転職を考えるとき、有利な条件で再就職を決めたいと思い、そのために資格をとってみようと考える人は多いです。ただ、電気系では非常に多くの資格があります。

この中には必要な資格もありますし、取っても何の役にも立たない資格もあります。せっかく時間とお金をかけて取得するのですから、効果の高い資格を狙いましょう。

また、電気系の資格を取得する最終目的は「良い条件で再就職する」ことです。資格を取ることが目的ではありません。場合によっては、資格を取らなかったとしても、良い条件の求人へ転職できることは多いです。この目的を見失わないようにしてください。

ここでは、電気系の転職に生かせる資格をどう取得するか、どう選ぶかを解説します。

取得すべき資格の考え方

電気に関わる求人に対して、良い条件で転職するときは具体的に何の資格を取得すればよいのでしょうか。どこでも通用し、好待遇が期待できる資格はあるのでしょうか。これに加えて、取得しやすい資格であればいうことありません。そのような資格はあるのでしょうか。

残念ながら、そのような資格はありません。また、資格を持っていたとしても、適切な職業である必要があります。

例えば、電気主任技術者試験を持っていたとしても、情報通信系の仕事に就いたらなかなか好待遇も生かす場面も期待できません。同様に電気通信主任技術者を持って、電気工事会社に転職しても評価はしてもらえないでしょう。

電気主任技術者試験も電気通信主任技術者もそれなりに骨の折れる資格です。時間とお金を使って、「転職で武器にならない」「評価はされない」という状態だと何のために取ったのかわかりません。そこで少し考え方を変えてみましょう。

あなたが考えるべきは、「転職先にしたい企業はどんな資格を求めているのか」です。これを調べてから資格を取得するのです。そうすればミスマッチを防げるはずです。

企業が求める資格をどう探すか

それでは、どのようにすれば企業が求める資格を探すことができるのでしょうか。これは簡単です。転職サイトを探して求人票を見ればよいのです。転職サイトなら特に登録も必要なく、自宅でネット上から求人票を見られます。

これらのサイトで転職したい企業、働きたい職種の企業の求人情報を見てみると、必ず「求める人材」「対象となる方」などの欄があります。そこに応募条件になっている資格なら「○○資格必須」「○○資格をお持ちの方対象」とあります。あった方がいい資格なら「○○資格優遇」とか「○○資格歓迎」などとあります。

企業が開示してくれている情報を活用してみましょう。そこで、「必ず取るべき資格」「評価が高い資格」「転職してから取ればいい資格」にわけて考えます。

必ず取るべき資格

まず、必ず取るべき資格について説明します。企業がなぜその資格を必須としているのかというと、その仕事をするのにその資格がないと法的に罰せられるなどのペナルティがあるからです。

電力系なら電気主任技術者、電気工事士です。通信系なら電気通信主任技術者、工事担任者です。情報系は特にありません。また中規模の工事会社なら、施工管理技士が必要なことが多いです。

電気主任技術者、電気通信主任技術者は、資格を持っている者を、会社が指名し職を任じる義務が法で定められています。これを選任の義務といいます。

・電気主任技術者

電気主任技術者試験は、電力会社・メーカー・郊外型大規模店舗・電気保安協会などで必須です。電気主任技術者を選任して事業を行う必要がありますので、これらの企業で電気主任技術者として働くには、この資格を持っていなければ働くことができません。

・電気工事士

電気工事士は、事業用電気工作物以外の電気工事をするために必ず所持していなくてはなりません。

つまり、家電量販店などから受注して家庭の電気工事をする仕事(町の電気屋さん、○○電気工事、○○電業など)に必要です。また、プラントやビル建設の際に屋内配線や灯具等の施工をする会社(○○電工、○○電気テックなど)で働くには必須です。

・電気通信主任技術者

電気通信主任技術者は、大手の電気通信事業者では必須です。NTT、KDDIなどいわゆる電話会社で電気通信主任技術者として働く場合に必要です。

また電力系通信会社、鉄道会社、ケーブルテレビ局などでは選任する義務がありますので、これらの企業で電気通信主任技術者として働くには、この資格が必須です。

・工事担任者

工事担任者にはAIとDDの2種類あり、AIではアナログ・ISDN回線の工事に携わるときに必須の資格です。また、DDはデジタル・データ回線の工事に携わるときには必要です。

