電気計装は、現代の生活を支える重要な仕事です。決して目立つ職業ではありませんが、製造業を中心になくてはならない存在として、いつでも求人がある職業の一つです。

ただ、電気計装エンジニアが活躍できる会社の種類が多すぎるため、転職活動で多くの求人の一部だけを見て決めてしまい、後悔する人があとを絶ちません。転職成功するには、まずどのような企業で電気計装エンジニアが求められているのかを正確に知る必要があります。

その上で、あなたの得意なところや、これまでの経験を整理してください。そうすれば優れた求人に応募でき、かつ採用試験に合格しやすくなります。

ここでは、「電気計装エンジニアの仕事内容と探すべき分野」「分野ごとの求人例と特徴」「採用試験で評価されやすい電気計装の資格」について詳しく解説します。

電気計装職が求められる現場と仕事内容

計装とは計測装置、制御装置を装備するという意味です。電気計装は、電気を使った計装を指します。現代の産業において、なくてはならない仕事です。

主に流体・気体・粉体などの連続して流れるものに対して、計装技術で計測制御します。例えば下の写真は、ある工場の排水弁を監視制御する装置です。工場排水中の環境汚染物質濃度を常時監視しており、濃度が基準値を超えた場合は即座に排水弁を遮断する機能を持っています。

排水弁の監視制御は簡単な例で、工場では膨大な量の監視点と制御装置を組み合わせて製造などに用いています。そうすることによって、排水の監視だけでなく、製造工程においても繊細に工程を制御し、品質の高い製品を生み出しています。

この計装は、もともと機械制御の領域で、電子化に伴い電気が使われるようになった経緯があります。そのため、機械・電気・情報通信のさまざまな技術が必要です。

私は、電力プラントに転職するまでは、シーケンス制御の経験しかありませんでした。シーケンス制御だと開閉器の入切の2値を把握していれば十分です。電力プラントに転職して、初めて計装に触れたとき、バルブの開閉を0〜100%まで連続的に制御するのを見て、複雑さに面食らった覚えがあります。

機械側(バルブ)の動作仕様について、ある程度知っていないとまともな制御ができません。電気図面だけでなく、機械図面も読む必要があります

一方、電気計装エンジニアの強いところは通信やコンピュータを使った制御に関係する部分です。例えば、下の写真は火力発電所の制御監視を行う操作PCです。

現代の計装は、コンピューターで制御監視するようになっています。コンピューターで制御監視するには、TCP/IPなどのEthernetの通信技術が使われます。

機械や電気の技術は枯れているので、これから将来も急激に技術革新が進むことは考えにくいです。一方で、コンピューターや電気通信などの情報通信技術は、まだまだ発展途上です。10年経てば大きく技術が進歩する領域なので、これらの技術を習得し続けることが求められます

計装の仕事は、これらの機械・電気・情報通信の技術を駆使して、制御監視対象であるプラントを繊細に稼働させる仕事です。プラントを人体に例えるならば、脳や神経を担当する仕事と言えます。プラントの制御監視は、複雑になれども簡単になることはないので、電気計装エンジニアは将来性のある仕事です

探すべき業界は化学・石油・電気・水処理などに関わる業界

では、計装の仕事を探すときは、どのように探せばよいのでしょうか。

計装は、プロセス工場で必要になる技術なので、プロセス工場がある業界を探すのが第一選択肢です。例えば、下の写真はアンモニア工場です。アンモニアは気体であり、アンモニア工場はプロセス工場です。このような工場に関連する企業が求人を出していないか探していきます。

このようなプロセス工場があるのは、化学、石油製品、鉄鋼、セメント、ガラス、ゴム製品を作る製造業が多いです。

また、プロセス工場は製造業ばかりにある工場ではありません。電気・ガス供給業(エネルギープラント)もプロセス工場と言えます。工場と表現するのは正確ではないかもしれませんが、廃棄物焼却プラントや水処理プラントもプロセス工場の一種です。

そして、プロセス工場以外でも計装技術が使われている分野があります。それは、ビルのユーティリティ(空調、給水など)です。「ビル計装」という名前で、求人募集される場合があります。

業界が変わると、扱う設備や機械が変わります。しかし、計装の基本的な考え方は変わりません。すでに計装の経験があるのなら、今働いている業種ではなく、異業界の求人を選択肢に入れると、転職の幅が広がります。

なお、ここまで紹介した業界の特徴をまとめたものが下表です。

業界 景気の影響 給与水準(年収)
製造業 受けやすい 業種による
エネルギー 短期では、受けにくい 比較的高い
廃棄物焼却・水処理 ほぼない 安い
ビル 受けにくい 安い

