電気保安の仕事は、法令で定められている絶対に無くならない仕事です。電気設備がある限り、電気保安は必ず行わければならない仕事で、しかも電気主任技術者の資格が必要な重要な仕事です。

電気保安の仕事をしている会社で、すぐに思いつくのは電気保安協会です。あなたも一度は転職を検討したことがあるのではないでしょうか。

もちろん電気保安協会では、電気保安業務が出来ます。しかし、電気保安業務は電気保安協会だけのものではありません。そのほかにも電気保安業務を行っている会社はたくさんあります。これらの会社も同時に考えることで、電気保安への転職成功の可能性が高まります。

ここでは、まず電気保安協会について「どのような特徴があるのか」「有利な資格」「年収」などを紹介します。そのあと、電気保安協会以外で電気保安業務がある会社について、「求人例」「有利な資格」「年収」などについて詳述します。

電気保安協会の求人はよく出ている

電気保安業務とは、電気設備の安全を確保するために点検・検査をすることです。そして電気保安の仕事と聞いて一番に思い浮かぶのは、電気保安協会ではないでしょうか。電気保安協会は、電力会社のように全国を地区に分けて以下の10社があります。

北海道電気保安協会 東北電気保安協会
関東電気保安協会 中部電気保安協会
北陸電気保安協会 関西電気保安協会
中国電気保安協会 四国電気保安協会
九州電気保安協会 沖縄電気保安協会

これらの保安協会で電気保安技術者の中途採用の募集は、大手転職サイトによく求人が出ています。見つけるのに苦労しないはずです。下図は、大手転職サイトに掲載されていた一般社団法人東北電気保安協会の求人です。

この求人で謳っている電気保安技術者とは、「電気保安業務に携わる技術者」というだけの意味です。ほかの求人では、電気主任技術者や保安業務従事者と表現されることもあります。ほぼ同じ意味で使っている求人ばかりです。

電気保安協会の求人の特徴として、転勤前提ということがあります。例えば、下図の関東電気保安協会の求人によると、当面は千葉県での勤務とされているものの、正社員登用後に関東圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・栃木・茨城・山梨・一部静岡)で異動の可能性があります。

この求人ではまず契約社員として採用されます。そして契約社員の間に移動はありません。しかし、早くて6ヶ月後の正社員登用のあとは異動が織り込み済みになります。ほかの保安協会でも、希望は考慮すると謳われてあるものの、管内の転勤は前提です。

保安協会への転職は、転勤前提ということを理解しておきましょう。

保安協会の仕事はきついのか?

次に、保安協会で働くにあたって仕事のきつさはどのくらいでしょうか。WEB上の口コミでは激務というような表現も散見されますが、実際はどのくらいなのでしょうか。これらについて検証してみます。

保安協会の仕事内容は、主に客先の電気設備の点検・試験です。扱う電気設備の主なものは、下の写真のような6,600Vで受電している電気設備(キュービクル)です。

高圧(交流600~7,000V、直流750~7,000V)で使われる事業用の電気設備は、事業者が電気主任技術者を選任し、感電災害や波及事故を起こさないように管理監督することが義務付けてあります。しかし、多くの事業者は電気に関するノウハウがないため、電気保安法人にそれらの業務を委託することが出来ます。保安協会は、委託される側の電気保安法人です。

ここで保安協会が職務として行うのは、あくまで点検・試験であって、設備の更新・修繕工事などは事業者が行うことに注意が必要です。

電気設備の保安は、事業者にすると短期的に見ればコストでしかありません。法律で決まっているから仕方なく行っていることがほとんどです。このような事業者に、電気的知見があることはまれです。

私も鉄道の設備管理をしていて経験がありますが、電気設備の専門家でない経営陣や管理部門に電気設備の更新・修繕費用を認めさせるのは一苦労です。特に数値で限界値が決められているものではなく、外装の不良など定性的に決められているものは、際限なく修繕を先延ばしにされます。

自らに責任がないと言え、長らく点検してきた設備が助言虚しく故障するのは気持ちの良いものではないでしょう。

また、1つの設備だけを担当するのではなく、たくさんの設備を担当します。空間的に近い場所にばかりあることはないでしょうから、自動車で移動しながら点検し、事務所に戻って報告書を作るという仕事です。下図の北海道電気保安協会の求人だと、一人あたり80件の客先を2ヶ月で回るとあります。

