電気通信工事に興味を持ったあなたは、いまいち何をする仕事なのか見えていないのではないでしょうか。

通信工事だけを行っている会社は少なく、電気工事とあわせて事業として行っているところが多数です。

実は、電気工事と通信工事は明確に違います。工事に携わるために取得しておかなければならない資格も違います。通信工事に就きたいのなら、通信工事が何なのかを把握しておくべきです。

しかし、電気工事との類似性もあります。扱うものは違えど、似通った作業をすることも多いです。

さらに、通信工事で扱う通信設備は電気で動きます。そのため、通信設備に電力を送る電気工事も同時に行うことがあり、両者の違いが余計に分かりづらくなっています。

ここでは、電気工事と対比しながら通信工事の仕事内容や今後の見通しに触れ、必要となる資格、実際の求人・年収について解説します。

電気通信工事の仕事内容と将来性

電気通信工事と電気工事は、何が違うのでしょうか。

電気工事は、家庭やオフィスなどで使う電力を送るための電気工作物を設置します。家庭なら、新しいコンセントや電灯を設置する工事が該当します。

電気通信工事は、データを送る配線や情報端末を設置するものです。下の図のような、光ケーブル、LANケーブルなどの配線や、電話、パソコンなどの情報端末を設置する工事が該当します。

引用:財団法人日本データ通信協会 電気通信国家試験センター「工事担任者資格パンフレット」より

かつては、情報機器というと電話くらいしかありませんでした。しかしインターネットが爆発的に普及したことにより、2000年代になって需要が伸び続けている業種です。

ただ、家庭で通信工事をしているイメージは無いと思います。上の図でいうと、家庭内の通信工事はピンク色で示されている部分です。この部分は、家庭用だと下の写真のようにモジュラージャックが設けられる事が多く、素人でも扱えるようになっているからです。

また、下の写真は電話のモジュラージャックコンセントです。電話線は上のRJ-45端子によく似た、RJ-11端子を使います。

これらのモジュラージャックは無資格の一般人でも扱うことができます。

一方、専門家として通信工事をするときは、インターネット網からONUまでの配線や機器設置をしたり、配線のプラクを作ったりします。

一般家庭では、古い住宅などで新しく光回線でインターネットを契約するときなどに、通信工事のお世話になることもあります。しかし、携帯電話などの無線通信が普及して、それさえもイメージしにくい人もいるでしょう。

このような状況もあり、通信工事が活躍している場面は、一般家庭なら新築工事で、普段はオフィスや店舗などです。

一般家庭の新築工事では、家庭内ネットワークを標準で施工することも増えてきました。オフィスや店舗は、新設・修理・撤去など多くの場面で施工することがあります。

また、情報化社会が進むに連れて通信工事の職域は増える一方です

あなたの身の回りを、思い浮かべてみてください。1990年代の中頃までは、家庭にある情報通信機器といえば電話かFAXくらいしかなかったはずです。それから30年も経たないうちに、一人一台携帯電話を持つことは当たり前の世の中になりました。

この状況を支えているのは、通信工事です。今後、全ての電化製品がWEBにつながる時代になります。通信工事の重要性が、ますます高まることは必定です。

通信工事は、電気工事と類似する作業もある

通信工事は、電気工事と扱う物が明確に違うものの、作業は似たようなものがあります。例えば、配線を敷設する作業や、通信盤を設置する作業などです。

下の写真は、オフィスで使うパソコンを社内ネットワークにつなげるための機器をまとめて収納しておくサーバーラックを設置する前の状況です。

サーバーラックとは、以下の写真のようなものです。ネットワークラックやシステムラックとも呼ばれます。あなたも、職場に設置してあるのを見たことがあるのではないでしょうか。

引用:日東工業株式会社商品紹介ページより

このサーバーラックの中に、スイッチングHUBやONU、NASなどを設置することが多いです。最初の写真の、黒い枠は架台で、この架台の上にサーバーラックを据え付けます。

