製造業やエネルギー・環境プラントでは、機械がなくてはならない存在です。その機械を適切に保全し、機能を保つスペシャリストの資格として、機械保全技能士資格があります。

では、機械保全技能士資格を持って転職を考えたときに、求人をどのように探し、どのように採用試験を突破していけばよいのでしょうか? 転職で成功するためには、機械保全技能士資格の位置づけを理解し、あなたの強みと合わせて企業にアピールする必要があります

ここでは、「機械保全技能士の求人の探し方と注意点」「機械保全技能士の評価」「機械保全技能士の年収と資格手当」について詳しく解説します。

求人サイトで「機械保全技能士」をキーワードで検索するときの注意点

求人を探すときに、多くの人は転職サイトで求人を探します。実際に「機械保全技能士」をキーワードとして求人を検索すると、多くの求人がヒットします。

しかし、ヒットする求人の全てで、あなたの経験やスキルが活かせるわけではありません。

求人票には「機械系」「電気系」の区別がない

機械保全技能士資格保有を条件にしている求人は、求人サイトなどで「機械保全技能士」をキーワードにすれば容易に見つかります。ただし注意しないといけない点は、資格自体が「機械系」「電気系」と別れていても、求人では区別されていることが少ない点です。

例えば下のDIC株式会社の求人では、歓迎条件として「機械保全技能士」とだけ記載してあります。DIC社は、印刷インキで創業し、化学系素材の会社として発展してきた会社です。この求人では、愛知県の小牧工場でのプラントエンジニアを求めています。

必須・歓迎要件を見る限りでは、機械系・電気系のどちらでも問題ないように思えます。ただ、のちほど詳しく説明するように、この求人は電気系の仕事が多い職種の募集です。

そのほか、いくつかの求人を確認しても、「機械保全技能士(機械系)」「機械保全技能士(電気系)」というような記載がある求人は見当たりませんでした。まずは求人にこのような特徴があることを知っておく必要があります。

「機械系」と「電気系」では設備保全の仕事で求められるスキルが異なる

機械保全技能士は「工場の設備保全」に関する資格なので、募集される職種は「設備保全」に関わる職種です。

「保全」を大きな視点で捉えたときに、「機械系」でも「電気系」でも考え方は変わりません。対象の設備が意図せず停止しないように適切な管理・処置を行うのが、設備保全職の基本的な考え方です。

ただし、機械設備保全と電気設備保全では、実際に手を動かして設備を保全する技能は別物です。簡単に言うと、機械設備保全は「目に見えるモノ(機構・部品)」を扱いますが、電気設備保全は「目に見えない電気」を扱います。

私の勤める電力プラントでは、機械系技術者と電気系技術者がいて、双方が「お互いの仕事の内容がよくわからない」とよくぼやいています。例えば以下のようなことを言っています。

  • 機械系技術者→電気は見えないからさっぱり理解できない。
  • 電気系技術者→機械のどこを見て良し悪しを判断しているのか理解できない。

このように、相互に相容れない場合があります。つまり、機械系技術者なのに電気系技術者の募集に応募しても、採用までこぎつけるのは難しいです。万一採用されたとしても、仕事に慣れるのにかなりの努力を要します。

したがって、求人の資格要件だけでなく、業務内容を十分に理解して応募する必要があります

先程のDIC社の求人だと、業務内容欄に下図のように記載があります。職務内容だけ読むと機械系・電気系のどちらでもあると読めます。

ただし、橙色下線部を確認すると「電気計装」「入社時は機械または電気のいずれかの経験で可」とあります。つまりこの求人は、どちらかというと電気よりの仕事が多い職種と考えられます。機械系技術者でも応募はできますが、電気に関して極端な苦手意識があるなら、応募すべきではありません。

また求人によっては、業務内容欄を読んだだけでは機械系職種か電気系職種か判別しづらい求人もあります。

そのようなときは、求人を出している企業に問い合わせたり、転職エージェントを介して詳細な業務内容を確認したりすることが必要です。実際に私が転職活動をしたときに、転職エージェントを介して先方企業に問い合わせをしたときの電子メールの一部が下図です。

