あなたは、ビルメンテナンスにどうして興味を持ちましたか? 身近にビルメンテナンスを仕事にしている人がいるからでしょうか? 電験や電気工事士の資格を取得したので、転職を考えているときにキーワードとして知ったのでしょうか?

実は、ビルメンテナンス業界は100万人近くの人が働く業界で、3.6兆円規模の市場がある業界です。その割に、あまり仕事内容について情報が出回っていないと思いませんか? これは小さな仕事がたくさんあり、漠然としているからだと考えられます。

ビルメンテナンスに転職しようと考えたとき漠然と仕事内容を捉えていたのでは、転職してから後悔することになります。転職で成功するためには、しっかり仕事内容を認識して優れた求人を探すことが重要です。

ここでは、最初にビルメンテナンスの仕事内容を整理し、電気系の仕事とはなにかを明確にします。そのあと、ビルメンテナンスに必要な資格・優遇される資格を紹介し、業界を構成する企業の考え方と年収、そしてできるだけ高い年収で転職するための方法について解説します。

ビルメンテナンス(ビルメン)の電気の主な仕事内容は設備管理

まずビルメンテナンスの電気系の仕事について整理します。ビルメンテナンス業には大きく3つの分野があります。それは、「警備」「清掃」「設備管理」です。このうち、一番重点が置かれているのは設備管理です。電気系の仕事は、主に設備管理を担当します

では設備管理とは、一体どのような仕事なのでしょうか。ビルメンテナンスが設備管理を行う対象は、オフィスビル、大型商業施設、マンション、病院など様々です。これらの施設の中に、電気で動く設備がたくさんあるのはすぐに思い浮かべられると思います。

例えば、需要設備としてエアコン、電灯、エレベーター、エスカレーターなどが挙げられます。見えないところでは、給水用のポンプや集中監視用のコンピューターもあります。

需要設備に対して電力を送る設備もあります。例えば、電力会社から最初に電力を受ける、受電設備としての変圧器、遮断器、断路器などがあります。そして、需要設備まで送るための配電設備(配電盤、分電盤、ケーブルなど)が設置してあります。

ビルなどで、下の写真のような扉を見たことがある人もいるかもしれません。扉の向こうには分電盤や配電盤が並んでいます。

設備管理は、これらの電気設備が故障しないように、機器が設置されてから「検査」「分析・評価」「対策検討」「対策実施」のサイクルを回し続ける仕事です。

検査といっても、日々の業務で行うのは目視による点検や監視装置による確認です。設備により、1ヶ月から数年ごとに電気を停めて行う検査もあります。検査頻度は、対象設備が故障したときの影響度によって変わります。

例えば、蛍光灯は切れてから交換しても影響がないことがほとんどです。したがって、特に点検や分析評価をすることなく、故障してから連絡を受けて交換します。しかし、受電設備が故障するとビル全体が停電してしまい、テナントに入っているお客様に多大な迷惑をかけます。受電設備は、常に中央監視室などで遠隔監視し、さらに最低月一回の目視点検を行います。

このように設備を適切な周期で検査することで故障の予兆をとらえ、設備を健全に動かすことが設備管理の使命です。

電気主任技術者資格のほか、電気工事士資格が役立つ

設備管理の仕事は、未経験者へのハードルは高くありません。私は新卒で設備管理の仕事を始めて、研修を終えてものの半年もすればそれなりのことはできるようになりました。後輩を見ていても、おおよそ半年から1年位で仕事の内容をつかむことができていました。

しかしながら、ビルメンテナンスは扱う機器が幅広く、極めるには大変です。そのため、取り扱う機器の特徴をすべて完全に理解しようとするのではなく、幅広い機器に対応できる知識・心構えが必要になります。

また、簡易な修繕は自ら行うため、電気工事士などの技能資格が必要です。例えば以下の株式会社セイビ大阪の求人では、電気工事士資格が必須とされています。

なお、ビルメン4点セットと呼ばれる資格があります。これは「第2種電気工事士」「危険物取扱者乙種4類」「第3種冷凍機械責任者」「2級ボイラー技士」を指します。

この中でも優先順位が高いのは、電気工事士資格です。なぜなら、電気設備が圧倒的に多く、故障対応する可能性が最も高いからです。故障対応のとき、電気工事士資格を持っていなければ戦力になりません。未経験であっても、電気工事士資格があるとアピールポイントになります。

ただし、自社で工事をしない場合は外部の電気工事会社や職人に仕事を頼む会社もあります。そのときは、電気工事施工管理技士を取得しているとアピールに繋がります。

例えば、施工管理からビルメンへの転職を狙うには、下図のような求人を探します。新宿のマンション技術スタッフを求めている野村不動産パートナーズ株式会社では、電気工事士1種、電気工事士2種資格のほかに電気工事施工管理技士資格が歓迎条件になっています。

