電気・ガス・水道といった生活や産業を支えるインフラ系企業は、まずなくなることはない仕事です。その安定性は転職先として大きな魅力と言えるでしょう。

これらのインフラ系企業は、公益性が高いというのが、ほかの企業と大きく違う点です。同じような機械・電気設備を扱っていても、故障のときに社会に与える影響度が大きいです。

また、電気・ガス・水道業界はユーザー企業としても共通しており、機械・電気設備を扱う仕事内容は酷似しています。

ただ、高給・高待遇で、あまり流動性のある業界ではありません。これらの業界に技術職として転職するには、どのように探し、考えたら良いのでしょうか。

今回は、それぞれの業界の特徴と、技術職に求められる資格・スキル、年収の実態について解説します。

社会インフラ業界の求人の特徴

では順に、電気・ガス・水道業界の求人について、どのような特徴があるのか説明していきます。

電気(電力)業界は比較的多くの求人がある

電力業界といって最初に思い浮かぶのは、〇〇電力といわれる10電力会社です。北海道から沖縄まで、それぞれの地域に独占して存在する10電力会社は、技術系なら新卒時に一度は入社を考える企業です。

ただ、みんなが憧れるということは、採用に困っていないということで、あまり流動性が高くありません。したがって、中途採用を実施している電力会社は限られます

下の図が電力会社の求人の例です。関西電力株式会社の求人で、送配電と変電設備の設備管理職を募集する求人です。

この求人のほか、私が調べる限り、北陸電力は中途採用を実施していました。

10電力会社のほかは、電源開発株式会社(J-POWER)があります。この会社は、もともと国が株式の多くを持つ特殊法人だった経緯があります。

下の図は、電源開発株式会社の求人例です。

この求人では、火力発電の計装制御技術者を募集しています。ただし、J-POWERは国内外で広く事業を行っているため、このほかにも原子力発電の電気・機械技術者や水力発電の機械・土木技術者も同時に募集していました。

また、電力業界で働くには「新電力」という分野で働く道も残されています。新電力とは、先の10電力とJ-POWER以外の電力事業者のことです。

あなたは「FIT」という言葉を聞いたことがありますか? 再生可能エネルギー(太陽光・風力・バイオマス・地熱)で発電された電力を、電力会社が固定価格で買い取る制度です。

東日本大震災以後、FIT制度により再生可能エネルギーが国家的に後押しされ、たくさんの事業者が参入しました。

2012年以降、下の写真のように空き地があれば太陽光発電パネルが敷設されているのは、あなたもよく見かけると思います。

太陽光発電のほかにも、風力発電、バイオマス発電などに多くの事業者が参入しています。私が勤める発電所も、このFIT制度ができたときに設立された会社です。

また、大きな生産工場などで、自前で発電所を持っている会社も存在します。例えば下の化学メーカー(三菱ケミカル株式会社)は、自社工場の電源と熱源を確保するために火力発電所を持っています。

このような生産工場のほか、清掃工場・鉄道・ガス会社でも発電所を持っています。

これらの新電力は、10電力会社とJ-POWERに比べて流動性が高く、求人も多いです。

私は、前職は鉄道の電気技術者であり、発電所に関しては全くの未経験でした。また、発電所の職場には、化学系の会社から転職してきた社員もいます。

さらに、新電力は会社としての考え方が10電力とJ-POWERとは大きく違います。

10電力とJ-POWERの使命は、「絶対に電力供給を止めないこと」です。2018年9月、北海道胆振地震で北海道電力の火力発電所が緊急停止し、道内の大規模停電を惹き起こしました。

10電力とJ-POWERは電力需要の内、担当している電力が大きく、自社発電所で異常が発生すると大停電を惹き起こしかねません。

したがって何重にも予備系を持った、重厚な発電所になっています。

反対に新電力は、需要に対して担っている割合が僅かです。発電所が止まったとしても、大停電を惹き起こすことは考えにくいです。

自社の発電所を停止させたら、その間の電力販売ができないことによる機会損失や、工場を動かすための電力を電力会社から買うことによる損失が出るだけです。

故障によって出るこの損失の大きさと、発電所に予備系をもたせる費用の大きさとのバランスが重要視されます

・熱供給業を兼ねている場合もある

上で説明したような新電力の火力発電所は、熱供給業を兼ねている場合があります。隣接する工場などには、蒸気や熱水として熱を供給します。

同じ職場の先輩は、前職で熱供給業を兼ねる火力発電所に勤めていました。話を聞くと、上で説明した電力販売の機会損失だけでなく、熱供給にかかる損失も含めて考えているということでした。