1ヶ月20日勤務として、1日2件を回る計算になります。もちろんその合間に報告書を作成して、客先に報告するという業務もあります。仕事が平準化していれば、それほど忙しいことはありません。平準化されていなければ、繁忙期はそれなりの忙しさになることは覚悟がいりそうです。

忙しさの目安である残業時間は、求人票に記載がある場合があります。北海道電気保安協会では、平均残業時間は10~15時間程度ということです。そのほか、同様の記載がある保安協会でも概ね残業は20時間程度まででした。

これらから伺えるのは、点検自体は体力的に辛いことは少なく、残業時間も少なめなので激務ではないということです。総じてホワイト企業と言えるでしょう。ただし、精神的にはきついこともある仕事だということは認識しておく必要があります。

電気主任技術者(電験)資格必須の求人が多い

では保安協会への転職には、有利になる資格はあるのでしょうか。実は、原則として電気主任技術者資格と電気保安の実務経験が必須です。これは電気保安協会で保安管理業務に従事するための要件として、下記のように平成15年経済産業省告示第249号に定められているからです。

平成15年経済産業省告示第249号

第1条

(略)

一 第一種電気主任技術者免状の交付を受けている者 三年
二 第二種電気主任技術者免状の交付を受けている者 四年
三 第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者 五年

(略)

つまり電気保安協会で戦力として業務をしようとすると、電気主任技術者資格と実務経験が必須であり、無資格者や実務未経験の人は不適ということになります。したがって、求人票にもその旨記載があることがあります。下に、電験資格および実務経験必須の北海道電気保安協会の求人を示します。

ただし、電気保安業界では電験資格者の不足が懸念されています。業界からの声を受けて経済産業省が調査・発表した資料によると、2045年に向けて電気保安業界の電験資格者が相当数不足する見込みです。これを受けて、電験資格者でなくとも採用する動きが出てきました。

下図は、北海道電気保安協会の類似の求人ですが、実務未経験でもOKです。また学歴も高卒以上が対象なので、かなり間口が広くなっています。

また関西電気保安協会の求人では、電験資格か実務経験のどちらかが必須とされています。

電験資格者で実務経験有りの人と比べると、戦力外につき社内で教育指導する必要があるため入社時の待遇は劣ります。しかし長期的に勤めて資格取得すれば待遇も改善するので、資格や実務経験がなくてもこのような保安協会の求人に応募する価値はあります。

電気保安協会の年収・ボーナスを知る

では、電気保安協会の年収・ボーナスはどの程度なのでしょうか。実は、あまり高いとは言えません。下図は、関東電気保安協会の求人の提示年収です。350~500万円とあります。また、ボーナスは過去実績で、3ヶ月分支給とされています。

そのほかの電気保安協会の年収も、同様に求人票などから抜粋したのが下表です。

協会名 提示年収[万円] ボーナス 記載箇所
北海道電気保安協会 330~500(資格のみ)
370~600(資格あり・経験あり)
※推定2.4ヶ月 doda
東北電気保安協会 336~470 ※推定3.3ヶ月 doda
関東電気保安協会 350~500(契約社員) 3ヶ月分 doda
北陸電気保安協会 記載なし 記載なし マイナビ転職
中部電気保安協会 記載なし 記載なし
関西電気保安協会 450~530 記載なし doda
中国電気保安協会 400(30歳)510(40歳) 記載なし ホームページ
四国電気保安協会 300~500 4.9ヶ月分 doda
九州電気保安協会 320~480(HP記載月給より推定) 記載なし ホームページ
沖縄電気保安協会 記載なし 記載なし

※求人票の年収、月給と残業時間の情報から計算

平成30年民間給与実態統計調査(国税庁)によると、給与所得者の平均年収が441万円(正社員のみだと502万円)なので、電気保安協会の年収は平均的か少し安い年収と言えます。

電気保安協会の仕事は電気設備が無くならない限り尽きることがありません。つまり、まず潰れることがなく確実な昇給もある会社です。ことのことから、高年収を求めて転職する先というよりかは、平均的な給料で途中で辞めることなく長く安定して勤める会社と言えます。

