社会インフラとして重要な位置づけにある空港は、さまざまな電気設備があります。電気なしでは空港の運営・航空機の運行は不可能です。したがって、空港の電気技術職の求人は必ずあります。電気設備がある限り、電気技術者の求人はかならずあるのです。

しかし、社会インフラを支える仕事であるため、仕事には独特の緊張感が伴います。あらかじめ十分に仕事内容を承知しておかないと、思わぬミスマッチを惹き起こすことがあります。また、空港で働く電気技術職の求人は少なく、探すのに工夫と根気が必要です。

ここでは、空港で働く電気技術職の「求人の探し方」「仕事内容」「有利な資格」「年収」について詳述します。

NAAといった空港を運営する会社を探すのが基本

空港で電気技術職として転職するときには、まずは空港運営会社を探します。JAL(日本航空)やANA(全日空)と言った航空会社は、株主として空港運営に関わっていたりグランドスタッフとして採用していたりしますが、自社で空港常駐の電気技術職を採用していません。

空港には様々な電気設備があります。例えば下の写真に写っているものだけでも、照明、ムービングサイドウォーク、ファザード、店舗用電源などたくさんあります。これらの管理は、空港運営会社が行っています。

日本に空港は約100箇所あります。そのほとんどが、空港設備は国や地方自治体が設置・管理して、空港ターミナルビルの運営は会社が運営しています。そして空港ターミナルビルの運営会社は、株を国や自治体と民間企業が出資して設立されていることが多いです。

また、成田国際空港(成田空港)、中部国際空港(セントレア空港)、関西国際空港(関空)、大阪国際空港(伊丹空港)の4空港は、空港全体を会社が運営しています。例えば成田空港だと、成田国際空港株式会社(Narita International Airport Corporation; NAA)が運営会社です。

これらの状況から、空港で電気技術者として働くには2つの道があることがわかります。1つは公務員として入職する方法と、もう1つは運営会社に転職する方法です。

ここでは、公務員で空港に務める方法は述べません。公務員試験に通って空港勤務を希望したとしても、空港勤務できるかどうかはわからないからです。ほぼ確実に狙った空港で働くことができる、空港運営会社(関連子会社含む)に転職する方法を解説します。

空港運営会社の求人を探すには、まず空港の運営会社の名前を把握しておくことが重要です。下に全国の空港の運営会社名をまとめていますので、必要に応じて参照してください。

全国の空港運営会社一覧表

この内よく求人が出ていて転職しやすいのは、東京国際空港、関西国際空港など規模の大きい空港の運営会社です。下の求人は、関西国際空港・大阪国際空港を運営している関西エアポートグループの関西エアポートテクニカルサービス株式会社の求人です。

この会社では、親会社である関西エアポート株式会社の電気技術職と協力して空港の電気設備を維持管理しています。親会社と違うのは、親会社からの発注以外で収入源を持たないため、設備に対する大規模長期的な予算権限を持たないことです。その分、電気の技術面に注力して仕事をすることが出来ます。

空港の電気技術職は、これに類似した求人を探していくことになります。

空港の電気技術職の主な仕事は電気設備管理

では、具体的に空港の電気技術職の仕事はどのようなものでしょうか。一言でいえば、「電気設備管理」です。

下図は、成田国際空港株式会社(NAA)の求人です。「電気設備の保守」を行うと記載があります。「電気設備の保守」がここでいう電気設備管理のことです。

空港ターミナルの中には、先に説明したような低圧の需要設備(照明・店舗電源・ファザードなど)がたくさんあります。これらは基本的には事後保全なので、故障したのを見つけたり報告を受けたりしたら修理・交換します。会社によっては、時間管理をしていて点灯時間が規定時間を超えないように取り替えるといった予防保全をすることがあります。

一方、需要設備に電力を供給する受配電設備は、壊れてから行う事後保全では困ります。受配電設備が故障すると、1つの照明が消えるのではなく1区画全ての電気需要設備が使えなくなります。このような設備は、定期的に点検して故障の予兆を捉えながら故障する前に修理・取替を行う予防保全を行います。