このように、新電力や熱供給業を兼ねる発電所で働くときは、様々な要素のバランスを考えてプラントを動かしてく難しさがあることを知っておく必要があります

ガス業界は、発電所も運営している

ガス業界のガスに関する技術職の求人は、私が探した限りありませんでした。したがって、ガスにこだわるならば、求人票がでるまで根気よく待つ必要があります。

また、転職エージェントが持つ非公開求人には出ている可能性があるので、そちらをあたると良いです。

ただし、大手ガス会社は電力自由化に伴い発電事業も行っていることがあります。こちらであれば、いくらか求人がでているので、このような求人に応募するのも良いです。

下の図は、大阪ガス株式会社が出資して設立した電力事業の会社の求人です。大阪以外にも、名古屋、和歌山、兵庫、岡山などで電力事業を行っています。

この株式会社ガスアンドパワーの求人では、LNG火力発電所の保全技術スタッフを募集しています。この会社は、ほかにもバイオマス火力発電所や石炭火力発電所を運営しています。

ガス会社が電力事業に参入している例は、ほかにも東京ガス、東邦ガス、西部ガスであります。下は、福岡県にある西部ガスが出資しているガス基地です。眼の前の広い空き地は、LNG火力発電所の用地として確保されています。

また、あなたが機械技術者で、発電所に機械設備が無いのではないかと思っているのなら、心配は無用です。

発電所というと、電気設備ばかりのように思えますが、火力発電所だと実際9割くらいは機械設備です。ガス会社が運営している発電所は、火力発電所が主ですので、機械技術者の活躍の場所は多いです。

LNG火力発電であれば、ガスに関する技術力を活かす場面はあります。また、同じ社会インフラ系の事業として近しい感覚で仕事ができます。ガス会社を希望するときは、このような求人も選択肢に入れると良いです。

水道業界は電気・ガスと違い、完全に民間ではない

水道業界に勤めようと考えた場合は、事情が少し特殊です。

水道は自治体により、公営であったり民営であったりします。公営である場合は、公務員試験を突破し水道局員としてだけ水道業に就くことができます。

民営である場合は、自治体から上下水道事業を受託した一般企業が運営しています。下記の求人の企業などの場合です。


非公開求人なので、社名など詳しいことは転職エージェントを通してしか知ることはできません。また、自治体が民間企業に委託する業務は、この求人のような技術的な部分と料金徴収業務が主な部分です。

水道業界への転職を希望するときは、このような求人を探すことになります。

電気・ガス・水道業界に求められる資格・スキル

電気・ガス・水道業界で、企業が人材に求める資格は、必置資格と呼ばれるものです。必置資格とは、法令上、資格者を選任して事業所に置かなければならない資格のことです。

例えば電気業界だと、「電気主任技術者資格」「ボイラー・タービン主任技術者資格」などが挙げられます。これらは電気事業法で、資格者の選任が求められるもので、資格者がいなければ事業を行うことができません。

したがって業界内の転職などで、これらの資格を持っているときは重宝されます

下は、新電力として電力事業を行っている敦賀グリーンパワー株式会社の求人です。この会社は、丸紅の新電力事業のバイオマス発電の先駆けとして、福井県敦賀市に作られた会社です。

この求人の、求める方の欄に「ボイラー・タービン主任技術士第一種」[電気主任技術者第2種」とあるのがわかります。

ただし、「ボイラー・タービン主任技術士」は誤植です。正式には、「ボイラー・タービン主任技術者」という資格名称です。(電気事業法第44条より)

また、「エネルギー管理士資格」「公害防止管理者資格」は、プラント(電力・ガス・上下水道)では必須ともいえる資格です。それぞれ、省エネ意識、環境意識の高まりにより、重要性が増している資格です。