電気保安協会以外の電気保安の仕事は設備管理と抱き合わせ

電気保安の仕事ができるのは、電気保安協会だけではありません。

電気保安協会が客先から受託できるのは、高圧の設備だけであって、特別高圧(7,000Vを超える電圧)の設備は受託することが出来ません。実は、特別高圧で受電している設備はたくさんあります。下の写真は、私の自宅近くの工場ですが、左の鉄塔から受電しているのがわかります。ちなみに66,000Vで受電しています。

このような工場では、事業主(工場の運営会社)が自らの責任で電気主任技術者を選任し、電気設備の保安管理をしなくてはなりません。したがって、特別高圧で受電している工場を持つ会社には、電気保安の仕事があります

例えば、株式会社ジェイデバイスの求人です。下図に、求人票の仕事内容の欄を示します。この会社は、神奈川県横浜市に本社がありますが、この求人では福岡工場で電気主任技術者として、電気設備保安業務を行うことになります。

次に示すのは、神奈川県横浜市の株式会社浅川製作所の求人です。この求人では、工場全般の設備管理職を募集しています。大きく工場の設備管理の仕事があって、その中に電気設備保安の仕事が含まれています。

このような工場を持つ会社は、ほとんどが生産設備としての工場を持つ製造業です。製造業のほかは、エネルギープラントを持つエネルギー業界や環境プラントがあります。エネルギープラントや環境プラントでは受電するだけでなく発電しています。下の写真は、環境プラントのタービンと発電機です。

このような発電して電気を売る事業者も電気保安の業務があります。エネルギープラント・環境プラントでは写真のような電気設備を保安します。実際の求人では、下図のような求人があります。下の求人は、株式会社ガスアンドパワーの保全技術職を募集しているものです。

同様の会社では、電気保安協会のように点検・試験だけを行うことはありません点検・試験の結果をもとに設備を修理・更新する仕事も含まれます。電気設備保安だけではありませんが、設備管理の求人を対象にすると選択肢は大きく広がります。

ビルメンテナンス(ビルメン)も電気保安技術者を求めている

そのほかにも、ビルメンテナンス(ビルメン)には電気保安業務があります。工場設備管理と違い、ビルメンテナンスは商業施設が主な管理対象です

ビルメンテナンスの求人は、例えば下図のような求人があります。これは、三井不動産ファシリティーズ株式会社の求人です。

ビルメンテナンスの注意点は、工場設備管理よりさらに電気設備保安の仕事が少ない点です。空調や衛生機器などさまざまな設備の対応をしないといけないため、電気設備保安に関わる時間は相対的に少なくなります。

ただし、あなたが持っている資格や、用意されているポジションによって職務内容は変わります。応募の前に、転職エージェントなどを通して当該求人の仕事内容を十分に確認すると、ミスマッチよる失敗を防ぐことが出来ます。

資格必須ではないが、将来的に電気主任技術者資格取得を期待される

電気設備保安を含む設備管理の仕事に転職するには、どのような資格があるとよいのでしょうか。これも、電気保安協会の求人と同じく電気主任技術者資格があると有利になります。

上で紹介した株式会社ジェイデバイスの求人は、第2種電気主任技術者資格と実務経験が必須です。入社後すぐに電気設備保安業務を行うため、電験資格が必須です。

一方、設備管理職を求めている会社であれば、電験資格が必須でないことが多いです。電気設備保安以外の業務もあるので、それらを含めて取り仕切っていくことを期待されているからです。あなたとは別に選任された電気主任技術者の監督のもとで電気設備保安を行うこともできます。

株式会社浅川製作所と株式会社ガスアンドパワーの求人では、電気主任技術者資格が必須ではなく、歓迎になっています。

 

しかし電験は必須ではないとはいえ、社員全員が電験を取得する意志がないのは困ります。電気設備管理を行ううちの何人かには電験を取得してもらわなければ事業継続できないからです。つまり、資格に「電験」について触れられていなくても、入社後将来的に電験取得を勧告・奨励されることはあります

ちなみに、私が以前働いていた鉄道業界でも電気設備保安の仕事はあります。電車を動かすための自社変電所を持ち、電力会社から受電しているからです。しかし、例えば東日本旅客鉄道株式会社では下図のとおり電気技術職の募集で電験資格者を求めてはいません。