気になった求人の記載内容に、電気系職種の業務内容のほかに、機械系資格である「ボイラー技士資格」が記載してあったために詳細を確認しました。私は電気系技術者なので、機械系業務がどれくらいの量があるのかを確認したのです。その結果、私の経験希望には合わないということで、応募を見送りました。

このように、応募前に求人の詳細内容を確認しておけば、無用な時間を取られることがありません。また、ミスマッチによる不幸を回避しやすくなります。

機械保全技能士の評価

では、機械保全技能士資格を持っていると、企業にどのように評価されるのでしょうか。

まず知っておかなければならないのが、機械保全技能士資格は「名称独占資格」であるということです。名称独占資格は、「その資格を持っているものだけが、名乗ることを許される名称がある」資格です。

つまり、機械保全技能士資格を持っていると「機械保全技能士」を名乗って仕事をすることができます。

しかし、機械保全技能士だけが行うことを許された業務は存在しません。つまり、機械保全技能士資格は「機械保全について一定程度の知識技能を持っていることを認定する」資格です。

そのため、先ほど紹介した求人でも機械保全技能士資格は歓迎条件とされていました。そのほかの求人も探せる範囲で確認したところ、機械保全技能士資格を必須条件としている求人は見つかりませんでした。

企業の採用担当にとって機械保全技能士資格は、求職者の機械保全の知識技能を測る一つの手段に過ぎません。

私の同僚に、製紙工場の技術職で採用担当として働いたことのある人がいます。彼に機械保全技能士資格の評価について聞いてみると、下記の回答をくれました。

機械保全技能士資格を持っていて、マイナス評価することはない。ただ、特段プラス評価する資格でもない。機械保全技能士資格が、採用の決め手になることはない。

企業の採用担当からすれば、採用選考を通して面接や様々な試験をしているうちに、どの程度の能力を持っているかは推し量れるものです。機械保全技能士資格は、その一材料です。

機械保全技能士資格を持っていることを全面に押し出すのではなく、卓越した保全技能があることをアピールすべきです。

募集職位・年齢に応じた級がないと役に立たない

また、機械保全技能士資格は、受験者の技能レベルと年齢ごとの受験者数が公開されています。受験者に求められる技能レベルは下記のとおりです。

機械保全技能士の級 求められる技能レベル
特級 機械保全の職種における管理者又は監督者(管理職クラス)が通常有する技能・知識
1級 機械保全の職種における上級の技能者(部門のリーダークラス)が通常有する技能・知識
2級 機械保全の職種における中級の技能者(新入社員から中堅社員の実務担当者クラス)が通常有する技能・知識
3級 機械保全の職種における初級の技能者(学生から新入社員クラス)が通常有する技能・知識

参考 : 『機械保全技能検定試験科目及びその範囲並びにその細目』(公益社団法人日本プラントメンテナンス協会)より抜粋・注釈

この技能レベル設定に伴って、機械保全技能検定試験の受験者の年齢も大きく偏っています。下の図は、機械保全技能検定試験主催者の公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が公開している受験者数と年齢区分のグラフです。

引用 :公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会ホームページより

これによると、機械保全技能士3級は10代のうちに取得する人が多く、2級だと27歳前後、1級だと35歳前後、特級だと40歳前後に取得していると記載されています。

つまり、20代前半の転職なら2級や1級の機械保全技能士資格を持っていると保全技能の能力が高いと判断されやすいです。しかし、30代の転職で2級や3級の機械保全技能士資格をアピールしても、年齢なりの戦力を求める企業には響きません。

特に後者の場合は、機械保全技能士資格以外で応募企業の求める知識技能の水準を満たしているかをアピールする必要があります

例えば、下のスズキ株式会社の求人で考えてみます。スズキ社は、オートバイや自動車の世界的メーカーです。

この求人では、静岡県の工場の設備保全部門における将来の管理職候補を募集しています。必須の業務経験として、「設備保全の統括業務」とあります。あなたが一人で保全業務を遂行する能力を求めるだけでなく、「組織的に」設備保全を遂行するための能力を求められます。