これも、取得している人は歓迎される場合が多いです。下は、先にも紹介した株式会社ガスアンドパワーの求人の内、求める方の欄です。

必須条件でプラント設備に関する業務経験を求める一方、歓迎条件として「エネルギー管理士資格」「公害防止管理技術者資格」が挙げられています。

これらの資格は、今取得しているなら、それをアピールして転職活動に活かすことができます。しかし、これから転職のために取得するのはおすすめできません。

これらの資格は、1~2週間で簡単に取れるものではなく、申込みから合格発表まで4~6ヶ月かかります。さらに、年に一度しか試験が実施されないため、時期によっては資格書が届くまで1年以上かかります。

※ボイラー・タービン主任技術者資格は、実務認定でしか資格取得できません。今の職場環境で実務認定されるだけの経験年数がなく、会社の実務証明が取れないのなら、取得はできません。

それに対して、転職の求人というのは、2~3ヶ月のものが多いです。あなたの目に止まった求人が、資格取得まで残っている保証はどこにもありません。

また、企業は一定数の人材を集めるために求人を出しています。それが充足したら求人は打ち切りです。3ヶ月を待たずして、求人がなくなることもあります。したがって、転職活動を優先してすすめるべきです。

それでも資格取得を目指したいのなら、転職活動をしながら資格の勉強をすると良いです。そして、面接や履歴書の資格欄などで、「次回のエネルギー管理士試験に向けて勉強を進めている」などとアピールできます。

ちなみに私は、鉄道会社から電力プラントに転職する直前に、エネルギー管理士資格の勉強をはじめました。そして面接時に、そのことをアピールしました。下図にそのときの資格取得と、転職のイベントを時系列で並べました。

あとで面接官だった上長に話を聞くと、少なからず好印象だったということです。

なお、私がエネルギー管理士資格に挑戦したのは、電力プラントへの転職を見越したからではありません。たまたま、受験する気になっただけです。

結果として、受験するということを転職に上手く活かすことができました。試験が近いときは、あなたも同様に試して見る価値はあります。

ただし、無節操にやると逆効果です。例えば、「電験3種資格を取得していないのに、電験1種資格を勉強中だ」というのは、全く説得力がありません。私の場合、電験2種資格を取得していて、プラント関係資格としてエネルギー管理士資格の勉強中をアピールしています。

したがって、「何年か前に電験3種資格に合格したので、今は電験2種資格合格に向けて勉強中だ」という、必然性や順序に飛躍がないアピールをすると良いです。

そのほか、ガス・水道業界では、特殊な資格が多く、入社してから取得することが一般的です。

ガス事業者は、ガス主任技術者を置く必要があります。難易度は高くありませんが、特殊でツブシが効かない資格であり、入社前の資格取得はおすすめできません。ガス会社に入れなかった場合、無駄になります。

またガスに関わる設備として、下の写真のようなガスタンク(高圧ガス容器)があります。

このような高圧ガス容器を扱うためには、「高圧ガス製造保安責任者資格」が必要です。しかし、いくつか種類があり、入社前には判断できません。

そのほか、水道事業にかかる資格として、技術士(上下水道部門)がありますが、必置資格ではありません。

これらのガス・水道業に関わる資格は、入社してから取得すると良いです。

電気ガス水道業界はユーザー企業のスキルを求められる

ここまでは、資格について解説しました。ここからは、求められるスキルについて解説します。

電気・ガス・水道業界はユーザー企業です。ユーザー企業は、機器製造メーカーや工事業者などたくさんの関係者に仕事を発注して運営しているという特徴があります。

ユーザー企業の社員は、個々の機械に精通している必要はありません。もちろん個別の機器に詳しいことが害にはなりませんが、最優先されるものではありません。

ユーザー企業の社員に求められる技術的な役割は、機器がプラン全体でどのような役割を持ち、どのような状態にあるかを知悉(ちしつ)することです。

モーターを例に解説します。発電所や、ガスプラント、水道プラントにはモーターがよく使われます。下のように、プラントのいたるところにモーターが設置されています。

このモーターは、保守のしやすさから三相かご形誘導電動機が用いられることが多いです。通常は、簡単に三相誘導電動機と呼び、下のグラフのような特性で動きます。

このような特性を熟知し、「一定期間その特性通りに動くようにメンテナンスできる」というのは、メーカー企業に求められる能力です。あくまでプロダクト(製品)にフォーカスした能力が求められます。

一方ユーザー企業に求められるのは、使い方にフォーカスした能力です。例として、モーターが、まずどのような場面で使われているかを把握します。今回は、下の図のように、モーターを二重系で動かしている場合を考えます。