求人を探すときは、以上の業界から出ていないか探すことになります。計装未経験であれば、今まで働いてきた同じ業界で計装に関われる求人を探したほうが転職しやすいです。計装の経験があれば、下で述べる同じ職種で異業界への転職も難しくありません。

経験が活かせる職種を選ぶ

転職するときに、業界を決めること以上に大切なのは、職種を決めることです。具体的な仕事の経験を活かすには、同じ職種に転職すると活かしやすいです。また、採用試験で経験を評価されるのは同じ職種であることが多いです。

計装の職種として、主に「ユーザー企業の工事・保全部門」「メーカーの設計製作部門」「メーカーの工事部門」「工事の実施工部門」があります。

ここからは、それぞれの職種について求人例を示しながら詳細を解説します。

ユーザー企業の保全部門の特徴は、本業優先であるということ

ユーザー企業とは、計装技術そのものを製品やサービスとして提供するのではなく、計装技術を使って何か製品やサービスを生み出している企業のことを指します。例えば、製造業だと、プロセス工場がある、石油・化学・電力・ガス・鉄鋼・半導体などの各業種がユーザー企業です。

業種ではありませんが、下の写真のような廃棄物焼却施設や水処理、ビル空調などを運転したり管理したりする企業もユーザー企業と言えます。

具体的な求人を示すと、下の王子製紙株式会社の求人では電気計装の技術者を募集しています。この求人は、愛知県にある同社春日井工場に勤める技術者を募集しています。契約社員としての募集ですが、1年後に社員登用前提の求人です。

王子製紙社は、製造業のうち「パルプ・紙・紙加工品製造業」に分類されます。このようなユーザー企業の保全職の特徴は、「計装技術はあくまで本業のためにある」ということです。つまり、王子製紙社の場合は、紙を作るために計装技術者を社内に置いています。計装の技術者は花形ではなく、脇役です

私の同僚がかつて製紙会社で働いていたので、社内の様子について聞いてみました。そうすると下記のように教えてくれました。

製紙会社の花形部署は抄造(紙を作る部署)だ。(計装を含む)設備保全は、抄造部が安定して製造できる設備・環境を整える。

設備保全の部署は、設備故障が起きたときに先陣を切って現場に駆けつけて、できるだけ早く復旧する必要がある。リーダーシップを持って、グループを引っ張っていくような人が好まれる。

ちなみに、うちの会社だと計装を担当するのが、機械系のバックグラウンドを持つ人が多い。

このように製造業だと「製品を作り続けること」が、計装業務の大きな目的です。設備故障をしたときは、その故障をいち早く復旧することも大切ですが、場合によっては故障が製造に影響しないように仮復旧して、工場停止時に本復旧することもあります。

常に会社が最優先すべきことを念頭に、柔軟に設備保全をする必要があります。例えば、発電所なら発電を続けることが最優先事項です。水処理施設なら、水処理を続けることや環境中に有害物質を放出しないことが優先事項になります。

ユーザー企業の求人を探すときは、以上のような働き方になります。

メーカーの設計・製造職として機器を製作する

ユーザー企業に対して、計装機器を製造・設置する企業をメーカー企業と呼びます。製作するモノは、計装器単体だったり、プラント全体だったりします。まず、計装機器単体を設計・製造する職種について解説します。

下に示すアズビル株式会社は、横河電機株式会社と並んで計装の二大企業のうちの1社です。東京都大崎で自動制御盤設計(リレーシーケンス設計)を行う技術者を求めています。

アズビル社では、計測器や調節弁なども生産しています。この求人では、複数機器を組み合わせた計装システムのうち、自動制御盤のリレーシーケンス部分を設計する技術者を求めています。実際にシステムを製作するのは、他部門または外部企業です。

設計は、建設するプラントやビルディングに合わせた計装システムを構築します。お客さんの漠然とした要求仕様を、無数にある計装機器を組み合わせて最適な計装システムとして作り上げます。

自分一人で完成できるものではなく、お客さん、機器ベンダー、施工会社など様々な人とコミュニケーションをとりながら仕事を進めていきます。リレーシーケンスに関する技術を持っていることは最低限で、さらに適切なコミュニケーション力が必要な職種です。

一方、次に示す求人は、設計から製作・設置まで行う会社である奈良電機重工株式会社の求人です。香川県にある会社です。募集職種は、電気制御設計ですが、配線製造や設置調整試験を行うこともあると記載してあります。

奈良電機重工社の事業分野は、計装分野を含みます。しかし、「計装」のキーワードは、求人票の事業概要に記載があるだけです。職種や業務内容欄には「計装」のキーワードがありません。私は奈良電機重工社の求人を探すときに、「制御設計」をキーワードにして見つけました。

