電気主任技術者資格は、電気業界で評価の高い資格です。国内の求人なら、たくさん募集されています。

一方、企業の事業活動の世界的な広がりにより、海外で勤務することに注目が集まっています。世界的な視座を持てることや異文化に触れられることなど、海外勤務の魅力は様々です。

では、海外で働く場合に電気主任技術者資格はどのように評価されるのでしょうか? また、国内と同じように電気主任技術者資格を持っていることで、海外で働く求人で有利に転職活動を進めることができるのでしょうか?

ここでは、これらの疑問に答えるために「電気主任技術者資格が海外で通用するか」「海外勤務のある企業への電験資格活用方法」について解説します。

電気主任技術者資格は海外では通用するのか?

電気主任技術者(電験)資格は、日本において電気事業法に根拠がある資格です。高圧以上の電気工作物を置く事業者に対して、適切に電気工作物を管理監督するために、電気主任技術者として選任するための資格です。

電気事業法は、日本の事業者を縛る法律です。海外で電気関係の仕事をする場合は、現地の法律に従う必要があります。例えばアメリカだと、PE(Professional Engineer)やEC(Electrical Contractor)といった資格を新たに取得する必要があります。

資格の中には国際的なライセンスもあります。しかし、電気主任技術者資格は国際ライセンスに該当しません。したがって、海外で資格の必要な仕事に就く場合は、改めて現地の資格を取得する必要があります。

まずは、電気主任技術者資格が国際的に意味を持たない資格であるということを理解しておきましょう。

選任されると海外出張も制約される

もちろん、国内に拠点を持つ会社の場合は、電気主任技術者資格を活かして転職することは可能です。この場合、国内の工場などで働きながら、チャンスを狙って海外プロジェクトなどに応募することで、海外で働くことを叶えられます。

ただし、注意しないといけないのは、電気主任技術者に選任されると身動きしにくくなるということです。

従業員の中から事業所の電気主任技術者として選任する場合、下図のように経産省の「電気主任技術者制度に関するQ&A」で常時勤務(1日8時間、週40時間勤務)を原則としています。また、夜間や休日などでも事故や故障に対応できる体制を維持することが求められます。

引用 : 電気主任技術者制度に関するQ&A(経産省)より

つまり、「3ヶ月ほど出張して、海外の新規プロジェクトを担当する」というような働き方も大きく制限されます。このとき、ほかの電気主任技術者有資格者を選任する方法がありますが、それはほかに電験有資格者がいればできる方法です。

このように、電気主任技術者と海外で働くことは両立が難しいことは承知しておかなくてはなりません。

海外事業に積極的な企業に電気の技術力を示して転職

いくら電気主任技術者資格を活かして海外で働くことが難しいといっても、アプローチを変えると海外で働く求人を見つけることができます。それは、「あなたの電気技術力を担保するものとして電験資格をアピールする」ことを考えると見つけられます。

電験資格は、法令で定める電気主任技術者に選任するための資格です。ただ、その難易度の高さや知名度から、一定の電気の技術力を担保する資格としても用いられます。

ただし、海外のみで事業展開している企業は、電験資格の価値について認知していないと考えられます。したがって対象になるのは、国内に事業拠点があって海外に事業展開をしている会社です。

例えば建設業では、建設や設計の業務に電気主任技術者資格は必要ありません。しかし、下図の株式会社フジタの求人では、第三種電気主任技術者資格が歓迎条件と記載されています。

フジタ社は、ダイワハウスグループのゼネコンです。国内では、下の写真に示す埼玉県大宮市の大宮ソニックシティビルなどの大型物件を建設しています。また、海外ではメキシコでマツダの自動車工場を手掛けるなど、東南アジア・中南米で事業展開しています。

この求人では、施工管理職として活躍する人材を求めています。施工管理とは、建設工事の安全・品質・工期・コストを適正に采配する仕事です。施工管理に、電験資格は法令上必要ありません。

しかし、電気設備の施工管理をするので、電気の技術力があればより高いレベルで施工管理をすることができます。したがって、歓迎条件として電験三種資格を求めていると考えられます。

そして、下図のように勤務地が国外になる可能性を求人票に謳っています。

なお、海外勤務がすぐに実現されるのかどうかは、採用試験などを通して確認する必要があります。ある会社に、海外勤務の可能性について訊いたところ、「海外勤務は社内で人気なので順番待ちだ」と言われたことがあります。

すぐに海外勤務を実現したいなら、採用試験までには海外勤務の可能性について確認しておくと時間を有効に使えます。直接企業に確認することもできますが、訊きにくい場合は転職エージェントなどを介して訊いても良いです。

同じ建設業の求人をもう一つ、下図に大成建設株式会社の求人を示します。この求人では、設備設計を行う職種です。大成建設社はスーパーゼネコンとして、海外、特に東南アジア・中東での実績が多い会社です。

この求人では、第1種~第3種のうちどれかの電気主任技術者資格を持っていることが、必須条件の1つとして挙げられています。

実は、私はスーパーゼネコンに転職を打診されたことがあります。これは、私が第2種電気主任技術者資格を持っているので、設備設計の技術職で働かないかということでした。

結局断ったものの、なぜこのような話が来たのか疑問だったので、紹介してくれた人に訊いてみた内容を以下に書きます。

ゼネコンが電気主任技術者の有資格者を求めているのは、電気の技術者が社内に少ないからだ。

というのは、ゼネコンというと建築・土木を専門にしている新卒や転職者は多いものの、電気の技術者はなかなか転職してこないからだ。

現代の建設業で電気と全く無関係でいることはできません。例えば、電気の引き込みで電力会社や行政と折衝することがあります。また、建築物の中に効果的に電気設備を配置し、安全に使えるように設計する仕事もあります。

