営業職を希望して転職活動を進めるとき、製品を売る営業ばかりが選択肢ではありません。電気工事の営業は、形ある製品を売る仕事ではありませんが、営業職を募集している業種の一つです。

電気工事は、電気が使われる限り無くなることがない仕事の一つです。もちろん、電気工事の営業も電気工事がある限り仕事がなくなりません。長く、腰を落ち着けて仕事をするには適した職種の一つといえます。

ただ、電気工事の営業職は「扱う商材」「顧客との関係」が少し特殊です。この特殊な点を十分承知してから転職しないと、ミスマッチによって後悔することになります。

ここでは、「電気工事の営業の特徴」「電気工事の営業職の幅広さ」「電気工事の営業職の年収」について、詳しく解説します。

電気工事の営業職は法人営業が多い

電気工事会社の営業職の求人を探す方法は、オーソドックスに転職サイトなどを探せば比較的容易に見つかります。そして、電気工事の営業職は、法人向けに営業を行う求人が多いです。

例えば、下の株式会社ノア・テクニカは東京に拠点をおいて電気工事を請け負っている会社です。この求人では、小売店舗や飲食店への営業であると謳われています。

このように法人営業が多いのは、電気工事会社の特徴だからです。

まず、個人が電気工事を単体で依頼することがほとんどありません。個人の需要で電気工事があるとすれば、「住宅を新規に建てるとき」「照明(灯具)を変えるとき」「エアコンを取り付けるとき」などです。

しかし、これらの工事発注は、工務店や家電量販店などに対して行います。そこから、電気工事会社に施工が依頼されます。つまり、電気工事会社の顧客は工務店や家電量販店です。

また、法人からの需要は途切れることがありません。機器の新設・老朽取替のほか、定期修繕・設備改良・リニューアルなどさまざまな案件があります。

一般家庭では、電気設備は故障してから買い換えることがほとんどです。しかし、法人の場合は、事業を継続するために電気設備の正常に運転されていることが必須なので、予防保全を行います。

予防保全は、運転時間を目安にして取替・修繕を計画します。つまり、定期的に電気工事が発生します。

このような実情があって、電気工事の営業は法人向けの営業がほとんどです。したがって営業の方法は、同じお客様と長期間にわたって関係性を築くことを前提に行う必要があります

電気工事技術について知っておくことが大切

ここからは、電気工事の営業職がどのような職種か、特徴や仕事内容を詳しく説明していきます。

私が今まで仕事で付き合いがあったのは、電気設備メーカーと電気工事会社の営業職の人です。その印象を簡単にまとめると、下記のとおりです。

  • 電気設備メーカーの営業職
    →幅広く電気関係のことを知っている。機器製作費・工事費など費用に関することと、技術に関することを明確に分けて、費用に関することを中心に担当している。難しい技術の話になると、技術担当を呼ぶ。
  • 電気工事の営業職
    →技術職も経験して営業職をしている人が多い。費用のことも工事のことも、どちらも話ができる。

このような印象とはいえ、全く電気工事に無知では務まりません。営業職は、客先との窓口であり、最初にお客様からの相談を受ける仕事だからです。

電気工事技術は、企業固有の技術より、工業系一般的に共通する技術が多いです。したがって、客先にも電気工事の技術者がいる可能性があります。

客先から、工事の内容を詳しく相談されることも多く、電気工事技術を学ぶ気がなければ喜ばれる仕事はできないでしょう。最終的には、あなたの評価(賃金)にも跳ね返ります。

このように、電気工事の営業職は、電気工事の技術についての知識も求められることを承知しておきましょう。

営業職であっても電気工事の資格が活用できる

その意味では、電気工事の営業職は技術営業職に近いと言えます。技術営業とは、客先との窓口業務と一緒に技術的な知識を備える職種です。

電気工事の営業職は、お客様に提供する商品が「電気工事」です。電気工事は、出来上がった製品を売るのではなく、電気機器や配線材料などと施工役務をあわせて売る必要があります。

したがって、電気工事の営業に転職するには実際に電気工事に携わった経験があると有利になります

また、あなたに電気工事経験があるなら、電気工事士資格や電気工事施工管理技士資格などを取得しているかもしれません。このような資格を持っていると、電気工事の経験を端的に示すことができます。