例えば、下の写真のような配電用キュービクルは「目視点検を月1回、停電での詳細点検を年1回」などと定めて保全を行います。

そのほか、航空保安設備(航空無線設備・航空灯火などと非常用電源)の保全は、厳密に適正に行わなければなりません。故障すると大事故につながる可能性の高い設備ですので、保全には神経を使います。

私は空港と同じ社会インフラの電気保安設備をメンテナンス・工事する電気屋さんとして働いていたことがありますが、一般の電気設備をメンテナンスするときとは格段に緊張感が違います。電気保安設備の夜間作業のときは、作業が終わると緊張感が解けて途端に眠たくなったものでした。

しかし、この緊張感はやりがいの裏返しです。自分が社会インフラを支えているという、誇りを持って仕事をすることが出来ます。

空港の設備管理をするので電気主任技術者資格や電気工事士資格が有用

このような設備管理の仕事に転職するのに、有利な資格はあるのでしょうか。よく設備管理の仕事に求められる電気系の資格は「電気主任技術者(電験)」「電気工事施工管理技士」「電気工事士」ですが、空港に務める場合にも役立つのでしょうか。

実は、求人の中にはこれらの資格を条件として挙げている企業はあります。下図は、先に紹介した関西エアポートテクニカルサービス株式会社の求人です。この求人は、「電気工事施工管理技士資格」または「電気主任技術者資格」が必須条件として求められています。

また、下図は、双日・日本航空の資本が入ったJALUX(ジャルックス)グループの株式会社JALUXトラストの求人です。この求人で採用されると羽田オフィスか成田オフィスのどちらかで勤務します。この求人では、「電気工事施工管理技士資格」または「電気工事士資格」が求められています。

これらの資格は、電気設備管理や電気工事をするには必須といえる資格なので、求人票で求められていなくても十分アピールポイントになります。私が転職活動をしていたとき、電気工事会社には電験資格は直接必要ありませんが、採用試験時には電験有資格者であることを評価してもらい、給与面で最大限の評価をしてもらったことがあります。

なお、あなたがこれらの有資格者でない場合、転職前に資格取得を目指すべきではありません。後述しますが、空港の電気技術職の求人は少なく、資格取得に励んでいる間に求人自体が無くなる可能性が高いです。

資格を持たずとも、「次回の試験に応募した」などとして必須資格の取得意志をアピールできれば、資格必須の求人に応募し採用試験を通ることもあります。どのみち入社後資格取得は必須なので、アピールして損はないです。

このように、資格の有無に関わらず気になる求人があればすぐに応募するのが、転職活動を成功させる秘訣です。

空港の電気技術職の求人は少ないことを覚悟して探す

紹介したような空港運営会社の求人は、どれくらいの数があるのでしょうか。全国の空港運営会社を選ぶのに不自由しないのでしょうか。実際は、求人が出ている会社はごくわずかであることを承知しておきましょう。

試しに大手転職サイトで「空港 電気」をキーワードに探しても簡単にヒットしません。先に紹介した会社名をキーワードにするといくつかの会社がヒットします。

なぜこのような状況にあるかというと、空港のような設備は一度完成すると改修・増設を行わない限り、電気の仕事は増員するほど仕事がないからです。つまり、改修・増設のないローカル空港の求人は出にくいということです。実際、転職サイトに掲載されている求人は、羽田・成田・関空・伊丹など都市部の大空港ばかりでした。

なお、運営会社本体だけでなく、運営会社から工事発注を受けて空港専門で事業を行っている会社があります。下図は、前章でも説明した株式会社JALUXトラストの求人です。同社は空港運営会社ではなく、一部の業務委託を受けている会社です。

また、下図の求人はJALグループの株式会社エージーピーの求人です。この求人は、成田・羽田・関空・中部のどれかで勤務する求人です。日本全国で事業展開しているので、今後地方の求人が出る可能性はありますし、転職後希望すれば地方勤務もありえます。