そのような理由から、ゼネコンで電気技術者が求められるのです。

そして、設備設計と言っても事務仕事ばかりではありません。現場に赴いて、数値や図面だけでは表せない諸々の条件を確認することが必要です。したがって、下図のように海外案件では海外に赴任して仕事をすることもあります。

建設業のほかには、海外に生産拠点を持つ製造業でも海外勤務の可能性があります。例えば、下図の味の素冷凍食品株式会社では、日本全国の拠点のほか海外への転勤があることを求人票に謳っています。ちなみに味の素冷凍食品社の海外製造拠点はアジアが中心です。

そして、この求人の応募条件として下図のように、電気保全の実務経験のほか資格条件として「電験2種または電験3種」資格を持っていることを歓迎条件としています。

この求人で求めている人材は、工場での生産技術・生産管理に携わる人材です。工場の電気保安人材を求めているわけではないので、すぐに電気主任技術者に選任されることは考えにくいです。

もちろん、将来的に電気主任技術者に選任される可能性は十分にあります。応募・採用過程を通して、「海外勤務の希望が通るのか」「将来的な電気主任技術者選任の可能性」など、明確にしておくと、ミスマッチを防ぐことに繋がります。

電気主任技術者資格を活かして海外勤務を実現するには、ここで紹介したような建設業の設計や施工管理、製造業の仕事が選択肢になります。

語学力を求めるかは企業次第

海外勤務で気になるのは、語学力です。語学力がある分には問題ないのですが、語学力に自身のない人は求人でどのように扱われるのでしょうか。

求人の実例を示すと、下図に示すコスモ石油株式会社の求人では、必須条件に「日常会話レベルの英語力」とあります。

この求人は、アラブ首長国連邦の現地スタッフを率いて、原油出荷施設で設備管理・保全業務を行うことのできる人材を求めています。採用後すぐに海外に赴任し、設備管理の実務を行います。したがって、現地スタッフとのコミュニケーションを取れるだけの語学力を求めています。

ただし、あくまで設備管理・保全の仕事が主になるため、取り扱う設備の管理・保全に必要な電気技術は求められます。したがって、電験資格があれば電気の技術力が担保されるので、コスモ石油社の求人では電験資格が歓迎条件とされています。

実は、私はコスモ石油社の採用担当の方と話をしたことがあります。そのときは、まず国内の製油所で働くことが前提で、電気主任技術者資格と語学力について下記の内容を話しました。

Q.電気主任技術者資格を持っていて、コスモ石油社製油所で活躍できる職種はあるか。
A.製油所の中には、第1種電気主任技術者資格が必要な製油所もある。しかし、将来的に取得できるのであれば電験2種、3種を取得していれば評価する。電気系社員に取得してほしい資格として、「電気主任技術者」「エネルギー管理士」「公害防止管理者」の各資格取得を目標としている。したがって、これらの資格を持っていれば技術力ありとして評価する。Q.海外勤務はあるのか
A.希望すれば中東勤務がある。ただし、給料が国内勤務の倍になり人気が高いので順番待ちになる。大体3年で交代する。

Q.語学力に自身がないが問題ないか
A.電気の技術者として赴任するからには、一番大切なのは技術力だ。語学力は、現地に通訳もいるので心配ない。

Q.海外の電気設備に関わる仕事の特徴を教えてほしい
A.日本国内と違って電気関係の法令が整備されていない。したがって、好きなように設計できる自由度がある。ただし、法令による技術的な指針がないので、設備設計の妥当性を裏付けする電気の技術力がないと何もできない。

この話から、語学力について自信がなくても国内勤務を経由することで、海外勤務のチャンスがあることがわかります。

なお、先に紹介したフジタ社・大成建設社の求人において、語学力に関する記述はありませんでした。電気技術者として働くことから、まずは電気の技術力がアピールポイントです。ただし、コスモ石油社のような、直ぐに海外赴任する求人では語学力が求められることもあります。

しかし、世界のどこに赴任するかによって必要な言語は変わってきます。私が以前勤めていた鉄道会社では、ブラジルの鉄道建設に携わるため、選抜した社員に対してポルトガル語を教育してから赴任させていました。

語学力については会社それぞれの体制もあるので、どのような語学力を求められるのかは、転職活動を通して確認する必要があります。求人票に語学力について記載のない場合は、企業側と直接話をして疑問点を解消しておくと転職後のミスマッチを防ぐことができます。

まとめ

電気主任技術者資格を活かして海外勤務する求人に転職することができるかについて解説してきました。

まず、電気主任技術者資格は日本国内で通用する資格です。海外で働く場合、免状の効力はなく、当該の国で必要な電気の資格を取得しなければなりません。また、電気主任技術者として選任されると、海外勤務どころか海外出張に行くことも難しくなります。

したがって、電気主任技術者資格を活かすには、電気の技術レベルを担保するものとしてアピールしなければなりません

電気の技術レベルがあるとして評価する会社は、海外で事業展開している建設業や製造業にあります。このような会社で、電気の技術レベルが高いことをアピールする使い方なら電験資格が活用できます。

海外勤務を希望するのに、語学力が必要かどうかは会社によります。また、赴任する国・地域によって必要な言語が変わることに注意が必要です。

なお、電気技術者として働く以上、電気の技術力が一番重要で、語学力はそれを補うものです。採用試験では、電気の技術力や設備・工事に関する知見を示すことで転職成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。