転職や再就職において、志望動機をまとめることは必ず経験しなければことの一つです。これは技術職である電気工事士でも例外ではありません。技術職で、普段文章をまとめることがないと、なかなか大変な作業の一つだと思います。

私も、技術職としてキャリアを積んできて転職しました。志望動機など、転職に関わる文章は、技術的な文章をまとめるのと勝手が違って、まとめるのに大変苦労した記憶があります。

このような志望動機をまとめるときは、基本形に沿ってまとめると仕上がりやすくなります。ただし、適切に書かなければ、志望動機で希望する企業に対して悪い印象を与える可能性があるので注意しなければなりません。

ここでは、「志望動機の基本形」「電気工事士として転職するときの志望動機の例文」「志望動機をまとめるときの注意点」について、くわしく説明します。

もくじ

志望動機の書き方の基本

志望動機は下の写真のように履歴書に書くほか、面接試験のときに訊かれることもあります。履歴書には200字程度で収めるのが、字の大きさ、字数ともにちょうどよいです。

しかし、面接の質問に対する回答で200字程度だと少し短いです。そこで、具体的な話を盛り込んで400字程度にまとめておき、履歴書の志望動機欄に記入するために字数を削って200字程度にすると面接対策にもなります。

そして、志望動機に盛り込むべきことは下の3つです。

  1. その会社を志望する理由(なぜ、その会社で働きたいのか)
  2. その職種で働きたい理由(電気工事士として働きたい理由)
  3. 転職する理由(転職してまで叶えたいことはなにか)

ただし2については、今まで電気工事士として働いてきたので、特別に強い思い入れがなければ書く必要はありません。経験者で同業同職種に転職する場合、企業側としては2の職種に対する考え方は訊く必要性が薄いからです。

特に、1と3の理由をうまくまとめることが重要です。

電気工事士経験者は転職理由をどのようにまとめるか?

電気工事士に限らず、転職を考える理由の多くは以下のような理由です。

  • 人間関係があわなかった
  • 給料が安い
  • 休日が少ない
  • 体力的にきつい など

しかし、これらをそのまま志望動機として記入するのは適切ではありません。なぜなら、どの理由であっても、「あなたが特定の1社を志望する理由」にはならないからです。

志望動機には、あなたが採用試験を受けようとするその1社だけに通用する特別な理由を書く必要があります。特に電気工事士を募集する会社は多く、なぜその会社を選ぶのかを明確にしないと、企業側は納得できません。会社は、「どの会社でも、いい条件で雇ってくれるなら、それでいい」という態度では良い気はしません。

したがって、志望動機にはその電気工事会社に転職する必然性が感じられるあなた独自の「体験・経験」「得意分野」「長所」を盛り込んで下さい。

まず、志望動機のまとめ方の基本として、以上の内容を押さえておきましょう。

電気工事士の転職の志望動機例文

志望動機の基本的なまとめ方を押さえたら、実際にまとめてみましょう。ここからは、具体的な例文を示しながら志望動機のまとめ方を紹介していきます。

転職理由が技術的なステップアップのとき

まず、技術的なステップアップを理由にする場合です。電気工事という大きな分野の中でも、現状よりも難易度の高い仕事に就きたい場合のことです。

「現状よりも難易度の高い」というのは、「誰に対しても難易度が高い」という意味ではありません。「あなたにとって難易度が高い」という意味ととらえて下さい。

新しいことに挑戦するということは、企業に対して大変ウケが良いです。私が転職したときも、「技術的に今まで経験のない分野に挑戦したい」ということを全面に押し出してアピールしました。

直接、「新しい分野に挑戦する姿勢の人材が欲しい」と言われて内定をもらったこともあります。また直接言われなくても、転職エージェントを通して、同様の言葉を企業からもらって内定をもらったこともあります。

したがって、技術的なステップアップを理由にする場合の志望動機は書きやすいといえます。

ここでは、以下の2パターンについて志望動機をまとめます。

  1. 現状、住宅の電気工事やエアコン取り付け工事を主に行っていて、プラント電気工事など高圧を施工する電気工事会社に転職したい場合
  2. 現状、高圧を施工する電気工事会社に勤めていて、住宅やエアコン取り付け工事などの低圧の電気工事主体の会社に転職したい場合

高圧電気工事を志す場合

1の場合について、例えば下図の明成通信株式会社の求人に応募する場合が考えられます。明成通信社は、東京を中心に電気設備工事を施工している会社です。この求人は、千葉県のデータセンター拡充プロジェクトで、班長として活躍を期待される求人です。

プロジェクト工事の班長として勤めることになるので、かなりのスキルを要求されます。弱電の工事も含まれ、要求される技術水準も高いです。挑戦しがいのある仕事だといえます。

