環境保護意識が高まるにつれ、再生可能エネルギーの一つとして注目を浴びてきているのが、地熱発電です。我が国は火山大国であり、地熱発電に対する期待が大きいです。将来を見据えて、地熱発電業界に転職を目指す電気技術者も多いです。

しかしながら、ほかの発電方式に比べて地熱発電が占める発電量の割合は小さいです。これは、地熱発電所が少ないことを示しています。つまり、先見の明を持って地熱発電所に転職しようと考えても、優れた求人を見つけることが難しいということです。

転職成功するには、第一に優れた求人を見つけ出さなくてはなりません。そして十分な情報収集を行うことによって、満足できる転職へとつながります。

ここでは、「地熱発電の求人の実態と探し方」「活用できる経験」「注意すべき企業」などについて詳しく解説します。

地熱発電の求人の実態を知る

地熱発電の電気エンジニアとして転職を考えるとき、どのように求人を探したら良いでしょうか。試しに、多くの転職成功者が使っている転職サイトを使って求人検索した結果が下図です。

「地熱発電 電気」をキーワードに求人検索して、79件の求人がヒットしました。

10万件を超える求人の登録がある、大手転職サイトのdodaの検索結果がこの結果です。ほかの転職サイトを使って検索しても、同様か、それ以下のヒットしかありません。そのうえ、ヒットした求人には、電気技術職以外の求人も含まれます。つまり、転職サイトの求人検索に頼っていたのでは、望むような転職を叶えることは難しいです。

ちなみに、先程の検索でヒットした求人の中で、地熱発電所の運営に直接関わる電気エンジニアの求人は、下図の1件だけでした。この求人は、オリックス株式会社の求人です。

この求人では、北海道函館市にある地熱発電所で勤務する電気主任技術者を募集しています。地熱発電事業運営会社として、ORジオ南茅部株式会社を設立し、オリックス社で採用して出向させる求人です。オリックス社は、レンタカーやプロ野球のイメージが強い会社ですが、このような電力事業も行っています。

ただ、オリックスの求人のように、地熱発電の運営事業者が求人を出していることは多くありません

そこで、地熱発電を運営する会社の求人を探し当てる、別の方法を実践する必要があります。

まず非公開求人を探すのがセオリー

転職サイトの求人のうち、あなたが自らキーワード検索して探し当てることのできる求人は、公開求人です。

実は、転職サイトに登録されている求人には、公開されている求人と、非公開の求人があります。非公開求人は、下図のように全求人の80%程度であると言われています。この比率は、どの転職サイトでも概ね変わりません。

この非公開求人にアクセスするには、転職エージェントから紹介してもらうしか方法がありません。非公開求人の中に、地熱発電の電気エンジニア募集求人があったときは、転職エージェントサービスに登録していないと、求人の中身を確認することすらできないのです。

例えば、技術系に強い転職サイトのメイテックネクストで「地熱発電 電気」とキーワード検索すると、下図のように非公開求人の数を確認することができます。

メイテックネクストの検索結果には、公開求人はなく、非公開求人だけです。メイテックネクストの転職エージェントサービスに登録していないと、この求人の内容を知ることすらできません。

このように、公開求人に加えて求人を探す第一の方法は、非公開求人を探すことです。

事業者名から逆算して地熱発電の求人を探す

地熱発電の電気技術者求人を探すもう一つの方法は、「地熱発電事業をしている事業者名を調べて、その事業者名で求人検索すること」です。地熱発電事業者の一覧は、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)のホームページなどに掲載されています。

ここから抜粋した内容が、下表です。

  • 北海道電力(株)
  • 東北自然エネルギー(株)
  • 岩手地熱(株)
  • 東北電力(株)
  • 三菱マテリアル(株)
  • 湯沢地熱(株)
  • 電源開発(株)
  • (同)わいた会
  • (株)杉乃井ホテル
  • 九州電力(株)
  • 出光大分地熱(株)
  • 九電みらいエナジー(株)
  • (株)メディポリスエナジー