図は、プラント構内から出る排水を、一旦全て排水槽に貯め、そのあとポンプで汲み出して自然界に放流する場合を想定しています。ポンプは三相誘導電動機で動かしています。

ユーザー企業が考えないといけないのは、メーカー企業のようなモーター単体のことではありません。このポンプが「間欠運転か、連続運転か」「2台同時運転か、1台交互運転か、1台常用1台予備か」など、ポンプの使い方や重要性についてです。

これらを決めるには、「プラント内の排水が毎時どのくらいあるか」「排水槽の容量はいくらか」「放流が許される量はいくらか」など、メーカーが知りえない情報が必要です。

ユーザー企業は、これらの要素を把握し検討して、適切な機器の仕様を選定するのが仕事です。

私が以前勤めていた鉄道会社もユーザー企業ですが、たまにメーカーの仕事を求めて入社してくる社員がいます。このような勘違い社員は、大体早々に会社を辞めます。

この違いを認識していないと、ミスマッチで不幸な転職になりかねません。特に業界を変わろうと考えているなら、自分が何を求めているかはっきりさせておく必要があります。

電気・ガス・水道業の年収

最後に、電気・ガス・水道業の年収について説明します。

ここまでで紹介した求人の年収は、以下のように提示があります。上から、関西電力株式会社、電源開発株式会社、三菱ケミカル株式会社、株式会社ガスアンドパワー、水道業の非公開求人、敦賀グリーンパワー株式会社の年収です。

これによると、電気業界の年収は「300~1000万円」です。ガス業界と水道業界は一社ずつで、それぞれ「540~840万円」「~500万円」です。

水道業の年収が比較的低いですが、これは自治体が水道業を行っているのを参考に委託費を決められているからと考えられます。自治体が、公務員を使って水道業を営むより、外部委託したほうが安いから一部民間委託します。

民間委託したほうが高くなる場合、住民に説明が難しくなるのは、想像に難くありません。公務員の給与は、世間の平均的な水準になるように調整されます。

したがって、国税庁の調査により、世間の水準より高い電気・ガス業界の給与より水道業の給与が低いのは自然です。

なお、業界全体の年収分布は、国税庁の民間給与実態調査を参考にすると良いです。下図は、その統計データをグラフ化したものです。

引用:平成29年度民間給与実態調査(第8表)をグラフ化

この調査によると、特徴的な点は「中央値が600~800万円であり、ほかの業界より高いこと」「1000~1500万円に別のピークがあること」です。

関西電力株式会社の提示年収は「300~1000万円」とあり、「提示しているだけで払う気はないのではないか」と勘ぐりたくはなります。しかし、この調査によると「あながちそうでもない」と考えられます。

もちろん経験により、300万円からスタートすることもあるでしょう。しかしながら、長く勤続して実力をつけ、実績を積めば年収1000万円も夢ではない仕事と言えます。

このように、個別の求人の提示年収は、政府統計と比べてみると妥当性が判断できます。この手順を踏むことで、給与面でのミスマッチを減らすことができます。

まとめ

電気・ガス・水道業界の技術職の求人は、電力業界の求人が多いです。

電力業界は、「10電力会社」「J-POWER」のほか、新電力といわれる事業者が求人を出していることが多いです。また新電力には、全てを売電用ではなく、自前の工場で使う分の余った電力を売っている事業者も含まれます。

ガス業界は、ガスに関する求人は出てくるまで待つ必要があります。また、転職エージェントを通じて紹介される非公開求人を、あわせて探すと良いです。

ただし、ガス会社も新電力として電力事業に参入しつつあります。ガスに関わる仕事にこだわらなければ、ガス会社が運営する発電所の技術職に応募する選択肢が増えます。

水道業界は、公務員試験を受けて業界に入ることが第1選択になります。そのほか、自治体から上下水道事業の委託を受けている会社が求人を出していることがあります。

これらの求人では、機械・電気ともに技術職を募集しています

この業界で役に立つ資格は、いくつかあります。しかし、現在あなたが取得していないなら入社後取得することで問題ありません。

最後に、この業界の年収は、国税庁の調査によるとほかの業界と比べて高い水準にあります。

応募する会社の年収が妥当であるかどうかは、政府統計と比べることで判断できます。このような確認をしておくことで、転職で失敗することを防ぐことができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。