このほか空港運営会社のグループ会社だと「〇〇ファシリティーズ」という社名をつけていることもあります。

このような求人は、どれも空港内で働く求人であり、類似の求人を探すことで転職できる可能性を高めることが出来ます

複数の転職サイトを使って非公開求人を探す

さらに多くの求人を探すならば、転職サイトのエージェントサービスに登録し非公開求人を紹介してもらうという方法が有力です。非公開求人とは、転職エージェントの紹介を通してのみ手に入れることができる求人です。

例えば大手転職サイトのマイナビエージェントでは、下図のように全求人のうち8割が非公開求人とされています。つまり、あなたがマイナビエージェントのサイトで検索することができる求人は、全体の2割ほどということです。

この非公開求人の割合は、大手転職サイトはどこも同じくらいです。

また、求人を扱っている企業は転職サイトごとに全く違います。したがって、特に「空港で働きたい」と言ったごく限られた業界の求人を探すには、複数の転職サイトに登録し転職エージェントから非公開求人を紹介してもらうことが転職成功への近道です。

さらに、私が転職エージェントサービスを使ったときに、疑問をぶつけてみると以下のような解答をくれました。

Q.非公開求人は、サービスに登録しただれにでも紹介しているのではないのか?

A.かつて(リーマンショック以前)はそのようなこともあった。しかし、企業側の要望に沿わない人材を送って信頼を失うことがあったため、今は転職エージェント側で企業の要望に沿うようなフィルタリングをして紹介している。転職エージェントの収入源は企業からの成功報酬なので、企業の意に沿わない人材紹介を続けると求人をくれなくなる。したがって、だれにでも求人を紹介するわけではない。

つまり、非公開求人は紹介してもらえた時点で、第三者(転職エージェント)の「その企業に適合人材」というお墨付きを得られます。このように転職エージェントサービスを利用すると、転職成功に導きやすくなります。

どのくらいの年収を提示されるか

最後に、気になる年収について解説します。ここで紹介した求人では、実際どのくらいの提示年収があるのでしょうか。

下図は、関西エアポートテクニカルサービス株式会社の求人票の提示年収欄です。400~620万円とあります。

同様に、そのほか3社の求人の年収欄をあわせて下表に示します。

会社名 年収[万円]
関西エアポートテクニカルサービス(株) 400~620
成田国際空港(株) 470~780
(株)JULUXトラスト 430~820
(株)エージーピー 430(25歳独身)

これらの年収を、仕事内容が近い職種であるビルメンテナンス業の年収と比較してみましょう。下のグラフがビルメンテナンス業の年齢ごとの平均年収です。

引用:令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をグラフ化

補足すると、空港ターミナルでは一般のビルと同様の電気設備・テナントを管理するので、ビルメンテナンス業と大きく違いはありません。空港施設の設備管理は設備が特殊というだけで、設備管理の考え方・保全サイクルは同じです。

それを踏まえた上で比較すると、ビルメンテナンス業の40~60歳の賃金が最も高い時期の年収額は400万円ほどであり、さきほどの表で示した空港の電気技術職として働くときの最低額(400万円程度)とほぼ同じです。つまり、空港の電気技術職でもらえる給料は、同様の職種の中ではかなり高いと言えます

まとめ

空港で電気技術職として働くには、空港運営会社の求人を探す必要があります。そして、空港運営会社での電気技術職の仕事内容は、主に電気設備管理です。空港という社会インフラを支える仕事ですので、神経を使う大変な仕事ですがやりがいの大きい仕事でもあります。

電気設備管理の仕事であるため、転職に有利に働く資格は「電気主任技術者」「電気工事士」などの資格です。これらの資格を持っていれば、採用試験時に大いにアピールすることが出来ます。

空港の電気技術職で働くと、年収は400~700万円程度を提示され、類似する職種と比べてかなり高い金額が期待できます

ただし、空港の電気技術職は求人数が少ないです。検索するときに会社名をキーワードにするなどの工夫と、辛抱強く探す根気が必要です。また運営会社だけでなく、運営会社から業務委託を受けている会社を探すと選択肢が広がります。さらに、転職エージェントサービスに登録し非公開求人を探すと希望する求人が見つかる確率は高くなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。