求人を探すときは、「制御設計」「制御盤設計」などのキーワードも合わせて探すと優れた求人を見つけやすくなります

なお、奈良電機重工社のような制御盤設計製作の会社で働く友人に聞くと、「制御盤」「操作盤」を以下のように使い分けているそうです。

  • 制御盤→圧力、温度など連続的に変化する要素を監視し、制御するもの
  • 操作盤→断路器、遮断器の入切や回線保護などの比較的簡単な制御を行うもの

友人の会社は、ビル計装の製品を作っている会社です。あなたがビル計装関係の求人票を見ていて、制御盤や操作盤といった言葉が出てきたら、上記の違いを思い出してみてください。より適切な求人に応募できます。

計装の施工管理や実施工の職種は建設業である

メーカーが計装機器やシステムを設計製作したあとは、実際に現場に据え付け、試験調整する必要があります。そのときに活躍するのが、工事会社の施工管理や実施工の職人です。

メーカーが自社内に施工部隊を持っていることがあります。例えば、下の写真は水処理プラントの電気計装工事の案内看板です。左隣に体制図が見えますが、元請けは産業用ロボットで有名な安川電機株式会社でした。

安川電機で電気技術者として働いていた知人に話を聞くと、昔から上下水道の水処理施設の電気・計装設備は安川電機の得意な分野ということでした。

先程紹介した奈良電機重工社は、制御盤設計製作だけでなく、下図のように計装関係の工事一式も行うことが記されています。

このような工事に関わる職種として、施工管理職や施工スタッフがあります。

施工管理は、大人数で工事を実施するときに活躍します。工事が円滑に進むように、安全管理・工程管理・品質管理・コスト管理を行います。工事が小規模の場合は、施工をしながら兼任で行うことがほとんどですが、工事規模が大きくなれば専任で施工管理をするのが普通です。

したがって、施工管理職がある会社の規模は大きくなりがちです。例えば、下図の大陽日酸エンジニアリング株式会社の求人では、計装の設計と工程・品質管理をする職種で求人募集しています。

大陽日酸エンジニアリング社は、産業用ガス製造大手である大陽日酸社のプラントエンジニアリングの事業子会社です。したがって、ガス関連の計装工事に強みを持っています。

自社でも制御盤設計・製作をしていて、さらに設置工事も行います。求人票に記載されている「現場の工程・品質管理」は施工管理職としての仕事です。

次に紹介するのは、実施工を行う技術職の求人例です。下に示すのは、株式会社洛南エンジニアリングの工事スタッフの求人です。上下水道施設の計装工事に強みを持っている会社です。

洛南エンジニアリング社の求人票には、「電気工事スタッフ」を募集すると記載されています。しかし、同社の事業内容欄を確認すると、一番上に電機計装設備のプランニング・設計・施工・保守管理が記載されています。

この事業内容に記載されている内容に電気工事も含まれますが、ほとんどが電気計装工事に関係する内容です。それなのに「電気工事スタッフ」を募集しているというのは、未経験者も対象としていることから、おそらく広く注目してもらうためだと考えられます。

「計装工事スタッフ」だと、仕事内容がイメージできる人を絞り込みすぎます。ちなみに、私が初めて転職したときは、「計装」が具体的にどのような仕事か知りませんでした。「電気工事スタッフ」と記載してあれば、興味を持って求人票を見たと思います。

このように、応募者の間口を広げるために「電気工事スタッフ」「電気工事士」というような表現で、計装技術者を募集していることもあります

「計装」をキーワードにして検索してヒットした求人でも、募集職種として「電気工事スタッフ」というような表記をしている場合があります。これらのなかには優れた求人も混じっています。優れた求人を見落とさないように、ていねいに求人票を探してください。

計装の施工部隊に必要なのは先読み

これらの施工管理や実施工の技術者には、計装の技術に加えて「先読み」が大切です。

計装工事は、ほかの機器設置工事や管工事と同時に行うことが多いです。大きな機器や配管が設置完了されてから、計装工事が始まるのが理想です。しかし、実際には工程短縮のために、機器や配管の設置工事と場所を分けて同時に工事を行うことがあります。

このとき、先行して計装工事で取り付けた設備が、後追いの機器や配管と干渉することになったらどうなるのでしょうか? まず間違いなく、計装設備を撤去または移動させられます。機器や配管に比べて、計装設備は小さく軽量だからです。

私は電力プラントの新設で、この後追いの機械工事が原因で、計装設備の移動をさせられた経験が相当数あります。一度設置した設備を撤去して再設置する作業は、仕方のないこととはいえ気持ち良い仕事ではありません。

