一般住宅でも、中古住宅やリノベーションの需要が高まってきているのを知っていますか? また、店舗やオフィスでも事業者が入れ替わるときは、必ずと言っていいほど改装されます。
このようなリフォーム需要は尽きることがありません。また、現代の住宅・オフィスでは、電気なしで完成することはありません。つまり、リフォームにおいて電気工事の需要は一定数あるのです。
では、あなたが電気系の知識技能を生かして、リフォーム業へ転職するにはどのように考えたら良いのでしょうか? 単純に「電気」「リフォーム」をキーワードに求人を探しても、満足できる転職をすることは難しいです。
優れた求人を探し出し、満足できる転職を叶えるには、求人を整理分類してあなたの希望を視覚化することが重要です。
ここでは、「リフォーム業の電気系職種2種の整理」「それぞれの求人例と特徴」「リフォーム業の電気系職種の年収」について詳しく解説します。
もくじ
電気工事会社で働くか、リフォーム会社で電気系職種に就くか
リフォーム業で電気関係職種を探す方法は、大きく分けて2つあります。一つは電気工事会社でリフォーム事業をしている会社を探す方法で、もう一つは工務店など建物のリフォーム事業を行っている会社で電気系職種を募集している会社を探す方法です。
前者と後者で、会社の性格が大きく異なります。つまり、あなたの働き方、求められる能力が違います。まず会社の特性を熟知したあと、あなたがどのように働きたいかを整理することが大切です。そうすることで転職成功しやすくなります。
電気工事会社でリフォームも行う
最初に説明するのは、電気工事会社でリフォームも行う例についてです。
新築で電気工事をする場合と、リフォームで電気工事をする場合で、実際に作業内容は大きく変わりません。照明や電気機器を設置して、電源(電力会社からの受電点)から照明・機器までの配線を行うという作業に使われる技術は、新築でもリフォームでもほとんど同じです。
下の写真は、居抜き店舗の改装工事の写真です。このあと内装工事をしつつ、電気工事を施工します。この手順は新築でも変わりません。
つまり、電気工事会社にしてみればリフォームの電気工事だけに注力する理由がありません。同じ電気工事のスキルを使って新築もリフォームもできるので、多くの会社がどちらの工事もやります。
私の後輩に、電気工事会社の社長として働いている人がいます。彼の会社は、空調工事を最も得意としながら、主に住宅や小規模オフィス向けに電気工事を行っています。
彼に新築とリフォームの電気工事について聞いてみると、以下のように教えてくれました。
新築とリフォームで電気の機器設置や配線自体は変わらない。ただ、全く何もないところから作る新築のほうが簡単だ。
リフォームは、配線が埋め殺し(古い配線を撤去せずそのまま床下や屋根上に放置すること)されていることがあり、本当に必要な配線か不要な配線か、判断するのに慣れが必要だ。ただし、慣れてしまえば埋め殺しの配線を流用できるので、仕事が早くなる。 |
電気工事には、このような特徴があるため、リフォームだけを行うのではなく、電気工事全般を行う会社を探すと転職先候補を見つけやすくなります。
例えば、下の株式会社ジャクシスの求人が、リフォームを含む電気工事全般を行う電気工事会社に該当します。ジャクシス社は、愛知県中心に事業を展開している会社で、事業内容に「住宅リフォーム施工」が記載されています。
また、「取り付けスタッフ」とは電気工事士のことです。同じ求人の仕事内容の欄を見ると、電気工事スタッフとしてマンションや一般住宅の電気工事を行うことが記載されています。
リフォーム専業で仕事をするわけではないものの、会社の事業内容に「リフォーム」がある会社なら、電気関係のリフォームを行うことが可能です。電気関係のリフォームを行いたい場合は、このような電気工事会社を探すのが第一歩です。
リフォーム会社は電気系以外の仕事もある
リフォーム会社の中には、電気だけでなく内装工事の設計や施工すべてを請け負っている会社もあります。システムキッチンや太陽光発電システムを新しく設置する工事も、その一例です。これらのリフォーム工事は、電気工事は全体の一部です。
リフォームにおいて、電気無しで完成することはありません。それは部屋に必ず電気機器があることがからもわかると思います。つまり、このような会社でも、電気のスキルを持った人材を求められることがあります。
下の写真で示す会社は、いわゆる工務店です。「リフォーム」だけで、一つの看板デザインを使って広告しています。しかし、「トイレ」「キッチン」「太陽光発電」「塗装」などこの写真で示されるのは全てリフォームに分類される工事です。そして、多くの工事に電気工事が付随します。
実際の求人例でいうと、下の株式会社ダイヤ工務店が電気関係の技術者も募っています。電気関係の有資格者(電気工事士有資格者)に資格手当を支給することが求人票に明記されており、会社として電気関係資格を持った人材を必要としていることがわかります。なお、ダイヤ工務店は、本社を兵庫県に置き関東以西の広域で事業を展開している会社です。
この求人では、リフォーム工事の施工管理職を募集しています。施工管理とは、内装工・電工・左官・塗装工など、さまざまな職人や協力会社を采配して工事を進める職種です。
工事の舵取りをするので、作業方法や技術的内容を知っていないと作業員に的確な指示を出すことができません。したがって、あなたがこれまで取得してきた電気関係の資格の知識や培ってきた経験を活かすことができます。
ただし注意しないといけないのは、電気関係の仕事だけを担当するわけではないということです。ダイヤ工務店の業務内容の欄を見ると、下記の通り電気以外のリフォーム工事全般を担当することが明記されています。
したがって、「電気工事関係以外はやりたくない」ということであれば、リフォーム会社で働くのは辛いです。内装や塗装など、そのほかの建築工事にも広く興味が持てると、ダイヤ工務店のようなリフォーム会社が優れた選択肢になります。
リフォーム電気工事は儲かる?平均年収を知ろう!