なお、出力1,000kW未満の小規模地熱発電事業者は割愛しています。また、(株)杉乃井ホテルは、先に求人を紹介したオリックス(株)のグループ会社です。同社は、今後いくつかの地熱発電所建設を計画しています。

小規模地熱発電事業者では、運営に関して電気技術者の業務を外部委託していることもあります。したがって、求人を探すながら、上に記載した規模の大きい会社から探すのがセオリーです。

例えば、九電みらいエナジー株式会社は、下図のように再生可能エネルギー分野の電気技術者を募集しています。九電みらいエナジー社は、旧一般電気事業者の九州電力株式会社の子会社です。

実は、私は転職エージェント経由で九電みらいエナジー社に電気技術者として転職を打診されたことがあります。そのときの話は以下のような内容でした。

九電みらいエナジー社は、九州電力の再生可能エネルギー分野の特化部隊として将来九電グループの稼ぎ頭になることを期待されて設立された。再生可能エネルギーという新しい分野に、積極的に挑戦していく会社である。

電力会社というと「安定」のイメージがあるが、九電みらいエナジー社ではさまざまなことに積極果敢に挑戦していく姿勢の人材を欲しがっている。「九電のネームバリューで応募してくるような人はいらない」と採用担当者が言っている。

九電みらいエナジー社に限らず、地熱発電などの再生可能エネルギー分野で事業展開している会社は、新しい領域へ挑戦している会社です。再生可能エネルギーの発電は、そのほかの発電と比べて実績が少なく、法整備も遅れています。

したがって、さまざまなことを手探りで進めていく必要があります。受動的な働き方より、能動的に自ら考え事業を作っていく姿勢が求められます

直接地熱発電の技術者募集のほかにも、電源開発株式会社では、下図のように「地熱発電ではない電気の技術系総合職」「再生可能エネルギーの事業企画職」の募集が出ていました。

これらの求人は、「地熱発電の電気系技術者」を求めるものではありません。しかし、電源開発社は、先に記載したとおり地熱発電事業者の1社です。入社後に一定の期間をおいて、異動などで「地熱発電の電気系技術者」として仕事をできる可能性があります。

採用試験を通して、「地熱発電に電気系エンジニアとして携わりたい」ことを強くアピールして採用されれば、異動も叶いやすくなります。

もちろん、採用試験前に、「将来、地熱発電の電気エンジニアとして働くことが可能か」確認しておく必要があります。少しでも異動の可能性があるなら、応募して見る価値は十分にあります

社内で得られる地熱発電の情報は、社外で得られるものより具体的で生々しいものです。給料をもらいながら転職活動しているようなものです。

もし不合格だったとしても、採用面接などで企業が地熱発電についてどのように考えているか詳しく知ることができます。別の会社を受けるときに大変活用できる大切な情報です。

以上のように、地熱発電の電気技術者として転職するなら、小さな情報をかき集め、小さなチャンスを最大限活かす工夫が必要です。

発電事業者なら電気の経験が強みになる

では、地熱発電の電気エンジニアになるのに、有利な経験はあるのでしょうか? 採用試験で評価されやすい経験を知っておけば、面接の際などに強くアピールすることが可能です。

下の写真を見てください。これは、実際に地熱発電所に設置されている送り出しの変圧器です。

また、次の写真は、地熱発電所の送電端のGISです。

どちらも一般的なもので、地熱発電所特有のものではありません。地熱以外の発電所を持つ事業者や、需要家に設置されているものと大きく変わりません。

地熱発電所は、原動力が地熱による蒸気タービンというだけで、ほかの発電設備と電気設備に特段大きな違いはありません。つまり、同様の電気設備保全や工事に関わった経験がアピールポイントになります

反対を言えば、電機メーカーや電気工事会社に転職したとしても、「地熱発電に携われるかどうかはわからない」ということです。求人検索で「地熱発電」をキーワードにして探すと、メーカーや工事会社もヒットするので注意が必要です。

下図は、大手転職サイトで「地熱発電」をキーワードにしてヒットした、発電所の電気機器を納めているメーカーの求人です。地熱発電のほか、火力などにも従事すると謳われています。

このように、地熱発電に携わりたいなら、地熱発電事業者を探す必要があります。そして地熱発電事業者の求人が見つかれば、そのほかの一般的な電気設備に関する知識経験をアピールすることができます。

事業者の本業により社風が変わる!

