テーマパークには電気で動くものがたくさんあります。遊戯施設・イルミネーション・映像音響装置などのテーマパーク特有のものもあれば、空調・一般照明・テナント向け動力など一般の商業施設に使われるものまで幅広くあります。したがって、電気の技術者が活躍する場所もあります。

しかし、テーマパークが属するレジャー施設業界の技術職があまり注目されていないため、どのような職種・仕事があるのかあまり情報がありません。転職を成功させるには、予め十分な情報収集が必要です。

ここでは、テーマパークの電気技術職が主に行う電気設備管理や設備工事について触れ、勤務や資格・スキルの注意点、求人の探し方や年収の状況について詳述します。

仕事内容はテーマパークの電気設備管理

テーマパークにおける電気屋の仕事内容を一言でいうと、電気設備管理です。テーマパークの売り物である「体験」を実現するには、たくさんの電力が使われています。それは照明・動力・制御などさまざまです。これらの電気設備を、意図せず故障することなく安定して、さらにお客さんや従業員に対して安全に使えるように保守管理していく仕事です。

下図は、転職サイトのマイナビエージェントで紹介されていた合同会社ユー・エス・ジェイの求人です。社名の通り、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営する会社です。この求人では、電気設備のメンテナンス職を募集しています。

電気設備メンテナンスには日常的な点検のほか、設備更新・新設など大規模な工事も含まれます。しかし、工事ができるような技術者をテーマパーク運営会社の社内に多数雇用することはなく、外注して外部能力を使うことになります。つまり、テーマパーク運営会社はメーカー企業ではなくユーザー企業です。

もしあなたが自分で手を動かして何かを作りたい・動かしたいというのが転職の動機であれば、テーマパークへの転職はおすすめできません。テーマパークへの転職では、まずユーザー企業であることを理解しておく必要があります。

特別高圧受電設備の保守管理

テーマパークのような大きな需要設備では、22kVや66kVといった特別高圧で受電しています。大規模工場と同じ考え方で、大電力を使う動力が多いので低圧受電するより割安になるからです。

ちなみに後ほど紹介する求人票で、オリエンタルランドが第2種電気主任技術者、ユー・エス・ジェイが第3種電気主任技術者の有資格者を求めていることから、それぞれ66kV受電、22kV受電です。送電線での引き込みではなく、ケーブルで引き込んであるため受電箇所の写真は撮れませんが、参考までに66kVの受電設備は下の写真のような設備です。

工場などではよく見かける規模の設備ですので、あなたがこれまでに類似の保守経験があるなら歓迎されることは間違いありません。

特高設備の基本的な仕事の内容は、定期的な点検と絶縁油の交換などのメンテナンスです。特高設備が故障するとパーク全体が止まることになるので、意図しない停止をすることが絶対に許されない設備です。法令や社内規定に沿った点検・修繕をこなしていくだけですが、何かあったら大事件になるので緊張感を持って取り組む必要があります。

私は長らく鉄道業界で特高設備に携わってきました。特高設備が不意に故障することは、数年から十数年に1度です。それも200以上の受電箇所があって、その位の頻度です。したがって1箇所しか受電点のないテーマパークで事故が起こることは、ほぼ無いと言えるでしょう。

園内高圧・低圧電気設備の保守管理

テーマパークには特別高圧設備のほかにも、高圧・低圧の設備があります。これらの電気設備の保守管理も電気技術者の仕事です。例えば、小規模なパークでは高圧で受電していることもあります。下の写真がその例です。

このパークでは6,600kVをキュービクルで受電し、低圧に変圧してパーク内に送っています。写真のキュービクル内にある変圧器・開閉器・リレー(継電器)・ケーブルなどが保守管理する対象です。

また遊戯施設のほとんどは、100Vまたは200Vで動作しているということを作業中の方が教えてくれました。

特別高圧や高圧で受電した電力は、パーク内の各所に配電され、各施設で使われます。各施設での電気機器・配線などは100Vまたは200Vです。機器は電動機(モータ)および制御盤、照明を主にメンテナンスすることになります。

夜勤があるなど、勤務時間に注意

テーマパークにおける電気屋の位置づけは、完全に裏方です。アトラクションなどが動いている前提で、それに合わせて電気技術者が働いているといえます。したがって、勤務は夜勤有りの24時間監視、またはいつでも応急処置ができる体制が維持されます。

参考にユー・エス・ジェイの勤務を見ると下図のように、「日勤・日勤・夜勤・夜勤・休日・休日」のシフト勤務です。

注意しなければならないのは、1サイクルが6日であるため土日が休みになるわけではないということです。もちろん祝日も関係ありません。

このような勤務体系は、24時間稼働の工場やエネルギープラントの運転員(オペレーター)が同様です。メリットは、平日の昼間に時間が取れることです。私も類似した勤務をしたことがありますが、役所に行くのに苦労しません。また、遊びに行くにも平日の空いているときに行くことができます。