転職で気になるのは、転職後の給料です。現状の年収が不満で、転職に踏み切る人も多いです。
では、電気関係でリフォームに携わったときの年収・給料はどれくらいを期待できるのでしょうか? ここで紹介した求人について、それぞれの提示年収を確認してみましょう。
まず、冒頭で紹介したジャクシス社の提示年収を下に示します。求人票には、施工スタッフ(電工)で初年度350~550万円と示されています。
次に、2番目に紹介したダイヤ工務店の提示年収を下に示します。求人票には、施工管理職で420〜600万円と示されています。
国税庁の調査では、サラリーマン(給与所得者)の平均年収は約500万円です。したがって、ここで紹介した2社の提示年収は平均的か少し低い水準であることがわかります。
実際にあなたが応募した企業から提示された年収が妥当かどうかは、信頼のおけるデータと比較することで判断できます。具体的には、厚生労働省が毎年調査発表している賃金構造基本統計調査を参考にすると良いです。
下は、電気工事が含まれる設備工事業に従事する人々の平均年収をグラフ化したものです。
引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化
このグラフでは、横軸を年齢にしています。あなたの年齢を踏まえた上で、グラフの平均年収と比較すると良いです。提示年収額がグラフの平均年収額より極端に低いなら、その理由を聞いてみると良いです。
直接先方企業に対して年収について問い合わせにくいということであれば、転職エージェントを介して質問をすることが可能です。私も、転職に際して入社直後の年収額は転職エージェント経由で何度も行い、妥協できる水準まで引き上げたことがあります。
なお、年収に関する考え方は会社により様々です。会社により、入社初年度は年収を低く押さえており、次年度以降に大きく増えることもあります。あなたの質問に対して、丁寧に答えてくれる会社であれば、提示年収が多少低くても納得できるのではないでしょうか。
反対に、うやむやに誤魔化されるなら、あなたの評価に対して入社後も納得できる回答を得ることは難しいです。満足できる転職となるかどうかは、このような先方企業の対応からも判断できます。
まとめ
電気関係のリフォーム業に転職する方法について、詳細を解説してきました。
電気系職種でリフォームに関わるには、大きく2つの方法があります。ひとつは電気工事会社でリフォーム関係の仕事をすることで、もうひとつはリフォームを専門に行う工務店などで電気関係の仕事を担当することです。
電気工事会社でリフォーム関係の仕事をする場合、リフォームだけで事業をしている電気工事会社は少ないことを知っておく必要があります。つまり、新築やそのほかの電気工事も行い、さらにリフォームも行うということです。
一方、リフォーム専門の工務店で電気関係の仕事を担当する場合、電気関係以外の仕事も担当する可能性を理解しておいて下さい。建築関係のほかの仕事を任される可能性も否定できません。
これは、リフォームが電気工事だけでなく、ほかの工種も含めて成立しているからです。あなたの電気の経験や資格を活かしつつ、ほかの分野への関心・興味がないと長続きしない可能性があります。
リフォームで電気系職種の年収は、一般的なサラリーマンの年収と比べて同じくらいの水準です。あなたが応募した企業から提示された年収が妥当かどうかは、政府統計などの信頼できるデータと比較することで判断できます。
提示された年収が納得できないなら、転職エージェントなどを介して問い合わせるとよいです。先方企業の質問に対する態度で判断すれば、転職の満足度を高めることにつながります。
技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。
企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。
しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。
以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。