電気主任技術者試験は難関資格として知られており、電気を扱う業界の中でも評価の高い資格です。苦労して取得したこの資格を活かして、高年収を得ようと考えるのは当然です。

では、実際のところ電気主任技術者の有資格者の年収はどの程度なのでしょうか。また、法令に求められる電気主任技術者として選任された場合、そうでない場合で年収は変わってくるのでしょうか。

転職するにあたって年収は大きなファクターで、良い条件が見込めると転職活動にも身が入ります。また、実際の年収相場を十分に把握しておくことで満足できる転職を叶えることができます

ここでは、電気主任技術者の年収例、選任される場合とそうでない場合の違い、業種を変えて年収をアップする方法について詳述します。

電気主任技術者の年収を求人から読み取る

早速、実際の求人では電気主任技術者はどのくらいの提示年収で求人が出されているのかを確認してみます。大手転職サイトのdodaで、職種にキーワード「電気主任技術者」が含まれている求人を検索すると、60件の求人がヒットしました。

そのうち最初に紹介するのは、車載用半導体を製造している外資系企業の株式会社ジェイデバイスです。下の求人によると、福岡の工場で第2種電気主任技術者として選任されて勤めることで、500~625万円の年収が提示されています。

次に紹介するのは、青森県で風力発電事業を行っている森山ディーゼル株式会社の求人です。東北電力管内で33kVに連携している風力発電所を運営しており、第3種電気主任技術者として選任される求人です。この求人では、400万円以上の年収が提示されています。

なお風力発電所の場合、連携する送電線を持っている電力会社により、22kV~66kVで送り出しています。そのため、第3種または第2種電気主任技術者を選任する必要があります。

三番目に紹介するのは、株式会社LIXILの求人です。この求人では、第2種または第3種電気主任技術者必須の求人です。400~700万円の年収が提示されているのがわかります。

なおLIXIL社の求人には、広島県尾道市の工場で6.6kV受電設備を保安担当するとあります。6.6kVだと、第三種電気主任技術者を選任すれば十分なので、最低でも第三種電気主任技術者資格を持っていれば応募できます。ただし、同じ求人の中に「場合によって転勤あり」「第二種電気主任技術者有資格者」とあります。これは、今後50kV以上で受電する工場に転勤がある可能性を示しています。

以上3社の年収を業種・必要資格ともに整理すると、下表になります。

会社名 提示年収[万円] 必要資格 業種
(株)ジェイデバイス 500~625 電験2種 製造業(電子機器)
森山ディーゼル(株) 400~ 電験3種 電気業
(株)LIXIL 400~700 電験2種 or 電験3種 建設業

このように求人を調査すると、転職して電気主任技術者になる場合、概ね400~650万円の年収が提示されていることが多いです。

電気主任技術者選任前提で年収アップを狙うのは難しい

しかしながら、電気主任技術者の年収を知る上で理解しておかないといけないことがあります。実は、電気主任技術者として選任される前提の求人は数が少ないです。

なぜかというと、電気主任技術者は対象の事業を行う上で必ず選任しなければならず、すでに事業を行っている会社ではあなたが電気主任技術者に選任される前に、もう選任された電気主任技術者がいるからです。したがって、すでに対象の事業を行っている会社ではポストの空き待ちになります。

ポストの空き待ちとは、具体的には「すでに選任されている電気主任技術者の退職」「新規の対象事業所の建設」などです。

前任の電気主任技術者の退職は、会社側が様々な手を使って阻止しようとします。定年を迎えても、契約社員(シニア社員)制度を利用して、なんとか慰留させようとします。それでもだめなら、子会社から逆出向させることもあります。

また、新規対象事業所の建設では、わざわざ外部から電気主任技術者を採用することはまずありません。最初に行うのは、社内で資格者が複数いる事業所から、資格者を異動させることです。下の図では、新規事業所が建設されやすいショッピングセンターを例に示しています。頻度は落ちるものの、工場でも同じです。

これは、私が以前勤めていた鉄道会社でも全く同様です。第1種電気主任技術者を置く必要のある会社だったので、なかなか資格者が育っていない状況でした。そこで、若手社員を認定で資格取得させるまでの間、一度定年して子会社に出向した社員を逆出向で戻したり、シニア社員制度を拡大解釈して残したりしていました。

電気主任技術者がいないと、列車を動かすことができないので仕方ありません。背に腹は代えられない例外措置を連発していました。

このような事情があり、電気主任技術者選任前提の求人は出にくいです。あなたが、あくまで電気主任技術者に選任されることを目指すのであれば転職成功するのは困難であることを認識しておきましょう。

電気主任技術者に選任されない求人でも年収が高いものはある

では電気主任技術者に選任されないで、電験資格を活かして設備管理職などとして転職する場合の提示年収はどのくらいでしょうか。同じようにdodaで、経験・スキル欄にキーワード「電気主任技術者」がある求人を探してみます。これでヒットした求人は、770社ありました。

この内、設備管理職として募集されていた求人として、下図の東ソー株式会社の求人があります。三重県の工場で、設備管理職として働く求人で、500~1,000万円が提示されています。

東ソー社の求人の求める方の欄には、電気主任技術者資格は歓迎条件とされているだけです。

同様に、もう1件の求人を紹介します。島根県に拠点を持つ株式会社出雲村田製作所の求人で、下図のように提示年収は400~700万円です。事業所内で新しい建屋を建設するプロジェクトに携わり、そのあと建設した施設の電気設備管理を担当する職種です。