反対にデメリットは、まわりは土日が休みの人が多いので、予定が合わせづらいということです。同じ職場の先輩は、かつて同様の勤務を何年か続けたときに、学生時代の友人と予定が合わず多くの友人と縁遠くなってしまったと言っていました。

あなたが今まで土日休みのリズムで仕事をしてきたのなら、このような長所と短所について承知しておくことが大切です

電気主任技術者資格や電気工事士資格があると有利

それではテーマパークの電気技術者には、どのような資格やスキルがあると転職しやすいのでしょうか。

テーマパークでの電気の仕事は、ここまで説明したように電気設備の保守管理が主な仕事内容です。したがって、業界を問わず電気の設備管理の経験があると企業からも求められ、あなたも違和感なく転職できます。例えば、工場の工務をしていたり、ビルメンテナンス(ビルメン)の経験があったりすると良いです。

下図はdodaで紹介されていた合同会社ユー・エス・ジェイの求人です。一担当ではなくリーダーとしての募集です。これには、エレベーターや工場設備などの保守保全経験を歓迎する旨が記載されています。

また工場設備の保守保全の経験があれば、電気工事士資格や電気主任技術者資格(電験資格)を取得していることもあるでしょう。これらの資格は、持っていれば採用されやすいです。

下の求人は冒頭に紹介したマイナビエージェントに掲載されていた合同会社ユー・エス・ジェイの求人です。保守保全経験のほか、電気工事士(第一種、第二種)資格や第三種電気主任技術者資格が必須・歓迎条件とされています。

また、下図はディズニーランドを運営する株式会社オリエンタルランドの求人で、電気主任技術者資格や電気工事士資格は必須条件・歓迎条件に上げられているのがわかります。

また、テーマパーク運営会社では電気工事を発注する立場で仕事をします。その際設備設計(変圧器・ケーブルなどの容量計算と選定、保護整定値の決定とリレー選定など)をすることもあり、設計経験や施工管理の経験・資格は重宝されます。先程のオリエンタルランドの求人では、電気工事施工管理技士資格者が必須とされています。

このように、テーマパークの技術職に転職するためには、電気工事に関する資格があれば転職しやすいです。

アトラクションを動作させる制御系技術もポジションがある

以上に紹介したような強電系の資格・スキルだけでなく、制御系の弱電系スキルも求められている場合があります。下図の求人にはPLC制御ができる技術者を求められています。

アトラクションを定められた動きで制御するためには、シーケンス制御が用いられます。シーケンス制御を表すには、下写真のような独自の図記号を用いることが一般的です。

写真:『シーケンス制御技術』産業図書 小野孝治ほか著 9ページ

かつてリレー(継電器)で実装されていたころは、写真左のようなリレーシーケンス回路で表されることが多かったです。受変電機器の保護操作連動などはこれで記述されます。近年リレーではなくPLC(Programmable Logic Controller)でロジックを実装することが増え、その場合は写真右のPC用シーケンス回路で表されます。

PC用シーケンス回路は、別名「ラダーシーケンス」とも呼ばれます。このことから、「PLCによるシーケンス制御を実装・解析できるか」ということを、「ラダー組める・読めるか?」と表現します。面接などで突然訊かれることもあるので、この言葉は覚えておくと良いです。

制御にはシーケンス制御のほか「プロセス制御」もあります。シーケンス制御が機器の動作に使われるのに対し、プロセス制御は流体や温度など連続値の制御に対して行われます。これは、化学工場やエネルギープラントでよく使われる制御ですが、アトラクションの制御には活かせないので覚えておきましょう。

ディズニーランドとUSJ以外の中途採用枠は非公開求人を探そう

テーマパークが属するレジャー施設の市場規模は、8,500億円ほどです。このうち7割を占めているのが、東京ディズニーランドを運営する株式会社オリエンタルランドと、大阪のユニバーサルスタジオジャパン(USJ)を運営する合同会社ユー・エス・ジェイです。

この2社に限り積極的に中途採用を行っており、求人票を探してもこの2社の求人は比較的容易に見つかりますが、そのほかのテーマパーク運営会社の求人はなかなか見つかりません。これは、設備を積極的に更新・新設しているテーマパークがこの2社が中心であるということです。

そのほかのテーマパークへ転職するには少し工夫が必要です。求人票が出回っていない理由には2つあります。1つは非公開求人のみ出している場合、もう1つは本当に求人を行っていない場合です。