電気に関する業務は、日々の点検や修繕のほかに電気保安という仕事があります。これは、電力会社から電力を供給されるための入り口の設備を保全する仕事です。

この電気保安には、電気主任技術者資格が必要です。電気主任技術者資格は第1種から第3種があり、扱える電圧が下表のように定められています。

ビルメンテナンス業が扱う施設では、第3種電気主任技術者(電験3種)資格が必要な施設が一番多いです。大規模施設では、第2種電気主任技術者(電験2種)資格が必要な場合があります。

下図は、本社は東京で全国に展開しているビルメンテナンス大手のイオンディライト株式会社の求人です。イオンモールで働く第2種電気主任技術者を求めています。

なお、この求人では電験資格さえあれば実務経験なしでも問題ありません。

全国ビルメンテナンス協会が発行する『ビルメンテナンス情報年鑑2019』によると、多くのビルメンテナンス会社が人材不足を感じています。さらに、経済産業省はビルメンテナンスを含む電気保安業に関する電気主任技術者の不足を認識し始めています。

このことからも、電験持ちだとビルメンテナンス業には未経験でも転職しやすいと言えます。

ビルメンテナンスはサービス業

ビルメンテナンスには大きな注意点があります。それは設備管理やメンテナンスという言葉から、設備の相手だけしていればいいと勘違いしてはならないということです。実際には、対人のコミュニケーションをとる場面が数多く発生します

下は野村不動産パートナーズ株式会社の求人です。そして設備点検では、マネジメントや管理組合とのコミュニケーションなど対人の仕事があることが記載されています。

参考に私の体験談をお話します。私は東京駅の配電設備と照明設備を、ビルメンテナンス業と同じように担当していたことがあります。日々の点検と、簡易修繕、異常対応、管球交換が主な仕事でした。これらの仕事は、自分たちだけで完結するものではありません。

まず設備の故障や不具合は、それを使っているユーザーから連絡があります。ユーザーとは、JR社員やJRグループの社員です。照明の不点なら交換しておしまいですが、漏電だと再度繰り返さないために「何をしているときにMCCBがトリップしたのか」聞き取りを行います。

ユーザーは電気の素人であり、自分が停電させた負い目からか守りに入ってなかなか本当のことを話してくれません。停電させた犯人を探しているわけではなくて、原因を探していることを散々説明してようやく話し始めてくれる始末です。

また完全に機器が壊れたときは、取替・修繕の電気工事を外部の工事会社に発注します。もちろん、ユーザー要望で新しく機器・照明などを取り付けるときも、同じように外部に発注します。ここでも自分の考えを、図面をもとに言葉で適切に伝えないといけません。ここで手を抜くと、竣工時に出来上がった設備を見て思い通りになっていないことにがっくりすることになります。

例えば、駅の設備管理だと下図のように株式会社ジェイアール西日本サービスネットの求人があります。この求人でも、社内ほかさまざまな部門と調整業務があるとされています。つまり、駅を管理するJR西日本、駅ナカのテナント、工事業者などとの調整です。

このように、設備管理の仕事に人とのコミュニケーションは不可欠です。単に誰とでも楽に話せるといったコミュニケーション能力だけでなく、適切に相手に意図を伝える能力が求められることを覚えておきましょう。

ビルメンテナンス大手が多い系列系企業と独立系企業を知る

ビルメンテナンスは名前の示すとおり、ビルや大型の施設で働く仕事です。したがって、そのような大型施設がある都市部で働くことが前提になります。

ただ、施設一つの業務だけでは非効率であるため、複数の施設が集中しているところ大都市圏に会社が集中しています。『ビルメンテナンススタッフになるには(ペリカン社 谷岡雅樹著)』によると東京圏だけで業界の50%が集中しています。

また、ビルメンテナンス業には大企業から中小企業までたくさんの企業が参入しており、その出自も様々です。ビルメンテナンス業の企業は、系列系企業と独立系の企業に大きく2つに分類でき、大企業が多いのは系列系で中小企業が多いのは独立系です。

ビルメンテナンスとして働く友人に聞いたところ、これらはどの会社で勤めたとしても基本的な仕事は設備管理で変わりありません。しかし、系列系企業の方が事務仕事は多いです。独立系企業は、自社が元請けでビルメンテナンスを受注しているだけでなく、系列系企業の下請けとしてビルメンテナンスを行っていることもあります。現場で手を動かす仕事は、独立系企業の方が多いです。

そのほか、系列による特徴を下表にまとめていますので参考にしてください。

大分類 系列 特徴 代表的な会社名
系列系 ゼネコン系 ・自社施工物件の保守が主体 (株)アサヒファシリティズ
大林ファシリティーズ(株)
不動産会社系 ・自社物件(商業施設・ランドマークなど)の業務が主体 野村不動産パートナーズ(株)
三井不動産ファシリティーズ(株)
鉄道系 ・鉄道駅付帯の商業設備が主体 JR東日本ビルテック(株)
(株)ジェイアール西日本デイリーサービスネット
商業施設系 ・大型小売店舗の業務が主体 イオンディライト(株)
マルイファシリティーズ(株)
独立系 ・中小企業多い セイビグループほか