出雲村田製作所社の求人においても、電気主任技術者資格は下図のように第2種電気主任技術者または第3種電気主任技術者が歓迎条件とされているだけです。

このように、電気主任技術者として選任されない求人であっても、選任が前提の求人と同じ水準で年収が提示されています。これらの求人の年収も、業種・歓迎資格とともに整理すると下表になります。

会社名 提示年収[万円] 歓迎資格 業種
東ソー(株) 500~1,000 電験 製造業(化学)
(株)出雲村田製作所 400~700 電験2種・3種 製造業(電子機器)

これを見ても、電気主任技術者選任の前提の求人と提示年収があまり変わりません。電気主任技術者資格を取得したからと言って、選任されることを前提に転職しなくても、同等の年収は提示されています。あなたが現職からの年収アップを目指すならば、まず電験有資格者歓迎の設備管理職を中心に転職活動してみるほうが、転職成功しやすくなります

役職が就くことで将来的に年収アップしやすい

なお、電気主任技術者の選任手当は数千〜数万円を提示しているところが多く、資格を持っているだけでもらえる資格手当は数千円程度が多いです。同業種同職種で転職した場合は、(数千円〜数万円)×12ヶ月が年収増になると考えておきましょう。

もちろん会社の業績・方針によって上下します。ちなみに私が以前勤めていた鉄道会社では、下の写真のような超高圧(写真は220kV受電)の変電所を持っているため第一種電気主任技術者を選任する必要があり、資格取得を強く促しています。

それなのに、第一種電気主任技術者資格〜第三種電気主任技術者資格のいずれを取得しても、取得するだけでは資格手当は支給されません。選任手当は一般職だと支給されるという話ですが、管理職しか選任されず、管理職には選任手当はないので実質ゼロです。

しかし、管理職になれば40代で年収1,000万円を軽く超えてきます。その管理職への登用条件に第1種電気主任技術者資格取得があります。一般職だと40代でも年収600〜800万円なので、大きな差と言えます。

このように、同じ会社に勤め続けて電気主任技術者資格を取得してすぐに収入の大幅増に結びつけるのは難しいです。しかしながら、上位職への登用条件となっていることがあり、長い目でみて収入増が狙えます。

もちろん、あなたが受ける会社で電気主任技術者資格を持っているとどのようにステップアップするのかを事前に確認しておく必要はあります。

私が転職活動をしていたときは、転職エージェントを通して先方企業に聞くと同時に、面接で訪ねてみたことがあります。例えば財閥系大手化学メーカーは、将来的な管理職登用もあるということでした。

このような管理職登用が見込める会社なら、すぐに電気主任技術者に選任されなくても将来的な年収増を見込むことができます

大幅年収アップは年収の高い業種に転職する

では、すぐに大幅年収増を狙う方法はないのでしょうか。実は、あなたが今勤める会社の業種によりますが、大幅に年収増を実現しやすい方法があります。それは、他業種同職種に転職する方法です

電気主任技術者資格が必要な職種は、設備管理や電気保安です。これらの職種を求める業種はたくさんあります。この年収アップの方法は、業種年収が高い業界に設備管理・電気保安職として転職する方法です。

実際に私はこの方法で転職し、収入アップを果たしました。私の場合は「陸運業(鉄道)→電力業」への転職です。下が鉄道会社に勤めていたときの基本給です。月収が27.5万円で、いろいろ手当がついて年収だと32歳で600万円弱でした。

次に示すのが、現在勤める電力プラント会社の給与明細です。月収が36.2万円で、これは残業手当がたくさんついて年収で言うと750万円くらいありました。1年で150万円程度の年収増を実現したのです。

私は第2種電気主任技術者資格を取得しており、どちらの会社でも選任されていません。それでもこれくらいの年収増が実現できるのです。

しかも、仕事の内容は設備が変わるだけでほとんど同じです。設備管理の仕事は、基本的に「検査(点検)」「分析・評価」「対策検討」「対策実施」のサイクルを回し続ける仕事です。電気保安の仕事は、この検査の部分で法令に沿った検査・点検と届出・認可が加わった仕事です。会社が変わったとしても、設備さえ覚えてしまえば違和感なく仕事をすることができます。

この方法を実現しやすのは、あなたが今年収の低い業種の会社に勤めている場合です。下のグラフは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、電気主任技術者資格が活かせる業種の平均年収をグラフ化したものです。橙色がエネルギー業、緑色が鉄道業、黄色がビルメンテナンス業、青色が製造業を示しています。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

あなたが、このグラフの年収の低い業種の会社に勤めているなら、より平均年収の高い業種へ転職することで年収増を実現しやすくなります。求人を探すときは、グラフの高年収の企業を積極的に探しましょう。転職エージェントサービスを使って、非公開求人を探すことも重要です。これにより、転職での収入増を成功させやすくなります。

まとめ

電気主任技術者の有資格者を募集する求人の年収は様々です。そして実際に探してみると、電気主任技術者に選任前提の求人は少ないことがわかります。

選任される電気主任技術者は、ある程度上位の職であることが求められます。その分、一般職より年収も高めであることが多いです。しかし、企業は電気主任技術者を外部から調達することは少なく、求人も少ないです。

しかし、電気主任技術者資格を保有している設備管理職としてなら、比較的たくさんの求人があります。将来的に電気主任技術者に選任を目指すこともできるので、提示年収の高い設備管理職に転職するのも有効な手段です。

対象者は限られるものの、電気主任技術者を必要としている他業種に転職することで大幅な年収アップもできます。この場合も選任前提でなくても構いません。エネルギーや石油、化学業などの年収の高い業種の設備管理職に絞って転職活動をすることで、電気主任技術者資格を活かしつつ、高年収を得やすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。