね機械の技術職は、このような職種を探すと良いです。

ディーラーや工場の技能職

技能職を言い換えると、「〇〇工」と呼ばれる職種です。つまり、修理工などを指します。

この職種が募集されるのは、ディーラーなどがあります。下の写真はSUBARU(スバル)のディーラーです。あなたも自動車を所有しているならお世話になったことがあるのではないでしょうか。

下記の求人は、トヨタのディーラーのトヨタカローラ千葉株式会社の求人です。この会社は、千葉県全域が事業領域です。

ディーラーは、自動車メーカーの保守部門が独立採算で運営している会社といえます。したがって、自動車の保守・修理・車検が仕事の中心です。

このような自動車を整備する仕事は、全国に求人があり数も多く転職しやすいです。大手転職サイトにも、下図のように1つの区分としてまとめられているので、それを重点的に探すと良いです。

技能職では、このような求人を探すとよいです。

転職を有利に進める資格・スキル

ここからは、自動車業界の機械職に転職するために必要な資格やスキルについて解説します。

技術職に必要な資格はない

技術職に必要な資格はありません。特に研究・開発職には資格で推し量ることができる能力では無いものを求められるため、資格は必要ないといえます。

これは、自動車メーカー研究職の友人も言っていたことです。

一方、設計や生産技術、発電所では「3DCAD」「エネルギー管理士資格」「公害防止管理者資格」などが求められている場合があります。

これらの職では、機械要素を3DCADで解析する場合があるため、3DCAD(CAE)経験を求めていることがあります。

下図は、上でも紹介した三菱自動車工業株式会社の求人です。求める方の欄を抜粋しています。

必須条件として、生産技術業務の経験を挙げているほか、歓迎条件としてCATIA(ハイエンド3DCAD)の操作経験を挙げています。

また、工場では電力などのエネルギーを使って自動車を生産します。規定以上のエネルギーを使う事業所(工場)では、エネルギー管理士を置くことが、法令により求められています。

下記は、日産自動車株式会社の求人です。栃木県にある工場内の機械設備を保守する仕事の求人です。

大規模な事業所では、年に数%のエネルギー消費改善努力義務が法令により定められています。

この求人では、その義務を実現するための機械エンジニアを募集しています。したがって、資源エネルギー庁が省エネに関して技術的担保をしているエネルギー管理士資格者を歓迎しています。

さらに、環境中に排ガス・排水・振動・騒音などを放出する事業所では、公害防止管理者を置き、放出状況を監視・制御する義務があります。

これらから、「エネルギー管理士資格」「公害防止管理者資格」を持っていると重宝されます。

火力発電所の技術者を募集していた、マツダの求人には下図ように記載があります。エネルギー管理士資格、公害防止管理者資格が必要とされている事がわかります。

ただしこれらの資格は、難易度が高く専門的で、簡単に取得できるものではありません。今、保有しているなら大いにアピールすべきですが、持っていないときでも転職を優先することをおすすめします。

取得に時間を費やしている間に、望んだ求人が無くなる可能性が高いです。無資格で採用試験を受けるときは、「今年の試験に申し込んだ」「目下勉強中である」ことを伝えると良いです。

技能職には自動車整備士資格が必須とされることがある

技能職(整備士)の場合、「自動車整備士資格」などが求められている求人があります。

自動車整備の求人として紹介した、トヨタカローラ千葉株式会社の求人を下に示します。

普通自動車免許が必須のほか、自動車整備士3級以上の方を歓迎としています。ディーラーなど自動車整備事業者は、自動車整備士を一定数雇用しておく義務があります。したがって、現在当該資格を保有しているなら歓迎されます。

ただし、必ずしも事業所の全員が整備士資格を保有している必要はないため、あなたが整備士資格を保有していないとしても採用される可能性は十分にあります。また、整備士資格は、学歴などにより実務経験が必要で、簡単に取得できない場合があります。

これも、気になった求人があるなら、資格のことは考えずに、まずは応募してみることが転職成功する秘訣です。

法令遵守の考え方は厳しい

これは、自動車メーカーに勤める友人と話していて、気づいたことです。私用で話をしていたにもかかわらず、法的な規制について、やけに厳密でした。

あなたの身の回りで、特に酒席で、そこまで厳密に話す人はいますか? もちろん仕事上は厳密に守っていたとしても、あまり厳しい法律・規制だとつい愚痴も出るのではないでしょうか。

不思議に感じたので、確認してみました。すると以下のような回答を得ました。

自動車は、それ自体が法規制の塊である。したがって、法令に沿っていないものは作れない。出荷前の検査にしても、法令に従って行っているものであり、「これくらい良いだろう」と安易に手抜きをされると、それだけで大問題になる。
だから、普段から法令遵守(コンプライアンス)について、厳しく指導される。

私は、これを聞いて納得しました。また、自動車業界は注目されやすい業界でもあります。少しの不祥事が、企業の存続に関わります。

したがって、真摯(しんし)に法令に向き合う姿勢が求められます

機械工学にとらわれない幅広い工学知識が必要

自動車が純粋に機械製品というのは、昔の話です。燃料をエンジン内に噴射する装置は、かつては純粋に機械で作られたキャブレターを用いていました。ところが、平成に入ってからは噴射量やタイミングを電子的に制御するFI(Fuel Infection)が主流になりました。

2010年代後半になると、さらに自動車の挙動を電気的に制御する割合は増えました。メーター周りを見ても、電気的・プログラム的に表示を作っているものばかりです。また、電気自動車が実用化されるなど、もはや電気やプログラムによる制御なしには自動車は動きません。