スイッチングHUBなどはネットワーク機器ですから、その設置は通信工事の範疇(はんちゅう)となります。つまり、架台の写真から伸びているブルーのケーブルはLANケーブルで、通信工事で施工することになります。

このとき、ケーブルはフリーアクセスフロアの下に配線します。フリーアクセスフロアとは、下図のように建物の躯体の床から少し浮かした床板を敷き詰めることによって、配線を踏むことなく自由に配置できる構造をいいます。

サーバーラックからは、赤い線で示したようにLANケーブルなどを自由に敷設することができます。LANケーブルだけでなく、電源線も同様に敷設します。パソコンやIP電話など、LANケーブルや電源が必要な場所で、敷き詰めた床板から上に引き出します。

このフリーアクセスフロアは、OA機器の普及に伴い、一般の事務所にも広まりました。この普及により、電源線や通信線を足や椅子で踏んで断線させることがなくなり、机などの配置もより自由になりました。

このような配線作業は、電気工事と行う作業は同じです。どこからどこまで配線するかを決めて、あとはフリーアクセスフロア下や壁裏、天井裏を通して敷設します。

また、屋外においては、ケーブルピットやケーブル配管を使うこともあります。これも電気工事と類似した作業です。

さらに、ネットワーク機器も電気製品であり、電源も同時に用意しないといけない場面はたくさんあります。そのときは、電気工事も同時に行うことになります。

そのため、電気通信工事業と電気工事業を両方共事業として行っている会社は多数あります。

電気通信工事に必要な資格は工事担任者資格

電気通信工事には、「電気通信工事の工事担任者資格」が必要になります

私がWEBで確認したところ、「電気通信工事士」というキーワードで資格を探しているのを見かけました。しかし、「電気通信工事士」という資格は存在しません。あったとしても何の価値もない資格です。

法律で電気通信工事に携わるのに必要と定められているのは、「電気通信工事の工事担任者資格」です。これは略して、「工事担任者(工担)」とも呼ばれます。求人票などに書かれているのも、工事担任者です。間違えないようにしてください。

工事担任者資格は、下の写真のような免許証が発行される国家資格です。


この工事担任者資格には、取り扱える通信設備の種類によって大きくAI種とDD種があります。また、両方の区分の設備を扱える総合種もあります。それぞれの種類の扱える設備の範囲は、下表に示すとおりです。

 

種類 扱える通信設備
AI
(1種~3種)
アナログ伝送路設備に端末設備を接続するための工事及び総合デジタル通信用設備に端末設備を接続するための工事。
DD
(1種~3種)
デジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事。ただし、総合デジタル通信用設備に端末設備等を接続するための工事を除く。
総合種 アナログ伝送路設備またはデジタル伝送路設備に端末設備等を接続するための工事

表の「アナログ伝送路設備」とは、銅線で接続する電話回線のことです。「総合デジタル通信用設備」とは、ISDN設備のことです。つまり、AI種で扱えるのは、有線の電話回線といえます。ただしIP電話は除きます。

「デジタル伝送路設備」とはインターネットに接続する回線設備のことです。IP電話はインターネットを経由した電話なので、デジタル伝送路設備になります。こちらはDD種で扱うことができます。

最後に、総合種はAI1種とDD1種で扱える伝送路設備を全て扱うことができます。

私の勤め先に、新しく電話・インターネット回線を引くということで、NTT社から技術員が現地調査に来たときに、この資格について訊いたことがあります。

NTT社(技術員)では、「工事担任者総合種資格」の取得を求められるということでした。

一方、NTT社のような通信事業者でなく情報機器の据え付けを主に行う会社では、資格の考え方も変わります。私が以前勤めていた鉄道会社で付き合いのあった、三菱電機社の機器を扱うある会社では、電気工事士資格を先に取得させるといっていました。

その会社では、通信工事と電気工事は同時に行うことがあり、事故が起きたときに影響の大きい電気工事の資格を先に取得させるということでした。

電気工事では施工不良を起こすと、火事になったり、感電させて人を殺したりすることがあります。しかし、通信工事では人が死ぬような災害は、電気工事に比べて起きにくいです。そのため、電気工事士資格の優先度が高いのです。

