電気工事の実践を積んだ人が挑戦する資格に、第一種電気工事士資格があります。第一種電気工事士資格は試験の難易度が上がり、実務経験も必要になります。そして、工事できる電気工作物の範囲も広がるため、需要の高い資格といえます。

では、第一種電気工事士資格が必要とされている企業はどのような会社なのでしょうか? また、第一種電気工事士資格を持っていれば高年収を期待できるのでしょうか? 転職で成功するには、このような情報について事前に把握しておくことが必須です。

そして、多くの人が資格を取得したことにより、選択肢を狭めて転職しにくくなっています。第一種電気工事士資格の有資格者は、様々な事業領域で求められます。視野を広げることも転職成功への第一歩です。

ここでは、「第一種電気工事士の有資格者が必須の仕事」「建設業以外で資格が活かせる仕事」「電気工事士の年収の考え方」などについて詳しく解説します。

第1種電気工事士資格でプラント・大規模施設の工事ができる

第一種電気工事士資格を転職で活用するには、第一種電気工事士資格がないと困る仕事を探すのが第一歩です。

第一種電工資格は、高圧の自家用電気工作物を扱うために必須の資格です。高圧の自家用電気工作物は、工場、商業ビルなどに敷設されています。これらの企業を相手に、高圧の電気工事を行っている会社が第一選択肢になります。

下の写真は、大型居住施設の新設工事で、6.6kVの受電設備(腕金)を施工しているところです。

そして次の写真が、腕金に吊り下げられた気中開閉器(ASまたはPAS)です。

概ね気中開閉器までが自家用電気工作物であり、第一種電工が施工できる範囲です。

実際に、第一種電気工事士資格が応募条件に記載されている求人を確認してみましょう。下の株式会社ティーエムディーは、電気工事士を募集する求人で、第一種電気工事士資格を必須としています。ティーエムディー社は、東京・埼玉で大規模施設の新設工事などを請け負っている会社です。

ティーエムディー社は、学校、商業ビル、マンション、ホテルなどの施工実績があります。これらの施設は、高圧以上で受電することが多いため、第一種電気工事士資格がないと受電部を施工することができません。

したがって、同様の施設を施工する会社では第一種電気工事士資格が必須とされていることがあります。第一種電工資格を活かした求人は、このような大きな設備工事をしている会社を探すと見つけやすいです。

もちろん第2種電工の範囲の求人も応募できる

第一種電気工事士資格では、第二種電気工事士資格の範囲である低圧の電気工事もできます。下図にそれぞれの資格で施工できる範囲を示します。

つまり、第二種電気工事士資格しか必要がない低圧の電気工事を主体に行っている会社でも応募の範囲になります

例えば、下に示す朋友電気株式会社では、資格要件に最低限第二種電気工事士資格しか必要としていません。朋友電気社は、福岡で法人向けの低圧電気設備の工事をしている会社です。

第一種電気工事士資格は、取得するのに実務経験が必要な資格です。したがって、このような会社だと実務経験をアピールすることでより転職しやすくなります

実際、私の知り合いで第一種電工資格を持っている電気工事士の知人の中には、低圧工事ばかりをしている人もいます。低圧工事でも、実入りの良い仕事があります。会社がそういう仕事を中心にしているなら、高圧工事にこだわる必要はないということでした。

待遇が良いなど、「第一種電気工事士資格が条件になくても優れた求人」を見つけたときは、応募の選択肢に入れると良いです。

なお、事業の用に供する電気工作物を施工するのに資格は必要ありません。具体的には、下の写真のような電力会社の6.6kV配電線の工事のことを指します。

また、特別高圧(70kVを超える電圧)の電気工作物を施工する場合も資格は必要ありません。ただし、事業の用に供する電気工作物は、電力会社の基準が設けられています。その基準に、第一種電気工事士資格相当の知識・技能が求められます。

特別高圧の電気工事の場合も、同様に知識・技能が求められます。そのため、電気工事士資格を保有していることがアピールポイントになります。

例として下に示すのは、有限会社黒川電気商会の求人です。黒川電気商会は、石川県で北陸電力の高圧配電線工事を行っている会社です。

求人の中で、「外線」と記載があるのが「事業の用に供する電気工作物(高圧配電線)」のことです。第一種電気工事士資格が必須の仕事ではありませんが、電気工事士としての知識・技能が絶対に必要な仕事です。

「外線工事」というキーワードを見つけたら、資格条件に「第一種電工」の記載がなくても応募してみると良いです。

建設業以外では第一種電気工事士としての知見を求められる

ここまで、建設業の会社を紹介してきました。建設業の仕事は、電気工事士という職種で働く仕事になります。

しかし、電気工事士の知識・技能が活かせるのは、建設業ばかりではありません。実は、ほかの業種でも「第一種電気工事士資格」が求められることは多いです。

このような会社は、建設業のように電気工事を施工することが仕事ではありません。電気設備を維持・運用していくためには適切な電気工事が必要で、その電気工事を発注するための技術検討・設計・積算・選定・工事監督などを行います