保守や修理の現場でも、機械だけでなく電気・情報の知識は必須になりつつあります。これは、生産技術の現場も同様です。自動車だけでなく、生産機械(ファクトリーオートメーション)でも電子化は進んでいます。

さらに、研究開発職では、材料(化学)の知識も必須です。2000年以降、純粋に機械工学(材料、機構、熱、流体、力学)だけで到達できるレベルは、行き着いてしまった状況です。これ以上の機械製品の効率改善、性能向上を望むには、機械工学以外からのアプローチが必要です。

自動車関係の転職に年齢制限はあるか

では、実際に転職するとき、年齢はどのように影響するのでしょうか。企業は採用に関して、表向き年齢制限をしてはいけないことになっています。(雇用対策法第10条)

また、正当な理由で年齢制限をするときは、その理由を明示しなければなりません。

以下は自動車修理の株式会社マエカワの求人です。大阪府吹田市に本社を置き、関西以外にも関東や九州にも事業展開しています。自動車電装部品の取り付け販売を主な事業としています。

この求人には、未経験だと35歳以下であることが求められています。「もうすぐ定年という人が未経験で応募されても困る」という企業側の気持ちもわかりますが、法律上は正当な理由なしに制限するのは禁止です。

したがって、「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から~」というように理由を明記しています。

しかしながら、ここまで紹介した求人には、年齢制限があるものは、この求人だけでした。年齢制限をしている求人は、少ないです。

ただし、企業からすれば、若い求職者を採用したがるのは自然な話です。採用時の年齢が若いほうが、長い間企業に貢献してくれる可能性が高いからです。

例えば、定年の規定が65歳なら、30歳で採用すると35年雇用できますが、40歳で採用すると、どう頑張っても25年しか雇用できません。

転職サイト運営会社が公開している情報を見ると、若年層の転職成功例が多いです。30代以上になると徐々に減り始め、40代では14%程度の成功率です。

これを見ても、年齢が低いほうが転職に有利なことがわかります。今、気になる求人があって転職しようかどうか迷っているのなら、受けるだけでも受けてみると良いです。悩んでいるうちに誕生日を迎えて年齢が上がると、それだけで不利になるかもしれません。

受けてみて、「その会社が合わない」と感じたら、内定が出ていたとしても辞退することは可能です。転職するかどうかは、採用内定が出てから決めても良いのです。

なお、完成車メーカーに勤める友人の話では、第二新卒に絞って採用をしている実態はないそうです。第二新卒(新卒で就職したあと、概ね3年以内の離職者)を、優遇も冷遇もしていないので、30歳前の経験のある20代と同様に扱うということでした。

つまり、あなたが新卒で働き始めて3年以上経過していても、20代であれば転職を有利に進めることができると考えられます。

自動車業界機械職の年収例

最後に、ここまで紹介した会社の年収がどの程度か確認します。

トヨタ自動車株式会社は、非公開でした。株式会社デンソーは「500~1200万円」、東京濾器株式会社は「340~550万円」が提示されています。

また、三菱自動車工業株式会社は下図のように400~800万円が提示されています。

同様に、マツダ株式会社、トヨタカローラ千葉株式会社、日産自動車株式会社、株式会社マエカワの提示年収をあわせて一覧表にまとめると、下表のとおりです。

職種 会社名 提示年収
(万円)
研究開発 トヨタ自動車(株) 非公開
研究開発 (株)デンソー 500~1200
生産技術 三菱自動車工業(株) 400~800
生産技術 東京濾器(株) 340~550
設備技術 マツダ(株) 400~800
整備 トヨタカローラ千葉(株) 460~
設備技術 日産自動車(株) 500~850
整備 (株)マエカワ 400

概ね技術職が、技能職より高給であるのがわかります。これは裏返せば、求められるものが高いということでもあります。技術職は技能職に比べて、シビアに成果を求められます。

また、参考までに国税庁が行っている、製造業の給与実態調査のグラフを紹介します。自動車製造業のみを扱った統計結果が存在しないため、そのほか多くの品目の製造業とあわせた実態です。

引用:平成29年民間給与実態統計調査(第8表)をグラフ化

これによると、中央値は400~500万円です。上の提示年収と比較すると、自動車業界は高い方に分類されます

ただし、実際の提示は個人によって違います。企業から提示された年収額が妥当かどうかは、政府統計などと比較するとよいです。それにより、金額面での失敗を防ぐことができます。

まとめ

自動車業界の機械系の仕事は、大きく分けて技術職と技能職があります。

技術職は、直接自動車にかかる研究・開発・設計職と、自動車を生産するための生産技術職があります。生産技術にも、生産ライン設備を扱うものから、電源や工場内の機械(空調、給水そのほか)を扱うものまで様々です。

技能職は、自動車の保守を担う、自動車ディーラーなどでの整備職が一般的です。

これらの仕事につくために、必須の資格はありません。「3DCAD」「エネルギー管理士資格」「公害防止管理者資格」「自動車整備士」などは、求人で求めていて、あなたが保有しているなら大いにアピールすると良いです。

そのほか、自動車にも電気・情報分野の知識は必須の時代になりました。電気・情報分野の知識を習得しておくと、大きな強みになります。

また、法令遵守(コンプライアンス)に関する考え方が厳しいことを覚悟しておきましょう。法令遵守は、自動車産業を支える基本思想です。

自動車業界の求人は、年齢制限をしていることは少なく、ほかの製造業より年収は高めを提示されることが多いです。

これらの情報を吟味して転職活動をすることにより、満足行く転職ができるようになります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。