地熱発電事業者の求人が見つかったとして、ほかにも注意すべき点があります。それは、地熱発電事業者の本業です。

例えば、冒頭で電気主任技術者を募集していたオリックス株式会社の本業は「金融」です。事業投資として再生可能エネルギー事業に進出してきています。

再生可能エネルギーの分野は、世界的に注目を浴びている分野で、国家的にも投資が大きくなる分野です。さまざまな優遇制度もあり、オリックス社のように異業種から発電事業に進出している企業も多いです。

旧一般電気事業者のように、これまで電気事業を行ってきていて地熱発電事業を始めた企業と、新しく他業種から地熱発電事業に進出してきた企業では、事業に対する姿勢そのものが違います

旧一般電気事業者は、インフラを担う会社として、「品質の良い電気を送り続けること」が使命です。一方、事業投資として再エネ事業に進出している会社に、そのような使命感は薄いです。

これは、私が事業投資系の電力プラントに転職して実感していることです。

私が勤める電力プラントには、旧一般電気事業者である電力会社を定年退職して、技術職として再就職した先輩が何人もいます。その先輩の日々の言動を見ていると、「前の会社と考え方違う」とよくぼやいています。年収が下がったうえに、社風のミスマッチで早々にインフラ系企業の電力プラントへ再転職した同僚もいます。

私自身も鉄道というインフラ系会社に勤めていたので、どちらかというとぼやいている先輩と考え方が近いです。会社の方針と自分の仕事に対する考え方が違って、ストレスを感じることも多いです。

例えば、インフラ企業だと、「意図しない故障で設備を停めること」はあってはいけません。したがって、少しでも故障のリスクを減らすために予防保全や多重系への設備投資額が大きいです。これらに対する予算も取りやすいです。

一方投資会社が運営する発電所では、故障して停めたところで一般社会にほとんど影響がありません。そこで投資会社が気にするのは、発電所を停めたときの損失額と設備投資を絞ったときに浮いた投資額とのバランスです。インフラ企業に比べて、設備投資に対する予算は格段に取りにくいです。

このような社風は、会社の本業によって大きく違います。あなたが今勤めている会社の本業の業種と、転職先として希望する会社の本業の業種が違う場合は、社風についてあらかじめ確認してください。そうすることによってミスマッチという不幸な結果を防ぐことができます。

地熱発電事業者以外の求人を探す

ここまでは、地熱発電事業者に転職する場合を解説してきました。しかし、地熱発電に関わるのは地熱発電事業者だけではありません。発電に関わる機器を納めるメーカーや、工事会社、新しく地熱発電事業開発をサポートするコンサルタントなどの会社もあります。

上で紹介した富士電機社は、地熱発電に関係する電気機器メーカーの一つです。また、地熱発電用の蒸気井を掘る専門会社として、以下に示す地熱エンジニアリング株式会社があります。この求人では、坑井掘削工事の工事用電気設備工事を担当する人材を求めています。

地熱エンジニアリング社は、東北・北海道地域の地熱発電所向けの坑井掘削工事を多く受注しています。したがって、勤務地は東北・北海道地域の地熱発電所を転々とすることになります。また以下は、地熱エンジニアリング社が、この求人の応募条件としている項目です。

工事用電気工事自体は、一般の電気工事と共通する部分の多い工事です。1級電気工事士か第三種電気主任技術者資格を求めていることから、工事現場では下の写真のように高圧で受電し、掘削機械を稼働させていると考えられます。