電気工事士と同じように、工事担任者は通信工事を行う会社で働くには重宝されます。NTTやKDDIから通信工事を請け負って、電話やインターネットの回線を工事する○○通信工業社などが該当します。

・施工管理技士

施工管理技士は、規模の大きな建設工事を請け負うには必須の資格です。数週間から数か月、数年規模の工事で、現場に事務所を構えるような工事では、資格者を必ず置かなければなりません。

上場している電気工事の会社や重電五社(三菱電機、東芝、日立製作所、富士電機、明電舎)、その下請けの工事会社まで幅広く重用されます。

これらを把握し、明確になりたい職業が決まっていて、取るべき資格がはっきりしているなら、あとは取得に向けて勉強するだけです

ただし気を付けてほしいのは、「電気通信主任技術者と電気主任技術者の保有者を前提とした求人案件」は極端に少ないです。なぜなら、そもそも必要とされているポストが少ないからです。

新規に増えることはなかなかないため、前任の主任技術者が退職したのでポストが空くということがほとんどです。その場合も社内にすでに後継者を育てていて、新しく外部から採用するというのは、特に大企業では少ないです。

そのため電気主任技術者または電気通信主任技術者のポストを狙う人は、転職サイトや業界情報にアンテナを張って、タイミングを待つ根気強さがいります。

一方で電気工事士と工事担任者の求人はあります。転職サイトでもたくさんの求人が出ていますので、資格を取った後にゆっくり探しても問題ありません。

例えば、以下は上場企業のビル管理等をしている会社の求人です。

必須条件に「施工管理技士」「電気工事士」とあります。このように会社が切実に資格者を求めている求人の場合は、その資格の保有が必須です。

転職してからとればいい資格

会社が切実には求めていない資格は、転職に成功してから取ればよい資格です。

求人票には「○○資格所持者優遇」「○○資格をお持ちの方、歓迎」などと記載がされていることもあります

必須条件を満たしておいて、歓迎条件を満たしていないから不採用になるということはありません。このような資格は、転職した後でゆっくり取ればよいのです。

また、難関資格は持っていると、箔が付きます。

電気主任技術者は、電気主任技術者になるために必要な資格ではあるものの、電気の一般的な知識レベルを測る資格でもあります。したがって電気主任技術者試験の資格を持っていれば、「電気について詳しい人」「かなりのレベルまで修めた人」と見られます。

同様に通信業界では電気通信主任技術者や陸上無線技術士が通信の一般的な知識レベルを測る資格です。また情報業界では、高度情報試験が情報技術全般の知識レベルを測る資格です。

ですが必須条件でないなら、会社にとってはさほど重要視されません。給与面で優遇されることがあってもわずかです。

実例を挙げてみてみましょう。ある大手メーカーでは、下図のように必須条件、歓迎条件を公開しています。

必須条件に資格はありません。一方で歓迎条件に、電験2種、電験3種と計装士があります。

大手メーカーの事情を考えてみましょう。この会社は社内に6万ボルトとか16万ボルトとかで受電するような大きな工場を構えています。このような工場では、「事業者は、電験2種の保有者を電気主任技術者として選任しなさい」と法で定められるため、いま社内には電験2種の保有者がいます。

したがって、電験2種を取得している転職者は現時点で必要ではありません。とはいえ、電験2種レベルの知識を持った人が保守すべき「6万ボルトや16万ボルトの受電設備」は存在しているので、歓迎条件に電験2種とあると考えられます。

この会社に転職すればゆくゆくは電験2種を取ることになるでしょう。社内のサポート(取得補助金、奨励一時金や受験休暇など)も受けられるでしょう。

ただ、転職前に取得する必要はありません。入社してしまえば、その会社の福利厚生を利用しながら、会社のお金で取得させてくれます。わざわざ入社前に取得しなくても、あとでゆっくり取得すればいいのです。