非公開求人とは、転職エージェントを通してのみ入手できる求人情報です。下図のように、企業側の都合で非公開にて行われる求人で、図のtype転職エージェントでは80%が非公開求人とされています。

あなたが転職したいと考えているテーマパークの求人が見当たらなければ、まずはこの非公開求人を探してみると良いです。非公開求人は転職サイトによって扱っている会社が違います。したがって、複数の転職サイトで紹介を受けると求人を見つけやすくなります。

非公開求人を探しても求人が見当たらない場合は、企業から募集されていない可能性が高いです。こうなると、求人票が出るのを根気よく待つ必要があります。

しかし、ただ待つだけでなく転職エージェントにテーマパークの求人が無いか問い合わせてみるのは良い方法です。転職エージェントの手持ち求人にあなたが希望する求人がなくても、その企業と付き合いがあれば転職エージェントが企業に掛け合ってくれる可能性があります。

私が転職活動しているときには、転職エージェントから「希望の企業があれば、求人が出ていなくても紹介するので言ってください」と要請がありました。

また、一つのテーマパークだけを運営している企業に絞らなければ、下図のような求人も選択肢に入ります。この求人は、大阪に本社のある泉陽興業株式会社の求人です。この求人では、神奈川県のよこはまコスモワールドに常駐して設備保守管理をする人材を求めています。

泉陽興業では、よこはまコスモワールドのほか、愛知県「愛・地球博記念公園」や福岡県「グリーンランドリゾート」など全国各地のテーマパークに営業所があります。下写真の山口県下関市にある「はい!からっと横丁」という遊園地では、泉陽興業株式会社が運営主体として運営しています。

この「はい!からっと横丁」は遊戯施設の財産を同社が持ち、さらに運営も同社が行っているということです。ほかのテーマパークでは、テナントとして一部の遊戯施設だけを運営していることもあります。オリエンタルランドのようなテーマパークの運営主体のみを探すのではなく、泉陽興業のような会社を探すと選択肢が増えます

テーマパークの電気技術職の年収

最後にテーマパークで働くときの年収について解説します。下図のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの求人では、入社時の年収が380~600万円であることが示されています。

同様に、ここで紹介した求人の年収をまとめると下表になります。

会社名 年収[万円] 職種 紹介サイト
(同)ユー・エス・ジェイ 380~600 電気のメンテナンススタッフ
(リーダークラス)
doda
(同)ユー・エス・ジェイ 400~750 受変電設備保全 マイナビエージェント
(同)ユー・エス・ジェイ 非公開 制御システムエンジニア パソナキャリア
(株)オリエンタルランド 470~600 建築設備エンジニア(電気) パソナキャリア
泉陽興業(株) 350~450 施設保守管理 doda

ここで提示した求人については、ボリュームゾーンは400~600万円といえます。参考にテーマパークが属する娯楽業界の年齢別年収が公開されていますので、下図に示します。

引用:賃金構造基本統計調査(厚生労働省)第1表をグラフ化

オリエンタルランドとユー・エス・ジェイは業界最大手の2社であり、仮に30代で中途採用されるとこのグラフで示す各年齢の平均より高い金額が提示されています。あなたが転職活動中に年収の提示を受けたときは、自分の年齢とこのグラフを参考にするとよいです。グラフを大きく下回っていないことを確かめておけば、年収面での大失敗を防ぐことができます

まとめ

テーマパークで電気技術者として働くには、主に電気設備管理を担当することを知っておく必要があります。

電気設備管理には保全のほか設備更新工事などがあり、工場などで同様の経験があると違和感なく転職できます。また、電気工事士資格・電気工事施工管理技士資格・電気主任技術者資格は、必須としている企業もあり、転職活動において有利にすすめる武器になります。

そのほか強電系の技術・技能ばかりでなく、弱電系(制御)の技術者も募集されることがあります。PLCなどを使って、シーケンス制御のスキルを持っていると転職成功する可能性が高まります

テーマパークを含むレジャー産業は市場規模が小さいので、運営主体の会社は大手2社を除いて公開された求人がほぼ無いのが実情です。転職エージェントをうまく使って、非公開求人を探したり、直接取引がないかを聞いたりして、求人を探しましょう。

単体でテーマパークを運営している会社にこだわらなければ、小規模なパークを運営している会社や、パークの一部をテナントして運営している遊戯施設メーカーなどが選択肢になります。

テーマパークで働くときの給料は、求人票を見ると400~600万円がボリュームゾーンです。あなたの年齢と厚生労働省の統計を参考に、提示年収を比較することで給与面での失敗を防ぐことができます。

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。