よって、歓迎条件に機械保全技能士資格があるものの、3級や2級資格を持っているだけでは高い評価を得られるとは考えにくいです。1級や特級資格を持っていれば、組織的に設備保全を遂行する能力の裏付けとして評価されやすくなります。

このように、「機械保全技能士資格を持っていること」だけでなく企業がどのような知識・能力を求めているのかを読み取ってアピールすると、採用試験を突破しやすくなります

機械保全技能士有資格者の年収・資格手当

最後に、「機械保全技能士」の有資格者の年収・資格手当について解説します。

冒頭紹介したDIC社の年収は、下図のように求人票に 500~800万円と提示されています。

同様にここまでに紹介してきた求人と、このあとで資格手当について紹介する求人の計3社の年収をまとめたものが下表です。

会社名 提示年収[万円] 業種
DIC(株) 500~800 製造業(化学)
スズキ(株) 500~800 製造業(輸送用機械器具)
(株)小澤製作所 490~700 建設業(設備工事)

また、給料に上乗せされる資格手当について、機械保全技能士の有資格者に支給している金額が明記されていたのは、下図の株式会社小澤製作所の求人がありました。小澤製作所は、愛知県を中心としたプラントの機器設計製作・据付工事の会社です。この求人では、機械保全技能士1級資格を持っていれば、月額10,000円の資格手当が支給されると記載されています。

月額で10,000円ということは、年収換算して120,000円です。手当なので、ボーナスにも残業代にも反映されません。

以上のことから、機械保全技能士資格を持っていたとしても、大幅な年収増は見込めません

そこで、転職で年収増を目指すなら、戦略を考える必要があります。機械保全技能士資格が活かせる設備保全職は、様々な業種で必要とされる職種です。

勤める会社の業種が変わって保全対象とする設備が変われば、覚え直さないといけないこともあります。しかし、「設備保全」の原理原則は変わらないので、異業種への転職も難しくありません。私は電気の設備保全経験者として、鉄道から電力への異業種転職を成功させています。

一方、業種ごとの平均年収は信頼できるデータとして厚生労働省が毎年公開しています。それは賃金構造基本統計調査で、下のグラフに機械保全技能士資格が活かせる業種をピックアップして紹介します。なお、グラフ中、青色が製造業、緑色が非製造業の業種です。

引用 : 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)より抜粋してグラフ化

このグラフによると、平均年収の最も高い業種と最も低い業種で、年収差が数百万円違うことがわかります。つまり、資格手当での年収増は12万円程度しか見込めないので、業種を選んで転職したほうが高年収を得やすいという点で有利です。

以上を踏まえた上で転職活動することで、年収面で転職成功しやすくなります。

まとめ

機械保全技能士資格を活かした機械・電気系の転職について詳しく解説してきました。

機械保全技能士資格が条件に記載されている求人は、転職サイトなどで「機械保全技能士」をキーワードに探せば容易に見つかります。しかし、機械・電気を分けて記載している例はほぼないです。したがって求人票の業務内容をよく分析して、機械系技術者を求めているのか、電気系技術者を求めているのかを判断する必要があります。

また、求人票で判断つきづらい場合は、転職エージェントなどを介して企業に問い合わせることが出来ます。この手続を踏むことで、ミスマッチを減らすことが出来ます。

機械保全技能士資格は、設備保全業務を行うのに取得が必要な資格ではありません。したがって、求人を出す企業からすればプラスアルファの位置づけで評価されます。

そして、資格の級により求められる技能レベルと職位が想定されています。応募する求人の業務内容に応じた適切なアピールをする必要があります。

機械保全技能士の有資格者を募集している求人の提示年収は、業種により様々です。また、機械保全技能士資格に対する資格手当は、年間で10万円程度と考えられます。

つまり、年収増を目的に転職する場合は、資格手当の有無で求人を選ぶのではなく平均年収の高い業種の求人を選ぶことで、年収アップを実現しやすくなります


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。