このやりなおしは、ほかの機器や配管がどのように設置されるかを「先読み」した上で計装工事をすれば、ある程度は防げることです。

もう一つは、ユーザー視点の「先読み」を紹介します。下の写真は、圧力計が傾いて設置してある様子を写したものです。

実はこの圧力計は、床面から2.5mくらいの高さの場所に設置してあります。圧力計の指示面が下向きではなく、真正面を向いていたらどうなるでしょうか? この圧力計の指示値は、プラントの運転員が毎日パトロールで確認するものです。

圧力計の指示面が正面を向いていたら、床面を歩く運転員は指示値を確認すること難しくなります。踏み台を用意する必要があります。手抜きをして、下から読みにくいまま指示値を読んで、誤った値を記録するかもしれません。なんにしろ、余計な手間がかかるのが予想できます。

写真のように取り付けのときに、少し傾けるだけでユーザーの使い勝手が大きく変わります。パトロールの実態をよくわかっているユーザーなら、読みにくい計器の向きについて手直しの指示があるかもしれません。なければ、顧客満足度が下がることは予測できます。

このように、あなた自身の仕事の満足度と顧客満足度を高めるためにも、「先読み」は重要なテクニックです。

計装士資格を求められるか?

最後に、電気計装の仕事をするときにどのような資格が有利なのかについて解説します。

計装に直接関係する資格は、「計装士」という資格があります。この計装士資格を持っていないと計装工事ができないのかというと、そのようなことはありません。計装工事は無資格で行うことができます。計装士資格は、一定の技術力を担保する資格であり、求められる求人は少ないです。

試しに、大手転職サイトのdodaで「計装」をキーワードにして求人検索すると、下図のように1,300件以上の求人がヒットします。

一方、「計装士」をキーワードにして求人検索すると、下図のように130件程度のヒット数になります。

このように、計装士資格を求めている求人は、計装の求人は全体の10分の1程度しかありません。

また、計装士資格が条件に記載されている求人を確認すると、下の株式会社日立プラントサービスの求人のように歓迎条件とされていることがほとんどです。

もしあなたが計装士資格をすでに持っているなら、採用試験でアピールすることで良い条件を引き出すことは可能です。しかし、計装士資格を持っていなくて、これから取得しようと思っているなら、心配無用です。計装士資格を持っていないことによるマイナスは考えにくいです。

では、そのほかに持っていると良い資格はあるのでしょうか? それは「電気工事士資格」です。

計装工事は、同時に電気工事が伴うことが多いです。電気工事を施工するには、電気工事士資格が必要です。したがって、電気工事士資格を求められることが多いです。採用試験時に電気工事士資格を持っていなくてOKでも、入社後速やかに取得を求められる会社もあります。

例えば、上でも紹介した洛南エンジニアリング社の求人を確認すると、電気工事資格を取得することが入社後第一の目標と記載されています。

ちなみに、計装設計の仕事に電気工事士資格は必要ありません。しかしながら、私の友人が計装設計の会社に転職するときに、「必須ではないが、電気工事士資格があるとなおよい」と伝えられたそうです。その会社では、制御盤内の配線を触ることがあるからです。

制御盤内の配線をするのに、電気工事士資格は不要です。しかし、電気工事と類似した作業があるため、「電気工事士資格があるとよい」と言われたということでした。

電気工事士資格も計装士資格と同様に、必須条件としている求人は少ないです。持っていなくても気にせず応募して問題ありません。

ただ、入社後優先して取得すべき資格は、電気工事士資格であることを承知しておいてください。

まとめ

電気計装エンジニアの転職・再就職について詳しく説明してきました。電気計装は、プラントにおいて監視制御をつかさどる将来性のある重要な仕事です。

電気計装の求人は、大きく分けて「ユーザー企業」「メーカー企業」「工事会社」の3つに分類されます。あなたがこれまで経験してきた業種・職種に転職してもよいですが、視点を広げるとさらに優れた求人を見つけることもできます。

電気計装エンジニアの転職において、これまでの経験やスキルを応用できる仕事は多いです。自分の経験・スキル・資格などを棚卸しして、求人を探すことが転職成功への近道です。

計装の求人で生かせる資格は、「計装士」や「電気工事士」の資格があります。ただし、これらの資格は必須とされていることはほとんどありません。資格を持っていなくても、応募して問題ありません。計装の経験やスキルが有れば、採用される可能性は高いです。

一方、すでに該当する資格を持っているときは、採用試験で大いにアピールできます。

以上の点に注意することで、電気計装エンジニアとして転職成功しやすくなります。


技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

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しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。