資格によってどれくらい優遇されるか、効果があるか

それでは、実際のところ電気系の資格に合格することで、転職市場でどれくらい評価されるのでしょうか。これについて、私の転職活動実体験からすると、実は優遇はほとんどありません

私の場合、いったん無職状態になった後、再就職活動を始めました。無職状態は3か月以内にしたかったので、タイミングが悪く「資格を優遇する求人」に遭遇できなかった可能性もあるとは思います。

私は電験2種を持っており、いくらでも引く手あまたで求人があるだろうと、超楽観で転職活動をしました。確かに求人はあるのですが、電験2種必須で募集をかけているところはほぼなく、あっても優遇や歓迎条件として挙げているところだけです。

では、どのくらい優遇してくれるかというと、給与的にはわずかです。確かに面接のときには「優秀な人なんだね」「すごいね」と好印象を与えたこともあったようです。

ただ重要な給与の話になると、ある企業では月々プラスで5,000円でした。ほかの会社では、年齢による基準賃金より2万円上積みでスタートという程度でした。

中には「電験2種歓迎」としておきながら、そんな優秀な人がうちに来るなんて冷やかしではないか、という態度で面接されることもありました。

ただいずれにしても面接では、全般的に資格よりも「これまでどのような仕事をして経験を積んできたか」「これからの新しい仕事にどう意欲的に取り組むか」ということに注目されていました。

もちろん、資格以外では差のつけようがない求職者が同時に応募してきて、1人しか採用する予定のないとき、資格の効果はあるでしょう。その場合、資格を持っている人が採用されます。

ただ、新卒採用と違って、転職の場合は求人を出したとしても、同時に何人も同じような経験・能力を持った人が応募することはありません。資格での差別化はあまり意味がないです。

資格の取得より、先に転職を考えるべき

このように、資格取得のためにたくさんのお金を費やしても、期待するほど給与は上がりません。

さらに転職では年齢が若いほど有利です。1年に1回の試験実施という資格も多く、このような資格を取得しようとすると2~3年はすぐに過ぎてしまいます。その数年をわずかな給与のアップのために使うぐらいなら、早めに転職した方が圧倒的にお得です。

そのあたりがよくわかっていなかった私は、最初に登録した転職エージェントに「半年後に高度情報試験があって、それを取ってから転職したい」と告げて、絶対にやめておいた方がいいと止められました。実際に転職活動をしてみて、これは本当だったなと思います。

会社が本当に取得しておいてほしい資格なら、面接で必ずその資格について問われます。そこで面接で、「現在勉強中である」「今年の試験に申し込み済みだ」と答えれば問題ありません

またその資格所持者を採用したい会社は、業務の中に「資格取得に必要な知識習得の場面がたくさんある」ものです。

例えば、電験に出題される発電機の原理や構造は、発電所に勤めて現物を見て実際に保守してみると、参考書を読むだけでは理解できなかったことが、よく理解できるようになります。

資格を持っていて、実際に仕事で現物に触れている人は、参考書で勉強した人よりも圧倒的に理解が深いです。このような人に直接教わる機会もあります。

入社の前に一人で頑張って資格を取るよりも、入社してからの方が「サポートがある」「環境がそろっている」「受験費用負担や取得奨励金がでる(かもしれない)」「社内での評価も上がる」など、かなりお得です。

まとめ

ここまで見てきたように、資格はそれを所持していないと就けない職を目指さない限り、あまり役に立ちません。せいぜい選択肢が増えるくらいです。

難関資格所持を必須条件に挙げている求人はほぼありません。もし、挙げていたとしても「3年以内に絶対取ります!」と面接で言い切ることができれば問題ありません。

要は、資格は3年以内に会社のサポートを受けて取ればよいのです。転職後の方が会社の福利厚生を利用しながら勉強することもできます。

転職が先か、資格が先かを悩んでいるようなら、まずは転職サイトに登録してみてください。実際に履歴書や職務経歴書を自分で書いて1社でも2社でも試しに受けてみれば、手ごたえを感じるはずです。

それらをした上で、やはり資格を取る必要があると判断したなら、頑張って取得しましょう。ただ、まずは資格取得の前に希望の会社へ転職することを考えてみるといいです。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。