次章で年収についてくわしく解説しますが、基本的な考え方として系列系企業の方が高年収が提示されていることが多いです。これは単純に資本力のある大企業が多いことに起因します。

ビルメンテナンスの年収

最後にビルメンテナンス業の年収について解説します。

冒頭で紹介したセイビ大阪社の年収は、同じ求人票の中に記載があります。下図がその部分を抜粋したもので、入社時想定年収として350万円が提示されているのがわかります。

同様に、紹介した求人の年収欄の記載をまとめたものが下表です。

会社名 年収[万円] 系列
(株)セイビ大阪 350 独立
イオンディライト(株) 400~600 商業施設
野村不動産パートナーズ(株) 325~ 不動産
ジェイアール西日本デイリーサービスネット 306~645 鉄道

この表によると、ビルメンテナンス業の提示年収は300万円から500万円程度であることがわかります。

実は、厚生労働省の統計調査でビルメンテナンス業の平均年収が公にされています。下が、賃金基本構造実態調査でビルメンテナンス業の年齢別平均年収をグラフ化して示します。

これによると、ここで紹介した求人の提示年収は業界全体で言うと高い方だといえます。

引用:令和元年賃金基本構造実態調査(厚生労働省)表1をグラフ化

ビルメンテナンス業は労働集約型の産業で、事業コストに対する人件費の割合がとても高い産業です。つまり、顧客に提示する請負金額に人件費の多寡が直接影響します。したがって、構造的に賃金を上げにくい特徴があります。ほかの産業より、経営者が賃金を上げたがらない産業であると言い換えることもできます。

ビルメンテナンス大手を狙うなら転職サイトから

先述したように、系列系企業は年収が高めです。高い年収を望むなら、系列系企業を探す必要があります。このような系列系企業の求人を探すときには、転職サイトを使って探すことをおすすめします。なぜなら、転職サイトには系列系企業が多く求人を出しているからです。

企業が転職サイトから人材を採用した場合、採用した人の年収の2~3割の報酬を転職サイト運営企業に支払います。これは年収500万円としても100~150万円になります。

一人の人材を採用するのに、100万円を超える金額を出せない経営体力の弱い企業は、転職サイトを使って人材を募ることが出来ません。転職サイトには、しっかりとした経営基盤のあるビルメンテナンス会社が求人を出しているのです。

また、転職エージェントサービスを使うと、転職エージェントからあなたの希望する企業に対し強い推薦を得ることが出来ます。特に年収面で、転職成功した多くの人は転職エージェントサービスを使っており、私もその一人です。

転職エージェントから話を聞くと、企業との信頼関係のために自信を持って推薦できる人材しか企業に対して推薦しないということです。つまり、転職エージェントの紹介で企業の採用試験を受けることになれば、最後の年収交渉まで強い後押しが得られます。

さらに、転職サイトの求人は提示年収が高いことが多いです。例えば、ビルメンテナンス大手のイオンディライト株式会社のホームページの求人を見ると、月給23~26万円で年収400万円~と記載があります。参考に、月給26万円のときの年収を月給×17.4ヶ月分(12ヶ月+ボーナス4ヶ月+手当1.4ヶ月)で計算してみると年収452万円です。

そして次に示すのが、大手転職サイトdodaに掲載してあったイオンディライト社の求人票です。同じ第二種電気主任技術者を募集していて、上限が600万円になっているのがわかります。

全く同じ求人が出ているのかと探してみたのですが、ホームページには転職サイトに掲載されている求人は募集されていませんでした。高めの年収が提示される求人は、ホームページではなく転職サイトに掲載されています。このように、転職サイトを使った方が年収面での転職成功しやすくなります

まとめ

ここまで、ビルメンテナンスに有利な資格や年収について解説してきました。

ビルメンテナンスの主な仕事は設備管理であるため、設備管理に用いられることの多い資格である電気工事士、電気工事施工管理技士、電気主任技術者資格(電験二種、電験三種)が転職において有利になります。特に電気主任技術者資格は、全くの未経経験でも中途採用される可能性がある資格です。

ただ、ビルメンテナンスの仕事は設備だけを相手にしている仕事ではありません。他者に対して適切に意図を伝えるコミュニケーション能力が日常的に求められます。このことは承知しておきましょう。

ビルメンテナンス業を行っている企業は、大きく系列系と独立系の2つに分けられます。この内、系列系は大企業が多く、独立系に比べて給料も高いことが多いです。系列系企業の年収は、ビルメンテナンス業界の平均年収より高く年収が提示されています。

転職サイトに求人を出しているビルメンテナンス会社は、系列系が多いです。さらに、同じ企業でも自社ホームページの求人と転職サイト掲載の求人を比べると、後者の方が高年収を提示してあることが多いです。つまり、転職サイトや転職エージェントサービスを有効に利用することで、年収面において転職成功しやすくなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。