これらの業務があるのが、「ユーザー企業の保全・エンジニアリング」「ビルメンテナンス」という職種です。これらについて、順に説明します。

ユーザー企業の保全・エンジニアリング

まず、ユーザー企業について説明します。ユーザーとは、「電気工事を発注する」と言う意味で用いています。このカテゴリに属するのは、製造業・エネルギー業・鉄道業・航空輸送業・情報通信業など様々な業種が該当します。

その中でも最もわかりやすいのは、生産工場を持つ製造業ではないでしょうか。現代の生産には、電力が必須です。電気の知識がある人は絶対に必要です。

例えば、下の三井金属鉱業株式会社では、「第一種電気工事士資格を持っていることが必須条件の一つ」として記載されています。三井金属鉱業社は、東京に本社がありますが、この求人は埼玉の総合研究所の設備を保全する職種を募集しています。

三井金属鉱業社の総合研究所は、6.6kVで受電しています。したがって、高圧も含めた電気設備が施設内にあります。第一種電気工事士資格を保有していれば、「高圧の電気設備の知識・技能がある」ことを担保できるので、必須条件の一つとして記載されていると考えられます。

なお、三井金属鉱業社の工場では、下の写真のように特別高圧(77kVなど)で受電している工場もあります。写真は三井金属鉱業竹原工場の受電部です。

工場からの求人がでていれば、このような特別高圧の電気設備を含めて、工場全体の電気設備を保全していくことになります。ここでも第一種電気工事士資格に担保される知識・技能が役立ちます

私がかつて働いていた鉄道の電気設備保全職では、電気工事士から転職してきた人も働いていました。工事とは勝手が違うので、はじめは戸惑うことも多かったといいます。しかし、慣れたあとは新卒入社より仕事のできる人として活躍しています。

このようなユーザー企業に転職する方法は、業種と職種が変わり、転職直後の負荷が大きくなりがちです。しかし電気工事士の場合は、保全に求められる深い知識・経験をすでに有しているため、比較的速く仕事に慣れやすいです。

ビルメンテナンスでも電気工事士資格は活かせる

次に、ビルメンテナンス職について説明します。

ビルメンテナンスは、大型ビル・大型商業施設・マンション・病院などで設備を管理する仕事です。仕事の内容は、先に説明したユーザー企業の保全・エンジニアリングの仕事内容とよく似ています。

違う点は、「照明・空調・給排水設備など一般的な設備を幅広く扱う点」「テナントのお客さんの相手をする点」です。

例えば、ビルなどを訪れたとき、下の写真のような「防災センター」を見たことはないでしょうか?

このような場所やバックオフィスで待機し、設備故障やテナントからの要請があったときに対応します。工場などと違って、対象とする設備が専門的な設備ではないところが大きく違う点です。

ビルメンテナンスの求人例として、下に示す株式会社アール・エス・シーの求人を示します。この求人では、電気工事士(一種または二種)資格を持っていることが必須条件に挙げられています。アール・エス・シー社は、この求人で神奈川県の大型商業ビルで働く電気設備管理スタッフを募集しています。

私は、東京駅の駅設備をメンテナンスしていたことがあります。駅ビルはビルメンテナンスの会社が管理しますが、鉄道輸送に直接関わる駅設備に関しては鉄道会社の電気保全員が対応します。仕事の内容は、ビルメンテナンスと変わりません。

その経験からすると、日々の仕事のほとんどがテナント(私の場合は、駅係員)からの照明・灯具の交換依頼です。

ただ、東京駅のような大規模施設だと受電は特別高圧(22kV)で、構内の主要配電所まで高圧(6.6kV)で送ります。この高圧配電設備の老朽取替や、設備の大幅改修などで工事設計・発注業務を行うことがあります。同じことは、高圧以上で受電している設備全般に言えます。

高圧以上の設備を老朽取替・改修すると、工期は数ヶ月から数年におよびます。このような大規模工事があれば、第一種電気工事士資格を持っていると大変重宝されます。資格と資格に伴う知識・技能を存分に活かせるチャンスです。

反対に、今ある設備を淡々と保守していくだけのビルメンテナンスだと、第一種電工資格を持っていても活かす場面はあまりないと考えられます。

どのような働き方が良いか、よく考えた上で転職活動をするとミスマッチを防ぐことができます。

なおユーザー企業の保全職やビルメンテナンス職は、「施設管理」「設備管理」という名称でも募集されています。転職サイトなどで求人検索をするときは複数のキーワードで探すと、優れた求人を見つけやすくなります。

年収1000万円を目指すなら電気工事士のままでは辛い

最後に電気工事士の年収について解説します。第一種電気工事士資格を持って転職をすれば、年収1000万円も夢ではないのでしょうか?