企業によっては、下図のように電気工事経験・資格を応募条件にしている企業もあります。株式会社竹村コーポレーションでは、電気系だと「電気工事施工管理技士資格」が必須条件の一つとされています。

ちなみに、この株式会社竹村コーポレーションは、主に関東圏(東京・千葉・神奈川)で住宅向け設備工事・リノベーション工事を行っている会社です。

なお、資格を持っていなくても、会社で資格取得や知識習得を積極的にサポートしていることがあります。例えば、下の株式会社共栄オーメックでは、未経験からでも仕事ができるように技術的なサポートがあることが記載されています。

さらに、電気工事士資格を取得すれば月々手当が支払われることが明記してあります。

このような会社であれば、電気工事に関する知識が少ないとしても、安心して転職できます。また記載がなくても、会社がどのようなサポートをしてくれるかは、転職エージェントを通して訊くこともできます。

転職を決める前に、会社のサポートなどについて知っておくことは、転職後の満足度を高めます。

幅広く電気工事の営業職を探す

電気工事というと、下記の点が注目されがちです。

  • 新しい電気機器を取り付けたり、古い電気機器を老朽取替したりする
  • 配線を整理し、新しい電源を設置する

このような「生活や仕事の中で、足りない機能を追加・変更する」という工事は、確かに電気工事の大切な仕事の一つです。ただ、それだけでなく視野を広く持つとさらに求人を見つけやすくなります。

電気工事は機能を果たすだけでなく、感覚や印象をデザインする仕事でもあります。例えば、下の写真は同じ空間(部屋)で照明の色合いを変えただけの写真です。

引用:パナソニック社の製品情報(照明)より(文字は筆者注)

電球色だと、あたたかい空間を演出していて、家でリラックスするのに適しています。昼光色だと冷たい印象ですが、思考が冴えるようなシャープな空間で、オフィスなどに適しています。昼白色は、昼光色よりあたたかい印象になります。

このように、照明の色ひとつで空間を演出することが可能です。さらに照明を「間接照明にするのか」「直接照明にするのか」によって、空間の印象が変わります。

例えば、下に示す大阪に本社のある東西電気産業株式会社では、照明・光源を使った演出の営業職を募集しています。このような求人も、電気工事の営業職の一種といえます。

実際の求人探しでは、東西電気産業社のように照明に商材を絞った会社だけでなく、住宅・店舗向け電気工事を展開している会社も対象になります。

電気工事の営業として提案できることは、こうした人間の感覚的な部分に訴えるものもあります。

もうひとつ電気工事で実現できることとして、「省エネ」があります。実は、企業が事業所で使う電力はかなり大きいです。つまり、企業が支払う電気代は結構な額です。

電気機器は新しいほど省エネ効果があり、まだ動く電気機器でも長い目で見ると取り替えたほうが安くなる場合があります。しかし、自ら進んで、まだ使える電気機器を大規模に取り替えるユーザーは少ないです。

そこに電気工事の営業職としてのチャンスがあります。省エネによる効果をうまくユーザーに提案できれば、営業成果につながります。

実は、すでにそのような事業モデルができ上がっています。それは、ESCO(Energy Service COmpany)という事業です。下図に簡単にESCO事業の概念図を示します。

ESCO事業実施前に、お客さんの企業が「どれくらい水道光熱費を使っているか」「それらの設備にどれくらいのメンテナンス費用をかけているか」を診断します。そして、設備を省エネ効果の高いものに更新したら、どれくらいの経費削減効果があるか提案します。

その提案が受け入れられたら、設備更新工事を受注しESCO事業実施中にサービス料として料金を受け取ります。

私の知り合いで、マンション経営をしている人は、ESCOの営業を受けたといっていました。具体的には、最大9kWで契約している電力契約を最大3kW契約に落とせるという提案でした。

現在の契約「9kW」というのは、マンションの主要な電気設備が全て同時に動いたとして決められた契約電力です。しかし実際には、主要な電気設備が同時に動くことはまずありません。