写真は、プラント建設工事の高圧仮設受電の様子を撮影したものです。坑井掘削では、あつかう機械が違うだけで、動力としての電気設備は一般的なものと変わりません。したがって、この求人では電気工事の経験を生かすことができます。

そのほか、下に示す株式会社エディットは、新しく地熱発電を始めたい法人に向けて地熱開発をサポートしている会社です。福岡市に拠点を置き、九州地方の地熱発電事業を支援しています。

コンサルタントの仕事なので、自ら地熱発電所の運営をするのではありません。地熱発電所の建設から運営開始、運営中のエンジニアリングなどのサポートなど、事業者の裏方に回って仕事をします。

この求人では、下の図のように建設業界での実務経験を歓迎条件としているだけです。直接電気についての経験や資格について、言及されていません。

しかし、同じ求人票の会社説明の事業内容欄を見ると、以下のように、コンサルタント業務の詳細として、「官公庁への電気関係認可申請」「電力会社との協議」「(電気機器)メーカーの選定」「建設工事の施工管理」など電気技術者としての経験が必須の業務がたくさん記載されています。

このような記載があるので、あなたが電気技術領域で活躍できる可能性はあります。具体的には、プラントエンジニアリングでEPC業務の経験があったり、サブコンで施工管理経験があったりするとアピールポイントになります。

このような記載は、企業ホームページに詳細が書かれていることが多いです。エディット社の場合も、下図のようにホームページに記載がありました。

 

引用 : 株式会社エディットホームページより

このように、求人票を見ただけでは自分の経験が活かせるかどうかわからない求人であっても、企業情報を探して読み込むことが大切です。

もちろん、応募段階の初期コンタクトで、あなたが希望する仕事があるのかどうかを確認しておくと、なお良いです。転職してしまってからミスマッチを感じては手遅れですし、最終面接まで進んで「考えていた仕事と違った」というのでは、それまでの時間が無駄になります。

企業と接触した早い段階で、マッチングを確認しておくと、時間の無駄は最小限に抑えられます。あなたが直接企業に問い合わせても良いですし、転職エージェントを介して間接的に問い合わせても良いです。

私は求人情報を読み込んで、それでも疑問に思うことは転職エージェントに確認してもらっていました。さらに採用試験中に面接があるので、そこで疑問に思うことはすべて質問して回答を求めていました。

企業からしたら、「面倒なやつだな」と思われたかもしれません。それでも転職成功しているので、いくら質問しても問題ありません

これらは、あなたの人生を左右する大切なプロセスです。十分に情報を取得し吟味して、転職成功を勝ち取ってください。

まとめ

地熱発電に関わる電気技術者の転職について、詳しく説明してきました。地熱発電に関わる企業が少ないので、求人自体もごく少ないのが実情です。キーワード検索で求人を探しても、希望する求人が見つかる可能性は限定されます。

そこで、「地熱発電をしている事業者を調べてから、その企業が求人を出していないか探す」「非公開求人を探す」といった別の手段を用います。これらの手段を駆使することで、優れた求人を探し当てる可能性が高まります。

地熱発電に関する電気技術は、蒸気を使うほかの発電方式とよく似ています。したがって、一般の電気技術を習得していることが活用できます。これまでの経験・資格などをアピールできます。

転職時の注意事項は、地熱発電事業をしている企業の本業により、社風が全く異なることです。業務内容ではなく、社風がミスマッチにつながることがあります。求人を出している企業の本業を調べて、あなたが勤めている会社の業種と異なるときは、十分に調査することがミスマッチを防ぎます。

実際に地熱発電事業を行っている企業のほかに、エンジニアリング会社やコンサルタント会社も地熱発電に関わる電気技術者としての求人を出している場合があります。ただし、地熱発電以外の業務もあります。

あなたが電気技術者としてどのように働きたいのかを整理してください。そのうえで、入念な情報収集をして転職活動をすることが、転職成功へつながります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。