これには信頼のおけるデータが示されています。下のグラフは、厚生労働省が調査・発表している賃金構造基本統計調査における電気工(電気工事士)の年収分布をグラフ化したものです。ボリュームゾーンが200~300万円であることがわかります。そして、電気工の平均年収は250万円ほどです。

 

引用 : 令和元年賃金基本構造統計調査(厚生労働省)をグラフ化

さらに、電気工の年収上限を見ると「700~800万円」までしかデータがありません。このことから、会社に勤めながら電気工事士として年収1000万円以上を得るのは、極めて難しいことがわかります。

一方、同じ賃金構造基本統計調査で、電気工事が含まれる設備工事業の年齢別平均年収が公開されています。下のグラフは、その調査結果をグラフ化したものです。

引用 : 令和元年賃金基本構造統計調査(厚生労働省)をグラフ化

グラフによると50代で平均年収が700万円を超えることがわかります。参考に、設備工事業全体の平均年収は600万円弱です。

設備工事業として調査対象に入っているのは、電気工のほか「施工管理」「設計」などの職種です。つまり、相対的にこれらの職種が電気工よりも年収が高いということです。

したがって、建設業で働くことを前提にするなら、電気工事士から施工管理・設計などのほかの職種へステップアップを視野にいれることで将来年収アップしやすくなります。転職する際には、電気工事士からの職種変更があるのかどうかを確認すると良いです。

業種・職種を変えて給料アップする

建設業にこだわらないのなら、給料アップを実現するのは難しくありません。先に示したとおり、第一種電気工事士の有資格者は建設業以外の業種でも需要が高いので、年収が高い業種に転職すればよいのです。

まず、冒頭で紹介したティーエムディー社の求人票の年収欄を下に示します。

そのほか、ここで紹介した5社の求人票で示された年収をまとめると、下表のようになります。

会社名 提示年収 業種
(株)ティーエムディー 420~650 設備工事業
朋友電気(株) 310〜775
※提示月給から計算
設備工事業
(有)黒川電気商会 419~698
※月給表示を年収換算
賞与は求人票内の3.5ヶ月
設備工事業
三井金属鉱業(株) 380~500 非鉄金属製造業
(株)アール・エス・シー 300+残業+ボーナス
※月給表示を年収換算
その他事業サービス

以上のように、示されている年収金額はさまざまです。したがって、求人一つ一つを探して希望の年収額を見つけるのは大変です。

そこで、業種ごとのおおよその年収傾向を知っていると、求人を探すときの指針になります。同じく賃金構造基本統計調査に、業種ごとの平均年収が公表されているので、第一種電気工事士資格を活かせる業種を抜粋してグラフ化したものを下に示します。なおグラフ中、青色が製造業、緑色が非製造業を示しています。

引用 : 令和元年賃金基本構造統計調査(厚生労働省)をグラフ化

グラフによると最も平均年収の高い航空運輸業と最も平均年収の低い繊維製造業で2倍くらいの差がついていることがわかります。ちなみに私は、鉄道業から電気業へ転職して年収アップを実現しています。

この統計調査からわかる平均年収の高い業種の求人を集中的に探すことで、提示年収が高く、入社後の年収の伸び方が大きい優れた求人を見つけやすくなります

まとめ

第一種電気工事士資格を活かして転職しようとするときは、高圧の電気工事を扱っている企業の求人を探すことが第一歩です。第一種電工資格が必須の業態なので、有資格者は間違いなく歓迎されます。

一方、電気事業者の設備工事や特別高圧の設備工事をしている会社は、第一種電工資格必須としていないことがあります。これは法的に資格が必要ないから記載していないだけで、電気工事の経験者で有資格者は歓迎されます。選択肢に入れるとよいです。

なお、低圧の電気工事を主に行っている会社も選択肢になります。第一種電工資格を持っていることで、好条件を提示してくることもあります。企業に打診してみると良いです。

建設工事にこだわらないのであれば、ユーザー企業の保全・エンジニアリングやビルメンテナンスの仕事が第一種電工資格を活かしやすい仕事です。対象の業種は多く、建設業に絞った場合より求人数が圧倒的に増えるので、優れた求人を見つけやすくなります。

第一種電工資格を持って転職したとしても、電気工の年収・給料は低いです。そこで、職種を変えたり、業種を変えたりすることで高年収を得やすくなります。

業種を変える場合は闇雲に求人を探すのではなく、政府統計などの信頼のおけるデータを参考にして下さい。今勤めている企業の業種より高い平均年収の業種の求人を探すと効率よく優れた求人を探せます。

以上の考え方を実践することで、資格や経験を活かした転職で成功しやすくなります。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。