プロジェクト工事でなくても、今まで低圧の電気工事しか経験がなかった人が、高圧の電気工事をしたいために転職するというのは、わりやすく技術的なステップアップです。なぜなら、低圧は第二種電気工事士資格で行なえますが、高圧は第一種電気工事士資格が必要だからです。そして、資格の難易度は第一種電気工事士資格のほうが高いです。

プラントの電気工事は、建物の中やプラントの内部配線・機器設置に伴う工事が多いです。新設の工場では、下の写真のような受電部分の工事も含まれます。

また、これから第一種電気工事士資格を取得するつもりで転職する場合も、もうすでに第一種電気工事士資格を取得していて実務をやりたいから転職する場合も、どちらでも志望動機でアピールしやすいです。

これらを踏まえて、志望動機は以下のようにまとめます。

貴社を志望した理由は、就業を希望する地域の中で高圧の電気設備工事の実績が多いからです。高圧の電気設備工事を主に施工できると考え、応募した次第です。

私は、これまで低圧を主体に電気工事を施工してきました。しかし、さらに高度な電気工事を施工したいと思うようになりました。そのため、第一種電気工事士試験にも挑戦中です。

ただ現職では低圧電気工事ばかりで高圧電気工事がなく、今回転職を決断しました。(193字)

第一種電工資格に関する記述はなくして、「高圧電気工事に関するあなたの思い」をもっと追加しても良いです。ただし、その場合は面接などで、資格について問われると考えておきましょう。そこでは、「第一種電工資格を早い段階で取得する」ということを自分の言葉で回答して下さい。

以上は、「これから第一種電工資格を取得する場合」を想定して書きました。「すでに働きながら第一種電工資格を取得している場合」は下のようにまとめると良いです。

貴社を志望した理由は、就業を希望する地域の中で高圧の電気工事の実績が多いからです。高圧の電気工事を主に施工できると考え、応募しました。

私は、これまで低圧を主体に電気工事を施工してきました。しかし、さらに高度な電気工事を施工したいと思うようになりました。ただ現職では低圧工事ばかりで高圧工事がなく、今回転職を決断しました。

第一種電気工事士資格はすでに取得しており、すぐに現場に出ることが可能です。高圧工事は未経験ですが、早い段階で戦力になれると考えています。(228字)

第一種電工資格をすでに取得していれば、「目標に向かって努力できる」ということを示せます。自己PRにつながるので、積極的に資格取得済みであるということをアピールすると良いです。

低圧電気工事を志す場合

次に、今までプラント・ハコモノの高圧電気工事を主体で行ってきた人が、低圧の電気工事を志す場合の志望動機を考えます。

対象となる求人例を下に示します。この有限会社ヤマウラ電工は、長野県・新潟県で公共施設や一般住宅の電気設備工事をしている会社です。

このような求人に、プラントなどの高圧電気工事を行ってきた人が応募する場合は、単なる技術的なステップアップは理由になりません。そこで、「新しい分野に挑戦する」という切り口でまとめましょう

貴社を希望する理由は、私が働ける地域の中で、主にお客様と顔を合わせながら仕事ができる住宅の電気工事を主に行っている会社だからです。

私は今まで、プラントの電気工事を主体に行ってきました。しかし、使っている人の顔が見えにくい工事が多かったです。ただ、プラント内でも、低圧部分の工事を施工したときは、お客様と直接話すことができて、大きくやりがいにつながった経験があります。

そこで、もっとユーザーに近い電気工事をしたいと考えて転職に踏み切りました。(220字)

低圧電気工事の場合は工事の規模が小さくなりやすいので、お客さんとの距離が近くなる場合が多いです。そこで、電気の技術的な切り口ではなく、お客さんと触れる頻度という切り口で志望動機をまとめるとよいです。

待遇改善が転職理由のとき

ここまで述べたような、技術的なステップアップがはっきりとしない転職もあります。例えば、「現状住宅専門の電気工事会社に勤めていて、同じような住宅を中心に電気工事の施工をしている電気工事会社に転職を希望する場合」です。

この場合、「低圧の電気工事を志す場合」に書いたような、別の切り口が見つかればそれを書くと良いです。

そうでない場合で、待遇改善が期待できそうだと期待して転職する場合の志望動機はどのように書けばよいでしょうか。

実は、私が転職したときの絶対に譲れない条件として「夜勤がないこと」がありました。待遇改善を期待しての転職ですが、志望動機には「夜勤がないから」とは書いていません。面接試験では、必ず「夜勤がないこと」を確認したものの、志望動機には書いていないのです。