工事担任者資格は、転職時に持っていなくても採用されることはよくあります。求人を見ても、工事担任者を必須としている案件はわずかです。ただし、入社してから工事担任者の資格取得を求められることは、覚悟しておく必要があります。

そのほか、電気工事では施工後の機能確認を電圧の有無で確認することがほとんどですが、通信工事は受信レベルの確認、情報電文の確認など、論理的な確認になります。通信線がつながっていても、通信ができないと工事完了にはなりません。

これは通信工事の特殊なところで、目で確認することができないところを理詰めで追っていきます。頭の中で概念図を思い浮かべながら仕事を進めていくことが必須ですので、これが苦手な人にはきつい仕事といえます。

求人と年収の実例

では、実際の求人はどのようなものがあるのでしょうか。ここからは実際の求人を例に解説します。

最初は、東京で主に住宅の工事を行っている住宅環境設備株式会社の求人です。下に、この会社の仕事内容の欄を示します。

業務一覧にあるように、一般住宅の新築工事で電気関係の設備を一手に引き受けて施工しています。その中に、電気通信工事であるLANや電話回線の敷設が入っています。

対象となる人は、下の図のように電気工事の実務経験がある方となっています。しかし、年数不問ですので、敷居は低いです。

さらに、工事担任者の資格は優遇条件となっています。そのため、必ずしも資格を有していなくても入社することができます。

次に紹介するのは、株式会社フォーバルの求人です。この会社は、オフィスのインフラとしての通信設備(電話・FAX・複合機・LANなど)を設置・撤去工事したり、保守したりすることが主な仕事です。

下は、この求人の対象となる方の欄です。

この求人は通信機器設置工事経験がある方となっており、先ほどの案件より少し敷居が高いです。

歓迎条件として、工事担任者の資格が挙げられています。先ほどの住宅環境設備株式会社より、求める資格が上位なのは、低圧電力だけでなく高圧電力もあるオフィスの仕事をしているからだと考えられます。

電気通信工事に転職を考えるときは、このような求人を中心に探すことになります。

通信工事の年収ボリュームゾーンは200万円台

最後に、通信工事の年収について説明します。これは厚生労働省が行っている、賃金構造基本統計調査を参考にしました。下がそのグラフです。

引用 : 令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

この統計調査では、通信工事のみを対象としたものではなく、電気工事も対象としていることに注意が必要です。しかし、求人例で示したように、電気工事と通信工事は同時に行われることも多々あり、参考値として示します。

これによると、200~400万円が年収のボリュームゾーンとなっています。

ちなみに先ほど紹介した、二つの求人の給料は以下のとおりです。上が住宅環境設備株式会社のもの、下が株式会社フォーバルのものです。

住宅設備環境株式会社は、ボーナスが年間2ヶ月分だと仮定して、未経験者で年収は336万円ほどです。株式会社フォーバルの年収は、300~450万円ほどであることが明記されています。

どちらも、統計のボリュームゾーンよりやや上振れしています。転職サイトで通信工事の求人を探すときは、このくらいの年収ゾーンで探すことが多くなります

まとめ

電気通信工事は、電話・LANなどの電気通信設備を敷設する工事です。電気工事とは違うものです。しかし共通する作業や同時に行うことが多々あり、一企業が事業として両方行っていることもあります。

また、情報化社会を支えているのは電気通信設備であり、その設置・保守などを担う通信工事はなくなることはないといえます。

通信工事に携わるには、「電気通信の工事担任者」という国家資格が必要です。「電気通信工事士」という資格はありません。

この資格は、転職時に必ず求められるものではありません。多くの場合、歓迎条件や優遇条件としてあり、所持していなくても採用されることはあります。

通信工事の年収のボリュームゾーンは、200万円台です。転職サイトに掲載されている求人は、ボリュームゾーンより上振れした300万円台以上の求人が多いです。転職時には、このような求人から探すことになります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。