しかし、入社すると電気主任技術者資格取得を強く勧奨されます。一定数の電気主任技術者の有資格者がいないと、電車を動かすことができなくなるからです。

このような会社であれば、電験取得のためのサポート(資格取得一時金、資格手当、社内研修など)があることがあります。採用試験時に資格を持っていなくても、電験取得について意欲的なことを示せばアピールに繋がるので覚えておきましょう。

最後にビルメンテナンスでは、下図のように資格に関する記載がないことも多いです。

電気保安に必要な電気主任技術者資格を持っていてマイナスに評価されることはありませんが、プラスに評価してくれるかどうかも疑問です。転職エージェントは、求人票の内容に対する疑義についても先方企業に問い合わせてくれるので、うまく活用して評価される会社を探しましょう。

給料・年収は業界による

それでは、設備管理の求人の年収はどのくらいでしょうか。上で紹介した株式会社ジェイデバイスの年収は下図のとおりです。

同じくここで紹介した求人の年収は下図のとおりです。

会社名 提示年収[万円] 業界
(株)ジェイデバイス 500~625 製造(半導体)
(株)浅川製作所 330~450 製造(輸送機・建機)
(株)ガスアンドパワー 490~840 電気
東日本旅客鉄道(株) 368以上 陸運(鉄道)
三井不動産ファシリティーズ(株) 380~430 ビルメンテナンス

これらの設備管理の職種でどれくらいの給料・年収が得られるかは、業界によります。同じ職種であっても、業界が違えば大きく年収が変わると考えてください。参考に、設備管理の求人が多い業界のそれぞれの平均年収を下のグラフに示します。橙色がエネルギー業界、緑色が鉄道業界、黄色がビルメンテナンス業界、青色が製造業界です。

引用:平成30年賃金構造基本統計調査より作成

これを見てわかる通り、電気や石油業界は高く、食品・繊維・ビルメンテナンス業界は年収が低いです。つまり、グラフの左側の業界で設備管理の求人を見つければ高年収を得られやすくなります。

電気設備保安を含む電気設備管理の仕事は、業界が変わっても仕事の基本的な考え方は変わりません。管理する設備が変わりますが、それさえ覚えてしまえば業界をまたぐ転職でも難しくありません。私も設備管理の職種で鉄道(陸運)業界から電気業界へ転職し大幅な年収アップを成功させました。したがって高年収を狙うには、積極的に平均年収の高い業界の求人へ応募すると良いです。

まとめ

電気保安の仕事に転職するとき、電気保安協会の求人は見つけやすく全国にあるので第一の選択肢になります。転勤が前提であるということ、電気主任技術者資格および実務経験を求められる場合が多いことに納得できれば良い選択肢です。

ただし、電気保安協会の年収は高くありません。電気保安協会が潰れたり業績不振に陥ったりすることは考えづらいので、高年収を期待する転職ではなく、安定して長く働きたい希望を叶える転職先と言えます。

電気設備保安の仕事は電気保安協会だけでなく、特別高圧で受電する工場・発電所・商業施設にもあります。ただしこの場合は電気設備管理と抱合せで行う職種であることを知っておく必要があります。

電気設備管理では、電気保安協会のように点検・試験を主な業務内容とするわけではなく、点検・試験に始まり修繕・更新をして、電気設備の維持管理をすることも仕事内容になります。電気保安は、仕事の一部です。

電気設備管理にも電気主任技術者資格は求められることが多いですが、電気保安協会のように必須とされている求人は少ないです。資格や実務経験がなくても転職することは可能です。

しかし、会社として電気主任技術者の有資格者が必要なのには変わりないので、入社後に電験資格を取得奨励されます。もちろんすでに電験の有資格者であれば大きなアピールポイントになります。

電気設備管理の年収は業界によって大きく変わります。平均年収の高い業界の求人へ集中して応募することで、年収面で転職成功しやすくなります

技術者が転職するとき、多くの人が転職サイトを利用します。これは、それだけ良い条件で転職できるからです。

企業への履歴書・職務経歴書の送付やアポ取り、年収交渉など、面倒な仕事は全て転職エージェントが代行してくれます。これらを自分だけで行うのは現実的ではないですが、転職エージェントであればプロがしてくれます。

しかし、転職サイトは「対象地域」「対象年齢」「得意な分野(技術全般、製造業の技術・工場など)」で違いがあります。転職を成功させるには、これらの特徴を理解した上で進めなければいけません。

以下では、それぞれの転職サイトについて詳述しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。