では、待遇改善を期待する場合はどのようにまとめるかというと、期待される改善項目を言い換えてみましょう。例えば、下のとおりです。

給料が高い 現職では生活するのに精一杯で、技術力向上のための自己投資ができない。給料が上がれば、自己投資に回して優れた仕事としてお客様に提供できる。
休みが多い 現職では仕事の疲れを取るだけに十分な休息期間がなかった。貴社では十分な休息ができそうなので、その分品質の高い仕事として還元できる。
福利厚生が良い 現職では、技術力向上に関するサポートがまったくなかった。独学で勉強するしかないが、限界を感じ始めている。貴社であれば、社内でサポートを受けられ、さらに優れた仕事として還元できると考えている。

このように、同じことを言っているにもかかわらず、印象が変わるのがわかると思います。待遇改善を志望動機に書かざるを得ないときは、本音であっても言い換えができないかよく検討して下さい。

志望動機は自分の言葉で書くことが大切

ここまで紹介してきた志望動機は、絶対に自分の言葉でまとめて下さい。ここ以外でもWEBを探せば、たくさんの志望動機の例文が見つかります。それらの志望動機の例文を、そのまま自分の志望動機として希望先の企業に出すのはやめてください。

なぜなら、自分の言葉でまとめていないと、面接などで質問を重ねていくうちに矛盾が出てくるからです。

例えば、「給料が良い」ということを、前章で紹介したように「生活するのが精一杯で~」と志望動機に書いたとしましょう。しかし、「休日で何をしていますか」という質問に対して、うっかり「金のかかる趣味」を答えたとしたら、志望動機がウソとわかります。

採用をしてきた人に聞くと、このような違和感は簡単にバレるそうです。私も何度か採用の場面で質問をしたことがありますが、話の辻褄が合わないような違和感はすぐに気づきます。

電気に関わる仕事は、目に見えないものを扱うので一歩間違うと死に直結します。何よりも正直であることを求められる業界なので、ウソをつくと採用されないと考えて下さい

企業側に不信感を与えないためにも、志望動機は自分の言葉でまとめて下さい。

まとめた志望動機は第三者に見てもらうこと

あなたがまとめた志望動機は、家族や友人など、誰かに内容を確認してもらうと良いです。

自分では気づかない文法の誤りや、誤字脱字が判明しやすくなります。また、言い換えると意図が伝わりやすい表現があるかもしれません。第三者の視点から意見をもらうと、より優れた志望動機にまとめることができます

さらに念を入れるなら、転職エージェントサービスを使うとよいです。転職エージェントから紹介を受けた求人に応募するときは、転職エージェントが志望動機の内容を確認してくれます。

下は、私が電力プラントに転職するときに事前に準備した志望動機と、アドバイスの一部です。これは事前に転職エージェントに添削を依頼して、内容の確認とアドバイスを依頼しています。下部の赤字部分が転職エージェントからのアドバイスです。

私が転職活動をしていたとき、転職エージェントには「山口・北九州エリアで転職先を決めたい」と相談していました。しかし、志望動機にエリア性を書くのは良くないと考え、事前確認の段階ではエリア性について書いていなかったのです。

しかし、この会社は北九州市の会社であり、転勤もないことから、北九州市というエリア性について言及したほうが、「その会社に入りたいという気持ちが伝わる」とアドバイスを受けました。結果、この会社には内定をもらいました。

転職エージェントは、仕事上でたくさんの求職者の志望動機と採用試験の結果を知っています。つまり、企業側に伝えるべき内容の判断ができます。あなた一人で志望動機のまとめ方について悩むのではなく、このような第三者の手を借りることも有効です。

以上のような手順で志望動機をまとめることで、より転職しやすい志望動機に仕上げることができます。

まとめ

経験者として電気工事士に転職するときの、志望動機のまとめ方の基本は、以下のとおりです。

  1. その会社を志望する理由(なぜ、その会社で働きたいのか)
  2. その職種で働きたい理由(電気工事士として働きたい理由)
  3. 転職する理由(転職してまで叶えたいことはなにか)

電気工事士の経験者として転職するときは、この中で1の「その会社を志望する理由」と3の「転職する理由」が特に重要です。

志望動機をまとめるときには、電気工事士は技術職なので、技術力向上の切り口でまとめると説得力のある志望動機になります

しかし、仕事の内容があまり変わらない場合は、技術力向上を志望動機に書いても十分な説得力がありません。そのようなときは、待遇改善を志望動機にすることもできます。

ただし、「給料が高い」「休みが多い」などを直接書くことはおすすめしません。より仕事に積極的な言葉に言い換えて書く必要があります。

そして、志望動機はあなた自身の言葉でまとめる必要があります。他人の言葉を借りてきてまとめたとしても、面接試験などで見破られると取り返しのつかない悪影響を及ぼしかねません。

まとめた志望動機は、家族・友人などに一度目を通してもらうと完成度が高まります。さらに念を入れるなら、転職エージェントサービスを使うことも良い方法です。

これらの手順で志望動機をまとめることで、より完成度の高い転職しやすい志望動機に仕上げることができます。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。

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