そこで、ほとんどの場合で使う最大「3kW」で契約しておき、電力使用量を常に監視して3kWを超過しそうになったら、負荷を遮断します。この監視・遮断装置を導入するのに月数千円のサービス料金を支払います。知人は電力契約料金が下がるので月2,000円くらい、現状より安くなります。

この知人の例は、ESCO事業の小さな案件の事例です。工場や大規模施設になると、数十万~数百万の規模で費用削減効果を実現する場合もあります。

そして、ESCO事業は「電気工事 営業」と調べても、ほとんどヒットしません。例えば、下の日本ファシリティ・ソリューション株式会社の求人では、ESCO事業の営業職を求めていますが、記載に「電気工事」というキーワードが入っていません。

日本ファシリティ・ソリューション社は、東京電力・三菱商事・関電工などの各社が出資して設立されたESCO企業のリーディングカンパニーです。省エネ設備の設計・施工・運用・管理までワンストップでサービスを提供している会社です。

このような会社を転職先の対象にしようと考えるなら、「ESCO」をキーワードに探す必要があります。

以上のように、単に「電気工事」の営業職を探すだけでなく、視野を広げてみると良いです。デザインや省エネの観点から、あなたにふさわしい優れた求人が見つかる可能性が高まります

電気工事会社の営業の年収を知る

最後に、電気工事の営業職に転職した場合の年収について解説します。転職を決めるときの、大きな要素が年収です。どのくらいの年収が得られるのかを事前に十分承知した上で転職することで、転職後の満足度を高めることができます。

まず、冒頭で紹介したノア・テクニカ社の年収は、下図のように入社時の想定年収として300~500万円が示されています。

同様に、ここで紹介した5社について提示年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 業種
(株)ノア・テクニカ 300~500 建設(設備工事)
(株)竹村コーポレーション 400~880 建設(設備工事)
(株)共栄オーメック 300~500
(モデル年収380~600)
卸売業(その他小売)
東西電気産業(株) 300~420 卸売業(機械器具卸売)
日本ファシリティ・ソリューション(株) 400~550 卸売業(機械器具卸売)

このように、400~500万円が提示される年収のボリュームゾーンです。

また、実際にその業界でどれくらいの給料をもらっているかは、厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査を見ると良いです。下のグラフは、ここで紹介した3つの業種について年齢別の年収をグラフ化したものです。

この調査によると20~30代では、業種によってほとんど差がありません。ただし、年齢が高くなると若干差が出てきます。入社後の年収の伸びにも関係してくるので、業種による違いを承知しておきましょう。

年収を判断するときは、「あなたの年齢」「業種」が大きな判断要素になります。これらをもとに、政府統計のような信頼のおけるデータを参考にして、企業から提示された年収を判断すると良いです。そうすることで、年収面で大きく失敗することを防ぐことができます。

まとめ

電気工事の営業職への転職するときの、求人の考え方について詳しく説明してきました。

電気工事の営業は、主に会社などの法人を相手に行います。案件が単発で終わることは珍しく、長い期間で信頼関係を作っていくことが大切です。

また電気工事は、顧客が電気工事の技術的な知識を持っている可能性が高いです。したがって、「技術のことは社内の技術担当にお任せ」という姿勢では、顧客からの信頼を得ることは難しいです。

技術営業のように、ある程度電気工事技術のことも理解して営業を行う必要があります。そのため、これまでに電気工事の経験があると採用試験で大きな武器になります。さらに、電気工事関連の資格を持っていると大いにアピールできます。

電気工事の経験がなくても、社内で資格取得などのサポートを行っている会社は多いです。入社後の技術習得を前向きに考えれば、そのような会社を選ぶことが転職後の満足度を高めます。

そして、電気工事には「照明・光源などのデザイン」「省エネ実現(ESCO)」も含まれます。このような視点で電気工事の営業職を探すと、さらに優れた求人を見つけやすくなります。

電気工事の営業職で提示される年収は、400~500万円がボリュームゾーンです。また、政府統計などを活用し、あなたの年齢を勘案すれば、提示年収が妥当かどうかを判断できます。これらの手順を踏むことで、年収面での失敗を防げます。

電気工事の営業職へ転職する場合は、以上の点に注意して転職活動を進めると良いです。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。